秋は紅葉の季節
紅葉ともみじ
落葉樹の葉が落ちる寸前、赤や黄色に変色することを紅葉といいます。紅葉する樹木はイチョウ科、カエデ科、ブナ科など20種以上あり、中でも赤く染まるカエデ科は秋を彩る代表的な落葉樹です。
紅葉の樹木には、カエデ科の他にもツツジ科やミズキ科、バラ科、ブドウ科があり、もみじはカエデ科の落葉樹になります。「もみじ」という名には紅く染まるイロハモミジをさすときと、カエデ科の樹木全体を総称する時があるようです。
もみじとは
もみじはカエデ科の落葉樹の総称と、山や公園、盆栽にもなるイロハモミジのことを「もみじ」と呼ぶことがあります。紅葉の種別ではカエデ科と呼ぶこともありますが、正式にはムクロジ科カエデ属の落葉高木です。
カエデ属でも代表的な品種のもみじは、日本やアジア諸国に生息します。他にヤマモミジといった亜種もあるようです。秋になると日本の山々や公園、庭先でヤマモミジやイロハモミジが彩る風景を楽しむことができます。
もみじとカエデ
もみじと楓(カエデ)の違い
葉が紅くなるカエデ属のもみじを「紅葉」と書き、これを「こうよう」とも読みます。もみじは紅葉するカエデ科で、もみじのほかに「ハウチワカエデ、オオモミジ、トウカエデ」が含まれる樹木です。
身近にあるもみじはイロハモミジと呼ばれる小さい落葉樹になります。英語圏でメープルと呼ばれる大きな葉は楓(カエデ)と呼び、もみじより葉の切り込みが浅いのが特徴です。もみじと楓の違いは、葉の色と形、大きさになります。
もみじの名の由来
草木が黄色や紅くなる様子を「紅葉づ、もみづ」といい、これがもみじの名の由来といいます。そのほか、染色の言葉でベニバナの花を使って紅く染めるときの、揉み出す行為「揉み出づ」という由来もあるようです。
もみじは「紅葉」と書きますが葉が紅色だけでなく、黄色くなるカエデも含まれることがあるため「黄葉」と書くこともあります。もみじは秋を代表する「紅葉(こうよう)」する樹木の代名詞のようにもなっています。
イロハモミジの名の由来
紅葉、カエデと切り離して「もみじ」と呼ばれるのは「イロハモミジ」のことになります。イロハモミジはカエデ属の落葉樹です。別名「イロハカエデ」「小葉紅葉(コハモミジ)」というものもあります。
イロハモミジという名前は、葉が5~7つに裂けている様子が「手」のように「いろはにほへと」と数えたことからイロハモミジと呼ばれるようになったのが由来です。
カエデの名の由来
カエデという名前は「カエルの手」という意味です。もみじもカエデも、どちらもカエルの手に似ているので総称して「カエデ」と呼び、同じカエデ属の樹木になります。
日本ではこの「カエルの手」に類似するもみじもカエデも「もみじ」と呼んだり、「カエデ」とよぶことがあるのはそのためです。カエルの手に似た形をしたカエデ科、またはカエデ属の植物は「カエデ」とも呼びます。
紅葉の色を楽しむ
紅葉が始まる時期
紅葉は朝夕の寒暖差が広がる10月~11月になると始まる現象です。北海道は9月下旬から、関東では暖冬で12月に入って始まる場所もあります。同じ関東でも山沿い、平地と場所によって違い、日光、秩父、奥多摩といった地域は少し早めに見ることができます。
暖房が欲しくなる頃が、紅葉が始まる時期です。春の桜前線と同じように、秋になると北から紅葉前線があり、関東でも高尾山や秩父地域では11月に楽しむことができます。
落葉樹の変化
冬を越したもみじなどの落葉樹は、暖かい春になると新芽が出て緑の葉をつけます。夏の間に茂った緑の葉は、朝夕が寒く日が短い秋になると、葉が黄色や紅色に変化する様子が紅葉です。
紅い葉は枯れるとやがて枝から落ち、樹木は枝だけの姿になり、再び冬を迎えます。これがもみじやカエデ、ハナミズキや桜といった落葉樹の変化です。
紅葉になる時期と条件
葉の色が緑から黄色や紅色に変化する条件には、光合成が関係します。日が短くなることが第一条件です。さらに朝の気温が8℃以下になることが二つ目の条件になります。
以前は11月の初めに朝の気温は8℃になりましたが、近年は11月末になりました。秋の気温の変化にもよりますが、紅葉は11月頃が見頃時期になることでしょう。もみじは育て方と手入れを気をつけると、盆栽という形でも紅葉を楽しむことができます。
庭と盆栽のもみじ
庭のもみじ
庭のもみじは、風通しのよい半日蔭に植えたものなら育て方が楽で、大した手入れも作業も必要ありません。うっそうとした山でも育つもみじは、雨のおかげで水やりも不要、手間のかからない樹木です。
もみじの樹木を手入れせず放置すると、そのまま土から新芽が出て、庭がもみじだらけになってしまうこともあります。地面から出たもみじの新芽は、そのまま新しい場所に植え替えたり、植木鉢で育てることも可能です。
盆栽のもみじ
野山に生息するヤマモミジやイロハモミジでも、もみじの盆栽を作ることが可能です。盆栽用のもみじには「清姫、出猩々、京の糸、旭鶴」と品種もたくさんあり、ベランダや室内で紅葉を楽しむことができます。
もみじの盆栽は、大きな樹を植えて小さく育てることが重要です。小さな鉢にしっかりとした太い幹と、生き生きとした美しいもみじの葉を持つものこそが、よいもみじの盆栽といわれます。
盆栽もみじの育て方
盆栽作りの苗を選ぶ
盆栽用もみじは園芸店や野草を扱うお店、ガーデニングショップで手に入れることができます。楽天などのネットショップでも、盆栽用もみじの苗は購入可能です。
苗を手に入れる時期や植え付けは、12月~3月が適切な時期になります。苗を選ぶ時は、もみじの葉が生き生きとして枝や樹がしっかりとしていることが大切です。すでに葉が茂っている盆栽用もみじなら、8月末~9月に購入すると、紅葉を楽しむことができます。
盆栽向きのもみじの種類
盆栽用のもみじには、ヤマモミジやイロハモミジもありますが、そのほかにシダレ紅葉、茜もみじといった品種もあります。盆栽で人気の品種では「旭鶴、清姫、清源、京の糸、出猩々」といったもみじが有名です。
いずれも秋になると葉が紅くなる様子を楽しむことができます。それぞれ葉の色や大きさ、広さが違い錦糸南天や苔を合わせて、盆栽のアレンジを楽しんでみましょう。
盆栽の育て方
広い庭や近くの公園にもみじがあると、季節による葉の色の変化を楽しむことができます。しかしマンションや庭の狭い都市部の家では、紅葉を楽しめない場合があるかもしれません。
そんな時でも秋を感じることができるのが、盆栽のもみじです。盆栽のもみじの正しい育て方や作業、手入れの仕方を知って、家の中でも紅葉気分を楽しみましょう。それでは盆栽の育て方のご紹介です。
盆栽作りの準備
もみじの盆栽を育てるためには、もみじの葉の色が生える盆栽用の小さい鉢を選びます。購入した苗より少し大き目なものがおすすめです。もみじは水はけがよい土壌を好みますので鉢底ネットを用意します。
鉢底ネットには園芸用ラフィア(紐)を通し、ようじを使ってラフィアを固定するといいようです。盆栽の土は赤玉土小粒:鹿沼土小粒を7:3の割合で混ぜて用意します。わからない時は園芸店で、盆栽用の基本土と尋ねてください。
盆栽の手入れを楽にする苔
植木鉢にもみじの苗を植えただけでは、ただの植木鉢に入れたもみじです。そこで、盆栽にするために苔も用意しましょう。盆栽用には砂苔、山苔、ハイゴケといったものがあり、土の表面を乾燥から防ぐ働きもあります。
苔を植えることは、水の吸収を助け土が流れることも防ぐため、水やり作業を楽にするという点でもおすすめです。葉が落ちたら苔も裏返してきれいに掃除をすると、冬はもみじの枝と苔の緑を楽しむことができます。
もみじの苗を植える
もみじの苗を鉢に植え、底のネットが見えなくなるまで、隙間なく土を入れて根に被せます。底のネットに通したラフィアを十字結びにして苗を固定しましょう。最初の水やりは、底から流れる水が透明になるまで、少しずつ水をあげてください。
その後、表面の土を覆うように苔を敷き詰めます。最後に盆栽用の肥料をあげて、日当たりと風通しのよい場所に置いてください。正しい手入れと育て方で、葉が枯れることなく長く楽しめます。
もみじの日当たりと育て方
もみじは日当たりを好み樹木です。庭木もですが盆栽も日当たりのよい場所に置きましょう。夏は日差しが強すぎるので、風通しのよい半日蔭がおすすめです。
庭木なら大きく成長するため、多少の日陰でも大丈夫ですが、盆栽はできるだけ日当たりよい場所に置きます。冬は枝だけになりますが、寒さや霜に弱いため日当たりのよい屋内や軒下がおすすめです。風通しは必要ですが、強い北風は気を付けてください。
もみじの水やり作業
庭のもみじは雨が降れば水やりをする必要がありません。しかし盆栽のもみじは鉢土の様子を見ながら水やりをします。水やり作業は鉢の底穴から流れる水が、透明になるまで少しずつ上げてください。
もみじは水切れすると弱くなり、葉が枯れることになったり、葉の色の変化を楽しむことができません。外に置いた盆栽でも、鉢土をしっかりと確認してください。水やりは盆栽のもみじにとって大切なため、忘れないよう気をつけましょう。
肥料をあげる時期
もみじの盆栽は、春から紅葉までの育て方が重要です。苗を植える時は液体肥料をあげ、その後は固形肥料を利用しましょう。暖かくなる3月頃から新芽が伸び始めますが、そのまま放置すると形が崩れるため、盆栽では2番目の芽を摘む作業をします。
この時期から紅葉が始まる時期まで、月に一回の割合で有機性の固形肥料「玉肥」を置くのがポイントです。固形肥料は、紅葉が始まったら土の上から取り除いてあげます。
盆栽もみじの手入れや剪定作業
盆栽のもみじは形を整えるために、葉刈りや芽摘み、剪定といった手入れが必要です。もみじは葉が落ちた冬の間に、伸びた枝を剪定し細かい枝が育つようにします。葉が育ちにくくなったら鉢の大きさを変え植え替えをしましょう。
植え替えから紅葉の時期にかけて、肥料を定期的にあげます。新芽が出る春になったら芽摘みをし、6月になったら、一対の葉の片方を切る葉刈り作業をして、風通しをよくするのが大切です。
盆栽もみじの植え替え時期と作業
盆栽は真冬に剪定し、新芽が出る前に植え替え作業をします。同じ鉢でも3月頃には一度鉢から根ごと外し、伸びた根をカットする作業が必要です。夏と秋を経て鉢いっぱいに広がった根は、先の1/3くらいをカットします。
その後初めて苗を植えたときと同じ要領で、底ネットを敷きラフィアを通し盆栽を固定、新しい土を入れて植え替えが完成です。3月になったら毎年繰り返すと、葉が小さくなりミニチュアのもみじになっていきます。
盆栽もみじの天敵「病気と害虫」
盆栽のもみじは、うどんこ病やさび病といった病気になることがあります。病気の原因は風通しと日当たりの悪さです。芽摘みや葉刈り作業をして風通しをよくし、病気の葉を見つけたら枯れる前に摘んで病気対策をします。
夏になると発生するのが天敵のハダニです。5月になったらハダニ対策に、害虫用の薬を散布しましょう。葉の裏表両面にしっかりと散布し、夏の暑さ対策として風通しと盆栽の温度が上がらないよう注意します。
盆栽もみじを長く楽しむ
盆栽のもみじは、正しい手入れによって長く楽しむことができます。正しい手入れや育て方によって、葉が枯れるような心配もなく、秋には見事な紅葉を見ることができるでしょう。
冬の手入れによって次の年には新芽が育ち、盆栽のもみじを長く楽しむことができます。適切な時期の植え替えや芽摘み、葉刈り、水やりと手入れをさぼらないことが、病気や害虫に負けないきれいなもみじの盆栽を作る育て方です。
もみじとカエデの盆栽
盆栽で楽しめるのはもみじだけではありません。カエデの盆栽も、もみじと同じように育てることができます。秋になったらもみじとカエデの盆栽を並べて、自分だけの紅葉の景色を楽しんでみてはいかがでしょう。
秋になっても外に出られない高齢者や、忙しくて遠くの紅葉を見に行けない家族にプレゼントするのもおすすめです。色の変化を身近で見ることができて、喜ばれるかもしれません。
盆栽のもみじで紅葉を楽しもう
秋になると庭木や公園のもみじの葉が紅く染まり、紅葉を楽しむことができます。盆栽のもみじなら、庭がなくても家にいながら紅葉を楽しむことができます。
しっかりと手入れをし、風通しや水やりにも注意をすれば、葉が枯れることなく緑色の葉が紅くなる変化から、秋の訪れを身近に感じることでしょう。身近で紅葉が楽しめる盆栽で、秋の楽しみを一つ増やしてください。
盆栽の育て方が気になる方はこちらもチェック
もみじを始め、葉の色の変化を楽しむことができる樹木の盆栽を育ててみたい、という方はこちらもチェックしてはいかがでしょう。いろいろな盆栽の手入れや育て方を知って、ミニチュアの紅葉を楽しんでください。

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