秋の七草
万葉集に歌われた秋の七草
日本には春夏秋冬4つの七草があります。一般的に知られているのは七草がゆの食材として知られている春の七草と、万葉集など俳句や短歌にも読まれている秋の七草です。
秋の七草は「桔梗・女郎花・ススキ・葛・撫子・藤袴」そして「萩の花」になります。万葉集では女郎花は「姫部志(おみなえし)」撫子は「瞿麦なでしこ)」という漢字があてられていました。こちらは秋の七草の一つ、萩についてのご紹介です。
萩の花
萩(ハギ)はマメ科ハギ族の総称、落葉の低木です。萩という文字を充てる植物は、本来はヨモギ類の意味になりますが、七草の萩はマメ類マメ目マメ科の「萩」という植物になります。
夏から秋にかけて葉の根元に、赤紫色の花房をたくさんつけるのが萩の花です。小さな花が房になった姿は、クローバーの丸い花房をそのまま直線に伸ばして葉につけたように見えます。和名は萩「ハギ」ですが、英名はブッシュクローバー、ジャパニーズクローバーです。
萩の原産地
萩には北米が原産地の「ハギ亜属」という種類と、アジアが原産地の「ヤマハギ亜属」「ハギ属」があります。中でもヤマハギ亜属は日本全土に自生し、園芸の起源では日本が原産地ということです。
葉のつき方で違うようですが、どちらもハギ属「英名Lespedeza(レスピディーザ)」になります。ハギの英名は「ブッシュクローバー」または「ジャパニーズクローバー」です。英名からも日本が原産地ということがわかります。
萩の名前の由来
和名の萩は「草冠に秋」という字で「秋の草」だから、というのが一番よく聞く由来です。ハギという言葉は、毎年古い木から新しい芽が息吹く姿から「生きる芽」を「ハクキ(生芽)」「ハクエキ(延芽)」を語源とします。
また葉が黄色くなる「葉黄」や、養蚕の時に用いた「ハギ」に似ているところから、ハギという名が付いた、という由来もあります。
ブッシュクローバーの由来
萩の花はハギ属に属する植物です。ハギ属は英名をレスピディーサと言いますが、萩の花は「ブッシュクローバー」または「ジャパニーズクローバー」になります。
萩は寒さに強く、荒れ地でもたくましく咲く花です。その姿から英名の「ブッシュ(薮)クローバー」という名が付いたのかもしれません。また、ヤマハギ、ミヤギノハギなど日本固有の種も多く、園芸種は日本が原産地ということで「ジャパニーズクローバー」ともいいます。
萩の花言葉
萩の花言葉は「思案」「内気」になります。萩はたくさんの種類があり、品種によっては花言葉が違うようです。萩の細やかで控えめな美しさと、控えめな雰囲気が花言葉の由来になります。
ほかにも萩の花言葉には、「物思い」「内気な愛情」「思い」といった内に秘められた思いといった言葉が多く、品種によっても違う花言葉があるようです。
萩の誕生花
萩は9月24日、10月1日の誕生花です。誕生日に誕生花を贈る、ということがありますが、萩の場合は鉢植えでプレゼントする方法と、アレンジにする方法があります。
他にも9月5日、6日、13日、18日、25日、10月15日、11月15日も萩の花を誕生花の一つにあげる日があるようです。例えば9月6日はミソハギ、9月18日はセンダイハギと品種によって誕生花になる日があります。
誕生花「ミヤギノハギ」
ミヤギノハギの誕生花は一般的な萩の誕生花の日の他に、8月4日、9月13日、9月1日、9月5日、9月18日、9月25日、10月2日、10月15日です。萩の中でも仲間の多いミヤギノハギは、誕生花の他に8月と9月の誕生月の花にもなっています。
夏の終わりから秋の初めが誕生日の人へ、和の雰囲気の花かごにミヤギノハギの花を入れると喜ばれるかもしれません。
誕生花「センダイハギ」
ハギ属ではなくセンダイハギ属のセンダイハギは、同じマメ科の植物で9月18日の誕生花です。9月18日はミヤギノハギも誕生花になります。
万葉集が好きな和の雰囲気を大切にしたい人の誕生日に、紫のミヤギノハギと黄色いセンダイハギでアレンジや寄せ植えをしてみてはいかがでしょうか。
萩の花色
萩の花色は「ピンク、ピンクにちかい紫、紫、白、ピンク色が入った白、黄色」などがあります。同じピンク色でも紫とのグラデーションのものや、白とのグラデーションとさまざまです。
花色は種類によってピンク一色の品種もありますが、白や紫、黄色といろいろな色がある品種もあります。紫やピンク色のイメージが多い萩の花色ですが、いろいろな色を楽しむことができる花です。
萩の品種
「ハギ」と呼ばれる植物には、マメ科ハギ属の「萩」とマメ科センダイハギ属の「ハギ」、そして「ヌスビトハギ属」の「ハギ」があります。
いずれもマメ科の品種ですが、それぞれ花の付き方や色、花びらの形や特徴、生育の場所など違いがあるようです。
ハギ属「萩」の品種
ハギの品種は世界中に20種類以上あります。代表的な品種は「ヤマハギ」「ミヤギノハギ」「キハギ」「ツクシハギ」「シラハギ」「ニシキハギ」などです。
萩の花の開花は7月~10月、秋になると枝の先に、たくさんの赤紫色の小さな花房を付けます。この房の様子がクローバーの花びら1枚1枚を広げたように見えることから英名に「クローバー」が付いているようです。
ヤマハギ
ヤマハギは、ハギの中でも日本で一番馴染みが深い花になります。北海道から九州まで、日本全土の山に生える、マメ科の低木です。ヤマハギは「萩」の代表的な品種で、ミヤギノハギや、シラハギ、ツクシハギ、キハギはヤマハギの仲間になります。
花色はピンクに近い紫で、山の他に生け垣や公園から盆栽などでも見かけることがある花です。ヤマハギの原産地は日本をはじめとするアジア各地で、アメリカでは外来種とされています。
ミヤギノハギ
ミヤギノハギは「宮城野萩」と書き、マメ科ハギ属のヤマハギの仲間になります。夏萩とも呼ばれ、開花時期は6月~9月、背丈は1~2mの半低木です。
ミヤギノハギは、ヤマハギよりも少し花びらが大き目で華やかな雰囲気があります。公園や庭など日当たりがよい場所を好みますが、適応力が高いため日陰でも育てることは可能です。
ニシキハギ(備中山萩)
備中山萩とニシキハギ(錦萩)は同種という説と、備中ヤマハギが他の種と混在している場所で、交雑することで作られた品種がニシキハギという説があります。
どちらもマメ科ハギ属の低木で、花色はピンク色に近い紫色になります。開花時期は8月~10月、本州中部から沖縄にかけた、比較的暖かい地方で生育が見られます。薄いピンク色の花びらに、濃い紫色の筋が入るのが特徴です。
シラハギ(白花萩)
シラハギは「白花萩」「白花備中山萩」ともいい、ミヤギノハギの変種という説と、ニシキハギの白い花を栽培した品種という説があります。「白花備中山萩」は、備中山萩のピンクの花色が白い種という説もあるようです。
花びらはミヤギノハギと同じですが、色は真っ白な蝶花形になります。シラハギは7月~9月に開花し、10月になると実がなる品種です。
その他ハギ属の仲間
このほか、ヤマハギやミヤギノハギの仲間には、日本中部から九州にかけて生息する「ツクシハギ」、沖縄や台湾が原産地の「琉球萩」などがあります。花色がピンクに近い紫で、西日本に生息する「キハギ」は神戸で多く見かける品種です。
「ケハギ」は別名サミダレハギともいい、花枝がすすきのように垂れ下がるのが特徴、開花も五月雨の5月からになります。このようにハギは日本が原産地の品種が多く、全国の山野で楽しめる植物です。
センダイハギ属の品種
センダイハギ(千代萩・先代萩)
センダイハギには「千代萩」「先代萩」「仙台萩」といういろいろな和名があります。ヤマハギと異なり、マメ科センダイハギ属の品種です。関東甲信越以北、シベリアや北アメリカにも生息し、北アメリカが原産地になります。
仙台で多く見られることから「仙台萩」という和名もつけられました。花枝はヤマハギがススキのように垂れ下がる形に対して、上に向かって咲きます。花色は黄色が一般的で樹高は1m前後と低めです。
キバナセンダイハギ
センダイハギ属には紫センダイハギとキバナセンダイハギという二つの種類があります。花色で紫とキバナにわけて名前を付けていますが、センダイハギのほとんどは黄色で、紫は珍しい品種のようです。
そのため、黄色い花をつけるセンダイハギの英名「プレモシス」を「キバナセンダイハギ」の和名で紹介していることもあります。
ヌスビトハギ属の品種
ヌスビトハギと名前の由来
ヌスビトハギはマメ科ヌスビトハギ属の品種で、他のハギ属とは違う植物です。和名の「ヌスビト」という言葉は、果実の形が盗人の足跡に似ている、といった話が由来になります。
また実が人の衣類につく「ひっつき虫」と呼ばれる植物の一つのため、「盗人」が気付かないうちに衣類につけていた、という由来もあります。花色が白色に近い薄紫色のヌスビトハギの他、北米が原産地のアレチヌスビトハギなどが有名です。
アレチヌスビトハギ
漢字にすると、和名「荒れ地盗人萩(アレチヌスビトハギ)」は名前だけ見ると、少し怖いイメージがあります。原産地はアメリカで英名は「デモジウム・パニチュラータム」といい、荒れ地に力強く生息する姿からその名がついたのかもしれません。
一般的なヌスビトハギよりも大きく増殖力が強い、蝶のように可憐な薄紫色の花です。
品種別「萩」の花言葉
萩の花言葉と由来
萩の花言葉は「内気、思案、物思い」といった控えめなものです。萩は日が短くなる秋の初め、ススキのように垂れた枝に小さな花をつけます。うつむくように咲く花の姿は、控えめな花言葉を連想します。
萩のこういった物静かな雰囲気が「内気、思案」という花言葉の由来となったようです。しかし同じ萩でも品種によって、少し違う意味の花言葉もあります。そこで、萩の属種や品種による花言葉や、その由来をご紹介しましょう。
ハギ属の花言葉「思案」「内気」
細く垂れた枝に小さく咲く花の様子から、萩は「内気」という花言葉がついたといいます。うつむいた枝にそれでも一生懸命強く花は、内気な中にも強さを見たのかもしれません。
そこでついたのが、もう一つに花言葉「思案」です。萩の花はうつむくだけでなく、しっかりと根付く様子を見ることもできます。お人好しですぐに騙されてしまう友人がいたら、花言葉を添えて萩の花をプレゼントしてみましょう。
ハギ属ヤマハギの花言葉
萩の花言葉は「思案、内気」ですが、そのほかに品種や仲間によってそれぞれ違う花言葉もあります。ヤマハギには「柔軟な精神」という花言葉もあるようです。
ヤマハギとミヤギノハギは、共通の花言葉とそれぞれの特徴を持った花言葉があり、由来を知ると面白いかもしれません。
ヤマハギの花言葉「柔軟な精神」
ヤマハギの枝は細く柔らかいのが特徴です。折れそうな細さですが、ヤナギのようにしなやかで柔軟、風が吹いても折れることなくたなびく様子を見ることができます。
そんな枝の様子から、困難にも柔軟に対応する「柔軟な精神」という花言葉がついたのかもしれません。心が折れそうなときは、ヤマハギの花からしなやかに立ち向かう勇気をもらいましょう。
ハギ属ミヤギノハギの花言葉
ミヤギノハギの花言葉には、同じハギ属のヤマハギと共通するものが多くあります。代表的な花言葉では「思案」「内気」ですが、ミヤギノハギを特徴づける花言葉が「無邪気、子供の心」と「前向きな恋」です。
小さく可憐なハギの花の中でも、ミヤギノハギには明るく前向きな花言葉があります。
ミヤギノハギの花言葉「無邪気、子供の心」
ハギの中で「無邪気、子供の心」という花言葉があるのは、ミヤギノハギになります。控えめで内気に見えるハギですが、ピンク色の可愛らしい花色は無邪気に遊ぶ、純粋な子供の心のように見えるのかもしれません。
無邪気という花言葉がつく花は多くありましが、その中でもミヤギノハギの花言葉は、純粋なイメージが高い花になります。
ミヤギノハギの花言葉「前向きな恋」
ミヤギノハギ、シラハギには「前向きな恋」という花言葉があります。枝垂れる先に咲く澄んだ花の姿から、前向きな恋というイメージにつながるのでしょう。
内気で秘める恋心のような花言葉が多いハギの中でも、前向きでポジティブな花言葉になります。前向きな恋という花言葉は、明るく華やかな花につけられていることが多く、萩のような小さな花では珍しいかもしれません。
キバナセンダイハギの花言葉「知性、信念」
マメ科センダイハギ属のセンダイハギは、黄色く鮮やかな花をつけます。センダイハギの多くは黄色い花をつけるキバナセンダイハギで、花言葉は「知性」「信念」です。
垂れ下がるようなハギ属の萩と違い、キバナセンダイハギの凛とした姿が、内気な花言葉よりも、知性や信念を感じるのかもしれません。
紫センダイハギの花言葉「移り気」
同じセンダイハギでも紫センダイハギの花言葉には、「移り気」という花言葉があります。月見草やアジサイなど紫色の花の中には「移り気」という花言葉を持ったものが多くあります。
小さくてもまっすぐに自己主張をする、紫センダイハギの花は、ほかの萩のように控えめで内気なイメージにはならないのかもしれません。
ヌスビトハギ属の花言葉
ヌスビトハギはハギ属とは同じマメ科の植物で、花も小さく似ていることから、花言葉にも「内気」「思案」と同じものもあり、同じ花と思う人もいるようです。
しかしヌスビトハギは「盗人」という名前からハギ属とは違う、少し怖い花言葉もあります。それは、ヌスビトハギという物騒な花の名前を由来にした花言葉です。
ヌスビトハギ属の怖い花言葉「略奪愛」
ヌスビトハギ属ヌスビトハギのもう一つの花言葉は「略奪愛」です。「略奪愛」という怖い花言葉は、ヌスビトハギの「盗人」という花の名前が由来といいます。
しかし、実際にヌスビトハギの「盗人」という名は足跡に似ている実の形や、ひっつき虫という性質が由来のコミカルなものです。花の名前の「盗人」が「略奪」という怖い花言葉につながったとしたら、怖いよりも少し可哀そうな感じがします。
秋の七草「萩」を見つけてみよう
万葉集でも歌われ日本で古くから愛される花、萩は公園や庭だけでなく山野でも見つけることができます。秋の風景の中に萩を見つけて、花言葉をいかした鉢植えやアレンジなど、萩の花を楽しんでみましょう。
萩の育て方などが気になる方はこちらもチェック
萩の花言葉を中心にご紹介しましたが、野生に多く生息する萩を、庭で育ててみたい、家庭で育てたいという方は、こちらもチェックしてみましょう。

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