プランター栽培のスイカは"小玉"がおすすめ
本来つる性植物のスイカは地面を這うようにして生育しますが、その特性を生かして"あんどん支柱"や"広めの金網"を利用した育て方であれば、プランター栽培は難しくありません。しかしプランター栽培の品種は、大きくて重くなる大玉や中玉ではなく、"立体栽培"でも吊り下げられる小玉スイカがおすすめです。
可愛いけれど充分に甘くて美味しい小玉スイカの育て方をチェックしてください。(この記事は2021年8月17日時点の情報です)
スイカの栽培時期と収穫時期
地域 | 栽培期間 | 収穫時期 |
寒冷地 | 5月下旬~6月中旬 | 8月上旬~9月中旬 |
中間地 | 5月上旬~5月下旬 | 7月中旬~8月下旬 |
暖地 | 4月下旬~5月下旬 | 7月上旬~8月中旬 |
夏の代表的な野菜であるスイカは、発芽適温が25~30℃、生育適温が25~30℃となっています。スイカの栽培は、日本全国のどの地域でもチャンスは一度しかありません。
家庭菜園でのおおむねの栽培時期は4月上旬~6月中旬となり、収穫時期は7月上旬~9月中旬となっています。しかし南北に長い日本は気候差があるため、寒冷地と暖地で刃栽培期間と収穫時期が1ヶ月ほどずれるのでご注意ください。
スイカの種類
スイカは、大きさが約30センチ・重さ約14キログラムの大玉、大きさ約20センチで重さ約5キログラムの中玉、大きさ約15センチメートルまでで重さ約2キログラムの小玉スイカがあります。
最近注目の品種は、肉質が緻密でシャリッとしたスイカらしい食感の「羅皇(らおう)」、縞模様がなくて真っ黒な種なしの「3Xブラックジャック」、果実が赤いオレンジ色の「サマーオレンジミドル」などと豊富です。
小玉スイカの品種
プランター栽培におすすめの小玉品種は、適度なシャリ感と食味がよい赤い果実の「紅しずく」や、糖度が高い「紅こだま」です。他にも、黄色い果実の「ニューこだま」、赤い果実でラグビー型の「カメハメハ」や「マダ―ボール」なども人気があります。
スイカは1つのプランターに1株しか植え付けられないので、2つのプランターに品種を変えて植え付けてみるのも楽しそうですね。
スイカの病害虫と対策
スイカの病気で多いのは、高温多湿が原因で発生しやすい「うどんこ病」や長雨や多湿が原因の「炭疽病」、菌に汚染された土壌による「つる枯れ病」などがあります。病気が発生しないように、スイカは風通しと排水性のよい場所で栽培するなどの整備が必要です。
万が一発生した場合はそれぞれの病気に合わせた対処方法や薬剤を散布するなどの対策を取ってください。家庭菜園での病害虫の予防は毎日の観察を怠らないこともあげられます。
スイカの害虫と対策
スイカの害虫で多いのは、集団でスイカの葉の汁を吸う「ハダニ」や「アブラムシ類」、葉の汁を吸って葉の色が抜ける「ミナミキイロアザミウマ」、オレンジ色のカブトムシのような葉に丸い食痕をつくる「ウリハムシ」などがあります。
スイカの育て方で大事な環境、"多湿な状態をつくらない"などの予防をしましょう。万が一害虫が発生した場合は、すぐに葉ごと除去するか薬剤を散布して対策を取ってください。
スイカの水やり
スイカだけではなくプランター栽培の野菜は、適切な水やりが必要です。地植えの場合は土中に堪っている水分を吸収できるため過度な水やりは不要です。しかしプランター栽培の場合は表土が乾燥していたら、たっぷりプランターの底からあふれるくらいに水やりをしてください。
梅雨明けのあとや真夏日になると乾燥しやすいため、涼しい時間帯の朝と夕方の2回は忘れないように、必ず水やりをするように注意します。
スイカのプランター栽培①:用意と土づくり
用意するもの「プランター」他
スイカを栽培するプランターは、大型で長方形のものがおすすめです。大きさは、直径約30センチ×深さ30センチ、容量15リットル程度のプランターに1株のスイカを植え付けます。それ以下のプランターはスイカの生育が悪くなるためおすすめできません。
プランターの種類は木製・素焼き・紙製などがありますが、持ち運びしやすくて安価のプラスチック製がおすすめです。
鉢底ネット・鉢底石・ジョウロ・支柱
プランターを用意した後は、プランターの底に敷いて土の流出を防ぐ「鉢底ネット」、排水性を高めるためにプランターの底に敷き詰める「鉢底石」を用意してください。鉢底石はあらかじめ袋状のネットに入れてから敷くと、栽培後の培養土と区別しやすいので便利です。
蓮口の付いた「ジョウロ」と「あんどん支柱」用の支柱4本とヒモも用意しておきましょう。
プランターの代わりに袋栽培
スイカのプランター栽培は、プランターの代わりに培養土などが入っていた大きめの袋を使う方法もあります。新しいプランターが用意できない場合は、袋での栽培にも挑戦してみるとおもしろいかもしれません。
使用方法は、袋の裏表に地面から10センチの高さまで5センチ間隔で穴を目打ちなどで開けておきます。スイカ栽培などで家庭菜園に慣れてきたら挑戦してみるとよいでしょう。
プランター栽培の土づくり
スイカは根から多くの酸素を取り入れるため、深耕して酸素を供給させなければいけません。土壌には多めに堆肥などの有機物を施し、排水性と通気性をよくする必要があります。
地植えの場合は苦土石灰をブレンドする方法を採用しますが、プランター栽培の場合は園芸用の培養土を利用してください。
スイカのプランター栽培②:種まき
家庭菜園の初心者がスイカをプランターで栽培するのであれば、種まきから始めるのではなく接ぎ木苗から始めるのがおすすめです。
しかし「せっかくだから種から育てたい」という人は、果敢に種まきに挑戦してプランターでのスイカの苗を育成することから始めてみましょう。
プランター栽培:種をまく
用意したビニールポットに、1粒ずつスイカの種まきをしてください。栽培環境の温度が25~28℃であれば1種間ほどで発芽してきます。日本は地域によって気候が異なるため、寒冷地・中間地・暖地ごとの適切な家庭菜園での種まきの時期に行いましょう。
プランター栽培:ポットに移植する
ビニールポットに種まきをして1週間後に発芽したスイカは、子葉が完全に開いて本葉が見え始めたら1株ずつ1個のビニールポットに移植し、さらに苗として大きくなるまで生育します。
大きさの目安は、スイカの苗が接ぎ木苗として販売されている、本葉3~4枚の草丈20センチほどの大きさになるまでビニールポットで養生してください。
接ぎ木苗とは?
接ぎ木苗とは、育てたいスイカの苗に病害虫に強いスイカの苗を接ぎ木させたものをいいます。接ぎ木苗のスイカはとても病気に強くて根の張りもよいため、苗からプランター栽培を行う人におすすめです。スイカの植え付けの時期になると園芸品店などで販売されています。
スイカのプランター栽培③:苗の植え付け
プランター栽培:苗の選び方
スイカの苗は、育てたい苗に病害虫に強い苗を接ぎ木した苗えですが、さらに茎の節間が短く(ひょろひょろしていない)、がっしりと太い苗を選んでください。
反対に苗が小さくて古く、葉の色が薄い苗はハダニなどの病害虫の被害に遭っている可能性もあります。プランター栽培での上手なスイカの育て方は、上手な苗の選び方から始まるので、しっかり細部まで確認しましょう。
プランター栽培:苗の植え付けⅠ
苗づくり、または苗の購入が済んだあとは、鉢底石と鉢底穴、培養土などのすべてのセットが完了したプランターにスイカの苗を植え付けていきます。スイカのプランター栽培は、一つのプランターに対して株は一つです。
プランターの中央には、移植ゴテなどでスイカの苗の株元が埋まるくらいの広めの穴を開けてください。穴の深さは、穴を掘りながら株を入れて微調整をするとよいでしょう。
プランター栽培:苗の植え付けⅡ
苗を植え付ける前に、蓮口を外したジョウロで穴に水を注いでください。水が引いたらスイカの苗を植え付けます。購入したスイカの接ぎ木苗の場合は、接ぎ木した部分は埋めずに、必ず地上に出るように注意してください。
スイカのプランター栽培④:支柱立て・摘芯
プランター栽培:あんどん支柱立て
スイカの苗の成長と共に同時につるもどんどん伸びてきます。親づるを摘芯して子づるを伸ばすための、"あんどん支柱"を苗の周りに仕立ててください。
あんどん支柱とは支柱を四隅に立て、地面から10~20センチの部分の2か所をあんどん(行燈)のようにひもで縛る方法です。スイカのつるは支柱やひもに絡んで立体的に伸びていくため、ひもの囲いを増やして誘引します。
親づるを敵芯する方法
親づるの敵芯は、養分をスイカの果実に行き渡らせるために行います。親づるの敵芯を行うタイミングは、本葉が6~7枚のときです。
親づるはスイカの苗の中心部分にある茎で、この先端を切り落としてください(芯止め)。同時に親づるの下にある脇芽も取ります(芽かき)。最終的には側枝の子づるを3本に調整します。
子づるを支柱に誘引する方法
子づるは、プランターに仕立てた"あんどん支柱"に誘引してください。誘引方法のコツとして、8の字に交差してひもでつるを支柱に縛るときに、支柱の部分はしっかり縛り、これから成長するつるの部分は緩めにしばるとよいでしょう。
スイカのプランター栽培⑤:人工授粉と追肥
プランター栽培:人工授粉
家庭菜園でのスイカの受粉は手で簡単に行えます。雄花と雌花が分かれている「雌雄異花」のスイカは、新鮮な雄花を摘み取って花弁を取り除いてください。その雄しべの花粉を、雌花(花弁の下で小さくふくらんでいる子房)に軽くこすりつけるだけです。
人工授粉は花粉がよく出る朝の9時ころまでに行うと成功率が高くなるといわれています。小玉スイカの収穫は受粉の約40後なので、日付を書いたラベルを果実に貼っておきましょう。
プランター栽培:摘果と追肥
人工授粉のあとは、子づるに成ったいくつかの果実の中から生育のよいものや形のよいものの1個だけにし、残りは摘み取ってください(摘果)。プランター栽培では子づるを3本に調整してあるので、果実は3個だけになります。
果実の大きさが卓球のボール位になったら、約20グラムの化成肥料を株元に均一にまいて土に馴染ませてください。再び3週間後に追肥します。
スイカのプランター栽培⑥:果実の吊り
プランター栽培:ネットで果実を吊るす
スイカの果実は、肥大して重くなる前にネットなど活用してハンモック状にして支柱に固定してください。ネットがない場合は、ビニールひもを販売されているスイカを持ち運びするときのように、ハンモック状に編むのもひとつの方法です。
玉まわし
プランター栽培の場合はあまり影響がありませんが、地植えの場合は日光を満遍なくあてるために、"玉まわし"といってスイカの果実をひっくり返す作業を行います。プランター栽培の場合も陰になる部分があればひっくり返して、果実全体が緑色に色づくようにむらなく日光を当ててください。
スイカのプランター栽培⑦:収穫
プランター栽培:収穫は受粉後40日
大玉や中玉スイカの収穫時期は受粉してから40~50日後ですが、小玉スイカは少し早く40日後となります。スイカの果実の収穫の目安は、ヘタの部分の産毛が落ちて果実が着いている節の巻きひげが枯れているのがサインです。
果実の傷みを少なくするために、ヘタは少し残して切るほうがよいとされています。
熟成のための試し切り
念のために熟しているかどうかの確認に、スイカを1個だけ収穫したら半分に試し切りしてみましょう。シャリシャリした食感があって甘みも感じられれば、美味しいスイカの出来上がりとなります。残りのスイカも丁寧に収穫して冷蔵庫などで保管してください。
プランターで小玉スイカを栽培して夏を満喫
プランターでのスイカの育て方は、品種を2キログラムほどの小玉スイカを選び、支柱をあんどん仕立てにして吊り下げるようにして行います。果実が大きくなる前にネットなどに入れて支柱に吊るす作業などがありますが、それさえしっかり行えば特に難しくありません。
スイカのプランター栽培は場所を取らないため、家庭菜園の初心者も取り組みやすいといえるでしょう。しかし種から育てるよりも接ぎ木苗から育てるのがおすすめです。
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出典:ライター撮影