とうもろこしのプランター栽培は受粉が肝!
とうもろこしがプランターでの栽培の難易度が高いといわれる理由は、地中に真っすぐに根を張る野菜であること以外に、雌穂と雄穂を数本育てて人工授粉させる必要がある点もあげられます。しかし基本を押さえてコツさえつかめば、プランター栽培でも収穫時期には美味なとうもろこしを食べられることでしょう。
病害虫の被害もあまり心配する必要がなく、育てやすい野菜なのです。コツなどをいろいろチェックしてご参考にしてください。(この記事は2021年8月17日時点の情報です)
とうもろこしの栽培期間と収穫時期
地域 | 種まきの適期 | 収穫時期 |
寒冷地 | 5月下旬 | 8月上旬~9月中旬 |
中間地 |
4月中旬~5月中旬 6月中旬~8月上旬 |
9月上旬~11月上旬 |
暖地 |
4月上旬~5月上旬 6月中旬~8月中旬 |
9月上旬~10月下旬 |
家庭菜園で人気な夏野菜のとうもろこしは25~30℃で発芽します。そのためおおむね春に種まきをし、約2ヶ月半後の夏から秋にかけてが収穫時期です。
南北に長い日本列島は栽培と収穫時期の適期に差があるため、地域の気候に合わせてとうもろこしの育て方も工夫をしてください。種まきの時期は、北海道のような寒冷地では1回だけですが中間地や暖地では2回あるため、念のために2回栽培するのもよいのではないでしょうか。
とうもろこしの品種
家庭菜園で栽培するときのとうもろこしの品種は、糖分が多いスイートコーン種がおすすめです。スイートコーン種で有名なのは、甘みの強い「ゴールドラッシュ」や生食できる「恵味」皮が軟らかい「おひさまコーン」、白粒種の先駆けである「ピュアホワイト」などがあげられます。
他のとうもろこしの品種には、爆裂種ともいうおやつにもなる「ポップコーン」、ワックスをかけたようにツルツルの「もちトウモロコシ」なども人気です。
交雑を避けるために品種は同一のものを選択
とうもろこしは、異なる品種を栽培すると交雑しやすい性質があります。そのため地植えはもちろんプランター栽培でも、同じ品種のとうもろこしを植えるよう注意が必要です。
プランター栽培では、まったく交雑する心配がない場所で管理するのであれば、異なる品種のとうもろこしを栽培するのも楽しいでしょう。上手な品種選びも、プランターでの美味しいとうもろこしの育て方のコツといえます。
とうもろこしの病害虫対策
注意が必要なとうもろこしの病害虫は、モザイク病やアブラムシ、カメムシ、アワノメイガなどがあります。特に収穫時期を迎えたとうもろこしは美味しいため、虫や鳥の被害を受けやすいのです。
予防には薬剤散布の他に次のような対策もあります。受粉後の雌穂にストッキングや細かい目の排水溝ネットをかぶせる方法は、雌穂の生育を妨げずに害虫などから守ってくれる効果が期待できるようです。雄穂を切るときに同時に行います。
アサガオも効果が期待できる
スイートコーンの株の間にアサガオの種まきをし、アサガオの支柱になるようにとうもろこしの茎を使う方法もあります。アサガオの茎や葉の表面に生えている産毛は、害虫の飛来を防ぐ効果があるといわれているのです。
鳥の被害はタングステンなどのヒモを張ることでカラスやスズメの被害を防げるといわれています。プランターでの栽培でも採り入れてみるのもよいでしょう。病害虫に注意することもプランターの育て方のポイントです。
とうもろこしのプランター栽培①:下準備
プランター栽培:用意するもの
とうもろこしをプランター栽培するときに必要なものは、プランター栽培する他の野菜と同じく「プランター」「培養土」「鉢底ネット」「鉢底石」「ジョウロ」となります。
プランターは、幅や深さなどのサイズの他に素材と重さもチェックします。とうもろこしは土中に根を真っすぐに張る真根性のため、深さ30×幅30センチメートルほどのプランターにしてください。プランターの素材は持ち運びやすいプラスチックがおすすめです。
土は培養土でもOK
プランターでのとうもろこし栽培で使用する土は、市販されている「花と野菜用」などの草花兼用の土で問題ありません。
こだわる人は、赤玉土小粒7:腐葉土2:バーミキュライト1に、苦土石灰を10リットルあたり10グラムと観光化成肥料20グラムをブレンドしたものを作ります。上手な土づくりは、プランターでの美味しい野菜の育て方で必要不可欠となる作業です。
プランター代わりに培養土の袋
とうもろこし栽培はプランターでも充分に可能ですが、プランターの代用で培養土の袋を使うのもおすすめです。購入した培養土の袋に、地面から10センチメートルの高さまで5センチメートル間隔で水抜きの穴を目打ちなどで開けます。
ジャガイモやサツマイモなどの根菜類に適していますが、深さがあるので直根性のとうもろこしにもよさそうです。いろいろ工夫して家庭菜園を楽しみましょう。キャスター付きの台に置くと便利です。
プランター栽培:プランターのセット
とうもろこしのプランター栽培の道具が揃ったら、プランターに培養土などをセットします。プランターの底穴をネットでふさぎ、底石をプランターの底一面に敷き詰めてください。次にあらかじめ元肥が入っている草花兼用の培養土を、プランターの縁から2~3センチメートル下まで入れます。
培養土をプランターに入れた後は軽くゆすって土を落ち着かせ、手で表面をならしたら種まきをする準備完了です。
とうもろこしのプランター栽培②:種まき
種まきは、プランターの下準備が整ったらすぐに行います。種まきの方法は「すじまき」「点まき」「ばらまき」などがありますが、とうもろこしをプランター栽培するときは、プランターの中心に2センチメートルほどの凹みをつけてとうもろこしの種を3粒、20センチメートルほど間隔でまいて土をかぶせます。
しかしとうもろこしが生長した時の大きさを考えて、プランターの端に寄せ過ぎないように注意してください。
種は各メーカー品を吟味
とうもろこしの種は品種ごとに、各種苗会社のものがいろいろ販売されてあります。それぞれに特徴があるため、袋の裏に記載されてある説明書をよく読んで購入してください。地域ごとの栽培時期も書かれてあるので確認してまきましょう。
とうもろこしのプランター栽培③:間引き
とうもろこしの苗は家庭菜園でも大きく栽培させるため、間引き作業が必要になります。本葉が1~2枚になったら苗を間引いて2本にします。間引くときは残すとうもろこしの株を傷つけないように指でそっと抜くか、ハサミで地際を切り取ってください。
さらに草丈が20~30センチメートルになったら、とうもろこしの苗を1本にして間引きます。
とうもろこしは育苗もできる
とうもろこしは、ビニールポットで育てた苗をプランターにも植え付けられます。3粒の種を直径9センチ(3号)のビニールポットにまきます。それから防虫ネットまたは不織布でカバーして鳥よけ対策にしてください。
間引きするタイミングは畑に直まきした場合と同じで、1本立ちにして苗を植え付けます。直まきで行うよりも植え付けは鳥よけの手間がかからず、水やりの管理もできるためおすすめです。空いた畑も有効活用できます。
とうもろこしのプランター栽培④:追肥
とうもろこしは肥料食いとも呼ばれるほどに、肥料をぐんぐん吸収します。プランター栽培の場合も適切な量の肥料をしっかりあげることで、丈夫な苗を育てられることでしょう。
1回目の肥料は、とうもろこしの苗を1本立ちにしたあとがタイミングとなります。1株に対して一つまみ(3グラム)の化成肥料をぱらぱらと苗の周りにまいてください。2回目の肥料は、とうもろこしの頂部に雄花(雄穂)が出たら1回目と同様にあげます。
摘穂も同時に行う
とうもろこしに肥料をあげるときは、同時に摘穂作業も行ってください。摘穂作業とは、害虫のアワノメイガが付きやすい雄穂を、受粉用のものは残して摘み取ることをいいます。
肥料は雄穂が付くころに行うため、追肥と同時に表土が乾燥していたら水やりもしてください。そうすることで立派なとうもろこしの実が収穫できることでしょう。とうもろこしの株のてっぺんに出る雄穂は、穂が開いたら清潔なハサミで切り取ってください。
下の雌花も摘み取ってヤングコーンとして味わう
雄花から1種間ほどあとには、葉の付け根から実になる雌穂が出てきます。雌穂は一番上だけ残して下のほうにある実は摘み取ります。こうすることで残った実に養分が行き渡り、美味しいとうもろこしになるのです。摘み取った若い実はヤングコーンとしていただきます。
水やりは表土が乾燥してから
とうもろこしを始め野菜のプランター栽培は、水やりが非常に肝心です。畑での栽培は地面に湛水されている水を吸収できますが、プランターや鉢などの栽培は人間の手で水やりをしなければいけません。
毎日プランター栽培したとうもろこしの表土の乾燥具合を確認し、水やりを忘れないように注意してください。
とうもろこしのプランター栽培⑤:人工授粉
とうもろこしの雄穂から1週間ほど遅れて出てきて、上の部分だけ残した雌穂に人工受粉をさせます。人工授粉といっても難しいことではなく、切りとった雄穂を雌穂の上ではたいて雌穂のひげ(雌しべ)に花粉をつけるだけです。
植物の基本的な原理を応用して行うだけなので、初心者でも簡単にできる作業といえます。
雄穂を摘む前に人工授粉させる方法もある
雄穂は、人工授粉が終わってから切り取る場合もあります。その場合の人工授粉は、雄穂を手で揺らすことで花粉を飛散させて雌しべに受粉させてください。コツはなるべく花粉が飛ぶようにとうもろこしに振動を起こすだけです。
とうもろこしの花粉が飛ぶのが気になる場合は、プランターの場所を移動させるとよいでしょう。その場合は静かにプランターを運んでください。
人工授粉の後に下部の雌穂を取ることもある
下部に生えている雌穂の摘み取りは人工授粉の前に行う人もいますが、人工授粉が終わったあとでも構いません。人工授粉前と同じように雌穂は1株に数本が出ているため、一番上の雌穂を残して下の雌穂は摘み取ってください。
シャキシャキした食感のヤングコーンは、サラダや炒め物などにすると非常に美味です。
とうもろこしのプランター栽培⑥:収穫
とうもろこしの収穫のコツ
とうもろこしの収穫のタイミングは、プランター栽培の場合でも受粉から20日~25日経つとひげが茶色く枯れてゴワゴワし、雌穂の肩の部分がふくらんできた頃となります。若い雌穂のひげは青々としていますが、熟してくるとひげが変色するのです。若いうちは甘みが足りず、収穫が遅れると粒皮が堅くなり凹みやシワも出ます。
とうもろこしの上手な収穫のコツは、基本的に雌穂を持って下に押し倒すようにしながら折り取るだけです。
とうもろこしの収穫の最適期は2~3日
とうもろこしの収穫期間は短く、2~3日しかありません。収穫時期を逃すと品質がまったく異なるため、プランター栽培の場合でも収穫時期が近付いたら、状態を毎日観察してください。
またとうもろこしは収穫直後から鮮度が落ちていきます。常温では1日で糖度や栄養価が半減するといわれているため、収穫後はすぐに茹でるなどの調理をするとよいでしょう。そのため収穫日は休日がベストといえます。
収穫の手始めに実入りを確認する
すべてのとうもろこしを収穫する前に、まず実入りを確認してください。一本だけ選んで外皮をむき、実の入り具合を見ましょう。雌穂の先にまでとうもろこしの粒がびっしり入っていれば豊作といえるでしょう。安心して他のとうもろこしも収穫します。
とうもろこしのひげは栄養効果が期待できる
収穫の際に捨ててしまうとうもろこしのひげは、栄養効果が高いといわれています。体内の余分なナトリウムの排出や血圧を下げる効果などが期待されており、お茶にして飲むことが可能です。とうもろこしを収穫したときはひげを捨てずに、お湯を注いで飲用してみてはいかがでしょうか。
プランター栽培のとうもろこしを味わおう!
プランターでとうもろこしを育てる場合は、深さが30センチメートル以上あるプランターを選んでください。人工授粉させる必要や雄穂と雌穂を摘み取る必要があるため少し手間がかかりますが、その分だけ美味しいとうもろこしを食べられるのです。
難易度が高いといわれていますがコツを踏まえていろいろ挑戦しましょう。茹でるのもよし削いでポタージュにするのもよし、収穫仕立てのとうもろこしで美味しい料理を作ってくださいね。
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出典:ライター撮影