庭木として人気の山法師をご紹介
山法師は家庭の庭木として人気の高いミズキ科の落葉高木です。樹高は10~15mほどに生長し、日本の本州から沖縄、朝鮮半島や中国で自生します。緑の美しい葉の後に花状の葉である総苞片が開花し、花色は白のほか、グリーンやピンクなどもあり、初夏の花木としても人気です。また、山法師は秋には実を収穫することもできます。
今回は、一年中、楽しめる山法師の育て方についてご紹介します。別名や名前の由来、花言葉などについても合わせて参考にしてください。
「山法師」の読み方は「ヤマボウシ」
山法師は、「山法師」と書いて「ヤマボウシ」という読み方をします。「山法師」の名の由来は、その花姿が白い頭巾をかぶった山法師に似ているという説明が一般的です。山法師は、4枚の花びらに似た総苞片が四方に広がり、その中心に丸く小さな花が集まり、その姿は頭巾をかぶった僧兵に見ることができます。
鮮やかなグリーンの葉とのコントラストが美しく、夏の暑い時期にさわやかな印象を与え、開花時期も長く、庭木として楽しむのにちょうどいい木です。
興味深い山法師の別名や学名は?
山法師の別名に「ヤマグワ」があります。この別名の由来は、その実が桑の実に似ていることです。実際、桑の実と比べてみると、実の形や色が、桑の実が熟す前の姿によく似ています。
また、山法師の学名は「Cornus kousa」です。「Cornus」はミズキ科を意味しますが、「kousa」の読み方は「クサ」で、日本語が語源だと説明されています。これは山法師の名所である箱根エリアで、山法師のことを「クサ」と呼んでいたためです。
山法師の花の特徴
ところで、山法師の花と呼ばれているのは、実は総苞片と呼ばれる花のつけ根につく葉です。実際の花は、花のように見える4枚の葉の中心にあり、小花が集まって咲いています。
この花姿はハナミズキによく似ていますが、山法師の方が総苞片の先が鋭いという特徴があります。また、ハナミズキの開花時期は4月の終わりごろから5月にかけてです。山法師の方が遅く咲くため、開花時期でこの二つの花を区別することができます。
山法師の花言葉は「友情」
山法師には「友情」という花言葉があります。国境を越えた友情の物語がその由縁です。いまをさかのぼること明治のころ、東京の市長がワシントン市に桜の苗木を贈りました、そのお礼として贈られたのがハナミズキでした。
ハナミズキは別名アメリカヤマボウシで、山法師の一種です。このことから、山法師の花言葉は「友情」、ハナミズキの花言葉は「返礼」となったのだといわれています。大切な友だちへのプレゼントに迷ったら、ぜひ山法師の花を選んでみてはいかがでしょうか。
山法師の育て方とは?
山法師の育て方はさほどむずかしくはありません。初心者でも育てやすい庭木としても有名です。よく日が当たり、風通しがよく、西日が当たらない環境で、必要に応じた水やりや日々の管理をしていくことで、山法師はしっかりと生長していきます。
山法師は、花が咲き、実を結ぶため、1年を通して楽しむことが可能です。育て方のポイントを押さえながら、ぜひ山法師を育得ていきましょう。
山法師の植え付けや植え替えの時期
山法師の植え付けや植え替えは、12月ごろから3月ごろに行います。鉢植えで山法師を育てている場合は、2年ぐらいに一度は植え替えを行うようにしましょう。
植え付けの際、日当たりがよく、西日が当たらない場所を選ぶようにします。また、用土には腐葉土を混ぜて、通気性のいい地味の肥えた土を使うように意識することが大切です。山法師は、肥沃な土を使うことで、花や実が付きやすくなります。
山法師の日々の管理と害虫
地植えの山法師は、根がしっかりとつけば、水やりの必要はありません。夏の猛暑時には、日が出る前に水やりを行いましょう。鉢植の山法師は、土が乾いたら水をやるという基本的な日々の管理で問題ありません。
山法師は、風通しが悪いと病気にかかりやすくなります。梅雨の時期は風通しを意識しましょう。特定の害虫はとくに見られませんが、テッポウムシの幼虫に食べられることがあります。見つけたらすぐに駆除しましょう。
山法師の肥料は休眠期に
山法師の肥料は、地植えも鉢植えも、冬から春にかけての休眠の時期に行います。植え替えを行う場合、その際に肥料を施すようにしましょう。この時期に緩効性の肥料を与えると、一年を通して山法師が元気に育っていきます。
肥料の与え方は、土の表面に肥料を散布すう方法と、地面に穴をあけて肥料を埋める方法があります。冬にしっかりと肥料を与えることで元気に育って行きますので、ぜひ忘れずに肥料を与えるようにしたいです。
山法師の開花時期は夏
山法師の開花時期は6月~7月ごろです。新芽は3月ごろからはじまり、次第に葉が茂っていきます。葉が出た後に、花期のスタートです。花といっても総苞片と呼ばれる花のつけ根の葉なので、長い期間、楽しむことができます。
山法師の総苞片の色は、品種によって白、黄色がかったグリーン、ピンクなどがあります。また、山法師の総苞片の形は、よく似たハナミズキよりも花びらの先が尖っていて、手裏剣のように見えるのが特徴です。
山法師の花後の剪定のポイント
山法師は、とくに剪定する必要はありません。生長しながら自然と樹形が整っていくからです。しかし、枝が込んできたり、不要な枝が伸びてきたりしたら、開花時期が終わったら軽く剪定するようにしましょう。
この時期以外では、冬の休眠期が選定するタイミングです。ただし、基本的には剪定の必要がないため、あまり切り詰めず、込んでいる箇所の枝を軽く抜く程度の剪定をするようにした方がいいでしょう。
山法師の実の収穫時期は9月~
山法師の花が終わってしばらくすると、総苞片の中心にある花の部分が黄色くなっていきます。9月ごろには赤くなり、膨らんで実となっていくのです。表面はブツブツとしていて外被は硬く、3cmほどまで膨らんでいきます。山法師の別名、ヤマクワの名のように、一見すると熟す前の桑の実に似た姿です。この実は完全に熟すると落下します。
山法師の実はとても甘く、放っておくと鳥などに食べられてしまいます。実が成ったら収穫しましょう。
山法師の実の食べ方や栄養価
山法師の実は糖分が多く、水洗いしてそのまま食しても、とてもおいしく食べられます。ほかの食べ方としては、凍らしてシャーベットにするほか、ジャムにして保存食にするなど、さまざまな味わい方が可能です。
山法師の実のおもな成分は果糖。一部の資料では、アントシアニンが含まれているとあります。アントシアニンは抗酸化作用が高い成分で、視力や視覚機能の改善や眼精疲労の予防などに効果が期待できるとされる成分です。
山法師の2通りの増やし方
山法師の増やし方には、種から増やす方法と挿し木で増やす方法があります。挿し木で増やす増やし方の方が行いやすく、種まきで増やす場合、開花するまで数年かかりますので、花を早く増やしたいかたは挿し木で、ゆっくりと育ててみたい方は種まきで増やしてみましょう。
種まきによる山法師の増やし方
山法師の花が終わり、秋に実が熟したら、果実を採種して種を取り、そのまますぐに種まきをする方法がひとつです。また、洗った種を湿った状態で保管し、翌年の春に種まきをする方法もあります。
いずれの方法でも、山法師の花が咲くようになるまで数年かかります。山法師の種は発芽しにくいため、種まきから育てる育て方はあまり一般的ではありません。それでも種まきから植えてみようという方はぜひチャレンジしてみてください。
挿し木による山法師の増やし方
山法師を挿し木で増やす方法では、密閉挿しで成功する確率が高いようです。密閉挿しとは、ビニール袋で鉢を覆い、湿度の高い状態で育てていく方法となります。
今年伸びた元気のいい枝を切り取り、葉の2枚ほどまで切り落とし、水につけてしばらく待ちましょう。挿し木用の土を用意し、枝木を挿していきます。鉢をビニールで覆い、数カ月待ちましょう。成功すれば根が出てきます。
山法師の花木の種類とは?
山法師は、ミズキ科の落葉高木ですが、品種によっては半常緑樹もあります。品種改良された品種の中には、グリーンの葉に模様が入ったものもあれば、総苞片と呼ばれる花のつけ根につく手裏剣のような葉の色も、白だけではなく、薄い黄色、クリーム色、ピンク、薄いグリーンなど、異なる色もたくさんあります。
こうしたちょっとの違いで、花木としての印象が変わってきますので、ぜひ気に入った花姿の山法師を見つけてみましょう。
①ウルフアイ
ウルフアイは、葉に白い縁が入った山法師の品種です。葉の外側が白く縁どられたような模様が入り、グリーンの葉をいっそう明るくしてくれます。
この山法師の品種は、鑑賞のために品種改良されたものです。総苞片は白く、全体的に優し気な印象を与えてくれる木に生長します。庭木として人気が高いので、市場に出回ったらすぐに購入するようにしたいです。
②ゴールドスター
ゴールドスターは、葉に特徴のある山法師の品種です。その名が示すように、葉に黄色い模様が入り、黄色とグリーンの葉が美しく輝きます。黄色い模様の入り方は、それぞれの苗よってさまざまなので、購入する際にはいろいろな模様を見比べて選ぶようにしたいです。
なお、山法師の花状となる総苞片は、通常の山法師と同じように白いため、全体的に色合いが明るい印象の庭木となります。
③ステラピンク
こちらは山法師とハナミズキの交配種です。総苞片の葉色が、白とピンクが混ざったような艶やかな色で、花びらが大きい品種となっています。山法師とハナミズキの長所を併せ持つ品種なので、耐寒性や耐陰性に強く、病気にもなりにくいのが特徴です。
通常の山法師よりもかわいらしい印象を与える庭木となります。ご自身の庭の雰囲気に合わせてぜひこの品種を選びましょう。
④スノーボーイ
ウルフアイと同じように、葉に白い縁が入る品種の山法師です。苗にもよりますが、ウルフアイよりも白い縁が大きく、白い葉の印象が強くなっています。
総苞片の花びらの色は白色で、全体として白っぽく明るい印象となる品種です。あまり出回らない品種のせいか、山法師の中でも比較的高額となります。購入の際は懐と相談して決めましょう。
⑤ヒマラヤヤマボウシ
ヒマラヤから中国のあたりに自生する品種の山法師です。総苞片の花びらの色が黄色に見えるのが特徴で、葉の色が通常よりも深いグリーンで光沢があります。
総苞片花びらの色は、生長するにつれてクリーム色になるのも特徴です。また、この品種は、果実が大きく、秋には甘くておいしい実を楽しむことができます。通常の山法師とは一風趣を異にした山法師です。
⑥ベニバナヤマボウシ
こちらの品種は、総苞片の花色に特徴があります。その名のとおり、薄いピンク色の花です。苗によっては、花びらの縁もピンク色に見えるものもあり、とても美しい姿となります。
この品種の山法師は、涼し気でさわやかな印象をそのままに、ピンク色のかわいらしい印象も加わり、明るい庭木となること間違いなしです。かわいらしい庭づくりを目指していらっしゃる方におすすめとなります。
⑦ホンコンエンシス
この品種は、半常緑の山法師と呼ばれる品種です。中でもホンコンエンシス月光という品種は、開花時期が通常よりも遅く、6月半ばごろに花が咲きます。
花付きのいい品種で、とても印象的な庭木となります。花色は通常の山法師と同じく白色ですが、半常緑の庭木となりますので、家庭のシンボルツリーとしても人気が高いです。
⑧ミルキーウェイ
こちらは、総苞片の花色がクリーム色から白色となる山法師です。花付きがよく、大きな花を付けることでも知られています。ほかの山法師と比べると葉が厚いという特徴があり、日差しに強い品種です。
総苞片の花びらが大きい分、総苞片の印象が強く、鑑賞するのも楽しい庭木となります。ゆっくりと花びらの色の変化を楽しみたい方におすすめです。
山法師で涼し気な庭を演出しよう
山法師は、真夏の暑い時期に涼し気にその姿を見せてくれる庭木です。日当たりがよく、風通しの場所で、夏のころに手裏剣のような姿の花を楽しみたい方、秋には甘くておいしい実をいただきたい方は、ぜひ山法師を育ててみてはいかがでしょうか。
育て方はシンプルで、毎日、しっかりと管理していくことで、1年中、元気よく育っていきます。ガーデニング初心者の方も気軽にはじめることが可能です。
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