オリパラのライフル射撃は人気スポーツ!
オリンピックにおける射撃競技の歴史は意外と古く、1896年の第1回近代オリンピック・アテネ大会では、既に男子25mラピッドファイアーピストルと男子50mピストル競技に加え、現在では行われていない数種目の射撃が行われていた歴史があります。
またクレー射撃の競技は、1900年の第2回パリ大会から行われるようになり、1968年のメキシコシティ大会からは女子の射撃競技も加わるようになりました。
ライフル射撃は参加国が多い!
ライフル射撃は近世に発明された銃を使うスポーツのため、オリンピックでは陸上競技に次いで参加する国が多く、各国にメダル獲得のチャンスがある人気競技です。さらにパラリンピックでも射撃競技は行われており、オリンピックに比べ競技種目はやや少なくなっていますが、車椅子で的を狙いライフル射撃をする白熱した競技を展開しています。
今回はオリ・パラにおけるライフル射撃の競技種目やルール、競技で使用する用具、ルール改正点などに関してご紹介していきます。
オリパラのライフル射撃競技の種類
オリパラ大会で行われる射撃競技は、的を狙って正確性を競いますが、固定された標的を撃つ「ライフル射撃」と動く標的を撃つ「クレー射撃」の大きく2種類に分けられており、どちらもメンタルの強さが求められるスポーツです。
ライフル射撃は同心円が描かれた標的を狙撃しますが、メダルを争う最終段階では、的の1ミリ以下の差が勝負を左右する厳しい撃ち方となります。またクレー射撃は空中に放出された標的を撃つ競技ですが、タイミングと集中力が求められる競技です。
ライフル射撃競技で使用する用具
射撃靴
ライフル射撃では、高得点を出すために銃をできる限り固定し静止した状態におくことが望ましいとされ、そのため標的射撃独自の用品が採用されます。
「射撃靴」もその中の一つで、競技において通常の生活で使用している靴を履くこともルール上認められていますが、高得点をとる撃ち方のために足を地面にしっかり固定させる手段として射撃靴を履くことが多いです。
ライフル射撃用ジャケット・ズボン
ライフル射撃で着用するジャケットやズボンは標的射撃する際の姿勢をある程度固定し保持する重要な役目を持つ装具となっています。素材は主に厚手のキャンバス地が使用されており、それぞれ自立するほど固いのが特徴です。
ライフル射撃の正確な得点獲得を左右するので、形や素材の堅さ、厚みなどに関し、厳しいルールが制定され、事前の規定により検査が行われOKとなった後に競技に参加でき、競技後も、ルール上再検査がありNGとなった場合は競技が無効となります。
ライフル射撃用グローブ
ライフル射撃用のグローブは、標的射撃をする際に着用することがルール上許されており、重量が約4~5kgの銃を長い時間固定し保持する時に手に加わる銃の重さによる負担を軽減し、射撃の安定性と正確性をサポートする重要な役目があります。
ライフル射撃用スリング(固定紐)
「ライフル射撃用スリング」は、膝射または伏射でライフル射撃を行う時に使うことがルール上許されており、銃を支える腕とジャケットの上から伸ばしたスリングを銃に結んだ後に腕に巻くことにより、銃を固定させ正確な狙撃が行えるようになります。
ライフル射撃用バットプレート(肩あて)
「ライフル射撃用バットプレート」は、ルール上認められている銃床の端に嵌め込むゴムや金属製の肩あてです。個人によって肩幅や方の形状などが違っており、金属製のアイテムは銃を構えた時に銃床が肩に最もフィットできるように形が調整できるようになっています。
バットプレートにより銃が肩にフィットして固定できるので、安定した正確なライフル射撃が可能となり、長時間の狙撃にも耐えられる持久力が着くようになります。
ライフル射撃用標的
「ライフル射撃用標的」は、通常紙でできておりサイズなどは射撃の試合によって違い、ルール上同心円が描かれ中心が最高点の10点となります。ファイナル段階で標的射撃を行う際は、さらに細かく0.1点の数値まで算定されるのが一般的なルールです。
ライフル射撃用電子標的
「ライフル射撃用電子標的」はオリピックやパラリンピックでも採用されており、標的の媒体はゴム製や紙製となっていて、ライフル射撃の着弾点をセンサーが感知し、コンピュータにより標的射撃の着弾位置を計算し得点に換算します。
そしてその結果は選手の手元にある監的スコープに表示されるので、標的射撃の着弾点を確認する望遠鏡が不要となり、また自動集計により審査の省力化も図れます。さらに大画面表示により観客が競技状況を把握できる点も好評です。
ライフル射撃競技種目やルール
1.男/女10mエアライフル
「10mエアライフル」は、空気銃で10m先の的を立射で60発射撃し得点を競い合います。その後高得点8選手でファイナルが行われ、12発ずつの撃ち方により最少得点の8位の選手が抜けていき、続けて12発狙撃後7位の選手が順番で抜けていく勝ち残り戦で順位を決める競技です。
最後同点の場合はシュートオフを行い金・銀・銅を決めるルールです。この標的射撃は立射による安定しにくい態勢で集中して高得点を狙うという厳しい勝負が見どころとなっています。
2.男/女50mライフル3姿勢
「50mライフル3姿勢」は、50m先の標的を狙ってライフル射撃を行い得点を競います。3姿勢とは「立射・伏射・膝射(しっしゃ)」を指し、「立射」は立って銃を構え、他の支えは使用できないルールとなっており不安定な姿勢で高得点を狙う難易度の高い撃ち方です。
「伏射」は伏せて銃を構えるので、最も安定した姿勢であり、スリング(付帯紐)とライフル射撃用マットの使用がルール上認められています。
ライフル射撃のマラソン!
「膝射」は片足を膝立てしてその上に肘を置き、もう片方の足を折り曲げて座って構える安定した姿勢の撃ち方です。この3つの姿勢でそれぞれ40発ずつ合計120発を狙撃し得点を競い合うルールとなっています。
ちなみに50mの距離とは200人乗りのジェット機ほどの長さがあり、この距離から中心が約1cmの的を狙う撃ち方で、いかに高難度かが分かります。またこの射撃は3時間近く続くライフル射撃のマラソンとも言われ、長時間の集中力と忍耐力が求められます。
3.男/女10mエアピストル
「10mエアピストル」のルールは、立射で利き手にエアピストルを構え、10m先の標的に60発狙撃し得点を競う射撃競技です。標的は10点満点となっており60発の最高得点は600点となり、男女とも10発を1シリーズとして6シリーズ狙撃し、全部で60射の得点から順位を決めます。
この射撃競技は片手で長時間ピストルを構える耐久力と集中力が要求され、いかに高得点を撃つかが競技の見どころとなっており、パラリンピックでも実施競技になっています。
4.男子25mラピッドファイアピストル
この競技のルールは、立射の態勢で利き手に銃を持ち、25m先の標的に合計60の弾を撃ち得点を競います。文字通りピストルの早撃ちと正確性が求められる競技で、八秒以内に五射を2回、六秒以内に五射を2回、四秒以内に五射を2回の計三十射を二段階に分けて合計六十弾狙撃する競技です。
最終戦は上位6選手により4秒射で5発を射撃し、4回撃った後に最下位の選手が脱落していき、これを繰り返して金・銀・銅メダルの選手を決めます。
早さと正確性の狙撃!
最終的に2~3選手が同点の場合は4秒射のタイブレークシューティングを行いうルールとなっています。この射撃競技は二日に亘って行われ、選手がいかに二日目まで集中力を持続するかがポイントとなる標的射撃です。この競技はオリンピックとパラリンピックの両方で実施されます。
5.女子25mピストル
この射撃競技のルールは、立射の態勢で利き手に銃を持ち、25m先の標的に弾を撃ち合計得点を競います。競技の撃ち方は一回に五射撃ち、精密射撃を六回計30射、速射射撃を六回計30射の合計60射撃の得点を競い合い、同じ25mでも男子とはルール上撃ち方が異なる競技です。
精密と速射が求められる!
ファイナルは高得点8選手により速射射撃5弾を4回行い、最下位の選手が抜けていき、これを繰り返し金・銀・銅メダルの3選手を決め、最終の3選手が同得点の場合はプレーオフシューティングが行われます。
競技は前の段階では精密射撃、後の段階では速射射撃となり、精密と速射の両方の技術が求められ、双方の技術が優れた選手が最終的にメダリストになります。
6.男女ミックス10mエアライフル
この競技のルールは男女1人ずつで2名の選手でチームを編成し、競技時間30分以内に隣り合った射座で交互にライフル射撃を行い、男女それぞれ30発の計60発を撃ち、上位得点8チームが次のステップに進むルールです。
さらに同じ撃ち方でライフル射撃が行われ、最終的に上位2チームがゴールドマッチ、3/4位チームがブロンズマッチを行い金・銀・銅のメダリストを決め、同点の場合はルール上シュートオフが行われます。
比較的新しいライフル射撃競技!
この競技は、2018年のリオ大会から導入された新しい種目で、2020年東京オリンピックでも実施されました。パラリンピックではこの競技に替わり男女ミックス10mエアライフルの伏射・立射 ・伏射の競技が行われます。
7.男女ミックス10mエアピストル
この競技のルールは男女1人ずつで2名の選手でチームを編成し、男女共立射でエアピストルを使用して10m先の標的を撃ち、パート1では男女それぞれ30発ずつ合計60発射撃し、上位8チームがパート2に進む競技です。
パート2では男女それぞれ20発ずつ合計40発を撃って上位高得点4チームを決め、その後、1位と2位がゴールドメダルマッチ、3位と4位でブロンズマッチを行い金・銀・銅メダルのチームを決めます。
8.男/女クレー射撃トラップ
クレー射撃トラップの競技では選手が射撃する射台は横一線に5か所あり、クレーは15m先の発射台から定まらない方向に発射されます。選手は射台を順に移動しながら散弾銃で1ラウンド合計25のクレーを射撃するのがルールです。
オリンピックでは予選を数ラウンド行い、決勝は上位者により1ラウンドの射撃で金・銀・銅メダルの勝利選手を決めるルールです。予選ラウンドでは飛び出すクレーに対して2発まで撃てますが、決勝ラウンドでは1発のみの射撃となります。
9.男/女クレー射撃スキート
クレー射撃スキートのルールは、クレーの発射台が35m先に左右2か所あり、両方もしくは片方から選手の合図により放出されるクレーを半円形に設置された8か所の射撃ゾーンから一選手ずつライフル散弾銃で射撃していきます。
クレーは一定方向へ放出されますので標的の飛行線がトラップに比べ読みやすいとされ、ルール上合計25個のクレーのライフル射撃を1ラウンドとして予選で数ラウンドを行い、上位選手で決勝の1ラウンドを行い金・銀・銅メダルの選手を決めます。
10.混合トラップ
この競技は、男女1選手ずつがチームを組んで横一線の射台に隣同士に並び15m先の発射台からランダムに放出されるクレーをライフル散弾銃で撃っていき、一射ごとに5か所の射台を移動していくルールの競技です。
1ラウンド合計25のクレーを撃っていき、ルール上予選は数ラウンドを行い、ファイナルは上位チーム選手により金・銀・銅メダルの決定のライフル射撃を行います。
ライフル射撃競技のルール改正
ライフル射撃の全般的なルールや改正は国際射撃連盟(ISSF:International Shooting Sport Federation)により行われています。この連盟には日本をはじめ世界で154か国が加盟し、当連盟で制定したルールや改正に関して準拠しているのが現状です。ルール―改正は適宜行われており、最近の改正の主な点に関して下記にご紹介します。
全般的なルール改正
全般的なルール改正として、「安全フラグ」の項目が制定され、銃に弾が装填されていないことを示す安全フラッグを使用するルールが追加改正されました。また「射撃場のスコアボードのルール」として射撃場のメインスコア掲示板に加えて、予選射撃場でもスタートリストや結果の掲示の為のスコアボードを設置するルールが改正となります。
さらに「審判員の身分証明ルール」として、審判員は審判作業中にISSF指定の「赤い審判員ベスト」を着用するルールが追加されました。
服装、用品、テスト関連のルール改正
用品のルール改正として「靴底の柔軟性テスト」の項目がルールに明記され、技術委員会は計測装置により承認することになります。また「靴底の輪郭のルール」として、靴底は靴本体の外縁に沿っていなければならず、靴の外側から5mmを超えて伸ばすことはできないとルールが改正されました。
銃に関するルール
「銃は1丁とするルール」として予選から決勝まで同じライフルを使わなければならないことになりますが、付属品の交換は許されます。また「銃の故障のルール」ではライフル射撃競技やピストル競技において、銃器が故障した際には審判員の許可を得て時間内に修理ができるルールとなりました。
ライフル射撃用ジャケットとズボンのルール
新ルールでは、ライフル射撃で着用するジャケットとズボンは、堅さの測定で3mmを下回ることは認められないルールとなります。またジャケットとズボンの厚さは、測定で2.5mmを上回ることは認められないことになりました。
さらにライフル射撃用ジャケットのルールとしては、選手は着用時に両腕を完全に伸ばすことができることが条件となります。
ライフル射撃用パッドのルール
ライフル射撃で行う膝射の際には、かかとの上に柔軟で圧縮できる素材でできた最大20×20cmのパッドを使用できるルールが改正されました。また「ライフル射撃用ズボンのパッド」として両膝の補強やパッドは以前のように認められますが、お尻の部分の補強やパッドは認められないルール改正となります。
ライフル射撃制限時間の短縮のルール
電子標的が装備された射撃場での制限時間のルールは、男子10mエアライフル射撃では75分となり女子10mエアライフル射撃では50分となりました。また男/女50mライフル射撃3姿勢では、姿勢変更の時間も含めて合計2時間45分というルール改正となります。
ライフル射撃のルールを知って試合を楽しもう!
「オリパラでも開催されるスポーツ!ライフル射撃競技のルールなどをご紹介!」はいかがでしたでしょうか?ライフル射撃は第1回のオリンピックアテネ大会から実施されている伝統的な競技だったのですね。ライフル射撃のルールも複雑でさまざまなことが決められており、さらにライフル射撃競技も集中力と持続性が求められ、見ていても魅力あるスポーツとなっています。次回パリ開催のオリピック、パラリンピックのライフル射撃競技をさらに楽しみましょう。
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