宿り木はヨーロッパでは生命力の象徴
ビャクダン科ヤドリギ属の宿り木は、樹木の枝に球形のかたまりを付ける半寄生の常緑植物です。30センチほどから大きなものでは1メートルまでになるものもあります。
宿り木は寄生植物ですが、養分を完全に他の樹木から採るわけではなく、自分でも光合成を行うため"半寄生植物"とされています。西洋では生命力の象徴としてクリスマスの飾りつけなどに利用されてきました。最近は日本でもアレンジメントフラワーでの人気があります。(この記事は2021年7月30日時点の情報です)
宿り木に対する日本とヨーロッパの捉え方の違い
ヨーロッパで宿り木は、幸運を呼ぶ神聖な樹木として大切にされてきました。特に珍重されている宿り木は、神聖視されているブナ科コナラ属のオークに生えるものです。
このようにヨーロッパでは特別な存在ですが、日本ではこのような話は聞きません。むしろ寄生するパラサイト植物として軽く見られてきた傾向も否定できないのではないでしょうか。ヨーロッパと日本で文化が変われば意識も変わる興味深い事例ですね。
宿り木の特徴は粘り気のある果実にあり
鳥が枝に排泄することで芽が生える
一般的な植物は、鳥が食べても消化しきれない果実が排泄によって地面に芽を生やして成長していきます。しかし粘り気の強い宿り木の果実は排泄するときも粘り気が残り、地面に落ちずに枝に付着します。枝に付いたまま芽を生やし、成長して大きくなるのです。
また鳥はお尻に付いた粘り気のある排泄物を枝にこすりつけて取るともいわれています。そのときに排泄物が枝に付いたままになり、宿り木が樹木に生えるという仕組みなのです。
宿り木の果実を好む鳥の種類
粘り気の強い宿り木の果実が好きな鳥は、日本ではキレンジャクやヒレンジャクが知られています。共にスズメ目レンジャク科で、全長18~19.5センチほどの赤みのある灰褐色をした小鳥です。目の周りを黒いシュッとしたラインが入り、強そうな雰囲気に見えます。
2種の見分け方は、冠羽の形や切羽の先端の色、突起物の有無などです。共に冬鳥ですがキレンジャクは中部以北に多く、ヒレンジャクは西日本で多く目撃されています。
日本の宿り木はヨーロッパの宿り木の亜種
ヨーロッパの宿り木「セイヨウヤドリギ」は、ヨーロッパ西部や南部アジアが原産です。亜種は4種類あるといわれており、さらに2つ加えられることもあります。
本種と亜種の大きな違いは、果実の色や寄生木の種類、葉の形や大きさなどです。セイヨウヤドリギの果実の色は、赤やオレンジ、黄色や白などと種類が多いといわれています。すべての種の共通点は皮のような厚さの葉で、色は表も裏も濃い緑色なのが特徴です。
日本の宿り木の花と果実
日本の宿り木はセイヨウヤドリギの亜種となり、寄生木は落葉広葉樹のみで、エノキやクリノキ、ヤナギ類、ブナ、ミズナラ、クワ、サクラ、アカシデなどです。開花は2~4月となり、直径2ミリメートルほどの淡黄色の目立たない花を咲かせます。
11月頃には、直径7ミリメートルほどの赤や薄い黄色の小さい果実を付けます。クリスマスのアレンジメントで利用されるのは、この可愛らしい果実が付いたものです。
宿り木を観察するのによい季節
宿り木は、落葉広葉樹に半寄生する多年生の常緑植物のため、寄生木が落葉する季節に見つけやすくなります。たいていの場合は一本の樹木に数個から十数個もの宿り木が寄生し、多い時には100以上もの観察例もあるくらいです。
あまりにもたくさんの宿り木に寄生されると枯れることもありますが、ほとんどは共存していると考えられています。冬や春先などの落葉している季節はぜひチェックしてみましょう。
カラスの巣や病気と間違えないように!
宿り木と間違えやすいものに、「カラスの巣」があげられます。カラスの巣は枝の股の部分にあるので、慣れてくると見分けられることでしょう。もう一つは「てんぐ巣病」となり、秩序的に丸く生える宿り木とは異なって無秩序に分枝しています。
宿り木の花言葉①忍耐・困難に打ち克つ
宿り木の花言葉は、まず「忍耐」「困難に打ち克つ」があげられます。花言葉の「忍耐」は、どんな環境でも耐え忍んで踏ん張るという不屈の精神を表現しているといえるでしょう。もうひとつの花言葉「困難に打ち克つ」は、忍耐をし続けた結果の勝利といえます。
「忍耐」という過程があったことで「困難に打ち克てた」という結果を示している花言葉です。地味な花言葉ですが、勇気をもらえる花言葉ではないでしょうか。
花言葉の由来①
宿り木の花言葉「忍耐」や「困難に打ち克つ」は、他の樹木から養分をもらいながら雪が降るような寒い季節でも枯れることなく、青々と常緑のままであることが由来のようです。
このような点から宿り木は、「活力」や「不死」などの象徴として考えられてきたといえます。花言葉は、たくましく生命力にあふれた宿り木の性質を示しているといえるでしょう。
花言葉の由来②
花言葉の由来は、土ではなくて枝という普通とは異なる環境でも育つことにもあると考えられます。枝という特殊な環境でもたくましく生きる性質も花言葉の由来といえるでしょう。
半分樹木から養分をもらい半分は自ら光合成を行うという半寄生木である宿り木の特徴も、花言葉にふさわしい「肉体の再生」「不死」「活力」を意味していると考えられます。
花言葉の由来③
宿り木は、キレンジャクやヒレンジャクなどの小鳥が果実を食べ、その糞が樹木の枝にくっついて着生することで生育します。一本の樹木に多くの宿り木が付いているように見えますが、実は樹木の枝に付着する確率は高くないそうです。
低確率にも関わらず一度他の樹木に寄生さえすればしっかり生き抜く姿がすばらしいですね。宿り木の寄生木は神様が宿る神聖な樹木とされていますが、このような根拠は花言葉の由来として納得できます。
宿り木の花言葉②キスしてください
宿り木の花言葉には、「キスしてください」というロマンチックな意味合いのものもあります。昔からヨーロッパでは、クリスマスに宿り木の下で男性が女性にキスをするという風習があるそうです。特に北欧で重要な意味を持っている宿り木は神話で幸運をもたらす植物のため、宿り木の小枝を吊るした下を通ると幸せになれると考えられてきました。
ちなみに恋人の女性がキスを拒んでしまうと、翌年は結婚できなくなるといわれています。
花言葉の由来
花言葉「キスしてください」の由来は、幸せになりたいという男女の想いと周囲の二人を祝福する気持ちが根拠になっているといえそうです。結婚は本人だけではなく、家族にとってもさらには国にとっても祝福すべきことのため、プロポーズの証としてキスが許されていると考えられるのではないでしょうか。
先に挙げた花言葉「忍耐」や「困難に打ち克つ」とはまた異なる花言葉に、日本とヨーロッパの文化の違いが感じられます。
宿り木のおすすめのアレンジメント
宿り木が手に入ったら、花材としてぜひクリスマス用のプレゼントにしてみてはいかがでしょうか。宿り木は枝が放射状に伸びているため、他の花材とのミックスはもちろんシンプルな飾りでも華やかに見えます。
宿り木を花材として活用した素敵なアレンジメントをご紹介するので、ぜひご参考にしてください。
①針葉樹をミックスしたスワッグ
こちらはマツや松ぼっくり、ミモザのドライフラワーなども花材に活用した素敵なスワッグです。宿り木を中心部に入れることで一段と華やかさが増しています。赤や黄色の果実がクリスマスにふさわしく、収穫の喜びを表しているようですね。
②宿り木とマツのリース
こちらはマツをメインの花材にし、少しだけ宿り木を配置したアレンジメントです。少量の宿り木にもかかわらず、松の上で飛び跳ねているようで、まさに生命力にあふれた素敵な仕上がりになっています。ピンクの小花がアクセントカラーになっており、とても美しいリースです。
③宿り木だけのシンプルリース
こちらは宿り木だけのシンプルなリースです。果実は赤と黄色の2色入っているため、とても賑やかな印象になっています。
作り方はいろいろありますが、簡単なのはリースの土台に宿り木の枝をワイヤーやグルーガンで付け、さらに宿り木の果実を配置していくという方法です。全体のバランスを見ながら果実が付いている枝を配置します。
④ベルを加えたアレンジメント
こちらはカットした数本の宿り木の枝に、小さなベルを付けたアレンジメントです。ベルの色はエイジングを感じさせる落ち着いたさび色で、花材としての宿り木の雰囲気によく合っています。ドアに掛けておくと可愛い音が楽しめそうですね。
⑤宿り木の葉の変形アレンジメント
こちらは少し珍しいけど、とても素敵なアレンジメントです。花材としての宿り木の葉をワイヤーで刺し、ネックレスのようにしてあります。宿り木の淡黄色の果実を効果的に配置してあるため、まるでパールのようです。
⑥花瓶に挿すだけの簡単アレンジメント
こちらはもっとシンプルに花瓶に宿り木を挿しただけのアレンジメントです。放射状に伸びる宿り木の枝ぶりがにぎやかに見え、これだけでもお部屋を楽しくしてくれるインテリアになっています。
アレンジとして他の花材をうまく組み合わせると、また違う雰囲気になっておもしろそうです。
花言葉を添えて宿り木をクリスマスに贈ろう
宿り木の花言葉は2つあり、「忍耐」や「困難に打ち克つ」と「キスしてください」となっています。前者の花言葉は頑張っている人に向けたメッセージに使えるため、家族を始め大切な友人におすすめです。後者の花言葉は恋人や配偶者へのプレゼントにすると喜ばれることでしょう。
可愛い実を付ける宿り木は、リースなどのアレンジメントはもちろん、そのままでも充分に素敵です。いろいろ工夫して贈ってみてはいかがでしょうか。
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出典:ライター撮影