カキツバタ(杜若)とはこんな花!
カキツバタ(杜若)とは、水辺で青紫の花を付けて背を伸ばす姿が美しい、日本原産のアヤメ科アヤメ属の植物です。江戸時代前期に多くの園芸品種が観賞用に作られて親しまれてきました。
しかし時代が進むとあやめ(菖蒲)の改良種も出回り、「いずれが あやめか かきつばた」の慣用句が出るほどに人気を二分するようになったのです。一見似ているカキツバタとアヤメですが、細かい違いがあるので植物図鑑もチェックしておきましょう!(この記事は2021年6月26日時点の情報です)
カキツバタの基本情報
園芸分類 | 草花・水生植物 |
科・属 | アヤメ科アヤメ属 |
形態 | 多年草 |
原産地 | 日本・朝鮮半島から東イベリア |
草丈 | 50~80㎝ |
開花時期 | 5月~6月中旬・秋咲きの品種もあり |
花色 | 青・紫・白・複色 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
栽培難易度 | やや簡単 |
5月~6月に咲くカキツバタを題材にした有名な芸術作品は、尾形光琳の屏風絵『燕子花』と『八つ橋』があげられます。いずれも深い青色が印象的な作品で、非常に日本的といえるのではないでしょうか。清涼感がある点と水辺で咲く植物という点から、蒸し暑い夏はずっと眺めていたくなります。
耐寒性も耐暑性もある植物なため、水の多い環境にすればカキツバタの育て方は難しくありません。ぜひ挑戦してみましょう。
カキツバタの漢字は「杜若」と「燕子花」がある
現在のカキツバタの漢字表記は「杜若」とされていますが、本来「杜若」はツユクサ科の″ヤブミョウガ″に当てられていたもので、混同されてしまったのです。
もう一つの漢字表記である「燕子花」は、つばめ(燕)が飛ぶ姿に似ていることから江戸時代に当てられた漢字となります。現在の漢字表記は、混同された「杜若」が一般的です。
カキツバタとアヤメの見分け方
カキツバタの特徴
- カキツバタ(杜若)の生育環境……浅い水辺
- カキツバタ(杜若)の花……………大きさは直径12㎝・花弁の付け根に白い剣形の模様
- カキツバタ(杜若)の葉……………幅広でやわらかい・葉脈は目立たたない
カキツバタには約50種類の園芸品種があり、外花被(外側に付いている花弁)の枚数によって三英花(さんえいか)と六英花に分けられます。花弁の幅は比較的狭くて先端がとがっていることからワイルドな印象を受けます。葉の白い模様も特徴的です。葉の幅は広く、葉脈が目立たないのも特徴的です。
これらの特徴はアヤメとは異なるため、アヤメとの簡単な見分け方は「生育環境」の他に「花の模様」と「葉の大きさや幅」となります。
カキツバタの生育環境
カキツバタの生育環境は水辺となり、池の縁などにスイレンと共に観賞できます。暑い日が続くと、水辺に咲くカキツバタがよりすがすがしく見えてくるのではいでしょうか。この水辺を好む性質は、陸地を好むアヤメとは正反対となります。
カキツバタの色:紫花系
カキツバタには50種類ほどの園芸品種がありますが、花色を大別すると「紫花系」と「白色系」に分かれます。カキツバタといえば多くは紫花系となりますが、紫花系には青みが強い青紫系と赤みの強い紅紫系があるのです。
それぞれに濃淡があるので、さまざまな品種が栽培されている場所であれば、カキツバタの色の微妙な違いをチェックしてみましょう。
カキツバタの色:白色系
白色系のカキツバタは紫花系とはまた趣が変わり、併せて栽培する人も多いようです。白色系には白一色以外に「吹掛絞り」という色模様が加わることで、カキツバタ独特の優美な世界が繰り広げられるといえるでしょう。
「吹掛絞り」は純白地の花弁に紫色の小さな斑点が入っており、代表品種には唐衣があります。紫花系と白色系のカキツバタ、それぞれの趣を楽しんでください。
カキツバタの花弁の模様
カキツバタを最も特徴づけているのは、外花被片(花弁)の付け根に入っている白い模様となります。アヤメやハナショウブの模様は白ではないので、誰もが見分けやすい特徴なのではないでしょうか。
白い模様の形は、剣(つるぎ)のように先端に行くほどに細くなります。″目型″模様という人もおり、切れ長の眼の美人を思い起こさせるかもしれません。模様の色は白一色なため、実に清涼感がある青紫色と白のコンビネーションです。
アヤメの特徴
- アヤメの生育環境………乾燥した草地
- アヤメの花………………大きさは直径8㎝・外花被片(花弁)の付け根に網目模様
- アヤメの葉………………幅が細くて固い・葉脈はほとんど目立たない
アヤメはカキツバタと同じくアヤメ科アヤメ属(文目)ですが、花の色はカキツバタとやや異なり、紫色か白色となります。さらに大きなカキツバタとの違いは、外花被片(花弁)に網目の模様があることです。
その付け根部分は白と黄色となり、この2点はカキツバタとの違いをよく示しているといえます。他にもアヤメとカキツバタには異なる特徴があり、アヤメには垂れている大きな外花被片と直立する内花被片が3枚づつあることです。
葉の幅が細くて陸地で生育
カキツバタとアヤメを区別する別な方法は、葉の幅にもあります。カキツバタの葉の幅は広めですが、アヤメは1センチメートルほど細いのです。葉の主脈もほとんど目立ちません。
さらにアヤメの生育環境は水辺ではなく、陸地となります。そのため、どこに生えているかを確認するだけでカキツバタと見分けられることでしょう。
ショウブの特徴もご紹介!
- ハナショウブの生育環境……水辺に近いところから、乾いた草地と幅広い
- ハナショウブの花……………大きさは直径12~30㎝・外花被片(花弁)の付け根に黄色い剣の形の模様
- ハナショウブの葉……………幅の広いものから狭いものまでさまざま。葉の主脈はくっきりと表の中央に一本、裏に二本
ショウブ(菖蒲)とはアヤメ科アヤメ属のノハナショウブを改良した品種です。「ショウブ(菖蒲)」と呼ばれて親しまれていますが正式名称は「ハナショウブ(花菖蒲)」といい、外見はカキツバタとアヤメの両方に似ています。
花弁の付け根に網目のない黄色い筋が入る点が最大の違いです。葉はアヤメのように細いものもあれば、カキツバタのように太めのものもあります。葉の主脈はアヤメとカキツバタとは異なり、はっきりしているのです。
生育環境も広い
ハナショウブの生育環境は、カキツバタのような水辺からアヤメのような草地までと幅広いのです。カキツバタやアヤメに比べると環境適応力は高いといえます。ただし初夏を代表する植物なので、草地よりも水辺に近い環境に観賞したほうが美しくみえるのではないでしょうか。
カキツバタの育て方
カキツバタの好きな栽培環境
カキツバタは、乾燥した草地で育つアヤメとは異なり、水辺を好む植物です。この点に気を付ければカキツバタの育て方はとても簡単で、ひと口に言えば鉢ごと水につけて置くだけといえます。
そのためカキツバタは「忙しくて毎日の水やりができない」という人におすすめの植物といえるのではないでしょうか。青い色に合う陶器やガラスなどの好みの綺麗な器で育てると、モチベーションもぐんと上がりますよ。
日当たりも好む
カキツバタは水辺が好きな植物ですが、スイレンと同じように日当たりのよい場所も好むので、暗い場所には置かないようにします。しかし鉢で育てる場合は、夏の日差しで水が温まらないように気を付けてください。午後の強い西日が当たる部屋で管理するときは、直射日光を避けて移動しましょう。
カキツバタの用土
カキツバタは日本原産の植物のため、基本的にはどのような用土でも栽培できます。市販の草花用の培養土であれば、初心者でもカキツバタを栽培できるので安心です。植え付けるときの肥料は必要ないので、用土に混ぜないようにしてください。肥料は、初めは少なめにしてあとから与えます。
カキツバタの植え付け方
カキツバタを入れる鉢の7割ほどまで赤土を入れ、それから水を土の高さまで入れてカキツバタとよく馴染ませます。赤土がやわらかくなったら中央に穴を掘ってカキツバタを植えます。
カキツバタの根元がぐらつかないように、しっかり土を押さえながら植えてください。水は赤土から10センチメートルほど上になるように給水します。カキツバタが沈み込まないように静かに給水しましょう。
水の管理方法
カキツバタは水辺に咲く植物なので、鉢の土の表面だけではなく株元も乾燥しないように給水してください。4月~9月の成長期は水をぐんぐん吸うので、水が減っていないか注意します。
気温が高くなる夏は、水温が高くならないように気を付けます。水替えは月に一度が目安となりますが、水温が高いときの他に苔や藻が侵入したときもすぐに取り替えてください。
冬の水やり
冬は水が少なくても湿っていれば問題ありません。ただし水が汚れていたらすぐに取り替えてください。外での管理は気温が低くなると表面が凍ってしまいますが、表面だけしばれているのであれば心配しなくてもよいです。
肥料の与え方
肥料は、涼しくなってきた9月~10月に緩効性の固形肥料を株元の土に埋めて与えます。スイレンなどの水生植物に施す肥料でもよいです。注意点として根から離して肥料を与えなくてはいけません。直接根に化成肥料が当たってしまうと、肥料の刺激が強く弱ってしまいます。
野生本来は、放置しておいても丈夫に育つ植物ですが、園芸品種の場合は手を掛けたほうがよい苗に育つのです。
カキツバタの増やし方
カキツバタの増やし方は、花が終わった後に株分けをし、株の大きさよりも少し小さめのビニールポットに一芽ずつ植えこんでください。9月に、少し大きめのビニールポットに植え替えますが、土中に遅効性の固形肥料を混ぜて置きましょう。
葉が丈夫に育ち、翌年は美しい花を期待できるのです。育て方をマスターしてたくさん増やし、尾形光琳の作品の世界を作り上げるのも素敵ですね。
夏はカキツバタを愛でて涼しく!
カキツバタとアヤメの見分け方は「生育環境」「花の模様」「葉の広さ」の3つです。カキツバタの生育環境は″水辺″となり、陸地のように乾燥した土壌を好むのはアヤメとなります。
カキツバタの花の付け根には白い剣のような模様が入りますが、アヤメは黄色い網目模様が入っています。葉は、カキツバタは広くて主脈が目立たずに固め、反対にアヤメは細めです。細かい違いですが雑学として覚えて置けば色々役に立ちそうですね。
花言葉が気になる人はこちらもチェック!
涼し気な印象のカキツバタと、ぱっと見はよく似ているアヤメの花言葉もチェックしておきましょう。日本原産の美しいカキツバタとアヤメは、花言葉もやはり優美なのです。

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出典:photo-ac.com