はじめに:飼育ケースでコクワガタを産卵させる
コクワガタを上手に産卵させ増やそう
甲虫類の中では小さめなサイズでかわいらしいコクワガタ。飼育をしているのならメスに産卵させて増やしてみたいと思う方も少なくないでしょう。自分の家で生まれたコクワガタは野生で捕まえてきたものとは思い入れが違います。
コクワガタを家で産卵させて育てるのにはどのような産卵セットを作ればよいのでしょうか。またコクワガタのメスには産卵の兆候があるのか?その謎にも迫っていきます。
コクワガタメスの見分けと産卵セットの作り方
コクワガタに限らず虫を産卵させるなら成熟した大人の個体(オス・メスのつがい)を手に入れなくてはいけません。野生で捕まえてきたメスならば、すでに交尾済みで産卵してくれるものもあるようです。
今回はコクワガタを産卵させるための飼育ケースの作り方や温度などの環境づくり・まず手に入れたい成熟したメスの産卵兆候や見分け方などにも触れつつご紹介します。
産卵させる前に知りたいコクワガタについて
産卵セットの作り方の前にまずはコクワガタという甲虫類とはどのようなものなのか、オスとメスの見分け方・よくいる木の種類や孵化して成虫になってから子孫を残せるまで成熟する期間の目安などからご紹介していきましょう。
コクワガタの基本情報
科・属 | クワガタムシ科オオクワガタ属コクワガタ亜属 |
学名 | Dorcus (Macrodorcus) rectus |
分布 | 日本を含むアジア |
好む木の種類 | クヌギ・コナラ |
日本の雑木林などでも見つけやすい甲虫類
コクワガタは平地性という性質を持っているため、人が生活する里に近い雑木林などで簡単に見つけることができるので、カブトムシやクワガタなどの甲虫類の中でも個体数が多く発見しやすい比較的初心者向けのクワガタの種類として飼育数も多い虫です。
活動期間は秋9月から遅くて10月くらいまで。それ以降は(幼虫も含め)木の中で越冬するので越冬させるならば飼育ケースにはマットだけでなく木材の設置は必至です。
コクワガタの特徴やメスの見た目
コクワガタの姿はサイズはオス約17-55mmメス約22-33mm。ここからコクワガタという名前ですがそれほど小さくないのがおわかりいただけますね。色は黒っぽく体の厚みは平たいのが特徴。
オスには発達した大あごがあって、全長の中間よりも少し先くらいで2つに分かれて小さな突起が出ます。以前ヒメクワガタと呼ばれていた大あごの突起のないクワガタムシの種類は、小型のコクワガタの突起が消滅した個体であったことがわかっています。
オスとメスの見た目の違いと兆候
オスの見た目に関しては前述のとおり。メスはその特徴的な大あごのサイズが小さく、突起の数や位置バランスはオスとほぼ同様です。体には光沢がありながらもオスには目立って見えることのない縦ストライプが見られるのが特徴となっています。
産卵の兆候はないといわれている
コクワガタのメスの個体を外見で見ている限り、産卵する兆候というのは見つけられません。自宅で羽化したものであればエサを食べ始めてからの経過時間で成熟度を判断するのが一般的な産卵するメスの見分け方。
野生で捕まえてきたものに関しては産卵時期になったのでペアリングの相手を探してうろうろしはじめますので、こちらに関してはほぼ産卵時期のメスと見てよいでしょう。
コクワガタの成熟期間は生後どのくらいか
まずは一般的なコクワガタのサイクルからご説明しますが、産卵された卵からの孵化・幼虫の期間・蛹を経て成虫になるまで野生では1年とされています。今年自然下で産卵された卵は、地中の埋もれた木の中で蛹まで成長し翌年の夏ころに地上に出てくるということです。
成虫になって産卵できるまでの期間
多くの動物がそうであるように、体つきが大人と同じような姿になったからといってすぐに子孫が増やせるわけではありません。一生のサイクルが短いコクワガタにおいてもまだ未成熟な期間というのがあって、それは成虫として地上に出てから約4週間-3ヶ月程度といわれています。
特に目立った成熟の兆候はないので成虫になってからの期間で判断しましょう。自宅で羽化させたコクワガタのメス・オスはこの期間以内では、つがいにしても産卵は望めないので、ひとつのケースで一緒に飼うのにはご注意ください。
1頭のコクワガタのメスが産卵する数
自宅で産卵させるのに気になるのは一度にどのくらいの卵が生まれるのかではありませんか?多ければ多いほどやりがいもあり、達成感もあります。毎年産卵させている方は前年よりも多いほうが嬉しさも感じるでしょう。
一般的にいわれているコクワガタのメス1頭の産卵個数は20-30個と多少開きがあります。幼虫の数が20体以下であれば産卵セットの環境が悪かった(特に温度)のかもしれませんね。
幼虫の数で産卵や孵化に適した環境がわかる
コクワガタを含むクワガタムシの産卵に適した時期は9月上旬までといわれていますが、地域やその年の気候によっては特別保温などせずとも月末になっても十分な数の孵化が確認できることもあります。
毎年コクワガタの産卵数(幼虫の数)をチェックすることでお住まいの地域の適期もはっきりしてくるでしょう。30体前後の幼虫数が確認できれば、お住いの地域ではそれが一番コクワガタの産卵に適した時期といえます。
飼育ケースでのコクワガタを産卵させる方法
コクワガタ産卵に必要なもの
コクワガタを産卵させるために必要なケースのサイズは縦横15x25cm以上で深さが15cm以上あるもの。コクワガタはマットには産卵しないので産卵のための木は必須です。しかしマットが不用かというとマットに埋まった木で成長するためマットも用意してください。
この中でコクワガタを飼育するわけではないので昆虫ゼリーなどのエサは基本的に不用。ペアリングもこの中で行う場合は適宜成虫が生活できる環境を地上部に整えてあげましょう。
コクワガタ産卵は秋9月までに
コクワガタを家で産卵させるのに成虫になって3ヶ月ほどの若い個体でも不可能ではありませんが、理想的なのは越冬させて翌年の春から秋です。
それ以降になると親の方が繁殖をせず越冬準備をはじめてしまうため適していないため、越冬後の方がチャンス期間が長く何度かチャレンジできるという理由でおすすめされています。
コクワガタの産卵に適した環境は
コクワガタはペアリングが成功したあと産卵します。通常コクワガタが飼育できる環境であれば特に産卵用の環境を用意してあげる必要はありません。
ただし産卵後の卵の成長に関しては外気温度に成長度合いが左右されますので、早く孵化させたいという場合は気温を合わせてあげる必要があるでしょう。産卵幼虫飼育セットの管理温度は可能であれば25度以上といわれています。
コクワガタ産卵の準備1.
まずは産卵セットの作り方から。産卵セットに必要なのは土台となるマット(品質はこだわりません)。下から5cm程度固めに圧縮して設置します。その上に産卵木を置くのですがこれは6時間から半日程度水にひたしたものを使用します。
木材の種類はコナラやクヌギが適していますがコクワガタはあまり産卵木にこだわらない甲虫と言われていますので、手に入りやすいものから試してみましょう。木の皮は剥ぐ人と剥がない人がいます。剥ぐと水に浸ける時間が短縮できるためです。
マットに木を埋める
水に十分漬けた産卵木は取り出して先程の硬くならしたマットの上に置き、その産卵木を埋めるようにふんわりとマットを設置します。産卵木は上部が少し地上から見える程度にセットするのがおすすめ。
メスがマットの中に潜るため産卵木のまわりのマットは硬くならしません。ペアリング期間との兼ね合いですが、メスを入れたら成虫のエサ用の昆虫ゼリーもここに設置してあげます。
コクワガタ産卵の準備2.
自宅で産卵させるためにはペアリングと呼ばれるつがいで生活させる期間を設けてあげましょう。この期間は1週間から長くても10日。それ以上の期間は一緒においても無意味といわれています。
ペアリング期間が終わったらそれぞれ個体で飼育してのんびりと過ごさせてあげましょう。メスは産卵セットの中に移動します。ペアリング期間と同時進行で産卵セットを作る作業を進めて用意しておくとよいですね。
コクワガタ産卵の方法
ペアリング期間が終わったらメスのみ産卵セット内で飼育して4週間ほどその中で過ごしてもらいます。この期間が産卵の時期です。それが終了したらメスを通常の飼育ケースに戻してください。このとき絶対にやってはいけないのは、マットを掘り返すこと。
メスの姿が見えないときは夜になるまで待って地上に出てきたところを捕獲・移動させてください。
産卵期間後のコクワガタのメスの取り扱い
産卵セットの中で引き続きコクワガタのメスを飼育していけないというルールはありませんが、万が一メスが自分の生んだ卵を潰してしまうということもありえなくはありません。念の為メスは産卵期間が過ぎたら別のケースに移した方が無難です。
コクワガタ産卵後の割り出し方法
産卵後の卵の大部分は産卵木の中で幼虫になります。卵から幼虫になる期間はその時期によりますが温度が高い夏(7-8月)の場合は、産卵から約2週間。秋になって温度が低くなると4週間以上かかる個体もあります。
割り出しとは産卵木を割って中の幼虫を取り出し、幼虫の成長に向いているマットを入れた個室にうつしてあげる作業。産卵させた時の温度によって1-2ヶ月ほどたってからおこないましょう。
割り出し作業のやり方は慎重に丁寧に
産卵木の中は幼虫が成長するには栄養が足りません。また個体数が多いと成長にもばらつきが出てきて管理しにくいということもあるでしょう。割り出しは1匹1匹に生育のためによい環境を提供してあげて、できるだけ多くのコクワガタを手に入れる大事な作業です。
産卵木を割って幼虫を取り出すことから割り出しと呼ばれています。丁寧に作業をしないと幼虫を傷つけ潰してしまうことにもなるので、慎重に作業をすすめてください。
コクワガタの幼虫の割り出しのやり方
割り出しは産卵木を割るだけなのですが、無理にしておこなわないのがコツです。幼虫を傷つけて殺してしまっては元も子もありません。よく使われるのがマイナスドライバー。
軽く産卵木に差しててこの原理でやわらかな産卵木の深くまで差すことなく割ることが可能となっています。産卵木の種類やマットの水分によっては腐敗が進んで手で軽く割れるものもありますので、最初は道具は使わず手でやってみましょう。
割り出しは複数回おこなうのが一般的
1度めの割り出しをしたら多くの飼育者が産卵木を再びマットに埋めておきます。産卵時期や気温によってはまだ産卵されたけれど孵化していない個体がいる可能性があるためです。
1度めの割り出しから1ヶ月後2度めの割り出しをするのが一般的。慎重な方ならさらにその後埋めて、3度めの割り出しをされる場合もあります。
コクワガタ割り出し後のお世話
割り出しで取り出せたコクワガタの幼虫は個々にボトルなどに分けマットや菌糸で育てます。菌糸はマットよりも早く大きくなりますが、成長が早いぶん個体が小さい場合も少なくありません。
マット飼育は菌糸ボトルよりも多少時間がかかりますが、時間がかかる分大きくな個体になりやすいというのが飼育されている方の多くが感じられる違いといわれます。(個体差もあります)
小さなコクワガタはマット交換は1度
個々に移したコクワガタの幼虫はボトルの中で脱皮を繰り返し蛹になって羽化して出てきます。その間の期間は8-10ヶ月程度。体が小さなコクワガタはあまりマットも必要としないため、交換は春前に1度で十分といわれています。
まとめ:コクワガタのメスに産卵させよう
自宅でコクワガタを産卵させ増やす方法
コクワガタの産卵は春から秋までの期間でその産卵には温度が重要です。越冬に入る前の暖かな時期におこなうことで冬前までに割り出しもでき、翌年の楽しみとなってくれるでしょう。
コクワガタは幼虫でもとても小さなサイズ。割り出しに注意するだけでなく、産卵木の外にある卵も傷つけないよう神経を使って慎重に作業していきましょう。
コクワガタの産卵が気になる方はこちらもチェック
コクワガタは比較的クワガタの中でも産卵セットの作り方が簡単といわれています。暮らしーのではこのほかのクワガタ類についても購入価格や飼育方法など詳しく解説した記事をご用意していますので、こちらも是非みてくださいね。
ミヤマクワガタの価格は?販売や買取で気になる値段相場やその大きさを解説!
最近里山でもなかなか見られなくなったミヤマクワガタ。専門店や百貨店、ネット通販では人気の生物です。買取価格や販売価格の相場も70mmを超える...
オオクワガタとは?その種類や生息地などの生態から飼育方法まで解説!
日本最大のクワガタで、自然でもなかなか捕まえられない国産オオクワガタ、これからシーズン本番に向けてオオクワガタの生態、生息地、採集、飼育方法...
出典:https://photo-ac.com/