カブトムシはなぜシマトネリコに集まる
カブトムシがいる木シマトネリコ
シマトネリコは庭木としてよく使われる樹木で丈夫で簡単に育つため人気があり、ごくごくありふれたものです。最近このシマトネリコにカブトムシがたくさん集まってくるというのが話題になっています。
カブトムシの木といえばクヌギやコナラといった広葉樹で、シマトネリコというのは知らないという人がほとんどでしょう。そのためみんな不思議がって話題にしているのです。
シマトネリコにカブトムシが集まる理由紹介
なぜシマトネリコにカブトムシが集まってくるのかという疑問を解決しましょう。このシマトネリコになぜカブトムシが大量に集まるのか、その後カブトムシやシマトネリコにどのような影響・変化があらわれたのかを解説していきます。
カブトムシがあつまるシマトネリコとは
シマトネリコと聞くと少し変わった名前だなと感じるくらいでほかには特に思うことがないという方がほとんどなのではないでしょうか。しかし調べてみるとこの木にはいろいろな所以や特徴・花言葉の意味が隠されていました。
シマトネリコの基本情報
科・属 | モクセイ科トネリコ属 |
原産地 | 中国や台湾・インド・フィリピン |
英語名/学名 | Griffith’s ash/Fraxinus griffithii |
育て方難易度 | 丈夫で簡単 |
日本語名シマトネリコの島とは沖縄
本州には自生しませんが日本だと沖縄がこの木の自生地として有名です。昔からこの木を使って蝋を採種。それを引き戸のすべりをよくする材として使用したことから、この名前が付きました。漢字で書かれることはありませんが、意味から察するところで"島戸練りこ"と言い換えることができます。
シマトネリコの特徴と性質
シマトネリコは日本には沖縄に自生していますが本州以南ではもともと存在せず海外から入ってきた植木用の樹木です。幹の太さは細くすらっとした姿に成長しますが、この成長の速さがとても早くて剪定せずに育てているとほんの数年で家の屋根を軽く超す速さで大きくなってしまうほど。
カブトムシだけでなく蛾やハチ・コガネムシの仲間などいろいろな昆虫が集まってくるのは、この木の樹皮が薄く簡単に傷つき樹液を出しやすいためと考えられています。
シマトネリコの花言葉は「偉大」
シマトネリコは花も咲きますしその花に花言葉も付けられています。シマトネリコの花言葉は偉大・高潔・思慮分別など。トネリコのなかまは神々しい花言葉を付けられているものが非常に多いのですが、シマトネリコもそのひとつ。
シマトネリコの花言葉の由来は神話から
その由来は北欧神話にあり世界樹と呼ばれる内部に9つの世界を分けて持つ大きな木が登場するのですが、このモデルがトネリコの木であったことからきています。仏教の世界でもトネリコは写経をするときの墨の固める材としても使用されるありがたい木のイメージが強い植物です。
カブトムシがシマトネリコに集まる理由とは
シマトネリコには昆虫類を引き寄せる魅力だけでなく、家の引き戸から伝説の木のモデルにまでなるというプロフィールの豊富さにはことかかない庭木であることがわかりました。それでは早速今回のテーマとなっているカブトムシがなぜ集まるのかという点について触れていきます。
カブトムシが夢中になるシマトネリコ
カブトムシがシマトネリコに集まるというのは研究者の間でも周知の事実ではありますが、まだまだ研究がされていないという状況です。集まることはわかっているがそれがどのような理由かというのは憶測の域を出ません。
ただカブトムシにとってはそれまで自分の好きな樹液を出すクヌギの木がそばにあったとしても、シマトネリコにばかりよっていくというくらい大好物の樹液を出す木であるというのは確かなことです。
シマトネリコには昼でもカブトムシがいる
そして埼玉県の小学生が観察し海外の研究雑誌でも紹介された話題の論文によると、なんとシマトネリコによってくるカブトムシは活動時間を無視して離れないということも確認されています。
バナナトラップなどで昆虫採集をしたことがある方はよくご存知でしょうが、通常カブトムシは夜行性で昼にトラップを仕掛けて集まる夜に取りに行くという条件がありました。しかしシマトネリコに関しては夜だけでなく朝でも昼でもカブトムシがいるのがわかっているのです。
カブトムシがシマトネリコを好きな理由
カブトムシの活動時間の条件すら無視させてしまうシマトネリコの樹液を、なぜそこまで好きななのかという理由はわかっていません。
カブトムシは酸味があり糖質があるそんな樹液を好むことはわかっているので、シマトネリコはそんな味の樹液を持っているのだろうというあくまでも想像しか現状判明していません。
樹皮が薄く樹液が出やすい木
ただしシマトネリコの樹液はクヌギなどと比べると栄養価が低いといわれています。これがカブトムシが昼夜限らずずっといつづける理由ではないかと考えられるのです。樹皮が薄く汁が出やすい木でありいつまで食べても満足しないためそこから離れられなくなってしまっていると思われています。
小さな苗木だと迷惑なカブトムシ
シマトネリコは人気の木なので、鉢植えでまだ小さな苗木で栽培している人もいます。特に集合住宅のベランダで育てている方は大きくならないように鉢植えで育てるのは珍しいことでも何でもありません。
ただしこのような小さな苗木のシマトネリコにもカブトムシは寄ってきます。通常は木から染み出している樹液をなめるだけなのですがシマトネリコは樹皮が薄くてかじって樹液を出せるといのをカブトムシは知っています。
小さな苗木では被害は大きい
小さな苗木でカブトムシに樹皮をかじられてしまったら最悪枯れてしまったり、枯れないとしても傷は大きくなると傷まで大きくなって見栄えがわるくなってしまいます。鉢植えのシマトネリコを育てている人は困ったなと思っていることのひとつといわれている夏の来訪者です。
シマトネリコのカブトムシは死ぬ?迷信の本意
カブトムシがほしい人には昼でも簡単に手に入るシマトネリコの木というのは狙って昆虫採集に行きたい木でしょう。しかしシマトネリコを育てている家の人にとっては、カブトムシなどの昆虫が集まるのは迷惑なことである場合が多いのです。
シマトネリコの下でカブトムシが死んでいる
カブトムシがシマトネリコの下に大量に死んでいる。昆虫好きな人がネットで震撼したニュースがありました。シマトネリコにはカブトムシを殺してしまう毒があるのではないかという人もいましたが、実際はそんなことはありませんでした。
シマトネリコの樹液の栄養不足説
カブトムシが死んでしまう理由として考えられていることは2つあります。ひとつが栄養価不足による衰弱死です。先程もご紹介したようにいつまでたっても満足できないためそこから動けないとなります。
それだけでなく今まで夜だけ動き昼は休んでいた虫が、24時間ずっと栄養不足で活動していてれば体も弱ってくるでしょう。これがカブトムシがシマトネリコの下でよく死んでいる理由と考えられる最有力説です。
シマトネリコに集まるほかの虫のせい説
もうひとつの理由はシマトネリコのオーナーによる殺虫剤散布が疑われています。この木はカブトムシだけでなく本当にいろいろな虫を呼び寄せてしまうため、中には人にとっては駆除対象となるような有害な昆虫も含まれています。
シマトネリコに集まる蜂
その代表がアシナガバチやオオスズメバチ。シマトネリコの庭木のお世話をする人は何度も刺されたという体験談が山ほど出てきます。この蜂駆除のためとカブトムシ自身も木の幹をかじりながら樹液を吸うため、木のオーナーにとっては駆除対象と見られる場合があります。
枯れることはないがカブトムシ被害は甚大
カブトムシが好きな人から見たら殺虫剤なんてひどいと思われるでしょうが、シマトネリコオーナーから見たらカブトムシは木を傷つける害虫に見えます。
今まで人家から少し離れた里山で生活していたカブトムシが住宅街で見られるというのはよいことでありつつ、人に対しては被害となることもあるということです。
まとめ:カブトムシが集まるシマトネリコの木
シマトネリコはカブトムシの好物
いかがでしたでしょうか。シマトネリコという木についてとカブトムシが活動条件を無視しても集まる木である理由・小さなシマトネリコの木への影響やカブトムシが死んでしまうのはなぜかという一連のこのふたつの生き物に人が加わった関係性を解説してきました。
昆虫と植物・人とのベストな共存を
もしシマトネリコの樹液を吸わなくてもカブトムシの成虫になってからの命は2-3ヶ月と短いものです。シマトネリコの開花時期はカブトムシの活動期間よりも少し前に終わります。
樹液のために傷つけられたくない・寄ってほしくなければ防虫ネットを張るなど対策してどちらの生き物に対してもよい方法を実践してみてはいかがでしょうか。
誰でも見られる今回の記事の参考文献
今回の記事の資料として海外の雑誌Ecologyに投稿・掲載された文献も多く参考にさせていただきました。(2021年7月7日現在)この研究発表は山口大学からpdfファイルとして誰でも閲覧可能な状態で公開されています。全文にご興味がある方はこちらも参考にされてください。
カブトムシが気になる方はこちらもチェック
今回はシマトネリコにカブトムシが集まる理由やそのカブトムシが死んでしまったり来なくなったという状況の説明となっていますが、暮らしーのではこのほかにもたくさんのカブトムシに関する記事を解説・観察ケースの作り方DIYのなど幅広く紹介しています。
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出典:https://photo-ac.com/