杏子について解説
杏子の季節は春
杏子(アンズ)はバラ科サクラ属の落葉小高木で、高さはだいたい5~10mに及びます。開花する季節は3月~4月の春です。別名はカラモモ(唐桃)で、聞いたことがある方もいるでしょう。さらに、英名はApricot(アプリコット)と言い、近年の日本ではこちらの呼び方が浸透しつつあります。
学名はPrunus armeniacaで、Prunusはスモモ(plum)の意味、armeniacaは杏色の意味です。
杏子の原産地はヒマラヤ西部
杏子の原産地は、中国・ヒマラヤ西部からフェルガナ盆地にかけてとなります。ヒマラヤの冷涼な気候が栽培や開花に適した地域なのでしょう。中国では2000年以上も前から栽培をしていたといわれています。その頃は食用ではなく主に漢方薬として利用されていました。
その後ヨーロッパや中東、アフリカ、アメリカに伝わったようです。また、杏子はシリアの国花となっています。
杏子の特徴
杏子の花色は白とピンク色があり、ピンク色は色味が淡く人気です。花びらは丸く梅と似ていますが、杏子の特徴は幹が桜のように真っすぐで樹皮にたくさんの縦線が入っています。花もウメより大きく花数も多くつけますよ。
葉は表面が広く先は短くとがっています。ガク片は反り返ることも特徴です。実をつける季節は6~7月頃で、直径3cmほどの丸いオレンジ色の実をつけます。実は食用として出回っているのをよくみかけます。
杏子の品種
杏子の品種は主に東洋系と西洋系の2種類です。東洋系の品種はウメが交雑したものが多く酸味が強めが特徴で「平和」「昭和」「新潟大実」などがあります。西洋系は甘味が強めですが、裂果や灰星病などの病気になりやすいのが難点で「ハーコット」「サニーコット」などが品種です。
東洋系の「平和」は日本の代表的な品種となります。サニーコットは日本で品種改良をした甘みの多い品種となります。生食用として近年人気が高いです。
杏子の花言葉と誕生花を解説
杏子の花言葉
杏子の全般の花言葉は「乙女のはにかみ・恥じらい」「臆病な愛」「早すぎた恋」「不屈の精神」です。また、実の花言葉は「疑惑」「疑い」となります。白とピンクの色別の花言葉はありません。
花言葉の数は多いですが、よいイメージとそうでないものがありますね。いったいどのようにして杏子の花言葉がつけられたのでしょうか。それでは、花言葉の由来を順番にみていきましょう。
杏子の花言葉の由来
花言葉「乙女のはにかみ・恥じらい」
花言葉の「乙女のはにかみ・恥じらい」は、桜よりも少し早い時期の開花が、はにかんだり恥じらったりする様子にみえることに由来しています。また、他の花言葉「臆病な愛」や「早すぎた恋」も早い開花から由来しており、乙女の慣れない恋愛を花言葉で表現しているようです。
サクラと比較しているのは、杏子と桜の花がよく似ているからなのでしょう。
春やピンクも恋愛を連想
春という季節や花びらのピンク色からも恋愛を連想し花言葉に取り入れられます。春は猫や鳥など身近な生物を見ても分かるように、恋の季節です。人も春は恋をしやすいと聞きます。暖かくなって心身ともに明るく前向きになり恋が開花するのでしょう。
また、花びらの淡いピンクからは、薄くピンク色に頬を染める乙女の姿を想像できますね。可愛らしい杏子と女性の像がマッチしています。このように、花言葉は花の様子と人の心情を重ねるところが魅力です。
花言葉「不屈の精神」
花言葉「不屈の精神」は冬の季節の厳しい寒さに耐え忍び、寒さの残る春に咲く姿に由来しています。花言葉は恋愛だけでなく生き方についても植物から学ぶ部分があるようです。例えば、「不屈の精神」の花言葉からは、生命が生きるためには時には辛いことにも耐えなくてはならず、耐えることで美しく開花できるのだと捉えることができますね。
外見のはにかむ可愛らしさとはうらはらに、精神は強くたくましい杏子を表現した花言葉です。
花言葉「疑惑」・「疑い」
恋愛としては少しマイナスなイメージである花言葉「疑惑」と「疑い」は、中国にある故事から由来しています。「李下に冠を正さず」は「木の下で冠を直していれば、木の実泥棒だと疑われるのでやめなさい」という意味です。しかし、本来はスモモのことで、似ている杏子が混同されて花言葉がつけられました。
好ましい花言葉ではないので、誕生花や贈り物として用いる場合は上記の恋愛の花言葉や不屈の精神を伝える方がよいでしょう。
杏子の英語の花言葉
杏子の英語での花言葉は「timid love(臆病な愛)」「doubt(疑い)」「distrust(疑惑)」となります。日本の花言葉とほとんど同じですね。「乙女のはにかみ・恥じらい」がないのは、杏子を桜と比較した日本の特徴的な花言葉だからなのでしょう。
誕生花としての杏子
杏子を誕生花とする誕生日は2月23日、3月1日、4月12日、10月2日となります。杏子の誕生日は季節に関係なくいろいろな月が当てはまるのですね。杏子が誕生花の方は、乙女な恋愛と不屈の強い精神を意味する花言葉を意識してみてはいかがでしょうか。
「杏」「杏子」は名前やSNSのアカウント名で用いられるほど人気で可愛らしいイメージがあります。誕生花にあたって嬉しいと感じる方もいるのではないでしょうか。
杏子と似ている桜の花言葉と誕生花
杏子の後に開花する桜は、花言葉でも比較されていますね。そんな桜の花言葉と誕生花もご紹介します。桜の花言葉は「精神美」「優美な女性」「純潔」です。杏子の乙女よりも成長した女性を連想しそうですね。
日本の国花である桜の花言葉は、日本人の品格を表現し、桜の美しさや散る際の潔さなどから由来しています。杏子も桜も素敵な女性を表現した花言葉ではないでしょうか。
杏子の歴史と漢方薬について解説
日本に伝わったのは奈良・平安時代
日本に杏子が伝わったのは、奈良・平安時代だといわれています。当時は薬用として栽培され、中国の桃を意味する「カラモモ」と呼ばれていました。日本最古の和歌集である万葉集にも登場しています。
「アンズ」と呼ばれるようになったのは、江戸時代に入ってからです。中国では「杏」は木のことを「子」は実のことをいい、杏子の唐音で呼ばれるようになりました。また、「杏」自体も木に実(口)が垂れていることを表しています。
漢方薬としての杏子
杏子が漢方薬だとご存じでしたでしょうか。杏子の種の核は「杏仁(きょうにん)」と呼ばれ漢方薬として用いられます。青酸配糖体や脂肪油、ステロイドなどが含まれており、鎮咳や去痰に効果があるので昔から重宝されてきました。
漢方薬では麻杏甘石湯や麻黄湯、杏蘇散などがあります。自然の植物の恩恵を利用した漢方薬は、私たちの体を優しく癒してくれるでしょう。咳が気になる方は杏子の漢方薬を利用してみてくださいね。
薬膳料理としての杏仁豆腐
杏仁は漢方薬のほか、中国の薬膳料理として古くから利用されています。それが杏仁豆腐です。杏仁豆腐は独特の風味がありますが、杏子だったのですね。
杏仁は「肺と腸を潤す働きをする」といわれ、喘息や便秘の改善薬として用いられましたが、苦みが強いため服用しにくかったようです。そこで、粉末にして甘味や牛乳を加えて食べやすくしたのが杏仁豆腐となります。普段何気なく食べていた杏仁豆腐も、そんな薬効があったのですね。
杏子の利用について解説
人気がある食用としての杏子
素敵な花言葉のついた杏子ですが、果実は食用としても人気があります。酸味が強いので生食よりも主に加工品にすることが多いです。例えば、ジャムやドライフルーツ、シロップ漬け、果実酒などがあります。夏にはかき氷の蜜としても人気がありますよ。
皆さんも一度は口にしたことがある品もあるのではないでしょうか。杏子は杏仁の漢方薬としての利用だけでなく、果実自体も美味しく栄養が豊富なのでぜひ取り入れてみてくださいね。
杏子の栄養素
杏子には他の栄養素よりもベータカロテンが豊富に含まれています。発がん性を抑制するβ-クリプトキサンチンです。また、有機酸は胃腸の働きをよくします。疲れを取り腰痛や肩こり防止の効果が期待できますよ。さらに、ギャバは脳の血行をよくしてくれます。
干し杏子にすると、体を温めるので毎日少量を食するのがおすすめです。内臓の機能低下の改善にも役立ちます。いろいろな効果が期待できる杏子は魅力的ですね。
美味しい杏子の見分け方
丸くて表面に張りがあり、実が締まっているものが美味しい杏子の見分け方です。また、全体がオレンジ色で変色していないものを選びます。傷が入っているものは腐りやすいのでなるべく避けるか早めに利用しましょう。
甘酸っぱい香りがあれば熟している証拠です。杏子は傷みやすくあまり日持ちがしないので、冷蔵庫に入れて早めに食べましょう。干し杏子も冷蔵庫に入れて保存することをおすすめします。
耐寒性があるところで植栽される
杏子はヒマラヤ地方が原産であるように、耐寒性があり冷涼な気候の場所での植栽が盛んです。季節による気候条件から、日本では主に長野県や青森県、福島県で多く栽培され、商用品として出回っています。林檎と同じ気候条件と捉えると分かりやすいですね。
東京都の中央卸売市場の取り扱いで最も多いのは長野県で、大半を占めています。
杏子の花言葉とともに花や果実を楽しもう!
杏子の花言葉は「乙女のはにかみ・恥じらい」「臆病な愛」「早すぎた恋」「不屈の精神」「疑惑」「疑い」であることを解説しました。季節や開花、品種などさまざまな特徴から花言葉はつけられます。花言葉は面白いですね。
そのほか、漢方薬、果実の人気の加工品などについても解説しましたが、いかがでしたでしょうか。普段、杏子の開花を愛でたり食品として楽しんできた方も、花言葉によってより愛せますように。
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