ルピナスは春から初夏を彩る花
ルピナスには紫やピンク、白、黄色、赤などのカラフルな色があり、その姿から“登り藤”との別名もあります。開花時期の4月下旬~6月頃に鈴なりの花を上向きに付ける姿は抜群の存在感です。群生地の多い北海道では初夏を代表する花といえるでしょう。
ルピナスの品種は7種類ほどですが、生態は地域によって変わり、蒸し暑い地域では一年草とされています。しかし北海道のような原産地に近い気候の寒冷地では多年草となり、群落になるほどの旺盛な生育力を発揮するのです。(この記事は2021年6月20日時点の情報です)
ルピナスの基本情報
園芸分類 | 草花 |
科・属 | マメ科ルピナス属 |
和名 | ハウチマメ |
形態 | 暖地/一年草、寒冷地/多年草 |
原産地 | 北アメリカ |
草丈 | 20~150㎝ |
花色 | 紫・ピンク・白・黄色・赤・オレンジなど |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 弱い |
栽培難易度 | 寒冷地では非常に簡単 |
ルピナスが存在感を発揮する理由は、開花時期の鈴なり状態以外に、高さが1メートル近くになることも挙げられます。品種や条件によって150センチほどの高さになることも。花の色は紫やピンクが主流で、ウチワのように美しい形の葉も印象的です。
北海道で群生地が多い理由は、かつての集落で園芸用に地植えされたものが自然に繁殖したといわれています。蒸し暑い暖地の本州では種で一年ごとに植える必要がありますが、ぜひ花や葉の造形が美しいルピナスを愛でましょう。
ルピナスの9つの育て方のポイント
①ルピナスの栽培に適した「場所」
ルピナスは日光が大好きな植物なので日当たりのよい場所で栽培してください。日当たりと同時に水はけと風通しのよい場所も大事な条件になります。水はけが悪い場所では根腐れを起こしやすく、枯れる原因になるのです。
また蒸し暑い気候は苦手なので、風通しのよい場所で管理することもルピナスの栽培では大切な条件です。北海道などの寒冷地では地植えされることが多い花ですが、蒸し暑い暖地では気候条件に合わせて管理できる鉢植えにするとよいでしょう。
②ルピナスの栽培に適した「用土」
ルピナスは酸性土壌を嫌うため、地植えでの種まきや苗の植え付け前には、苦土石灰を散布して耕すことで酸度調整をしてください。土にこだわる人は、赤玉土6:腐葉土3:軽石(またはパーライト)1の割合で土作りをしてください。
宿根となる北海道では連作でも問題なく翌年も同じ場所に生えてきますが、本州では連作障害の可能性があるため、昨年とは違う場所で植えましょう。
ルピナスを鉢植えする場合
鉢植えする場合も基本的には地植えと同じですが、鉢植えは用土の量が地植えよりも少量で済むため、市販されている園芸用土で問題ありません。その場合は、草花用の培養土に軽石(またはパーライト)を1割ほど加えて使用してください。
土作りにこだわりたい人は、地植えと同様に赤玉土6:腐葉土3:軽石(またはパーライト)1の割合でブレンドした用土を使いましょう。
③ルピナスの「種まき」の方法
ルピナスを種まきする場合は、種類によって時期を変える必要があります。最も普及している多年草のラッセル・ルピナスは気温が高い時期に発芽するため、種まきは6月頃です。それ以外の種類のルピナスは、秋の9月~10月が種まきの時期となります。
固い皮に包まれているルピナスの種は、発芽率を高めるために一晩水に漬けて置いてください。苗用のポットに植え付けしたあとに土をかぶせます。発芽するまでは、乾燥に気を付けて日陰の涼しい場所で保管しましょう。
発芽後のルピナス
発芽後は日当たりのよい場所に移し、葉が6枚ほどになってから地植えするか鉢植えにしてください。ルピナスは直根のため、鉢植えする際に根を傷めないように注意して扱いましょう。
④ルピナスの苗の「植え付け」方法
ルピナスを植え付けする時期は、春と秋の2回となり、本州での苗の販売は3月頃から始まります。鉢植えする場合は、苗よりもニ回り大きめサイズの鉢に植え付けてください。
地植えする場合は、日当たり・水はけ・風通しのよい場所を選びましょう。苗をポットから出すときは、根を傷めないように注意して扱ってください。
⑤ルピナスの「水やり」のタイミング
ルピナスを鉢植えした場合の水やりは、表土が乾いてからにします。乾燥が続くと葉が黒っぽくしわしわになり、状態が悪くなると落葉することもあるので注意してください。
ただし水やりし過ぎると湿気がこもって根腐れを起こしやすいため、やや乾燥気味でも問題ありません。乾燥しやすい冬は、適度に水やりするようにしてください。
⑥ルピナスの「肥料」の与え方
ルピナスは、基本的に条件がよい土地であれば、こぼれ種でも自然に繁殖する旺盛な植物です。そのためルピナスはそれほど肥料を必要としません。肥料を与えすぎるのはよくないのでご注意ください。
ルピナスを地植えする場合は、成長し始める春に追肥として緩効性化成肥料を与えます。ルピナスを鉢植えする場合は、液体肥料を生育期間中に与えましょう。
⑦ルピナスの「増やし方」
ルピナスの増やし方は、開花後にできる種を収穫して行います。ルピナスの開花時期は4月~6月頃なので、花が終わったら種を収穫しておきましょう。種を収穫した後は「種まき」の方法と同様で、一晩水に漬け置きしてから9月~10月に種まきをします。
暖地では、暑さに弱いラッセル・ルピナスは暑さの残る秋よりも、翌年の6月に種まきをするとよいといわれています。寒冷地では種を収穫しなくてもこぼれ種で増やせるので、地植えした場合の翌年は畑を耕さないでください。
⑧ルピナスの「植え替え」方法
ルピナスを地植えした場合は、寒冷地では翌年もこぼれ種で花を咲かせる多年草となるため、植え替える必要はありません。本州の暖地では一年草となるため、地植えも鉢植えも植え替えなくてもよいのです。
鉢植えでも地植えでも一度その場所で育った場合は、植え替えると根を傷めてしまいます。多くのルピナスは直根性なので株分けすると傷んでしまうのです。一度植えたら植え替えをせず、そのままにしておきましょう。
⑧ルピナスの花芽の付け方
ルピナスは花茎からいくつもの花芽をつけます。長く花を楽しむためには、一番花が終わったら花穂を短く切ってください。するとそばにある花芽が伸び、花を咲かせてくれます。
きれいに花を咲かせるためには、下葉を整理して風通しをよくしてあげましょう。種を収穫したいときは花が枯れてもそのままにしておきます。花がすべて終わったら種を収穫します。
⑨ルピナスの「病害虫対策」
ルピナスは病気や害虫に強い花のため、心配する必要はほとんどありません。日当たり・水はけ・風通しのよい場所で保管し、水やりや肥料の与えすぎに気を付ければ美しい花を咲かせてくれます。
気になるとすれば、蛾の仲間であるヨトウムシの食害です。葉が万が一絣(かすり)のようになっているときはヨトウムシの仕業かもしれません。そのときは葉を早めに取り除き、ヨトウムシが潜んでいないか確認してください。
ルピナスには食べられる種類もある
普及種は「ラッセル・ルピナス」
ルピナスの人気品種は約7種類あり、特に日本で苗や種が流通しているのは「ラッセルルピナス」という大型の交配種です。アメリカのカリフォルニア州からカナダにかけて自生するルピナス・ポリフィルスと、他の種類のルピナスを交配したものといわれています。
このルピナスは条件の合う北海道では宿根しますが、本州の暖地での栽培は一年草となります。他の園芸品種には、南ヨーロッパ原産のカサバルピナス・キバナルピナス・リリアンなどがあり、園芸家の間では人気です。
傘の葉のような「カサバルピナス」
葉が大きくて葉の先が下に向いていることから「傘葉ルピナス」という名前が付いています。南ヨーロッパ原産の一年草で、草丈は60~80センチです。
葉と同様に花も大きめですが、付き方はまばらな特徴があります・花色は紫色または濃紺色ですが花の中心部は白く、色味のコントラストがはっきりしている点が人気です。
食用にもなる「キバナルピナス」
キバナルピナスは南ヨーロッパ原産の一年草で、和名では「キバナノハウチワマメ」と呼ばれています。名前のとおり花が黄色で、甘い香りを漂わせるのが特徴です。流通量は多くないため、見かけたら購入するとよいでしょう。
マメ科の植物らしく種子は食用になり、原産地の地中海沿岸では塩ゆでした「ルーピン豆」がビールのおつまみとして人気があります。ちなみに他の種類にはアルカロイドが含まれているため、食用する場合は下処理をするなどの注意が必要です。
小ぶりの「ルピナス・テキセンシス」
ルピナス・テキセンシスは草丈が30~40センチと、花も葉も小ぶりの北アメリカ原産の一年草です。花色は青みがかった紫で、別名でブルーボネットともいいます。
同種で、赤い花のテキサス・マーロンもあり、共に小ぶりなため寄せ植えに利用されることが多い品種です。ラッセル・ルピナスとはまた違う趣なので、見かけたらぜひ購入して栽培してみましょう。
暖地のおすすめ「ピクシー・デライト」
ルピナスは寒冷地向けの花ですが、中には低温でなくても開花する暖地向けの種類もあります。ピクシー・デライトは、秋まき以外に暖地でも春まきできる品種です。
白・ピンク・青の花穂は20センチ、草丈は40センチほどと小ぶりで、お庭を可愛く演出してくれます。やはり寄せ植えにすると素敵なので、見かけたらぜひ栽培してみましょう。
ルピナスを植えてお庭を明るく!
多年草のルピナス「ラッセル・ルピナス」は、育て方はそれほど難しくなく、宿根となる寒冷地ではこぼれ種でも旺盛に繁殖します。湿気の多い暖地では一年草となるため、鉢植えにして栽培環境を整えてあげましょう。
種はラッセル・ルピナスの花が終わったあとに収穫し、翌年の6月が種をまく時期です。種が硬いので一晩水に漬けてから発芽率を上げる準備をし、種まきをします。4月上旬~6月にかけて庭を華やかにしてくれるラッセル・ルピナスをお楽しみくださいね。
「藤」が気になる人はこちらもチェック!
「登り藤」の別名があるラッセル・ルピナスは北アメリカが原産ですが、同じくマメ科植物の垂れ下がる「藤(フジ)」は日本の固有種です。同じマメ科植物の花でもどのような違いがあるのか、ぜひチェックしてみましょう!

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出典:ライター撮影