ニリンソウは春の到来を告げる植物
白い花を付けるニリンソウ(二輪草)とは名前どおり、一本の茎から二輪の花茎を付けるキンポウゲ科イチリンソウ属の植物。まれに一輪や三輪の花茎を付けるものも。エンゴサクやエンレイソウなどと共にスプリングエフェメラルとも例えられ、春になるといち早く湿りがちの林床で咲きます。根茎で増えるため群生することが多く、その姿はまさに妖精が舞っているよう。
とても可憐な花ですが、似た花の有毒植物トリカブトと葉が激似しているため、違いについてチェックしておきましょう。(この記事は2021年5月19日時点の情報です)
ニリンソウの開花時期などの特徴
特徴①ニリンソウ全体の構成
ニリンソウの多くが自生する環境は、落葉したふかふかの土となります。地表面の1~2センチメートルほど下に、横に5センチメートルほど伸びるように這う根茎があります。根茎は多肉質で、まばらなひげ根があるのも特徴です。
地上部は、長い葉柄の2個の根出葉・輪生した3枚の茎葉・2つの花を持つ1本の花茎から構成されます。ツヤがない葉っぱには葉柄が無く、茎から出ているため一枚の葉に見えるのです。この点は、葉柄があるサンリンソウとの識別ポイントとなります。
特徴②ニリンソウはどんな花?
ニリンソウの花の直径は2センチメートルほどで、ニリンソウの花弁の数は5枚あります。しかし白い部分は花弁ではなく萼片(がくへん)。ニリンソウの萼片の中には多数の雄しべに囲まれるように、10本ほどの雌しべがあります。また、雌しべの子房は受粉後に大きく膨らむのも特徴です。
ニリンソウの萼片は開くと白色ですが、閉じているときは薄いピンク色をしており、雰囲気の違う美しさなのでぜひチェックしておきましょう。
特徴③ニリンソウの開花時期と分布は?
ニリンソウの開花時期は春の季節、4月~5月にかけてで、標高や日当たりによりますが暖かい地域から順番に咲いていきます。二輪のうち一輪目が先に開花し、一週間ほど置いて二輪目の花が咲きます。6月ころには休眠に入り、翌年の春に備えるのです。
ニリンソウの分布は、日本・サハリン・朝鮮・中国などの東アジア圏です。湿り気のある野山の林床や周辺で自生しています。ヨーロッパには分布していないとされているので、貴重な植物といえるのではないでしょうか。
一輪と二輪の開花時期は少しずれる
ニリンソウの二輪目の萼片は、一輪目の開花時期から少し遅れて開くという特徴があります。差は一週間ほどといわれていますが、実際にどうなのか確認してみると面白いでしょう。
先に花茎を伸ばした一輪目のほうが長く、二輪目は短い、もしくは一輪目の根元に控えめに付いている状態です。ニリンソウの咲き方や付き方は個体によって違うので、見かけたらいろいろ確認してみてください。
開花時期がずれる理由
一輪目の花と二輪目の開花時期が遅れるのは、受粉のための"保険を掛けている"といわれています。多くの花は受粉の機会を増やすために、一斉開花することで昆虫の目印になっています。しかしニリンソウは自家受粉しにくい「自家不和合性」のため、昆虫の力がどうしても必要なのです。
ニリンソウは一斉開花しても気象条件が悪いと受粉できないこともあるため、戦略的に開花時期を遅らせることに。一輪目が受粉できなくても、二輪目で受粉ができる仕組みになっています。
緑色のニリンソウは先祖返り
ニリンソウはまれに緑色をしている個体もあり、本来の萼の色に戻ることから"先祖返り"といわれています。別な説では、マイコプラズマに感染したことが原因とする人もいるようです。
ミドリニリンソウの萼片は中心から先端に掛けて緑色で、白い花色のニリンソウとはまた違う趣が感じられます。ニリンソウの葉緑色と重ねて見ると一瞬ですが、白い花が透き通っているように錯覚しそうです。ミドリニリンソウには滅多に出合えないので見つけたら幸運といえるでしょう。
特徴④ニリンソウの葉はどんな形?
ニリンソウの葉の特徴は、多くのキンポウゲ科の植物と同じように20センチメートルほどの茎に、葉柄のない3枚葉が「輪生」し、葉が裂けていること。輪生とは、互い違いに葉を付ける「互生」、向かい合って付ける「対生」とは異なり、輪を描くように付ける状態を指しています。
輪生植物の特徴として、花も輪生する傾向がある点も特筆すべき点です。ニリンソウの花(萼片)も葉と同じく輪生して付いています。葉が芽生える際も放射状にロゼットを作るのも面白いですね。
特徴⑤ニリンソウの利用価値は?
ニリンソウはキンポウゲ科で唯一、全草が食用になることからお浸しにして食べる人もいます。かつてアイヌ民族の人々は冬の季節の貴重な食料として備蓄していたと伝えられています。
漢方ではリウマチや打撲傷、解毒に効果があるとのことから、根茎が「地烏(じう)」として利用されています。根茎をお酒に浸して少量ずつ服用することで、効能が発揮するといわれているそうです。しかし有毒植物トリカブトの葉っぱに似ているため、注意しなければいけません。
ニリンソウに似た植物トリカブト
ニリンソウの葉に似た花は、同じキンポウゲ科のトリカブトです。有毒植物のトリカブトの若い葉っぱはニリンソウの葉っぱと似ており、一見では見分けがつきにくいのです。
実際にトリカブトを食用可能なニリンソウと勘違いし、トリカブトの若い葉っぱを誤食して亡くなってしまうという事故も起きています。痛ましい事故が起きないように、ニリンソウとトリカブトを見極め、間違えて食用しないように注意しなければいけません。
見分け方①「白い花」
ニリンソウに似た花のトリカブトとの見分け方は、ニリンソウの白い花の有無を確認するのが一番です。白い花を付けていれば間違いなくニリンソウです。有毒植物のトリカブトの特徴は、紫色のかぶとのような形を付けた花にあります。
トリカブトの開花時期は夏の季節、8月~10月ころなので開花していれば簡単に見分けられるのです。ところがトリカブトが葉を出す季節とニリンソウの開花時期とが同じ地域もあるため、トリカブトの葉を摘んでしまうといわれています。
見分け方②「葉の付き方」
ニリンソウをトリカブトと見分ける次のポイントは、葉の茎への付き方です。ニリンソウの葉は輪のように並んで付く「輪生」となり、しかも葉柄が無くて茎から葉が直接出ています。
一方のトリカブトの葉は茎に交互に付く「互生」となり、葉には柄もあります。
見分け方③「葉の切れ込みの深さ」
ニリンソウとトリカブトを見分ける3つめのポイントは、葉の切れ込みの深さ「深裂」の程度です。ニリンソウの葉は葉柄が無くて茎から直接出ているので一枚葉に見えますが、一枚一枚が深く切れ込んでいるだけの3枚葉となります。
しかしトリカブトの葉は葉柄があり、一枚一枚の葉もさらに羽のように細かく裂けているのです。ニリンソウとトリカブトの葉を見比べないと判別が付きにくいのは確かですが、この点をぜひ念頭に置いてください。
見分け方④「根茎の形」
ニリンソウの根茎は這うように横に伸びて、5センチメートルほどの長さがあります。一方のトリカブトの根茎は紡錘状となっており、かつてアイヌ民族が狩猟に使っていたとされるほどの猛毒です。
ニリンソウもトリカブトも根茎を取り出して見比べることは少ないと思いますが、機会があればぜひ、葉だけではなく根茎もチェックしておきましょう。
ニリンソウの葉とトリカブトの若葉は激似!
東アジアに分布するニリンソウ(二輪草)は、春に茎が20センチメートルほどに成長し、花弁の数が5枚の白い花を付ける植物です。開花時期は4月から5月頃となり、二輪の開花時期は一週間ほどずれます。
似た花の有毒植物トリカブトとの大きな見分け方は、「白い花の有無」「葉の茎への付き方(輪生か互生)」「葉柄の有無」です。ニリンソウは茹でると食用にもなりますが、トリカブトは猛毒のため間違えてはいけません。採取する場合はこの2点に気を付けてくださいね。
トリカブトが気になる人はこちらをチェック!
ニリンソウの特徴をチェックしたあとは、葉っぱが激似しているトリカブトについても詳しくチェックしておきましょう独特な花の形や開花時期だけではなく、園芸品種としても人気があるので花言葉に付いても知っておくと便利ですよ。
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出典:ライター撮影