タマシダは熱帯系のシダ植物
ツルシダ科タマシダ属のタマシダは、日本では伊豆諸島から九州、小笠原諸島などの南日本でしか見られません。海岸近くの日当たりのよい斜面や岩の上、まれに樹上で生育することもある熱帯系のシダ植物です。
暑さに強くて寒さに弱いという特徴がありますが、適切な日当たりや湿度にすることで寒冷地での越冬も可能です。上手にタマシダを育てて、お部屋やお庭を南国風に演出してみましょう。植え替え方法や株分け方法についてもまとめたので、ぜひご参考にしてください。
「ツデー」は西洋タマシダ
タマシダの名前は、地面を這うように伸びる匍匐枝に球状の塊を付けることが由来です。世界には約30種類のタマシダの仲間があり、日本では「タマシダ」「ヤンバルタマシダ」「ホウビカンジュ」の3種が発見されています。
観葉植物としての一番人気は西洋タマシダの園芸品種「ツデー」(Teddy)で、高さが20~30センチメートルほどあります。日本のタマシダには匍匐枝に塊茎が付いており、西洋タマシダと区別できます。機会があれば両種をチェックしてみましょう。
「ダッフィ」と「ペチコート」も人気
ツデーの他にも、羽片が丸まっている「ダッフィ」や、葉の先端が分かれている「ペチコート」という園芸品種もあります。ツデーの育て方をマスターしたら、いろいろなタマシダの栽培に挑戦してみるのも楽しそうですね。
タマシダの上手な選び方
ツデーなどの観葉植物のタマシダは株で購入して育てますが、株にアブラムシやハダニなどの害虫が付いていないかを、購入前に必ずチェックしましょう。よいタマシダの上手な選び方は、葉が枯れていないことはもちろん、間延びせずに瑞々しい状態の葉を選ぶことです。
害虫が付着したタマシダは、株が弱くなったり他の植物への害虫被害を招いたりすることがあります。庭やお部屋で楽しむ観葉植物は、最初のチェックが肝心です。
タマシダの育て方・10のコツ
①タマシダの用土選び
タマシダのよい株を購入したあとは用土を用意しましょう。湿気を好むタマシダの用土は、市販の観葉植物用の土でもよいですし、ミズゴケに植え込んだり苔玉を作ったりするのもおすすめです。
注意点として、栽培場所が屋外でも屋内でもカビが用土に生えないようにしてください。ミズゴケは、いつも湿らせたままにしておくと根腐れを起こす場合もあるため、適度に乾燥させなければいけません。
自分で用土を作るのもおすすめ
こだわりがある人は用土を自分で作るのもおすすめです。赤玉土・腐葉土・小粒の軽石(または川砂)を、5:3:2の割合でブレンドした用土で植え付けてみましょう。
②タマシダの日当たり・置き場所
日当たりについてはすべてのシダ植物の特徴ですが、タマシダも直射日光には弱い性質なため、季節をとおして注意が必要です。春から秋まで屋外で育てられるタマシダの育て方のコツは、日当たりの調節、つまり遮光にあります。
とはいえ日陰ではなく、屋外では環境ごとに50~70パーセント遮光してください。高温になるほどに葉焼けして枯れるため、地植えの場合は園芸店などで販売されている遮光ネットや寒冷紗を張るなどの工夫が必要です。鉢植えの場合は日陰に移しましょう。
タマシダの日当たり:屋内
タマシダなどのシダ植物は耐陰性があるのが特徴です。そのため屋内でも充分に育ちますが、健康な株の育て方は日陰よりも、日当たりのよい場所に置くことです。
しかし直射日光は葉焼けの原因になるため、遮光の役目があるレースカーテン越しに日光が当たるようにしましょう。
エアコンにはご注意!
タマシダは屋内でも栽培できますが、エアコンの風を直接当てると葉を痛めて枯れる原因になるので、風が当たらない場所に鉢を置きます。浴室は日光が入れば置いても問題ありませんが、湿気が原因で生えるカビには注意してください。
③タマシダの水やり
熱帯地域や亜熱帯地域で自生するタマシダの水やりは、春から秋の成長期と冬の休眠期間とでは異なります。気温が15℃以上になる春から秋の成長期の水やりのタイミングは、タマシダを鉢植えしている土の表面が乾燥したときです。
量は、鉢穴から水が出るぐらいにたっぷり与えてください。表面の土が乾いていないのに水やりをすると根腐れの原因になるので注意しましょう。地植えの場合は、よほどの日照不足でない限りは与えなくてもよいです。
冬の水やり
冬などの気温が15℃以下になる期間は成長がゆるやかになるので、水やりの回数は成長期よりも減らしましょう。春から夏の成長期と同じ回数で水やりをすると根腐れを起こしてしまいます。
具体的な水やりのタイミングは、土の表面がすっかり乾燥した2~3日後です。タマシダの耐寒性を高めるためには、乾燥させることで樹液の濃度も高める必要があるのです。
④タマシダの葉水
湿気を好む性質が特徴のタマシダは、乾燥予防のために通常の水やり以外の「葉水」も必要です。水やりの回数を減らす冬の休眠期には、小まめに葉っぱに霧吹きなどで水を吹きかけてください。夏場も水分が蒸発しやすいので葉水を与えてあげましょう。
湿気を好む特徴があるタマシダのために、なるべくよい環境を作る必要があります。葉水の効果は乾燥防止以外に、害虫の予防やホコリの予防にもなります。可愛い霧吹きをお部屋に置いておけば、気分も上がりますよ。
⑤タマシダの肥料の与え方
タマシダのようなシダ植物には肥料が無くてもよいですが、観葉植物として成長を早めるには肥料を与えたほうがよいでしょう。肥料を与えるタイミングは、成長がゆるやかな冬は避けて春から秋までの成長期に与えてください。
肥料の種類は液肥となり、濃度を適切に希釈して10日に一回か、ゆるやかに効く置き肥を与えます。有機肥料はコバエが発生しやすいため、化成肥料がおすすめです。
⑥タマシダの植え付け
タマシダの植え付けは、春から秋までの成長期の中でも、4月から9月までの暖かい時期に行いましょう。猛暑日が多くなる7月以降に植え付けをするときは、40℃以上になる日は避けてください。
成長がゆるやかな休眠期の冬の植え付けはおすすめできません。根がまだ出てきていないときは、根がしっかり出てくるまで土を湿った状態にし続けてあげましょう。
⑦タマシダの剪定
シダ植物などのタマシダの剪定は基本的にしなくても問題ありません。ただし古くなって葉が枯れてきた場合は切り取ってしまいましょう。
密な状態が続くと風通しが悪くなり、カビが発生する原因になってしまいます。観葉植物としては見栄えも悪いので、きれいな葉だけにして観賞してください。
⑧タマシダの植え替え
タマシダのようなシダ植物は、2~3年に一度はひと回り大きめの鉢に植え替えが必要です。放置しておくと鉢の中に根が回り、根腐れや葉枯れ、葉落ちの原因となる根詰まりを起こしてしまいます。2~3年に一度以外でも、土の吸水が悪くなったり鉢底から根が出てきたりしたときも植え替えのタイミングです。
株を大きくせずにコンパクトにしたい場合の育て方は、小さい鉢で植え替えてください。2~3年に一度鉢から抜いて根の量を減らし、大きさが同じ鉢に植え替えましょう。
⑨タマシダの越冬
耐寒性の弱いシダ植物のタマシダは、気温が10℃を下回ると枯れてしまいます。目安として15℃前後の気温になったら屋外から屋内に移動してください。寒冷地の温室の場合はファンヒーターなどで調節するとよいでしょう。
水やりの箇所でもご紹介しましたが、水やりは土の表面が乾燥して2~3日後に与えてください。この2点に気を付けることで、耐寒性に弱いタマシダも越冬させられます。
⑩タマシダの増やし方
成長したタマシダの増やし方は、一般的には「株分け」による方法となります。樹木ではないため挿し木での増やし方はできません。タマシダは根や茎を親株から切り分けることで株分けができるのです。この増やし方はタマシダを大きくせずにコンパクトに仕立てるときにも使えます。
株分けにおすすめの時期は生育期の4月から9月となります。屋内で株分けをするときは、床が汚れないように新聞紙・手袋・新しい鉢(2~3個)・消毒済みのハサミやナイフを用意してください。
タマシダを株分けする方法
鉢からタマシダの株を取り出し、根元に付いている古い土を1/3ほど落としてください。ハサミやナイフで株元に切り込みを入れ、崩さないように手で2~3個の株に分けましょう。傷んだ根があれば切り取り、葉は1/3ほどを間引きます。株分けした2~3個の株を新しい鉢に植え替えて完了です。
新しい芽が出るまではたっぷり水やりをし、半日陰の風通しのよい場所に置いてください。2週間ほど経てばいつも通りの育て方で大丈夫です。
タマシダの胞子を発芽させる
挿し木ができないタマシダの増やし方は、株分け以外であれば「胞子」を発芽させる方法があります。タマシダのようなシダ植物は種ではなく、葉裏にある胞子が、自然界では風を媒介として増えるのです。
自分で増やす場合は、ミズゴケなどを湿らせて胞子をまいて発芽させる方法もあります。発芽した直後の株はとても乾燥に弱いため、湿度を充分に高めにしてください。
タマシダを飾って南国気分を楽しもう!
世界に約30種類ほどあるタマシダの中でも一番人気なのが、波打った葉が特徴の「ツデー」と呼ばれる品種です。乾燥が嫌いなシダ植物ですが、直射日光を避けることや適度な湿気を与えるなどの点に気を付ければ、初心者でも育てやすい観葉植物といわれています。
地植えもよいですがハンギングバスケットにするとタマシダの美しさが際立ちます。自然界では胞子で増えますが、ガーデニングでの増やし方は株分けとなります。上手に増やしてお部屋を南国ムードで演出しましょう!
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出典:photo-ac.com