梅雨葵とも呼ばれるタチアオイ
「タチアオイ」は漢字で「立葵」と書くように、1メートル以上になる草丈が、まるで立っているかのように見えます。花の直径が10センチメートルほどになるものもあり、見栄えがよいことから夏の季節、庭を彩る花として人気です。
花の色は赤やピンクが主流ですが、黄色や紫、白、黒もあり、とてもカラフル。一年草または多年草で、開花期が長くて耐寒性も強いことから各地で栽培されてきました。人気なタチアオイの花言葉などをチェックしておきましょう。(この記事は2021年5月1日時点の情報です)
タチアオイの開花時期と開花状態
タチアオイの一般的な開花時期は6月上旬から7月中旬となり、北海道ではほぼ1か月遅れとなります。季節の風物詩的な目安でいえば、本州では梅雨入りの時期に開花し、花が終わる頃に梅雨が明けるのです。そのため別名の「梅雨葵」とも呼ばれています。
タチアオイの花は、一本の茎に穂(花穂)のようにいくつも付きます。花穂の下から上に向けて次から次に開花するため、長い期間において花を楽しめるのがタチアオイの特徴です。
"三つ葉葵"とは異なる
タチアオイと同じ「アオイ(葵)」が付く花といえば、水戸黄門の「この御紋が目に入らぬか!」の徳川家の家紋が思い出されるのではないでしょうか。こちらのアオイはタチアオイとは全く異なる種類で、ウマノスズクサ科のフタバアオイをモデルに三枚の葉で創作したものといわれています。
葉を二枚ずつ付けることから二葉といいますが、その葉はハート形をし、小さな花はうつむき加減に咲きます。タチアオイとは違うことを、雑学として覚えておくとよいでしょう。
タチアオイと花言葉:人気な種類
タチアオイは園芸品種のため、赤や白などの色や花弁の数など、さまざまな種類が流通しています。よく道路沿いの園芸畑などで見かけるのは、3つの代表的な品種です。
一年草タイプで、八重咲の大輪花を咲かせる草丈が150センチメートルほどの「サマーカーニバル」、草丈が70センチメートルほどで八重咲の「マジョレット」、ビロードのような光沢がある黒の一重咲きの「クロタチアオイ」です。黒いタチアオイは庭のアクセントになるため、最近人気を集めています。
最近は八重咲の「アルセア」も人気
八重咲種は「マジョレット」が代表種ですが、最近は「アルセア」に注目が集まっています。華奢な花びらがバラやカーネーションのように重なり、抜群の存在感です。草丈も2メートルを超えることもあり、栽培のし甲斐もあるとされています。
アルセアを、一重咲きのタチアオイと見比べると、同じタチアオイなのかと目を疑ってしまうかもしれません。ガーデナーでしたら、いろいろな種類のタチアオイを栽培するのも楽しそうですね。
タチアオイの花言葉:力強さを表現
タチアオイの花言葉は、代表的なものを挙げると次のものがあります。ポジティブな意味の花言葉は、「豊かな実り」「大望」「気高く威厳に満ちた美」など。少しネガティブに捉えられがちな意味の花言葉は「野心」です。
「熱烈な恋」「高貴」「威厳」「使命」「開放的」「平安」などの花言葉もあるようです。どの花言葉も力強さを意味しており、可憐さや儚さなどの弱々しいイメージとはかけ離れています。少し堅苦しい花言葉もありますが、華やかなタチアオイそのままの花言葉ですね。
タチアオイの色別の花言葉
タチアオイには、赤やピンク、黄色、白、黒などのいろいろな花の色がありますが、色別の花言葉はありません。色によるタチアオイの印象は異なりますが、花言葉は全色共通とされています。
すべての色のタチアオイに、ポジティブな意味の「豊かな実り」「大望」「気高く威厳に満ちた美」と、少しネガティブな意味に取られがちな「野心」が当てはまります。花言葉の意味は表裏一体なのでタチアオイを贈り物にするときは、この点を心にとどめておいてくださいね。
タチアオイの花言葉:ポジティブな意味
タチアオイのポジティブな花言葉は「豊かな実り」「大望」「気高く威厳に満ちた美」「熱烈な恋」「威厳」「高貴」「使命」などがあります。これらの花言葉は、【大局的な意味】【性質に関する意味】【恋愛に関する意味】に分類できそうです。
「豊かな実り」「大望」「使命」の花言葉は【大局的な意味】を、「気高く威厳に満ちた美」「高貴」「威厳」「開放的」「平安」の花言葉は【性質に関する意味】を、「熱烈な恋」の花言葉は【恋愛に関する意味】を示しているといえます。
タチアオイのポジティブな花言葉の「由来」
タチアオイのポジティブな花言葉の意味は、【大局的な意味】【性質に関する意味】【恋愛に関する意味】と分類できますが、すべての由来は、タチアオイの姿形にあるといえそうです。
「豊かな実り」や「豊穣」「大望」「平安」「熱烈な恋」などの花言葉は、大きめの花を惜しみなくいくつも豊かに付ける様子が由来といえそうです。「使命」「高貴」「気高く威厳に満ちた美」の花言葉は、ぶれることなく背筋を真っすぐに伸ばしている様子が由来と考えられます。
タチアオイの花言葉:ネガティブな意味
タチアオイのネガティブな花言葉は「野心」ですが、ポジティブな花言葉に比べると少なく、この一つしかありません。「野心」自体は決して悪い意味ではありませんが、使い方によってはネガティブな印象を与えます。
「○○さんは野心家だから気を付けたほうがよい」などのように、自分の欲望のためなら他人を顧みない、自己中心的な人のように捉えられることもあるからです。タチアオイには「野心」という花言葉があることも忘れないようにしましょう。
ネガティブな花言葉の「由来」
タチアオイのポジティブな花言葉「大望」「豊かな実り」などの由来は、いくつもの花を付けることにあります。しかしこの意味を悪く捉えると「欲張り」ともいえます。全ての花の花言葉に当てはまることですが、花言葉には表裏一体の意味があるのです。
それなりの欲があることは決して悪いことではありませんが、欲も度が過ぎると「大それた野心を抱く」「野心満々」という風に見られ、あまりよいイメージを持たれずに損をしてしまうことも確かなのです。
タチアオイの花言葉:英名の花言葉
タチアオイの代表的な原産地が地中海ということからわかるように、元々の英名があります。英名では「Hollyhock」と呼ばれ、"Holly"は「聖なる」を意味し、"hock"は花を意味するといわれています。
しかし本来の"hock"は、動物の後ろ脚の曲がっている関節の部分「飛節」を指すので、語源の意味は完全には明らかになっているとはいえなさそうです。
「Hollyhock」は十字軍が由来
Hollyhockの原産地は地中海とされていますが、ヨーロッパに伝えられたのは、十字軍がシリアから持ち帰ったことに由来があります。十字軍は、ヨーロッパのカトリック諸国が聖地エルサレムをイスラム教国から奪還することを目的に派遣した軍隊です。
聖地を奪い返すという大望を持った十字軍の野心的で威厳のある様子は、一途にまっすぐに立つHollyhockの姿形に似通った部分がある感じもします。
タチアオイの花言葉:芸術作品との関連
タチアオイは、さまざまな季節の花が咲く庭においても極めて目立つ存在です。堂々とした姿は様になるせいか、画家たちの題材として採用されています。有名なのは、ゴッホの『花瓶の立葵』やベルト・モリゾの『立葵』です。
ゴッホの作品は近景でタチアオイにだけ焦点を当てており、花言葉の「気高く威厳に満ちた美」を感じさせます。ベルト・モリゾは中景でタチアオイを季節の花と共に描いていますが、他の花とは一線を画すような、花言葉どおりの「威厳」が伝わってきます。
タチアオイと日本の古典作品
タチアオイを題材にした日本の芸術作品は『万葉集』『源氏物語』などですが、立葵の名前は江戸時代から。それ以前は見た目の特徴どおり「あふひ草」(仰日草)と呼ばれていたようです。
『源氏物語』の35帖・若菜下では、柏木が光源氏の妃と逢い引きしたことを「くたしくぞ つみおしかける あふひ草 神のゆるせる かざしならぬに」と詠み、後悔していました。「あふひ」を、まっすぐな立葵とは正反対の「逢い引き」と掛けているのです。花言葉「熱烈な恋」を表現しているといえそうですね。
タチアオイの花言葉:誕生花とする日
タチアオイを誕生花とする日は、6月18日、6月23日とされており、タチアオイの開花時期でもあります。6月は梅雨の時期なので憂鬱になりがちですが、タチアオイの花が雨の景色を華やかに彩ってくれます。
6月18日と6月23日がお誕生日の人へ、タチアオイの切り花やタチアオイをモチーフにした小物などを花言葉と共にプレゼントすると、とても喜ばれそうですね。気が滅入りがちな梅雨の季節を乗り越えるためにも、大切な人へ贈ってみてはいかがでしょうか。
黄色いタチアオイが誕生花の日
タチアオイを誕生花とする日は、6月18日と23日以外にもあります。8月18日の誕生花が、黄色のタチアオイとされています。タチアオイは赤系やピンク系の花が多く、黄色系はそれほど見かけません。珍しいので見かけたらチェックしておきましょう。
気になるのが8月という遅い時期です。本州では梅雨明けしている時期ですが、北海道のタチアオイは開花時期がピークなのです。北海道に住んでいる8月18日が誕生日の人にプレゼントすると、きっと喜ばれることでしょう。
タチアオイの花言葉:薬草としての関係
植物図鑑でのタチアオイの分類は、アオイ科タチアオイ属となり、原産地は地中海とされています。古典ラテン語を由来とするタチアオイの学名は「Althaea rosea」で、"rosea"は野バラのような見た目を指しています。"Althaea"はギリシア語の「治療」を意味する"althaino"との関連が指摘されています。
学名が意味するようにタチアオイは昔から薬草として利用されてきた植物で、日本へは本来、薬草の役目として入ってきた植物なのです。
タチアオイの効能
タチアオイの薬草としての効能は、「咳」「傷や炎症」「潰瘍」を緩和したり、「利尿」や「整腸」を促したりといった点が挙げられます。具体的な用法としては、古くは水に漬けた葉を飲んだり、その葉を使って傷口に塗ったりしていたそうです。現在は、やわらかい葉や花をハーブティーとして愛用する人もいます。
タチアオイの花言葉に当てはめると、"人間が「平安」に暮らすための治療薬としての「使命」や役目がタチアオイにはある"と考えてみるのも楽しいですよね。
タチアオイはポジティブな花言葉が多い
アオイ科のタチアオイ(立葵)の花言葉は、ポジティブな意味では「豊かな実り」や「威厳」などが、少しネガティブな意味では「野心」があります。いずれも、いくつもの花を付けてまっすぐ天に向かう姿が由来です。
開花時期は梅雨の頃ですが、次々に花を咲かせるタチアオイは、どんよりした梅雨景色を華やかにしてくれます。昔からタチアオイが人気なのが分かる気がします。タチアオイが誕生花の人には切り花の他に、絵画やモチーフにした小物などをプレゼントするのも素敵ですね。
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出典:photo-ac.com