カモミールには種類がある
カモミールは世界で愛されている香りのよいハーブです。カモマイルとも呼ばれ、ギリシア語で「大地の林檎」という意味があります。和名は「加蜜列(カミツレ)」で、聞いたことがある方も多いでしょう。
カモミールにはいくつか種類がありますが、主にジャーマン・カモミールとローマン・カモミールに分けることができます。ジャーマン・カモミールはキク科のシカギク属で、ヨーロッパや中央アジア、中国、朝鮮半島が原産です。ローマン・カモミールはキク科のローマンカミツレ属で、西ヨーロッパや北アフリカなどが原産となります。
カモミールの特徴を知って種類を選ぼう
日本では一般的にカモミールというとジャーマン・カモミールの種類のことをさします。カモミールティーでお馴染みなのもジャーマンの方です。ジャーマンとローマンの花や育て方はよく似ていますが、植物の特徴が多少異なるので、選ぶ際に知っておくと便利ですよ。それでは、種類による特徴をみていきましょう。
ジャーマン・カモミール
ジャーマン・カモミールはキク科のシカギク属で、一年草です。草丈は50cm前後で花は林檎に似た香りがします。この種類の茎はまっすぐ伸び、葉はコスモスのような形です。開花時期は5月で、デイジーのような白い小花(直径2~3cm)をつけます。
花の中央の黄色い部分は盛り上がって(筒状花)、周りの白い花は満開時に下の反るのが特徴です。ローマン・カモミールの場合は、中央の部分はそこまで盛り上がりません。
ローマン・カモミール
ローマン・カモミールはキク科のカマエメルム属で、多年草となります。この種類の草丈は25cmほどで、茎に一つだけ花をつけるのが特徴です。また、摘んだときに花だけでなく葉や茎も林檎の香りがします。開花時期は、6~7月でジャーマンより少し花は大きめです。
茎は毛状に地面を這うように伸びるので、芝生としてよく利用されます。一緒に植えると植物を元気にするコンパニオンプランツになるハーブです。カモミールティーでは、ジャーマンより若干渋みがあります。
カモミールを育てる栽培環境
家庭で園芸栽培を楽しむ際に、植物によって育て方に気をつけておくポイントがあります。カモミールにとって必要な栽培環境をおさえておきましょう。
日当たりと用土
カモミールの園芸は、日当たりと風通しのよい場所が栽培環境に向いています。水はけのよい土を使って栽培し、土の表面が乾いたら水をたっぷりと与えましょう。
カモミールは高温多湿が苦手なので、夏場の水やりは早朝か夕方の涼しい時にします。日中に水やりをすると土の温度が上がり植物を傷めてしまうからです。また、暑い時期の直射日光も苦手なので、日中は日陰になるように鉢を移動させたり、地植えでは半日陰の場所を選んだりしましょう。
肥料と害虫
カモミールは肥料のやりすぎに注意しましょう。植え付け時に緩効性の化成肥料を混ぜておけば十分です。病虫害は、蒸れる状況下で発生しやすいので、植えるときには株と株の間の感覚をあけるようにします。植えた後もときどき茎を間引いて風通しをよくしましょう。
また、窒素過多はアブラムシの発生につながります。ついてしまったら駆除に使うのは即効性のあるスプレー式の殺虫剤です。収穫時期が農薬の有効期限にあたらないように気をつけましょう。
うどんこ病
気温が高くなってくると、カモミールには白いカビが葉や茎、花に見られることがあります。これはうどんこ病で、放っておくと枯れてしまうことがあるので、見つけたらすぐに専用の薬剤で処置をしましょう。
原因として考えられるのは、肥料の与えすぎや日陰、近くにうどんこ病にかかっている植物があることです。また、うどんこ病にかかったときの土は使用しないようにしましょう。
カモミールの苗からの育て方
カモミールの育て方は、苗からと種からの両方がありますが、種からでも簡単です。また、地植えでも鉢植えでも育ちます。地植えにすると、こぼれた種で広く増えていき家庭園芸を楽しめますよ。
苗は3~5月頃、園芸店やフラワーショップ、ホームセンターなどで販売されます。種も袋に入って売っているので、たくさん育てたいときは種から育ててもよいですね。苗を選ぶ際は、まだ葉だけの状態の丈夫なものを選んだ方が、植え付け後にたくさんの花を楽しむことができますよ。
鉢植えの場合
鉢は購入時のポットよりひと回り程大きなものを用意し、鉢底ネットを入れて通気性をよくし土の流出を防ぎましょう。次に、水はけのよい培養土を鉢底が隠れる程度入れます。ハーブ専用の土も売られているのでおすすめです。カモミールの苗を鉢に入れ、残りの土を入れて整えたら水をたっぷり与えましょう。
植え付けた日を書いたラベルをつけて成長を観察してもよいですね。複数の苗を植えるときは、大きめのプランターを用意して株同士の間隔をあけて植えるようにしましょう。
部屋やベランダで育てられる?
カモミールは、部屋やベランダでも育てることができる植物です。暑さに弱く寒さにはそこそこ強い特徴があるので、15~20度くらいの環境で育てるとよいでしょう。
部屋で育てるときは明るい窓辺に置き、風通しをよくします。部屋でも夏場の直射日光はあまりよくないので気をつけてください。ベランダでの育て方も同じようなことに気をつけますが、ベランダの場所によって日陰になりすぎていないか置き場所を考慮しましょう。
地植えの場合
カモミールを地植えする場合は、固くなっている土をよく掘り返して水はけがよくなるように苦土石灰と腐葉土を混ぜておきます。さらに緩効性の化成肥料も混ぜましょう。苗を植え付ける箇所は水が溜まらないように、少し土を盛り上げておきます。
有機質肥料を使用する場合は、植え付けの一カ月前に土に混ぜ込んでおくと馴染みますよ。地植えの場合は、暑い時期に直射日光を当てすぎない半日陰の場所を選ぶと長持ちするでしょう。
カモミールの種からの育て方
種のまき方
種は3~4月の春まきと9月~10月の秋まきがあります。秋に種をまくと、花が咲き始めるまでの期間が長いため、株が大きくなり花もたくさんつきますよ。土は肥料の入っていない種まき用の土を使用します。
容器は底に穴が開いている小さな容器を利用して土を入れ、種をまき少量の土で覆うか覆わないかくらいにしましょう。カモミールの発芽は日光を必要とするので、深く埋めてしまうと発芽しないという例がしばしばあります。
発芽後の管理
土が乾いたら霧吹きなどを使って水を与えます。発芽後は過湿になると根腐れしやすいため、水はけよくしておきましょう。葉同士が触れているところは間引きをします。本葉が1~2枚になったら根を折らないようにそっと取り出して、ビニールポットに植え替えましょう。苗が一カ月くらいでしっかりとしてきたら、鉢や庭に植え付けます。
苗を作らず直に鉢や庭に種をまく場合は、発芽してから適度に間引きをし間隔を空けるようにしましょう。
寄せ植えで植えてはいけない植物はある?
カモミールを寄せ植えするときは、仲間のキッチンハーブなどを一緒にすると実用的です。しかし、一緒に植えてはいけないハーブがあります。ミントやタイム、ローズマリーなどです。これらの植物は繁殖力が非常に強いため、カモミールを枯らせてしまいます。
一方、カモミールと相性がよいアブラナ科のクレソンやルッコラは元気にしてくれるのでおすすめです。
カモミールの花の時期の栽培
摘心と切り戻し
ジャーマン・カモミールの苗が20cmになったころに茎の先端を摘心(新しく伸びてくる葉茎や枝を摘み取ること)すると株が丈夫になります。また、花の収穫後、蕾が無くなってしまった茎は切っておきましょう。
花の収穫
カモミールの開花時期はだいたい5~7月です。開花して花の中心の黄色い部分が膨らんで、白い花弁が反り返る寸前に収穫をします。種ができる前にこまめに花を収穫することで花の時期を長く楽しめられるでしょう。
たくさん収穫して長期保存したい場合は、洗って水分をしっかりと取り冷凍すれば、翌春まで香りのよい状態で保存できます。乾燥したものを密閉して冷蔵保存をしても、香りや色が良い状態で長持ちしますよ。
カモミールの効能
香りに特徴があるカモミールは、不眠やイライラを鎮め、リラックスさせる効果が期待できます。消炎や鎮静、強壮などの薬効作用があり、緩和する症状はストレスや皮膚炎、胃炎、月経痛、気管支炎などです。
料理やハーブティーなどに使えば体内から効果を発揮します。また、ハーブバスとして用いれば、冷え性改善や保湿、美肌など美容の面でも効果的なので嬉しいですね。カモミールオイルにすると、アロマを楽しむことができます。
カモミールを栽培してお家時間を楽しもう!
カモミールは、育ったらそのままの花姿を観賞したり、香りや味を楽しんだり、抽出したエキスを肌につけて癒されたりといった楽しみ方ができる親しみやすいハーブです。身体にもよいので生活に取り入れられたらよいですよね。
今までカモミールを商品でしか知らなかった方も、今回の記事で育て方を見てご興味いただけたでしょうか?育て方のポイントをおさえて、ぜひご家庭でもカモミールを育ててみてくださいね。
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出典:pakutaso.com