イワシャジンって?
イワシャジンとは
イワシャジンとは漢字で「岩沙参」と書き、非常に人気の高い山野草で、キキョウ科・ツリガネソウ属にする多年草。日本本州の関東地方、中部地方に分布し、山岳地帯の渓谷の岩場などに自生しています。
イワシャジンの学名とはAdenophora takedaeで、takedaeというのは高山植物研究家である武田久吉氏に因んで名付けられました。見た目は儚さそうなか弱い印象を受けますが、栄養分のあまり取れない過酷な環境にも耐え忍ぶことができるほど、実はとても逞しい多年草なんです。
原産地と特徴
原産地と特徴(草丈など)
イワシャジンの原産地は日本。原産地である日本の本州の中部から東海地方の一部に分布し、山地や渓谷の湿度のある岩壁などに自生します。草丈や姿は自生地によって多少の違いがあり、夏の終わりから秋にかけて開花時期を迎えます。
イワシャジンは俯いた鐘のような上品な花姿をしています。青紫の奥深い花色の花を咲かせ、花弁は5方向に分かれます。春に芽を出し、花を咲かせると、その後冬の初めには葉や茎を枯らし、冬至芽と呼ばれる芽と根の状態になり越冬します。
イワシャジンの種類と花期
イワシャジンの草丈は30~70cmと大型の草丈の山野草で、春の季節になると芽を出し、秋になると花が咲き、冬には枯れるという生育サイクルを毎年繰り返します。ひし型の細い葉っぱを株元にたくさん広げ、花は釣り鐘型をしています。
変種は地域ごとに多く、場所によって異なる姿が楽しめるのもイワシャジンの魅力です。イワシャジンの花色は紫色が一般的ですが、最近は白い花なども出回って、自分のお気に入りを見つけられる珍しい品種に遭遇する機会も増えてきました。
花色と種類:ホワイトのイワシャジン
イワシャジンの花色には白色の種類があり、シロバナイワシャジン(白花岩沙参)という名前が付けられています。通常のイワシャジンの種類とは異なり、キキョウ科ツリガネニンジン属に属し、まるで見た目が鈴蘭のように可愛い種類ですね。
イワシャジンの用土は大体のものに順応し、湿度のある粘土質の場所ではよく育ってくれ、花色もとっても綺麗な種類です。紫のイワシャジンは儚げなイメージですが、白色は純粋さや純朴さを感じさせます。
イワシャジンの開花時期
イワシャジンの開花時期は9月~10月。花期が近づくと、茎の先端から花序(花序とは枝上の花の配列状態のこと)を伸ばし、1.5センチから2.5センチ程の花を多数咲かせます。一重咲きのものもあれば、二重咲きの品種も存在します。茎は細く長く、長さ30~70センチで垂れ下がるような姿をしています。
イワシャジンの花は細長い筋のような花柄を有しており、なんとも言えないほど儚げで、かつその中にある逞しさを感じさせてくれる花を開花させます。
イワシャジンの育て方①栽培環境
育て方:栽培環境(春〜夏)
イワシャジンを健やかに育てるポイントとは、成長にあった環境を季節ごとに整えてあげること。園芸初心者には少し難しいと言えるかもしれませんが、よく理解し、努力することでイワシャジンの栽培に挑戦できるでしょう。
イワシャジンは、春から夏にかけては発芽し茎葉を覆い茂らせる成長期、日当たりのいい場所で育ててあげてください。季節によって育て方を変えなければならないので、手間隙はかかりますが、それだけ愛着のわく繊細で可愛らしい植物です!
育て方:梅雨の季節
梅雨明けからは茎がすくすくと立ち上がる時期。真夏の直射日光には弱いので、そういった強すぎる日差しを避け、反日陰の涼しく落ち着いた環境に移動させてあげましょう。元々は水辺に自生する植物なので、極端な乾燥を嫌います。
この時期は株の周囲に打ち水をしたりして用土を湿らせるように努力してください。湿度が肝心です。そして涼しくなり始める秋には再び、日当たりの程よい場所に移動させ、常に湿度を保つようにしましょう。
育て方:お庭で育てる場合の工夫
自生する環境に順応する賢い植物なので、努力を怠らなければしっかり根付いてくれます。しかし、湿気こそが要なのでコンクリートの上などで栽培するとすぐに枯れてしまいます。
日陰の岩に自生する植物のため、お庭でガーデニングに取り入れる際には大切なポイントがあります。それは、大きな木の下に日陰を作り、そこに岩などを置いてその場所に植えてあげること。そのように栽培することが非常におすすめで、イワシャジン自体居心地の良さに長持ちしてくれることでしょう。
育て方:鉢植えでの栽培
イワシャジンを育てる際に、栽培方法を鉢植えか地植えかで迷われるかもしれませんが、鉢植えで育てることもおすすめです。鉢植えは、水はけがよく通気性のある深めの山野草鉢が良いでしょう。釉薬のかかった磁器鉢は、多湿になるので避けるようにしてください。その他プラスチック製などの鉢植えがよく見掛けられますが、それよりも、通気性のよい素焼き鉢がおすすめです。(素焼きの鉢植えとは釉薬をかけずに高音でそのまま焼いた鉢のこと。)
イワシャジンの育て方②栽培方法
育て方:種まき
種まきについてご紹介します。種まきに関しては、秋ごろに種を収穫したものを、冷蔵庫で保存しておき、春になったら種まきをすると良いでしょう。種まきをした後、種は1ヶ月から2ヶ月で発芽して、秋には2枚から4枚の栄養葉に成長していくので、そこから早いものであれば、2年ほどで開花します。
種まき方法ですが、少し穴をほって埋めるという通常の簡単な方法をイメージしていただければ大丈夫です。この点においては、栽培初心者でも簡単ですね。
育て方:用土
イワシャジンを生育するのに使用する用土は、水はけのよいものが相応しいとされています。水はけと水持ちのいい土といえば、市販の山野草用の培養土の中粒と小粒を混ぜたものが良いです。
また上級者編になりますが、さらには、3ミリから10ミリの日光砂、硬質鹿沼土、軽石を4:4:2の割合で加えた用土を混ぜ込むと最適です。鉢は、通気性と水はけもよいもの、またイワシャジンの茎が垂れ下がるため、鉢は深めのものが良いでしょう。
育て方:水やり
イワシャジンは乾燥が苦手なので水やりは重要。水が不足するだけで枯れてしまうことだってありますので、注意してください。夏場は特に気をつけなければならず、1日に最低一回は水やりが必要です。
猛暑の季節は1日一回の水やりでも乾燥してしまうことがあるので、その際は何度か水やりをしてあげてください。しかし、イワシャジンは水が溜まってしまう状態は嫌うので、必ず水捌けの良い状態をキープすることが要です。とても繊細な性質をしていますよね。
育て方:肥料
栄養葉が出始める頃から6月までは、月に2〜3回液体肥料を与えてあげましょう。また花が咲き終わった後から秋頃までも同様に液体肥料を施してあげてください。肥料を多く与えてあげると花つきが良くなります。
しかし、ここも重要なポイントで、あのイワシャジンの風流でどこか儚げな美しい花姿を再現したいなら、あげすぎもダメなポイントとなってしまいますので気をつけましょう。肥料を控えめにすると、本来の草姿・花姿を楽しむことができます。
育て方:植え付け
植え付けも植え替えも適切な時期は、3月上旬の芽を出す時期の前から4月上旬頃(栄養葉が出始めるころ)、また、秋になり葉茎が枯れる10月中旬~11月上旬(植え付けに最適)です。植え付けに相応しい鉢は水捌けがよく深い腰高鉢が適しています。鉢植えに関しては上記にすでにご説明した通りです。
鉢底に元肥として少しだけ緩効性化成肥料(緩効性化成肥料とは肥料濃度を急激に高めずに効果が持続するとされた肥料のこと)を入れておきましょう。
育て方;植え替え
また植え付けの他、植え替えについてですが、2〜3年に一度は植え替えを行うようにしてください。植え替えの際は、イワシャジンの古い根をしっかり取り除きましょう。カッターで切り取り除くだけととても簡単。
重要になってくるポイントが一つあり、植え替え時にカッターで切った古い根の断面には必ず「殺菌剤」を塗布するようにしてください。そうすることで元気で健やかな花を咲かせてくれます。また、新しく配合して準備した用土で植え替えるようにしましょう。
育て方:株分け
イワシャジンは、種まきや株分けで増やすことが出来ます。
株分けは、植え替え時に行いましょう。無理やり引き裂いたりするのはしないように株分けしてください。手で優しく株分けを行って下さい。根が絡んで大株となって割れない場合は、ナイフを使って切り分けることをおすすめめいたします。
その際は、芽の位置をよく確認し、芽が付くように切り分けて下さいね。株分け自体初めての園芸初心者には少し難しいかもしれませんが頑張ってください!
剪定と採取、害虫対策と冬越し
育て方:剪定
イワシャジンの枯れ始めた花茎を切り剪定を行いましょう。せっかくこんなにも芳しく風流な花姿をしているので、枯れた部分があっては勿体ないです。こまめに剪定を行い、美しい姿を保つようにしましょう。
剪定方法はいたって簡単で、好きな場所で、枯れた部分をジョキっと切るのみです。剪定が初めての園芸初心者でも簡単のおすすめな方法ですね。家庭にお子様がいればお手伝いをしてもらい、親子で自宅ガーデニングをするなんてのも素敵です。
育て方:種の採取と種まき
イワシャジンの花は、咲いたあとに子房(花のめしべの下部の膨らんでいる部分)が茶色く変化し膨らみます。子房が膨らんだら、子房ごと採取してください。その子房を日陰で乾燥させましょう!
子房の水分が抜けて完全に乾燥したら、紙などを敷き、その上で子房から種を取り出します。イワシャジンの種は非常に細かく細いので大きめの紙の上で行うことをおすすめします。採取した種はそのまま種まきしてしまうか春まで冷蔵庫で補完すると良いでしょう。
育て方:害虫対策
イワシャジンはかび病(病気)うどんこ病(病気)軟腐病(病気)などが発生しやすいです。かなりデリケートな種類の植物のため、これらの病気には非常に注意が必要です。高温多湿の環境では、発生しやすくなってしまいます。
また、花にストレスを与えてしまうと、株が弱るうどんこ病にかかってしまいます。夏場は風通しの良く涼しい場所で栽培してあげるよう気をつけ、できる限り病気を招かないよう、病気の発生を抑制しましょう。
育て方:冬越しと耐寒性
イワシャジンは耐寒性はあるので、戸外での冬越しが可能です。雨を避けることができ、凍りついてしまう心配のない、それなりに保温性のある場所で管理してあげましょう。
ただし、耐寒性があると言っても、寒すぎて土が凍ってしまっては冬越しが出来ないので注意してあげてください。安心して冬越しができるよう温度管理には注意しましょう。冬場は、鉢植えに不織布のようなものを被せたり、穴を開けたビニール袋などで鉢をカバーしてあげたりして保温してあげましょう。
おわりに
今回は、植え付けや植え替え、株分けの方法から大切な栽培環境までイワシャジンの栽培方法をおおくりしてきました。花色は主に紫ですが、谷間の白雪のように高貴で繊細な花、イワシャジンの育て方について解説させていただきました。いかがでしたでしょうか。
ご説明した通り、イワシャジンは園芸初心者には少し難しい、中級者から上級者向けの花かもしれませんが、ぜひ、知識と経験をためて栽培に挑戦してみていただきたいものです。
日本原産の花がもっと気になる方はこちらもチェック!
イワシャジンの他にも日本原産の花の記事をお読みいただけます。アセビとアヤメ、花色も素敵なので写真も楽しんでくださいね。ぜひチェックしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございます。
皆さんに素敵な花日和が訪れますように。

アセビとは?特徴を踏まえた立派な育て方・栽培のコツをご紹介!
春になるとスズランに似た可愛らしい花を枝いっぱいにつけるアセビ。常緑樹なので青々と美しい葉も1年中楽しむことが出来、庭のシンボルツリーとして...

アヤメの特徴と育て方!色彩豊かな花を咲かせるアヤメを上手に育てよう!
アヤメ園でよく見た、あの鮮やかなアヤメ。自分の庭にも、アヤメを招きたい!と思っていませんか?アヤメを育てるのは、そんなに難しいことではありま...