VS20/DUNLOP
VS20の魅力を解説:はじめに
DUNLOPのVS20は登山やツーリングで愛用されている2人用のコンパクトなテントです。山岳用テントの歴史を紡いできたVシリーズの血統を受け継ぎ、タフなコンディションでのキャンプで人気があります。トラブルのリスクを極限まで回避した仕様は放浪系ツーリングライダーにとっても魅力的です。
ここではDUNLOPのVS20の魅力を紹介します。なお、この記事は2020年3月29日現在の情報をもとに作成しますことをご了承ください
山岳用テントのあるべき方向性を示す
DUNLOPとプロモンテの違い
VS20を製造・販売しているHCSのテントには、DUNLOPブランドとプロモンテブランドがあります。DUNLOPブランドとプロモンテブランドの違いは方向性。DUNLOPは耐久性重視のブランドで、プロモンテは軽量化重視のブランドです。
DUNLOPが乗用車ならプロモンテはレーシングカーとイメージして差し支えありません。DUNLOPブランドとプロモンテブランドに優劣はなく、選択肢だと捉えましょう。
ポリエステルとナイロン
DUNLOPのテントには厚手のポリエステル生地が用いられています。一方、プロモンテのテントには薄手のポリエステルやナイロンが使い分けられ、軽量化されているのが特徴です。
ポリエステルはナイロンより引き裂き強度が低いため、VS20は厚手の生地を用いることで耐久性が高められています。テントの総重量は重くなってしまうのですが、ポリエステルは水を含みにくく、濡れても乾きやすいので、結果的にパッキング重量を軽量化でできるのです。
他のテントメーカーと比較すると
他のテントメーカーと比較しても、VS20には独自性があります。アライテントの山岳用テントはすべてナイロンです。モンベルの山岳用テントは本体の通気素材にポリエステルが用いられているものの、フロアシートやフライシートはナイロンです。ちなみに、モンベルはレジャー用テントでもフロアシートはナイロンが用いられています。
では本題!VS20の耐久性や耐水圧を確認し、設営方法やたたみ方、レビュー評価や注意点を解説しますね。
VS20の携行性
VS20は厚手のポリエステル生地が用いられているにもかかわらず、収納サイズはコンパクトです。シングルウォールテントほどではありませんが、登山や徒歩旅、自転車ツーリングといった人力移動で威力を発揮する収納サイズだといえます。
一方、VS20は耐久性が重視されているため、総重量は軽量ではありません。人力移動用と動力移動用の中間といったところです。耐久性の高さをとるか?重量の軽量さをとるか?が選び方の基準となります。
サイズと重量
収納サイズは申し分ない
VS20の収納サイズは、本体で山岳用の夏用シュラフと同等かひとまわり小さいレベルです。ザックへのパッキングはもちろん、自転車用のサイドバッグやバイクのシートバッグへのパッキングもしやすいですね。
VS20の収納サイズを比較すると、1人用のVS10とは体感できるほどの違いはなく、プロモンテのVL27とはまったく同じ。アライテントのトレックライズ1やモンベルのステラリッジテント2と比較しても、そん色ない収納サイズです。
サイズと重量の比較
VS20の総重量は1人用のVS10より100g重く、プロモンテのVL27より380g重いですね。しかし、収納サイズは体感できるほどの違いではありません。
1gでも荷物を軽量化したいのであればVS10を選択する方法もありますが、その引き換えにインナーテントの幅が30cm狭くなってしまいます。また、インナーテントのサイズが同じなのに380g軽いVL27も魅力的ですが、その引き換えにテントの生地が薄手になってしまいます。
サイズと重量の比較 | ||||
VS20 | VS10 | VL27 | ||
収納サイズ (cm) |
本体 ポール |
Φ15×25 Φ9.5×43 |
Φ14×25 Φ9.5×43 |
Φ15×25 Φ9.5×43 |
インナーテント のサイズ(cm) |
間口 奥行 高さ |
205 120 100 |
205 90 100 |
205 120 100 |
総重量(g) | - | 1,870 | 1,770 | 1,490 |
VS20のサイズや重量は中途半端さが魅力
100gや380gの軽量化をどうとらえるかが選び方の分かれ道。居住性の高さを捨ててでも100g軽量化したい、神経質な取り扱いを強いられてでも380g軽量化したい、そんな場合はVS10やVL27がおすすめです。
登山では100gや380gの重量差が負担になることもありますので「総重量に体感できるほどの違いはない」とは明言できません。しかし、徒歩旅や自転車ツーリングといった低地でのアドベンチャーでは、VS20は心強い相棒になると断言できます。
VS20の構造
VS20はインナーテントが吊り下げ式のダブルウォールテントです。吊り下げ式のテントは強風下でポールに負担がかかりやすいのがデメリットなのですが、VS20は強風に強い構造になっているのが特徴です。
ポールの交差箇所を半固定する天井部のセンターハブ、吊り下げフックを取り付けている荷重分散メッシュ、インナーテントとフライシートで地の目を45°ずらせた生地など、テントの剛性を高める工夫が随所に施されています。
設営方法
VS20の設営方法は①インナーテントを地面に広げる②倒立スリーブにポールを差し込む③インナーテントをフックで吊り下げる③フライシートをかぶせて、内側のベルクロでポールと固定する④フライシートをインナーテントにバックルで固定する⑤ペグダウンする、この4行程です。
2本のポールはセンターハブで連結されています。強風下では、インナーテントの四隅をペグダウンしてからインナーテントを立ち上げる設営方法がおすすめです。
グランドシート
VS20のフロアシートには厚みがあるので、グランドシートを使用しない人も多いですね。グランドシートはフロアシートが地面と擦れて傷まないように敷くためのものですが、かつてはインナーテント内にレジャーシートを敷く方法と二分されていました。
地面にグランドシートを敷くとフロアシートとの隙間に雨水が侵入し、フロアシートがウォーターベッド状態になります。グランドシートを敷くなら、フロアシートより小さめのサイズがおすすめです。
ペグとペグダウン
VS20には軽量なアルミ製のペグが付属しています。登山ではペグを用いず、石を錘にテントを設営することも多いので、ペグは強度よりも軽量なものが好まれます。レジャーキャンプではテントサイトの地面が硬いキャンプ場もありますので、ペグは別途用意するのもありです。
しかし、強度の高いペグは重いですよね。フライシートをペグダウンする4本だけを強度の高いものに替え、あとはアルミ製の付属ペグを用いる方法もあります。
たたみ方
VS20のたたみ方は①フライシートを細長く折りたたんで丸め、フライシート用収納袋に入れる②インナーテントを細長く折りたたんで、フライシート収納袋を芯にして丸め、本体収納袋に入れる③ポールを折りたたんで収納袋に入れる、この3行程です。
VS20の折りたたみ方は取扱説明書に記載されているものの、難解ゆえに自己流のたたみ方をしているユーザーも多いですね。本体収納袋はタイトですので、しわにならないように折りたたみ、空気を抜きながら丸めましょう。
VS20のレビュー評価
VS20ユーザーのレビュー評価も確認しましょう。VS20はフライシートの耐水圧が明記されていませんので、耐水性は気になるとことです。たたみ方のコツはあるでしょうか?前室の広さについてもチェックしましょう。
ちなみに、VS20のユーザーには「登山のテント泊もするし、バイクでのキャンプツーリングもする」という人が多い印象を受けます。VS20はいくつもの使い方ができるテントだと捉えて問題ありません。
耐水性のレビュー評価
VS20ユーザーのレビュー評価を確認すると、耐水性は問題ないとのこと。嵐でも浸水しないとのことですので、耐水圧は2,000mm程度あると推し量れます。
ツーリング用のRシリーズも含め、DUNLOPのテントは耐水性が高く評価されています。フライシートの耐水圧は気になるところですが、それだけを基準にするのも考えようです。耐水圧よりもDUNLOPの信頼性に魅力を感じたユーザーの評価を紹介します。
9月後半、中央アルプスで使用。夜中嵐に遭遇。風の影響は受けたが、浸水はなし。朝起きたらテントの周りに海外ブランドのテントの残骸。日本で使うなら、日本の気候向けに生産された物を使うべきと実感。
たたみ方のレビュー
VS20ユーザーのレビュー評価を確認すると、フライシートのたたみ方が分かりにくいというコメントは見かけるものの、設営と同様に「撤収も簡単」というコメントは多い印象を受けます。
フライシートのポリウレタンコーティングは折り目から劣化することが多いので、毎回同じたたみ方をしないのが得策です。フライシートを専用の収納袋に入れず、本体と一緒に丸める方法もあります。「フライシート用の収納袋に入ればOK」という口コミ情報を紹介しますね。
フライシートのたたみ方がわかりにくく、ネットで軽く調べても同じような人はいても結局わからずじまいでした。まあ適当に二つ折りにしていって収納袋にぎゅうぎゅう入れていけば普通に入りはします。
前室
VS20ユーザーのレビュー評価を確認すると、前室はやや狭い印象を受けます。登山や徒歩旅といったストイックなキャンプではブーツ置き場として重宝しますが、料理ができるほどの広さはないとのこと。雨天時の料理をする方法は考える必要がありますね。また、VS20の前室は片側にしかありません。
レジャーキャンプには両開きの2020年限定モデルがおすすめです。総重量は2100gと重くなりますが、動力移動には軽量なテントだといえます。
食事を外で済ます、弁当で済ます、という人にはいいが、前室での料理は無理があり別売りのタープ等必要。前室はブーツ置き程度に考えたほうが賢明。
VS20の注意点
VS20は人力移動から動力移動まで幅広く使えるテントです。しかし、それはモンベルのステラリッジやアライテントのトレックライズと比較しての話。レジャーキャンプにも使えるテントという意味であって、VS20が山岳用テントであることを忘れてはいけません。
自動車でのソロキャンプなら、レジャーキャンプに特化したテントも選択肢に入れましょう。屈強な登山者のテント泊と楽しむためのソロキャンプではテントに求めるものが違います。
VS20は山岳用のテント
注意点:出入口は半分
VS20のインナーテントの出入り口は、長辺側パネルの半分しか開きません。レジャーキャンプ用の小型テントはフロアにお尻を下ろして過ごせますが、VS20ではテントの外でくつろぐことになるのが注意点です。
VS20でレジャーキャンプをするなら、別途タープがあったほうが快適です。しかし、タープでパッキング重量が増えるとVS20のメリットが弱くなりますので、コールマンのツーリングドームやモンベルのクロノスキャビンが魅力的に映ります。
注意点:冬キャンプ
VS20の出入り口は片側にしかないうえに半分しか開きませんので、冬キャンプでの保温性に期待できます。冬キャンプでの保温性はテントよりもシュラフに頼るのが得策ですが、インナーテントのメッシュ部分が多いテントよりは暖かいですね。
VS20に使える冬用の外張り(VL25S)は積雪期の登山用です。低地での冬キャンプには適していません。冬用の外張りは保温性に期待できるものの、防水性は備えていないからです。
注意点:半袖で過ごす季節
VS20は標高の高い場所でのキャンプを想定したテントですので、半袖で過ごす季節に低地でキャンプをすると、通気性の悪さに蒸し暑さを感じるかもです。低地でのレジャーキャンプも想定してVS20を選ぶなら、先述した両開きの2020年限定モデルも選択肢に入れましょう。
しかし、VS20の屈強な耐風性は旅系キャンパーにおすすめ。徒歩旅や自転車ツーリング、バイクでのキャンプツーリングでは、悪天候時の逃げ場が少ないですものね。
VS20の魅力を解説:まとめ
1つのテントを幾通りにも使う人におすすめ
DUNLOPのVS20はバランスの良さが光る山岳用テントだといえます。厚手のフロアシートは傷みにくく、グランドシートの必要性を感じさせませんので、その分パッキング重量を軽量化できます。また、ポリエステル製のフライシートは紫外線による劣化が緩やかで、キャンプ場をベースに散策するレジャーキャンプにもおすすめ!前室は広くないので、レジャーキャンプにはタープが必要になりますが、バイクや自動車での動力移動用のテントとしては軽量です。
DUNLOPは信頼のブランド
VS20/DUNLOP
DUNLOPのVシリーズは山岳用テントの歴史を吊り下げ式インナーで塗り替えた名幕です。耐水性にも絶大な信頼性があり、かつて北海道ライダーの間では「どんな豪雨でもDUNLOPのテントだけは浸水しない」とうわさされたほどです。
現在、DUNLOPのテントは山岳用のみとなり、レジャーキャンプ用のRシリーズは廃番となりました。「レジャーキャンプ用だけど人力移動にも使える」そんなRシリーズの復活に期待したいですね。
テントが気になる人はこちらをチェック!
ビッグアグネスやアライテントと比較し、VS20の独自性を確認しましょう。レジャーキャンプなら前室が広いモンベルのクロノスキャビンもおすすめです。
最終的にテントはデザインで選ぶのが正攻法です。テント泊やキャンプは体力を消耗します。かっこいいテントは疲れた心も癒してくれ、キャンプへ行きたくなる気持ちを動かしてくれます。VS20はクラシカルなシルエットがかっこいいと評判ですよ。
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