栗駒山はどんな山?
栗駒山(標高1,627メートル)は奥羽山脈の一部で、秋田県の神室山や岩手県の焼石岳とともに、栗駒国定公園および栗駒山・栃ヶ森周辺の森林生態系保護地域として指定されています。
栗駒山の山頂部は宮城県と岩手県の境界となり、山腹は秋田県にも接していることから宮城県側・秋田県側・岩手県側の三県からアプローチできます。栗駒山にロープウェイはありませんが、トレッキング気分で楽しめる初心者向けのコースもあります。
左右対称の美しい成層火山
栗駒山は活火山ですが、火山としての歴史は80万年前以降と比較的浅く、最新の噴火は1944年(昭和19年)の水蒸気爆発となります。火山としての見どころは、山頂北側の溶岩ドーム(剣岳)や馬蹄カルデラ、岩屑なだれなど。
地震の影響も受けており、2008年の岩手宮城内陸地震で大規模な地滑りが南東麓で発生したため、宮城県側の温泉では休廃業した施設も。火山は恵みと脅威が表裏一体であることを思い知らされます。
三県で別な読み方がある
一般的な名称は「栗駒山」ですが、秋田県と岩手県では栗駒山以外の別の読み方もあります。秋田県側では「大日岳」、岩手県側では「須川岳」との読み方がされているのです。
宮城県側でも栗駒山以外に「駒形岳」「神駒岳」などの読み方もされています。秋田県側・岩手県側・宮城県側の住民それぞれに、栗駒山に対する愛着と強い思い入れのあることがうかがえます。
栗駒山の楽しみ方は?
日本一美しい紅葉「神の絨毯」
栗駒山の山頂から見下ろす紅葉は「神の絨毯」と称えられ、日本一の美しさといわれています。栗駒山の標高1,400メートル付近は、ハイマツにドウダンやカエデなどの落葉かん木が混じる植生地。
その中に栗駒山の登山道があるため、神の絨毯を歩いて栗駒山の山頂を目指すという、誠にぜいたくな気分を味わえるのです。言葉を失うほどの美しい紅葉を眺めるために、紅葉時期には多くの登山者でにぎわう栗駒山です。
種類豊富な高山植物
栗駒山の高山植物の美しさはいうまでもなく、栗駒山の各コースでお花畑が観られます。栗駒山頂のミネザクラ、東栗駒コースのヒナザクラやミヤマキンバイ、須川温泉コースの名残ケ原の湿原に広がるワタスゲ、イワカガミやタテヤマリンドウなど。
さらに、ゆげ山方面のコイワカガミ、秋田湿原のミズバショウなど。栗駒山の9コースそれぞれにあるお花スポットが、栗駒山登山者の目を充分に楽しませてくれます。
栗駒山の山頂からの眺め
栗駒山の山頂は高木が生えないため、視界がとてもよくて全方位の眺め。晴れていれば、北の岩手山や焼石連峰、東の早池峰山に室根山、南は船形山で、西は雪を冠を持つ鳥海山や月山の大パノラマです。
深田久弥が、『日本百名山』に栗駒山を入れなかったことを悔やんだという記述がありますが、多くの人が同意することでしょう。ちなみに深田久弥のファン組織による「二百名山」には栗駒山が入っており、反対する登山者はいないはず。
栗駒山のおすすめ登山コース7選
栗駒山の登山コースは長距離コースも含め、宮城県側6コース、秋田県側1コース、秋田県&岩手県の1コース、岩手県側1コースのすべてが日帰りできます。登山口が重複しているコースもあり、天候などに合わせて選べるのも栗駒山の魅力。登山口によっては駐車場の他に洗面所・日帰り温泉・宿泊施設がありますが、テント泊は国立公園内のためできません。
難易度の低い初心者向けコースを始め、人気の高い7コースを取り上げました。
①東栗駒コース【宮城県側】
宮城県側の東栗駒コースは、レストハウス・大駐車場・洗面所・避難小屋のある標高1,110メートルの「いわかがみ平」からスタートします。
標高差513メートル・距離3.7キロメートル・標準所要時間は登りが120分、下りは90分。沢登りもありますが増水時でなければ難易度は中くらいで、それなりの体力があれば初級者にもおすすめです。
コースの楽しみ方と注意点
楽しみ方は、やはり登山の醍醐味である100メートルほどの新湯沢の沢登り。晴れていれば、栗駒山の雄姿を眺めながらの稜線歩きをトレッキング気分で楽しめることでしょう。短距離ながらも栗駒山登山の魅力がぎっしり詰まっています。
注意点は沢登りです。沢は雨の後は増水して危険なため、中央コースに変更してください。稜線の強風や雷、熊の出没にもご注意を。最新情報を、自治体などの関係施設に事前に確認しましょう。
おすすめの時期
栗駒山で高山植物を楽しみたい人は、ヒナザクラやミヤマキンバイなどの開花期の5月下旬から7月上旬に出かけましょう。5月のゴールデンウイークのいわかがみ平は、観光客と登山者、山スキーヤーで大変ににぎわいます。
栗駒山の新緑は5月上旬以降ですが、6月上旬まで大規模な残雪があるため、視界不良のときはルートから外れないように注意してください。
登山口までのアクセス
登山口のいわかがみ平までの足は、現在バスが運行されていないため車かタクシーの利用のみです。紅葉時期の土日祝日は、栗原市のシャトルバスが運行されます。
東北自動車道若柳金成ICを降り、県道4号を西に進みます。国道4号に出たら左折してすぐ1キロメートルで右折、県道4号で岩ヶ崎へ。築館栗駒公園線の県道42号を西に進むと到着です。若柳金成ICから38キロメートル、約1時間かかります。
②中央コース【宮城県側】
中央コースの登山口は東栗駒コースと同じいわかがみ平のため、標高差も同じ513メートルです。距離は2.9キロメートル・標準所要時間は登りが90分と、ロープウェイはありませんが栗駒山頂への最短ルート。
登山口から標高1,408メートル地点までは、コンクリートと玉石の整備された四季を通して危険個所の少ない道のため、初心者向けです。栗駒山頂からのエスケープルートとしても使えます。
コースの楽しみ方と注意点
コースの楽しみ方は、標高1,400メートルあたりの中間地点から見える栗駒山の紅葉。標高を上げるたびに目に飛び込んでくる鮮やかな景色にうっとりすることでしょう。
他のコースと比べても季節を通しても危険個所は少ないですが、注意点は玉石とコンクリート道が濡れていると滑りやすい点です。急いで登り下りすると危険なため、初心者向けの栗駒山最短コースではありますが、慎重に進んでください。
登山口までのアクセス
登山口のいわかがみ平までは、最寄り駅のJRくりこま高原駅から市民バスで岩ヶ崎へ行き、そこからタクシー利用ですが不便なため、車かレンタカーがおすすめ。紅葉時期の土日祝日はシャトルバスが運行。
東北自動車道若柳金成ICから県道4号を西に。国道4号から左折して1キロメートル先を右折、県道4号で岩ヶ崎へ。県道42号を西進して到着。若柳金成ICから38キロメートル、約1時間かかります。
③表掛(御沢)コース【宮城県側】
宮城県側の御沢(表掛)コースは、標高800メートルの「旧いこいの村跡地」からスタート。施設は30台ほど停められる駐車場のみ。標高差826メートル・距離7.3キロメートル・標準所要時間は登りが5時間15分。
長距離な点や本格的な沢歩き、大雪渓などがある点から、ある程度の体力と技術が必要なため難易度は中・上級者レベル。初心者・初級者は登山の経験を充分に積んでから挑戦しましょう。
コースの楽しみ方と注意点
コースの楽しみ方は、約2キロメートルの本格的な沢登りを満喫すること。場所によってはせせらぎもあり、沢の様子が常に変化するのも楽しみたいところです。アイゼンがあれば安心な大雪渓も、とても登りがいがあります。登山者を満足させる、栗駒山の魅力がたっぷり凝縮されています。
注意点は、石飛八里での転倒や御沢の増水、雪渓歩き、山頂付近での雷など。下山ルートには不向きです。登山前に最新情報の入手もお忘れなく。
おすすめの時期
本格的な沢登りのあるコースのため、残雪が少なくなる7月以降がおすすめです。7月より前は、1,400メートル地点の御室から先に傾斜の雪渓が残るため、滑落の危険性が高いことからおすすめできません。
御室下の大雪渓が消えると、イワカガミ・ヒナザクラ・アオノツガザクラなどの湿性植物の桃源郷のようなお花畑が現れます。
登山口までのアクセス
最寄り駅のJRくりこま高原駅から市民バスで岩ヶ崎へ行き、そこからタクシー利用ですが、不便なため車かレンタカーがおすすめ。「旧いこいの村跡地」登山口は、いわかがみ平の4キロメートル手前のスノーシェルターに入る前の右側。
下山を表掛けコースではなく、東栗駒コースか中央コース(いわかがみ平登山口)にした場合は、「旧いこいの村跡地」登山口までの車道を4キロメートルも歩かなければいけないためご注意ください。
④裏掛(新湯)コース【宮城県側】
宮城県側の裏掛(新湯)コースの登山口は、表掛(御沢)コースから400メートルほど離れて対の関係になっている「旧いこいの村跡地」(標高835メートル)です。標高差806メートル・距離5.4キロメートル・標準所要時間は登りが4時間。登山口の施設は駐車場しかありません。
距離の長さや、石飛で渡る渡渉、7月まで残る大雪渓もあることから中級者・上級者向けレベルです。
コースの楽しみ方と注意点
このコースの楽しみ方はヒナザクラのお花畑のほかに、標高1,200メートル付近にある土石流発生地などの、岩手宮城内陸地震の爪痕を確認すること。大自然の脅威から、人生について何か感じるものがあるかもしれません。
注意点は、スタート直後の新湯沢渡渉の石飛び。橋はなく、降雨時や雨の後は増水していると渡渉できないので他のコースに変更しましょう。土石流発生地点は不明箇所があるため目印を見逃さないようにしてください。
おすすめの時期
湿地性の花が新湯沢の源流付近で多く咲き誇る、6月下旬から7月中旬がおすすめ。6月中旬より前は広大な残雪があるため、ルートファインディングが上級者でも難しく、やはり花の時期がよいでしょう。
栗駒山の紅葉は、上部にあるかん木地帯が9月下旬から10月上旬。10月中旬にはブナの葉が黄色く色づき見事です。
登山口までのアクセス
バスは不便なため車がベストです。登山者用の大きな駐車場がある「旧いこいの村跡地」登山口は、いわかがみ平の4キロメートル手前、右にカーブするスノーシェルターに入る手前の右側にあります。登山口はその筋向いです。
下山ルートを裏掛けコースではなく、東栗駒コースか中央コース(いわかがみ平登山口)にした場合は、「旧いこいの村跡地」登山口まで車道を4キロメートルも歩かなければいけないためご注意ください。
⑤天馬尾根コース【秋田県側】
秋田県側の天馬尾根コースは、秣岳(まぐさだけ・標高1,424メートル)を経由しての縦走となります。登山口は秋田県道282号の「天馬尾根登山口」(標高1,020メートル)です。標高差606メートル・距離5.8キロメートル・標準所要時間は登りが3時間30分。登山口の施設は駐車場しかありません。
晴天であれば天馬尾根をのんびり歩きながら山頂に到着できますが、距離が少し長めのため難易度は初級者以上レベルになります。
コースの楽しみ方と注意点
このコースの楽しみ方は、花の百名山にふさわしい栗駒山の、高山植物のお花畑と草黄葉が見事な「しろがね草原」の観賞です。高山植物の開花期は種類によって微妙に異なるため、お目当ての高山植物の開花期を事前にチェックして登ってください。天馬尾根からは眼下に、龍泉ケ原や須川高原も望めます。
注意点は、秣岳直下の横断個所、悪天候時の展望岩頭や山頂付近のやせ尾根の強風、雷など。
おすすめの時期
おすすめの時期は6月から10月で、秣岳近くにあるしろがね草原の高山植物やワタスゲなどの草黄葉が、非常に素晴らしい景色を見せてくれます。
高山植物の開花期は種類によって微妙に異なるため、お目当ての高山植物の開花期を事前にチェックして登ってください。晴天時には天馬尾根の稜線歩きが、トレッキング気分で楽しめることでしょう。
登山口までのアクセス
天馬尾根登山口は秋田県道282号沿にありますが、路側帯に数台しか駐車できません。春は山菜採りの人が多く、駐車できないこともあります。看板がありますが、走行中に見落としてしまいがちなのでご注意ください。
⑥須川温泉コース【秋田県側・岩手県側】
須川温泉コースの登山口は、秋田県と岩手県境の須川高原温泉(標高1,120メートル)。標高差506メートル・距離3.7キロメートル・標準所要時間は登りが2時間。施設は駐車場のほかに洗面所・温泉・宿泊施設・売店・ビジターセンターがあり、とても便利。
名残ヶ原入口付近の分岐から入る、下山時に使われることの多い「ゆげ山コース」「西回りコース」もあります。歩行距離も適度なため、難易度は初心者・初級者レベルでしょう。
コースの楽しみ方と注意点
このコースの楽しみ方は植物や火山地形などの観賞と多岐にわたっています。名残ヶ原の美しいお花畑や秋の草黄葉、オイラン風呂・地獄谷・青緑色の昭和湖などの火山地形、展望のよい稜線歩きなど。下山後に入浴できる日帰り温泉や買い物も楽しめ、まさに登山初心者向けの至れり尽くせりの登山コースです。
注意点は沢が増水したときは引き返すこと。登山道のぬかるみや、かん木で覆われている個所が多いため、登山靴と長袖は必須です。
おすすめの時期
おすすめの時期は他のコースと同様に、栗駒山の高山植物と紅葉が美しい6月~10月となります。独特な景観の昭和湖が特に映える、新緑と紅葉期は格別な美しさです。
栗駒山の高山植物の開花期は種類によって微妙に異なるため、お目当ての高山植物の開花期を事前にチェックしてから栗駒山に登ると安心です。
登山口までのアクセス
最寄り駅のJR東北線一関駅から登山口の須川高原温泉までは路線バスが走行していますが、本数が少ないため車かタクシー利用がおすすめです。または温泉施設に宿泊するのもよいでしょう。
東北自動車道一関ICから国道342号を秋田県東成瀬村方向に進み、県境が登山口です。栗駒山の紅葉時期は満車のこともあるのでご注意ください。天馬尾根コースの登山口へは3キロメートルの車道があるため、秣岳への縦走もできます。
⑦自然観察路【岩手県側】
栗駒山の自然観察路は、須川コースの名残ヶ原を超えた苔花平分岐から東回りで、裏掛コースと並行するように栗駒山の山頂に至るコースです。
栗駒山の登山口は須川高原温泉(標高1,120メートル)で、標高差506メートル・標準所要時間は登りが2時間。難易度は初心者・初級者レベルです。登山口の施設は駐車場のほかに洗面所・温泉・宿泊施設・売店・ビジターセンターがあり、とても便利ですよ。
コースの楽しみ方と注意点
このコースの楽しみ方は、須川温泉コースと同じく名残ヶ原の高山植物を楽しんだあと、須川温泉コースとは離れて苔花台付近の紅葉や、三途の川付近の水芭蕉の観賞。
栗駒山からの下山時に使う人もいるコースですが、注意点は、登山道が一部荒れている個所や低いかん木のやぶの箇所です。元々は笈森コースから栗駒山を目指す登山道でしたが、現在は避難小屋から先は廃道になっています。
おすすめの時期
おすすめの時期は他のコースと同様に、栗駒山の高山植物と紅葉が美しい6月~10月となります。独特な景観の昭和湖が特に映える、新緑と紅葉期は格別な美しさです。
栗駒山の高山植物の開花期は種類によって微妙に異なるため、お目当ての高山植物の開花期を事前にチェックして登ってください。
登山口までのアクセス
最寄り駅のJR東北線一関駅から登山口の須川高原温泉までは路線バスが走行していますが、本数が少ないため車かタクシー利用がおすすめです。または温泉施設に宿泊するのもよいでしょう。
東北自動車道一関ICから国道342号を秋田県東成瀬村方向に進み、県境が登山口です。栗駒山の紅葉時期は満車のこともあるのでご注意ください。
栗駒山麓のおすすめ温泉
栗駒山のすべての登山口の近くに温泉があるため、下山後の湯あみも満喫できます。登山口によってはすぐに入浴できる日帰り温泉も。せっかくなので一泊して、心ゆくまで栗駒山の恵みを楽しむのもよいですね。
各登山口の近くの温泉は、東栗駒コースと表掛&裏掛コースが日帰り入浴の「駒の湯温泉」、須川温泉コースと天馬尾根コースが宿泊できる「須川高原温泉」と「栗駒山荘」、奥小安峡の「大湯温泉阿部旅館」があります。
花も紅葉も美しい栗駒山に行こう!
栗駒山の登山は、初心者でもロープウェイを使わなくても日帰りできる点が魅力です。初心者は宮城県側のいわかがみ平「中央コース」や岩手県側の「須川温泉コース」を使いましょう。
登山に慣れてきたら少し難易度を上げて、いわかがみ平の「栗駒山コース」や秋田県側の「天馬尾根コース」、かなり腕を上げたら、沢登のある「表掛(御沢)コース」への挑戦もおすすめです。バリエーション豊かな栗駒山の登山をお楽しみください。
東北の山が気になる人はこちらをチェック!
栗駒山をチェックした後は、蔵王山と飯豊山もチェックしましょう!おすすめの登山コースが詳しく紹介されているので、ぜひご参考にしてくださいね。
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出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2829380?title=%E6%A0%97%E9%A7%92%E5%B1%B1&searchId=1559849788#