「蔵王」はどんな場所?
奥羽山脈を構成する蔵王山は、北の雁戸山(がんとさん)から南の不忘山(ふぼうさん)までの約25キロメートルの連峰を指します。10万年前までの、隆起後の火山活動によって形成された複合火山群なのです。今も、蔵王山登山で御釜や噴気孔から、活火山の威力が感じられます。
仙台からアクセスしやすく、両県の蔵王山麓の温泉旅館やスキー場を楽しめる、東北を代表する一大観光地の蔵王山で登山を楽しみましょう。(2021年2月10日現在の情報をもとに作成されています)
蔵王山の登山拠点は山形県
蔵王山の主要な登山コースは、山形県の蔵王山麓の蔵王温泉街周辺にあります。蔵王温泉街は、企業の保養所も含めると120軒を超えるホテルや旅館が建ち並ぶ一大温泉街です。
上湯・下湯・川原湯の共同浴場のほかに、3軒の日帰り入浴施設や蔵王名物の大露天風呂や足湯もあり、蔵王山登山後の湯浴み場所として申し分がありません。蔵王登山の魅力の一つでもある、個性豊かな温泉旅館に一泊して蔵王山をとことんお楽しみください。
蔵王山登山の主要な三つの峰
蔵王山の主峰は中央部に位置する熊野岳(標高1,841メートル)で、山頂は山形県にあります。蔵王山の登山とは、熊野岳・北側の地蔵山(1,736メートル)・南側の刈田岳(1,758メートル)の登山をいいます。
蔵王山三峰の山頂をつなぐメインの登山ルートは稜線歩きのため、初心者でも難易度は高くありません。蔵王山のおすすめ登山口は山形県と宮城県の合計9つあり、初心者も安心なコースで蔵王登山に挑戦しましょう。
蔵王山の主要三峰をつなぐ登山ルート
アクセスの手段次第ですが蔵王山の開始場所は、北側の地蔵山と南側の刈田岳のどちらからスタートしても稜線歩きの登山のため、時間的な差は大きくありません。
コースは熊野岳と刈田岳の間は広く平らな尾根道で、熊野岳と地蔵岳の間も特に問題なく、晴天時はハイキング気分で楽しめることでしょう。
コースタイム
■蔵王山・地蔵山頂駅(約15分~25分)←→地蔵山(標高1,736メートル・約40分)←→熊野岳山頂(約50分)←→〈馬の背〉←→刈田岳(御釜レストハウス ※刈田峯神社のある刈田岳へは往復10分)
蔵王山のおすすめ登山9コース
蔵王山のおすすめ登山コースは難易度やコースの見所などが違うため、よく吟味して無理のない蔵王山の登山コースを選んでください。同一ルートで一部アクセス手段が違うコースもあります。
山形県側の登山コースはロープウェイ最短コース、いろは沼コース、樹氷高原コース、鳥兜山コース、秡川コースのの5つ。宮城県側のコースは刈田山頂バス停コース、蔵王刈田リフトコース、大黒天バス停コース、峩々温泉コースの4つになります。
①ロープウェイ最短コース
蔵王山の登山コース中、最短の約2時間で主要三峰へ簡単にアクセスでき、全行程ゆるやかな登りなので登山の初心者におすすめ。ロープウェイ山頂駅から地蔵山まで少し登り、いろは沼コースからの合流点「ワサ小屋跡」に到着。
ワサ小屋跡から少し歩いて蔵王神社のある熊野岳へ。途中の分岐を左に進むとコマクサ群落のある避難小屋経由、右側が山頂直進。馬の背に近づくと御釜が観え始め、あっという間に刈田岳に到着です。
コースタイム
■蔵王ロープウェイ山麓駅:山麓駅(山麓線/標高855メートル・約7分)→樹氷高原駅(山頂線/1,331メートル・約10分)→地蔵山頂駅(1,661メートル・約25分)→蔵王山・地蔵山(約40分)→蔵王山・熊野岳山頂(1,841メートル・約50分)→〈馬の背〉→蔵王山・刈田岳(1,758メートル・御釜レストハウス・刈田峯神社のある刈田岳へは往復10分)
帰りはバスで蔵王温泉街へ
蔵王山の主要三峰登山の帰りは、刈田山頂から蔵王温泉バスターミナルに行く路線バスを使うのもおすすめです。蔵王ハイライン&エコーライン通行で、約1時間で蔵王温泉街(蔵王ロープウェイ前・蔵王中央ロープウェイ前・終点の蔵王温泉バスターミナル)に到着です。
注意点は、バスの時間を逃さないようにすること。蔵王刈田山頂の出発時間は平日も土日祝日も13:00発の1本しかないため、早めに行動しましょう。
②いろは沼コース
蔵王山登山のいろは沼コースも、蔵王ロープウェイとリフトを使えるので初心者におすすめの登山コース。観松平経由でいろは沼入口から、地蔵山と熊野岳の稜線にあるワサ小屋跡に出る、片道約3時間のコースになります。
いろは沼を出た後は、積雪期にはスノーモンスターになるアオモリトドマツ(オオシラビソ)の樹林帯です。地蔵山から合流する稜線に出るまでもゆるやかな尾根登りのため、それなりの体力があれば初心者でも問題なく登れます。
コースタイム
■蔵王ロープウェイ山麓駅:山麓駅(山麓線/標高855メートル・約7分)→樹氷高原駅降車→ユートピア第1夏山リフト(約3分乗車:降車後は観松平を反時計回りで約15分)→いろは沼入口(約75分)→ワサ小屋跡(約25分)→蔵王山・熊野岳(約50分)→〈馬の背〉→蔵王山・刈田岳(1,758メートル・御釜レストハウス・刈田峯神社のある刈田岳へは往復10分)
③樹氷高原駅コース
夏山リフトを使わずに樹氷高原駅から歩く登山者もいます。樹氷高原駅からいろは沼入口まで約35分のため、体力があれば初心者でも問題なく登れる片道約3時間30分の登山コースになります。
リフト脇から観松平コースか、いろは沼登山口コースに進みます。いろは沼登山口からは同じ登山コースです。
■蔵王ロープウェイ山麓駅:山麓駅(山麓線/標高855メートル・約7分)→樹氷高原駅(約35分乗車)→いろは沼入口(約75分)→ワサ小屋跡(約25分)→蔵王山・熊野岳(約50分)→〈馬の背〉→蔵王山・刈田岳(1,758メートル・御釜レストハウス・刈田峯神社のある刈田岳へは往復10分)
いろは沼と観松平
観松平はリフトを降りると目の前に広がる、箱庭のようなキタゴヨウマツの園地です。不老の松や天女の松などの名前が付けられた16ほどの美しい松を眺められます。
いろは沼登山口は観松平の奥にある、木道が敷かれた高層湿原です。夏にはワタスゲやキンコウカなどの数多くの高山植物が眺められ、観松平とともに楽しめるハイキング気分の登山コース。正面には、これから登る熊野岳も眺められるので奮起を促されるはず。
④鳥兜山コース
蔵王山登山の鳥兜山コースは、最寄りが地蔵山となり、蔵王の主要三峰の片道は約3時間15分。難易度は高くありませんが、距離があるため時間がかかる登山コースです。眺望のよさは折り紙付きで、鳥兜山展望台からは蔵王温泉のほか、朝日連峰や月山、瀧山などを遠望できます。
反対側には地蔵山頂駅を中央にし、地蔵山と三宝荒神山などの眺望も。紅葉峠と片貝沼、ゲレンデ横を通ってザンゲ坂から約1時間35分で地蔵山到着です。
コースタイム
■蔵王中央ロープウェイ:温泉駅(標高1,263メートル・約7分)→蔵王山・鳥兜駅(1,387メートル・約20分)→片貝沼(約50分/ザンゲ坂)→〈蔵王地蔵尊拝観の迂回ルート)→地蔵山頂駅(約25分)→蔵王山・地蔵山(約15分)→ワサ小屋跡(約25分)→蔵王山・熊野岳(1,841メートル・約50分)→〈馬の背〉→ざ刈田岳(1,758メートル・御釜レストハウス・刈田峯神社のある刈田岳へは往復10分)
⑤秡川コース
蔵王中央ロープウェイ温泉駅の近くにある、蔵王山の秡川登山コースは、ロープウェイは使わずに自力で蔵王山を目指すコースです。蔵王山の熊野岳にある蔵王山神社を目指す参拝道として使用されていた古道で、現在はゲレンデも通りながら地蔵山まで約3時間で到着します。
所々やぶのような道やえん堤渡り、不明瞭なゲレンデ道に急登もあるため、初心者にとっては難易度は高め。単独行は避けてベテラン同行で登りましょう。
コースタイム
■秡川登山道入口(中森ゲレンデ横・約3時間)→ワサ小屋跡(約20分)→蔵王山・地蔵山(約15分)→地蔵山頂駅(約35分)→〈ザンゲ沼〉→片貝沼(約20分)→鳥兜駅・蔵王中央ロープウェイ(約7分)→蔵王温泉。もしくはワサ小屋跡(約25分)→蔵王山・熊野岳(1,841メートル・約50分)→〈馬の背〉→蔵王山・刈田岳(1,758メートル・御釜レストハウス・刈田峯神社のある刈田岳へ往復10分)
⑥刈田山頂バス停コース
蔵王山の刈田山頂バス停コースは、刈田山頂バス停に直接行き、刈田峯神社のある蔵王山・刈田岳から地蔵山までの片道約2時間の縦走登山コース。蔵王山の刈田山頂にある刈田峯神社に参拝してから、ほかの蔵王山の熊野岳と地蔵山へ向かい、地蔵山頂駅から蔵王ロープウェイで下山しましょう。
もちろん無料駐車場に停めて、刈田岳だけの登山でも問題ありません。楽して蔵王山の登山気分に浸りたい登山初心者にもおすすめのコースです。
コースタイム
■蔵王山・刈田岳(1,758メートル・御釜レストハウス・刈田峯神社のある刈田岳へは往復10分・約50分)→〈馬の背〉→蔵王山・熊野岳(約20分)→〈ワサ小屋跡〉→蔵王山・地蔵山(15分)→蔵王ロープウェイ山頂駅:山頂線(標高1,661メートル・約10分)→蔵王ロープウェイ樹氷高原駅:山麓線(標高855メートル・約7分)→山麓駅
刈田山頂までのアクセス
路線バスは、蔵王温泉バスターミナル発(10:10)→蔵王・刈田山頂着(11:06) ※ピストンの場合は山頂の無料駐車場も便利です。
⑦蔵王刈田リフトコース
蔵王山の主峰の一つである刈田岳の山頂近くにある駐車場に車を停め、夏山リフトを利用して刈田岳へ向かいます。夏山リフトに乗車して約8分で刈田山頂バス停に到着し、刈田岳山頂へは約15分でアクセスできる、初心者におすすめの蔵王山の登山コースになります。
熊野岳と地蔵山も稜線歩きで行ける蔵王山登山コースのため、晴天時や季節の高山植物が美しい時期は登山準備をしたうえで、ハイキング気分でお楽しみください。
コースタイム
■蔵王刈田リフト(約8分)→蔵王山・刈田岳(1,758メートル・御釜レストハウス・刈田峯神社のある刈田岳へは往復10分・約50分)→〈馬の背〉→蔵王山・熊野岳(約20分)→〈ワサ小屋跡〉→蔵王山・地蔵山(15分)
⑧大黒天バス停コース
大黒天バス停コースは、宮城県側から約1時間の尾根伝いの蔵王山の登山コースです。刈田岳の近くまでバスまたは自動車で行けるため、距離と時間を稼げます。
バスでのアクセスは、終点の蔵王刈田山頂バス停まで行かず蔵王エコーライン上の大黒天バス停で降ります。しかしバスの本数が少ないため自動車で無料駐車場までアクセスし、ピストンをおすすめします。利用者があまりいない蔵王登山コースのため、静かな山歩きが楽しめます。
コースタイム
■大黒天バス停(約1時間)→蔵王山・刈田岳(1,758メートル・御釜レストハウス・刈田峯神社のある刈田岳へは往復10分・約50分)→〈馬の背〉→蔵王山・熊野岳(約20分)→〈ワサ小屋跡〉→ざ地蔵山(15分)→蔵王ロープウェイ山頂駅:山頂線(標高1,661メートル・約10分)→蔵王ロープウェイ樹氷高原駅:山麓線(標高855メートル・約7分)→山麓駅
⑨峩々温泉コース
宮城県の峩々温泉は、標高850メートルの場所にある秘湯の一軒宿です。峩々温泉を拠点にして蔵王山を目指す登山コースは、最終の刈田岳までの標高差は935メートル、片道約4時間の登山になります。危険個所はありませんが歩行距離が長く、登山者は多くないため中上級者におすすめします。
山形県コースとはひと味違う登山で、樹林帯やブナ林・ダケカンバ林、自然園の風情を楽しめます。
コースタイム
■峩々温泉(約50分)→猫鼻(約1時間30分)→名号峰(みょうごうほう:約35分)→追分(約1時間20分)→ざ熊野岳(約50分)→〈馬の背〉→蔵王山・刈田岳
※峩々温泉までは遠刈田温泉からタクシー利用で約25分、峩々温泉利用者は送迎あり。車は、路肩に数台駐車できるスペースがあります。
蔵王山の登山時の装備などの注意点
蔵王山登山のベストシーズンは、残雪が少なくなり、新緑が芽吹く5月下旬あたりから紅葉の美しい10月中旬。
服装は夏でも、防寒服・雨具は必ず準備してください。2,000メートルに近い標高のため夏のシーズンでも山頂は寒いのです。稜線はガスが掛かると見えにくくなるため、地図・コンパスは必携です。
蔵王温泉までのアクセス
自動車の場合
自動車でのアクセスは東京から:東北自動車道(約3時間)→〈福島JCT〉→東北中央自動車道(約1時間)→〈山形上山IC〉→県道21号線(約20分)→蔵王温泉。あるいは仙台から:東北自動車道(約30分)→〈村田JCT〉→山形自動車道(約30分)→〈山形蔵王IC〉→西蔵王高原ライン→蔵王温泉。
電車・バスの場合
東京から:JR山形新幹線(約2時間30分)→山形駅(バスで約40分)→蔵王温泉。あるいは仙台から:JR仙山線(約1時間15分)→山形駅(バスで約40分)→蔵王温泉。
蔵王山登山は稜線歩きが楽しい
5つの蔵王山登山コースをご紹介しましたが、それほど難易度の高いコースはありません。最もハイキング気分で楽しめるのは、御釜で有名な刈田岳・主峰の熊野岳・蔵王地蔵尊が祀られている地蔵山を往来する稜線歩きです。
登山口へのアクセスはロープウェイや路線バスのため、レベルに合わせてルート選択をしましょう。山麓や山腹を楽しめるハイキングコースもあるため、いろいろお楽しみくださいね。地図や防寒対策もお忘れなく。
蔵王温泉が気になる人はこちらをチェック!
蔵王登山を楽しんだあとは、温泉旅館や共同浴場、日帰り浴場などで身体の疲れを取りましょう。いろいろな温泉施設が紹介されているので参考にしてください。
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