はじめに:庭でりんご栽培をするには
温かい地域でも出来るりんご栽培
りんご栽培といえば北海道や東北地方といった寒い環境で育てやすい作物。沖縄県ではさすがにプロの農家の方でもない限りは難易度がたかいですが、関東など温暖な地域なら上手に育ててあければりんごはご家庭の庭での栽培が可能な果樹です。
お住まいの地域の園芸店・ホームセンターなどでりんごの苗が売られていたらその地域でも栽培可能と考えてまず間違いありません。環境を整えてあげれば自宅で実るりんごを楽しみ収穫して味を満喫することができるでしょう。
ただしりんごの果樹は病害虫被害が多い木の代名詞ともいえるもの。栽培難易度は決して低くありませんのでまずその点をご留意の上解説をお読みください。種から発芽させて育てる方法もありますが、ここでは自宅の庭での果樹栽培としてりんごの木の苗の植え方から剪定(仕立て方)・摘果や人工受粉をして収穫までを解説していきます。
りんごの栽培前に知っておきたい特徴など
りんごの栽培をする前にこの植物の原産地や特徴・どのような環境(場所)が好みなのかという育て方のコツに通じる基本情報をご紹介しましょう。
りんごの基本情報
科・属:バラ科 リンゴ属
原産地:ヨーロッパ東南部など
英語名/学名:Apple/Malus pumila
栽培難易度:上級者向け(ただし害虫に強い品種や矮性種を選択することで中級者でも)
りんごが育つ環境
実はりんごというのはどのような気象環境でも順応できるすぐれた作物といわれています。しかしその中でも特に適している環境というものが存在します。日本でいうとりんご栽培は東北が有名ですね。年平均気温が6-14度が適した温度であるためです。
実際沖縄県ではりんごが収穫できたら新聞に掲載された(2014年7月14日琉球新報)というくらい栽培が難しいところです。では本州はりんご栽培に適した環境なのでしょうか。
本州もりんご栽培環境として悪くはない
美味しいりんごが育つ環境としてさきほどの気温の他には広い土地(日当たりが十分)があることと、もう少し全世界的に見ると北緯または南緯35~50度の地域がりんごの生産には適した環境の土地であるとの研究結果が発表されています。
この35から50度というのは本州の名古屋よりも北が入ります。このことから実は本州でもりんご栽培環境としては適していないわけではないことがわかります。
栽培時には気をつけたいりんごの特徴
例えばりんごは2種類の品種の花粉でないと受粉しません。そのために2品種を接ぎ木した苗を購入したり狭い庭でも作りやすいような矮性品種を選ぶ・2種類の木を植える等でこのようなりんごが結実するシステム(特徴)に対応できるでしょう。
家で栽培するりんごの収穫時期
りんごの種類には早生から晩生まであってそれによって収穫の時期が変わり、早生種であれば8月ころから晩生種なら11月ころが旬の時期となります。もちろんこれらは花の時期にもずれが生じますので、栽培の際にはこの旬の時期をある程度そろえて受粉しやすくさせることが大切となってくるでしょう。
りんごの栽培のコツ5選
りんご栽培はプランターや鉢植えでもおこなうことができますが、基本的に庭に地植えにするのがおすすめ。その場合のりんご栽培のコツを5項目に分けてそれぞれ解説していきます。
こちらは北海道はもちろん関東など年間平均気温が15度以上という高い温度の地域でも収穫まで育てられる方法となっているため自宅でりんご狩りをしたいと思っていらっしゃる方向けです。
りんごの育て方のコツ1.日当たりや土
りんご栽培にはよい日当たりが大切で、果樹園ではご覧の画像のように枝と枝が重ならないよう十分な株間が取られていますが、一般家庭の庭ではこのような栽培は難しいですね。
そんな時のりんご栽培のコツは仕立て方にあります。仕立て方は後述で詳しくご説明しましょう。まずはここでは日当たりが良いところに植えるというポイントをおさえるようまずチェックしてください。
りんご栽培の土壌
りんごはあまり土壌を選ばない植物です。そのためアメリカの開拓時代などは荒野のような荒れた土でもりんごだけはよく育ったためりんご栽培が盛んに行われたくらいです。
土壌の作り方は庭土を掘り起こしたものに赤玉土・腐葉土・化成肥料を混ぜたもので植え付けると良いでしょう。難しいと感じたら植え付ける場所の土壌だけでも市販の果樹用の土を使ってください。
プランターでは栽培できないのか
プランターや鉢植えでも果樹の栽培は可能です。永続的に収穫しつづけたいのであれば40リットルの土が入るプランター(16号鉢程度)であれば問題ないといわれています。
もっと小さなプランター(鉢植え)の場合でも果樹の苗を買ってきて植え付けることで2-3年程度であれば収穫できるものもあり、もしその鉢で小さいようであれば枯らしてしまわない限りもっと大きなものに植え替えてあげることでまた実が採れるようになるでしょう。
りんごの追肥時期と与える量
肥料の時期は11-2月ころ。株元に与えますができれば化成肥料よりも堆肥を中心にあげることが好ましいです。ご家庭の生ゴミを利用した肥料などを使えるようであると良いですね。
化成肥料を与える場合でもそれほど強いものは必要なく8-8-8など一般的な緩効性化成肥料で十分です。
りんごの育て方のコツ2.植え方と仕立て方
りんごの植え方
りんごを庭で栽培するための植え方は土壌づくりとかぶりますが、まず購入した苗が十分入る+これから根を伸ばすための土が入る大きさの穴を掘る(具体的には直径80cm深さ50cm程度が一般的)ことからはじめます。
そこに先程紹介したような割合で土を作り、購入した苗を入れ高さを調整しながら穴をある程度埋めながら最後には支柱を立て紐で固定するという植え方をすると良いでしょう。
栽培しやすいりんごの木の仕立て方
りんごの木の仕立て方にはスタンダードな主幹形の他にも棚のように枝を広げて庭のすずしい日陰として利用したり、1本の木を横に広げてから上へと伸びるようにするコンドル型などの仕立て方があります。
一般で家庭栽培する場合は主幹形のやり方がわかりやすくおすすめ。やり方としては欲しい高さより上の幹・枝はカットしてしまいましょう。高さの調整は毎年おこなってください。それと同時に下の方の枝は下へ下へと誘引してコンパクトな下向きの枝の株にする仕立て方が主幹形です。
りんごの育て方のコツ3.人工受粉
りんご栽培の難易度が高いのはこの人工授精が必要なことも理由のひとつといえるでしょう。しかし実際にやってみるとこの人工授精はそれほど難しいことは必要ないことがわかります。
やり方はまず開ききっていないつぼみを摘み取りそのまま放置して追熟させます。花が開いてきたら紙の上に花粉を落としそれを冷蔵庫で保存。受粉させたい花が開花したら中央のめしべに付けてあげるだけでりんご栽培における人工受粉は完了です。
りんごの育て方のコツ4.摘果
りんごの栽培では摘果といってなる量をセーブして育てることにより、大きくて美味しいりんごに育てていく栽培方法となります。やり方としてはりんごの実は一箇所にいくつも付くこととなるので、残すのはその中の中央のもの(一番はやく花が咲き、人工受粉でも受粉率が高い)・害虫被害のないもの・下向きになっているものの中から選んでください。
プロの方は葉○枚に対して果実1個などと数える場合もあるようですが、ご家庭でおこなうときはあまり難しいことを考えても楽しくないので、混み合っていないよう大きいものを残す程度という目安で良いでしょう。
りんごの育て方のコツ5.収穫
りんごの栽培ではよく見かける袋掛け。これは害虫を防ぐという意味と色をきれいにする目的の2つの用途があります。りんご栽培では摘果したあと収穫の2周間前までは新聞紙など紙で作った袋を掛けておくことで害虫対策をしてください。
りんごの果実が大きくなってきたら袋を外し2週間したら色づきが多少悪くても収穫しましょう。温かい地域では品種によっては色がつかないためです。袋を外してから置き過ぎはよく有りません。収穫後の保存は冷蔵庫に入れておくと長く楽しめるでしょう。
東京でも栽培しやすい品種選びのコツ
りんごの栽培方法をご紹介しましたが、やはり難しいと感じる方も多かったのではないでしょうか。もっとりんご栽培失敗を防ぐためには品種を選ぶのもおすすめ。
りんご栽培には複数の品種を植える
まずりんごの受粉システムは自家不和合性といって1本の木だけでは実が結実しないことを知ってください。そのためできれば違う品種の2本の木を植えましょう。これを知らないと花は咲くけれどいつまでたっても実にならないということが起こってしまいます。
栽培初心者におすすめ品種は早生種
はじめて育てるりんごの果樹は早生種がおすすめ。これは木のお世話がスピーディーに進んで収穫の楽しさまでが短いことが理由です。もちろん11月ころに収穫したいという方は晩生種を選んでもOK。その場合晩生種の木を2種類チョイスして庭に植え付けてください。
栽培におすすめ!育てやすい早生種のりんご
最後になりますが、おすすめの早生種のりんごの品種を御覧いただきましょう。もちろんこの種類に限ったものではありませんので、栽培するりんごの苗を選ぶヒントとしてくださいね。
つがる
日本のりんごの早生種を代表とする品種ですが、収穫前落下がおこりやすい種類でもあります。落下した果実も食べることができますが、木になっているりんごを楽しみたいという方には少しさみしいかも知れませんね。収穫時期は9月ころ。
紅玉
大きさは小さくて真っ赤な色と硬い果肉が特徴です。少し酸味が強いので生食よりもジャムやお菓子づくりに向いています。中早生で9-10月ころが収穫時期となるでしょう。
ぐんま名月
中早生種のおすすめ品種で病気に強いのが特徴です。甘みと酸味のバランスのよい誰にでも好まれる味も人気。収穫時期は紅玉とほぼ同じく10月ころ。
まとめ:りんごを家で栽培しよう
りんご栽培は東京でも出来る
庭に植える果樹の中でも難易度が高いといわれるりんご栽培について5つのポイントに分けて家庭栽培の方法をご紹介してきましたがいかがでしたか?りんごは果樹のため草花の栽培よりは難易度は高いのは仕方ありません。しかし種から発芽させずに丈夫で育てやすい苗の植え付けからはじめ、農薬を使用したり病気の葉をすみやかに処分したりという手間をかけることでご家庭でもりんごの栽培はできます。ご興味のある方は矮性木や病気・害虫に強い品種などを選んでりんご栽培をはじめてみてはいかがでしょうか。
果樹栽培が気になる方はこちらもチェック
今回はりんごの栽培方法をご紹介しましたが、この他にも果樹の家庭栽培の解説記事もご用意しています。種から発芽させて育てたり他の果樹の栽培が気になる方は合わせてこちらも御覧くださいね。

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出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/68062?title=%E5%AE%9F%E3%82%8B%E6%9E%97%E6%AA%8E