黒岳は大雪山を代表する山
大雪山の代表的な黒岳(標高1,984メートル)は、アクセスのしやすさと日帰りできる気軽さから多くの登山者に大人気。七合目までは観光客でもロープウェイとリフトを使えばたどり着けます。
観光地としても有名な、太古の噴火活動でできた柱状節理の層雲峡と湯量豊富な温泉は、黒岳との関係が大きいのです。層雲峡の上に広がる別世界「カムイミンタラ(アイヌ語で神々の遊ぶ庭)」のすばらしさを黒岳登山で実感しましょう。(2021年1月28日時点の情報をもとに作成されております)
黒岳登山は2コース
中級者向けレベル:一合目コース
黒岳登山道入口は、層雲峡ロープウェイ駅舎の正面左側の車道から少し登った場所です。
登山道は3ステップで、①登山口(標高670メートル)→黒岳ロープウェイ五合目駅(1,280メートル)約2時間20分 ②五合目→七合目のリフト乗り場(1,510メートル)約1時間30分 ③七合目→山頂(1,984メートル)約1時間。標高差は1,294メートル・合計約5時間の登山なので相当な体力がないと難しいレベルです。
一合目から五合目までの登山道
大正時代から使われている黒岳の登山道は、樹林の急斜面をジグザグを切りながら高度を上げていきます。広葉樹林帯を、至る所に転がっている大きな岩を避けるようにして進みます。一度平坦な窪地に出たあとは、映月峰から黒岳まで延びる尾根に出るための斜面を横断です。
樹林帯をしばらく歩いてからゆるやかな尾根に出ますが、高度が上がるにつれて急登になります。登りきったところが黒岳ロープウェイ五合目駅です。
五合目から七合目までの登山道
登山道は、黒岳ロープウェイ五合目駅の前に出てから、黒岳リフト乗り場へ行く途中で右にそれて再開されます。リフトに沿うように登山道が付いており、左手にリフトの音を聞きながら登りましょう。
ゆるい傾斜の針葉樹林帯を、足元の高山植物を愛でながらハイキング気分で登り始めますが、やがて急登になってダケカンバが多くなってきます。さらに急登になり、視界が開けてくるとようやく黒岳リフトの終点駅舎、七合目に到着です。
七合目から山頂までの登山道
登山入口に森林管理署の事務所があるので登山届を出して、再びスタート。いきなり急登が始まり、一気に高度を上げていきます。ウコンウツギやタカネナナカマドのかん木帯が続き、ニセイカウシュッペなどの北大雪が見えてくるはず。
八合目あたりから登山道はゆるやかになり、マネキ岩が観えてくるとダイセツトリカブトやミヤマキンポウゲ、オトギリソウなどの高山植物が登場します。最後の急登を頑張れば黒岳山頂です。
初心者向けレベル:ロープウェイ&リフト
初心者は、黒岳ロープウェイで一合目から五合目へ、次に黒岳リフトで五合目から七合目へ移動します(徒歩約3分)。1967年(昭和42年)の黒岳ロープウェイ完成以降、多くの人が黒岳山頂に行けるようになりました。
森林管理署の事務所で登山届を出して出発です。標高差474メートル、約1時間で黒岳山頂に到着しますが、初心者レベルでも体力がある人は、黒岳山頂の先にある御鉢平一周の稜線歩きなども計画してみましょう。
黒岳ロープウェイ
りんゆう観光が営業している層雲峡黒岳ロープウェイは、片道7分、20分間隔で運行しています。料金は、大人(中学生以上)の往復普通2,400円(片道1,400円)、小学生1,200円(片道700円)。
時間は、営業時期によって変わり、冬は8時~18時、春の4月1日~5月31日は8時~16時30分、夏期の6月1日~9月30日は6時から18時。定員は101名ですが、感染症防止対策のため変更もあります。
黒岳ペアリフト
黒岳リフトは随時回転していますが、始発と終発の時間は時期ごとの黒岳ロープウェイ接続に合わせているため変動します。乗車時間は約15分間です。
料金は消費税込みで、中学生以上の大人の往復普通800円(片道600円)、小学生400円(片道300円)、セット券は、大人の往復普通3,000円、小学生の往復普通1,500円。
元気なら稜線歩きに挑戦
黒岳山頂からは、桂月岳・凌雲岳・北鎮岳・旭岳・北海岳・白雲岳・赤岳・烏帽子岳の絶景が眺められます。足元には、コマクサやクモマユキノシタなどの吹きさらしの場所に咲く植物が観られます。
多くの人が雄大な景色を見ているうちに、もう少し歩きたくなる誘惑に駆られるようです。体力に自信がある人は事前に計画したうえで、「黒岳石室&桂月岳」「御鉢平展望台&北鎮岳」「御鉢平一周」のいずれかに挑戦してみましょう。
黒岳石室&桂月岳
初心者レベルでも少し体力がある人は、黒岳石室に15分ほどで下り、すぐ近くにある桂月岳も登ってみましょう(登り約20分)。黒岳石室では飲み物を販売しているので、不足しているものがあれば調達できます。黒岳の避難小屋なので万が一のときは宿泊もできます。
桂月岳の山頂からは、圧巻の黒岳の岸壁が眺められます。日帰り登山もよいですが、黒岳石室に宿泊して桂月岳の名物、ご来光登山もおすすめです。
御鉢平展望台&北鎮岳
お花畑や氷河による構造土を観察しながら、黒岳石室から平坦な雲ノ平を御鉢平展望台まで約1時間かけて歩くのもおすすめ。3万年前に爆発した直径2キロメートルの御鉢平は、あまりにも壮大で言葉にできません。
さらに元気な人は、御鉢平展望台から1時間ほどの北海道第二の高峰、北鎮岳(2,244メートル)登山もおすすめ。雪渓がありますが染料の目印があるので迷いません。朝一番のロープウェイに乗れば日帰りも可能です。
御鉢平一周
御鉢平を取り囲む外輪は多くが平坦地のため、初心者レベルでもそれほどきつい箇所はありません。日帰りも無理ではありませんが、黒岳石室に一泊して早朝から大雪山の広さを実感したほうが、より気持ちよいはず。
赤石沢を渡る時計回りと、雲ノ平経由の反時計回りができます。黒岳石室を起点に、所要時間約5時間を見ておけば安心です。ダイナミックな地球の動きが想像できる、下界では味わえない感動の景色が広がっています。
旭岳に縦走
黒岳石室を出発して時計回りか反時計回りに御鉢平を半周し、旭岳(2,291メートル)への縦走もできます(旭岳中腹まで所要約5時間)。日帰りは厳しいので石室に一泊して翌日の早朝に出発します。
いずれの回り方も、広い頂の間宮岳(2,185メートル)からコル(鞍部)に下り、旭岳山頂を目指します。間宮岳まではゆるやかな外輪歩きですが、距離が長いことと旭岳へは急登で礫地なことから、初心者レベルでは難しいコースになるでしょう。
中岳から下りて裾合平経由も
間宮岳から下りずに、中岳(2,113メートル)から下りて旭岳中腹の紅葉名所、裾合平を経由して旭岳ロープウェイ姿見駅(旭岳の中腹1,600メートル地点)にも行けます。
間宮岳から姿見駅までの歩行距離は約3時間あり、旭岳経由よりも少し長いですが、ほとんど平坦な道なので楽に歩けます。中岳を下りたところにある足湯は、ひと休みできるポイントです。紅葉時期は絶景が観られるので非常に頑張り甲斐があります。
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黒岳登山のベストシーズンと注意点
ベストシーズン①春~夏
初心者におすすめな黒岳登山ベストシーズンは、高山植物が美しい7月中旬~8月下旬です。初心者にとって山頂までの雪渓時期の登山は高レベルなため、完全に雪が解けてから登りましょう。
6月は、平地では雪がなくても高山では残雪があります。2020年6月20日の記録では九合目付近まで部分的に雪渓があり、アイゼンなしでは危険な箇所がいくつもありました。過去にはアイゼンなしの登山者による滑落事故も起きています。
ベストシーズン②秋
夏期の高山植物もすばらしい黒岳ですが、紅葉時期もベストシーズンです。いつからが見頃かは気象条件によりますが、例年、山腹付近は9月中旬、山麓は10月上旬が見頃です。黒岳登山道はダケカンバなどの広葉樹が主体で、登山道を曲がるたびに印象の違う紅葉を楽しめます。
黒岳ロープウェイからも、針葉樹の緑にナナカマドやミネカエデなどの黄色や赤がモザイク状に混じった、錦絵のような景観を見せてくれます。
黒岳の植物の特徴
黒岳は同じ大雪山の旭岳とは異なり、登山道の急斜面や山頂などで季節ごとのさまざまな植物が生えています。登山道の急斜面では、ナナカマド・ウコンウツギなどの丈の高い植物が、八合目付近ではオトギリソウやシナノキンバイなどの中間層が、山頂ではコマクサ・メアカンキンバイ・サマニヨモギなどの地を這うような植物が観られます。
生息場所と気象の影響によるものですが、観察しながら登ると黒岳登山をより楽しめるでしょう。
黒岳登山の注意点
最終的に黒岳山頂を目指す人の全員は、標高1,510メートルの七合目から1,984メートルまでの登山道を使って自力で登らなければなりません。
片道の歩行時間は約1時間ですが、岩場がある急な登山道のため、それなりの装備が必要です。ときおり軽装で登山道を上がる観光客がいますが、万が一のことを考えるとおすすめできません。
装備と携行品
装備は、無雪期の登山で黒岳山頂までであれば、一般的なもので十分です。夏の暑い日は、ペットボトルなどの飲料水3本ほどと携行食を用意しましょう。注意点として、夏でも寒い日があるので、温かい飲み物を水筒に入れて持参するとベストです。登山地図は、道迷いしなくても山頂からの眺めを確認するときに役立ちます。
黒岳から先の御鉢平や北鎮岳も登るのであれば、登山地図のほかにコンパスの装備も欠かせません。
夏季の服装
服装の注意点は、夏でも寒い日があることです。荷物になりますが万が一を想定して何枚か用意しましょう。夏のベストシーズンでも山の気温は平地よりも下がります。麓で晴れていても天候が急変することもあるのです。
登山時の服装は特に上半身が大切です。夏は薄手の長袖シャツにTシャツを重ね着し、ウィンドウブレーカーも持参しましょう。暑ければTシャツを脱ぎ、寒ければウィンドウブレーカーを着て体温調整してください。
秋季の服装
紅葉が綺麗ということは、秋季は夏季よりも気温が低くなるため、しっかりとした防寒対策が必要です。注意点として、風があるときの山頂は想像を絶するので、フリースやセーターだけではなく毛糸の帽子や手袋、温かい飲み物、念のためにカイロも持参してください。
登山時の靴下は厚手の素材がおすすめで、ズボンの下には登山用のスパッツを着用しましょう。
靴と泥よけスパッツ
無雪期の靴は、岩場歩きや泥でぬかるんだ道が多いため、登山靴と泥よけスパッツ装着が望ましいです。黒岳山頂で折り返す人でも、スニーカー以上の底の厚い靴は必須です。
ときおりサンダルを履いた人も登山道で見かけますが、転倒しやすいのでおすすめできません。1時間ほどで山頂に登れるとはいえ、岩が多くて急登続きの立派な登山道です。くれぐれもスニーカー以上の靴を履いて登りましょう。
ヒグマ対策
登山の装備品と関係しますが、北海道の山はヒグマ対策が必須です。多くの人が登る黒岳といえども、念のために熊鈴は用意しておきましょう。
登山者の多い黒岳はよほどのことがない限り、ヒグマに遭遇することはないかもしれませんが、出没情報も度々聞きます。備えあればうれいなし、常に登山リュックのなかにご用意ください。携行食の食べ残しも、絶対に持ち帰るように心がけてください。
トイレ
トイレがある場所は、ロープウェイ五合目駅が最後になります。五合目のリフト乗り場にも七合目のリフト終点駅にもありません。リフト乗り場に移動する前に必ずロープウェイ五合目駅で済ませておきましょう。
登山中の水分補給のコツは水をがぶ飲みするのではなく、含むように少しずつ飲むことを心がけてください。体内の水分は登山中の汗によって蒸散されるため、上手に水分補給をすればトイレをせずに済むことが多いです。
黒岳までのアクセス方法・駐車場
車の場合
札幌からは道央自動車道を使い、比布JCTで旭川紋別道に乗り換えて上川層雲峡ICまで約2時間30分。国道39号から北見・網走方向へ約30分となり、合計で約3時間です。
旭川空港からは、当麻町と愛別町を通って国道39号へ入り、北見・網走方向に約1時間30分進みます。国道39号を網走・北見方向に走り、約1時間30分です。
駐車場
駐車場は4ヶ所あり、すべて無料で24時間駐車可能です。一番便利なのは、層雲峡黒岳ロープウェイ駐車場で、すぐ目の前です。60台駐車できますが、夏期や紅葉シーズンは混雑し合うので要注意です。
層雲峡温泉の外れにも34台の公共駐車場(トイレなし)と、182台の立体駐車場(トイレあり)があるので様子を見て利用してください。黒岳登山口にも18台分の駐車場(トイレなし)があります。ロープウェイまで徒歩2分~5分です。
公共交通機関の場合
旭川からは、旭川駅前から道北バスが出ており、所要時間は約2時間、終点の層雲峡で下車します。本数は1日に数本のため、時間帯も時期によって変動するのでホームページか電話で問い合わてせください。
黒岳登山後は層雲峡温泉でゆったり
下山後は、黒岳登山の拠点である層雲峡温泉でゆっくり疲れを取りのぞきましょう。単純硫黄泉で、リウマチや糖尿病、高血圧などに効果があると期待されています。層雲峡温泉には十数軒の宿泊施設が営業していますが、日帰り入浴ができる温泉ホテルもあります。
料金は、ほとんどの施設が1,000円以内ですが、おすすめは黒岳の湯。洗い場も浴槽も広くはありませんが、入浴後にゆっくりできる広めの休憩所が高ポイントです。
黒岳登山は7月中旬~8月中旬が適期
黒岳登山は2コースあるのでレベルで選択してください。一合目からのコースは標高差が1,294メートルもあるので中級者レベルです。初心者はロープウェイ&リフトを使って七合目から登山しましょう。
装備は、山頂までの場合も一般的な登山装備がよく、靴はスニーカー以上の底の厚いものにしてください。いつからベストシーズンかといえば、高山植物が咲く7月中旬から8月中旬です。黒岳で楽しい登山時間を過ごしてくださいね。
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出典:ライター撮影