北海道最高峰の旭岳は気軽に行ける!
標高2,291メートルの旭岳は、「北海道の屋根」といわれている2,000メートル級の山が集中する大雪山国立公園にあります。特徴的なのは、馬の蹄(ひずめ)のような形をした地獄谷火口です。
今も噴煙を上げる地獄谷火口は、2,000年以上前に山頂が水蒸気爆発で吹き飛んだ跡といわれています。日本一早い旭岳の紅葉の中心は山頂ではなく、ロープウェイだけでアクセスできる中腹にあり、気軽に楽しめる点が魅力なのです。
日本一の面積「大雪山国立公園」
大雪山国立公園は面積が東京都よりも広く、約22.7万ヘクタールもある日本最大の国立公園です。日本で国立公園の制度が始まった1934年(昭和9年)に、阿寒とともに北海道初の国立公園に指定されました。
エリアは、「表大雪」の富良野市・上川町・東川町・美瑛町・上富良野町・南富良野町、「裏大雪」の新得町・鹿追町・士幌町・上士幌町の10市町村にまたがるのです。まさに「北海道の屋根」にふさわしいスケールです。
気軽には近づけない「神々の遊ぶ庭」
大雪山は、元々は北海道の先住民族とされているアイヌ民族が「カムイミンタラ」と呼んでいた場所です。直訳すると「神々の遊ぶ庭」で、神とはヒグマのことを指しており、ヒグマが安住する場所という意味になります。アイヌ民族にとってヒグマは、肉や毛皮を与えてくれる神の化身でした。
このことから大雪山は、かつては、気軽に近づいてはいけない神の領域として捉えられていたことが想像されます。
紅葉見学の拠点「旭岳温泉」
紅葉見学などの観光拠点は、現在9軒の温泉旅館がある旭岳温泉です。温泉の発見は大正時代で、湯治場や樹木伐採作業員などの休憩所として利用されてきました。元々の地名はアイヌ語の「ユコマンベツ」(湯に向かう川)が由来の「湯駒別」で、1982年に旭岳温泉と改名されました。
国立公園の指定以降、大切に自然が保護されています。一方で温泉がある利便性から、一年を通して多くの人が訪れる北海道有数の観光地でもあります。
旭岳ロープウェイ
旭岳ロープウェイは、山麓駅の1,100メートル地点と山腹の姿見駅の1,600メートル地点(4合目と5合目の中間)までを約10分でアクセスします。
原則的な運行時間は、夏は、登りの始発6時~下りの最終18時で、15分間隔です。冬は、登りの始発9時~下りの最終15時40分で、20分間隔です。この間も運行時間は時期によって区分されているため、詳細を事前にご確認ください。
運休情報と定員に注意
旭岳ロープウェイは、台風の影響などで風速が強くなると運休になる場合もあります。運休になると姿見駅に行く手段は登山道だけです。悪天時はあきらめて、山麓の色づきを楽しんだり旭岳温泉でゆっくり湯浴みを楽しんだりしましょう。
旭岳ロープウェイの定員は101名ですが、インフルエンザ感染予防対策などで混雑を避けるために、人数制限をしているときもあります。やはり時間に余裕を持って利用するようにしてください。
旭岳紅葉の見頃と見所
旭岳の紅葉が日本最速の理由
旭岳の紅葉が日本一早い理由は、標高の高さに加えて緯度が高いからです。北海道の高山は2,000メートル台ですが、緯度が高いため自然環境は本州の3,000メートル級の山に匹敵します。「緯度が高い=気温が低い」ため、紅葉が早く進むのです。
高山植物についても、同様の自然現象をあてはめて考えられます。本州の2,000メートル地点に生えている高山植物が、北海道では平地で観られるものがあるのです。
紅葉の見所と見頃は標高で変わる
旭岳の紅葉の見所と見頃は、山頂・山腹・山麓で異なります。旭岳は姿見駅の1,600メートル地点が森林限界のため、それより上部に目立つ植物はありません。旭岳の紅葉のメインは山腹となりますが、山麓にもいくつかの紅葉の見所があります。
山頂からは、9月中旬に見頃を迎える山腹の紅葉の大パノラマを、山腹では足元に咲く植物や山裾の樹木を、山麓では9月下旬~10月初旬に見頃となる広葉樹の紅葉観賞ができるのです。
過去の紅葉の見頃
例年旭岳の紅葉時期は9月中旬~下旬で、山腹から色づいて山麓へ下りていきます。過去の記録では、山腹は、2013年9月21日は少し終わりかけでした。2015年9月6日はまだ早く、一週間後の13日に見頃を迎えました。このことからすると山腹は、9月15日前後がよさそうです。
2019年10月5日は、山腹は見頃が終わり、ロープウェイ車中と山麓が見頃でした。確実に楽しみたいならば事前に関係施設に問合せましょう。
チングルマの一面の紅葉
大雪山国立公園は「北海道の屋根」といわれるだけあり、高さではなく広大さが特徴です。溶岩台地が広がる旭岳中腹で最も目立つ紅葉は山裾の広葉樹と、足元で咲く落葉低木のチングルマです。
旭岳を始めとする大雪山国立公園は、チングルマの一大スポットです。夏は白い可憐な花を咲かせ、秋には葉が真っ赤になる一面の素晴らしい景色に、初めての人は感動することでしょう。風が吹くと一斉に揺れる綿毛も風情があります。
おすすめ旭岳紅葉スポット6選
①旭岳温泉自然探勝路
旭岳自然探勝路は全部で6コースあり、入口は、旭岳ロープウェイ山麓駅の隣にある旭岳ビジターセンター付近です。6コース中、気軽に散策できるのは4コースなので体力に応じてコースを選びましょう。
気楽に楽しみたい人へのおすすめは、勇駒別高山植物園に立ち寄る「コマクサコース(約30分)」や原生林を散策する「クマゲラコース(約30分)」、「ナナカマドコース(約1時間)」と「勇駒別湿原の木道(約30分)」です。
2コースは登山装備が必須
旭岳の眺望も楽しみたい人は、6コースある自然探勝路の中で、登山装備が必要な2コースをおすすめします。
1つめは、コマクサコースとクマゲラコースの途中から入り、湯駒荘前の車道に出られる約1キロメートルの「見晴台コース(約1時間30分)」です。2つめは、約3キロメートルの「湿原探勝路コース(約1時間30分)」です。時間をかけてじっくり紅葉を堪能しましょう。
②天女ヶ原湿原登山道
天女ヶ原湿原登山道は姿見駅までの登山道(片道約2時間30分)で、旭岳ロープウェイ山麓駅の右端に登山口があります。
前半の見所は針葉樹林帯と湿原で、1時間ほどで第一天女ヶ原、少し歩いて第二天女ヶ原です。2つの湿原ではワタスゲの黄色い色づきが観られます。最大の紅葉の見所は、後半の盤ノ沢の広葉樹林帯で、タカネナナカマドの紅葉が見事です。次第に傾斜はゆるやかになり、姿見駅近くでチングルマの紅葉が登場します。
登山装備は必須
このコースは旭岳の中腹までを自力で登るため、一般的な登山装備が必須です。途中に分岐道があり、登りは気づかずに通り過ぎてしまいますが、下山時に迷い込むケースがあるので要注意です。
正しい道順を示すサインがありますが、ないときもあるため充分に気を付けてください。
③旭岳ロープウェイ車中
標高1,100メートルから1,600メートルまでを約10分で移動する旭岳ロープウェイは、大パノラマの"空中散歩"が代名詞です。紅葉の時期は、溶岩台地の高層湿原などのナナカマドやダケカンバが見事に色づくため、多くの人で混雑します。
前半は、進行方向の右下に天女ヶ原湿原の紅葉が、後半は、左横に御田ノ原の紅葉が観えます。見頃に当たれば、針葉樹と広葉樹の見事な組み合わせに言葉を失うかもしれません。
溶岩台地にできた高層湿原
溶岩台地とは、火山が噴火したときに流れ出た溶岩が固まって台地状になった場所を指します。溶岩は水はけが悪く、雪や雨水が溜まった沼を基本にした湿原をつくるのです。
高層湿原とは、高い場所にある湿原ではなく、植物が何層にも高く積もってできた湿原のことです。大雪山には、沼の平などの多くの高層湿原があります。
④姿見の池周辺散策コース
姿見の池周辺散策コースの見所は、いくつかの池や眺望です。旭岳を気軽に楽しめる定番コースで、順番は、前半に見所が多い反時計回りが基本になっています。5つの展望台からの眺望と主な3つの池、噴気孔をお楽しみください。眼下には忠別ダムや旭川市などが、晴天時には南側にトムラウシ山や十勝岳連峰も。
一周約1.7キロメートルで所要1時間30分ほどですが、岩だらけの道のため、登山靴や底の厚い靴は必須です。
モデルコース・所要時間
旭岳ロープウェイ山麓駅(約10分)→姿見駅(15分)→第一展望台(5分)→第二展望台(2分)→第三展望台(10分)→第四展望台(15分)→姿見展望台(5分)→第5展望台(20分)→ロープウェイ姿見駅(約10分)→山麓駅
⑤裾合平・中岳温泉
裾合平は姿見駅から1時間30分ほどで行ける、旭岳最大の紅葉の見所が多いスポットです。歩行距離が長いため混雑しておらず、チングルマの紅葉が一面に広がる圧巻の景色を静かに観賞できるはず。
当麻乗越方面と足湯もある中岳温泉方面の分岐が裾合分岐で、中岳温泉まで30分ほどの木道です。歩きやすいですが、濡れているときは滑りやすいため注意してください。往復で約5時間、姿見の池周辺散策もすると7時間はかかります。
モデルコース・所要時間
旭岳ロープウェイ山麓駅(約10分)→姿見駅(1時間30分)→裾合分岐(30分)〈※裾合平〉→中岳温泉の足湯(30分)〈※裾合平〉→裾合分岐(1時間20分)→夫婦池分岐→姿見の池周辺散策(1時間)→ロープウェイ姿見駅(約10分)→山麓駅
⑥当麻乗越
当麻乗越(標高1,690メートル)の紅葉の見所は、溶岩台地にできた高層湿原の「沼の平」のパノラマです。裾合分岐から2時間近くかけて当麻岳(2,076メートル)の中腹近く、当麻乗越に行けるコースとなります。
比較的ゆるやかな登山道ですが、水量が多いときは渡るのが危険な沢渡りのある、本格的な登山コースです。気軽なハイキング気分では難しいので、登山装備をしっかりご用意ください。
モデルコース・所要時間
旭岳ロープウェイ山麓駅(約10分)→姿見駅(1時間30分)→裾合分岐(1時間)→ピウケナイ沢(30分)→当麻乗越(20分)→ピウケナイ沢(1時間10分)→裾合分岐(1時間30分)→姿見駅(約10分)→山麓駅
旭岳へのアクセス方法
旭岳へのアクセス方法は2パターンあります。自動車またはJR&路線バスのいずれかで、自分にとって楽な方法を選びましょう。自動車の道路は、高速道路の道央自動車道利用か下道利用の2つの選択肢があります。
休日の早朝登山であれば、高速道路を利用して早めに着いたほうがよいでしょう。平日で、旭岳温泉に前泊するのであれば、下道を観光しながら行くのもおすすめです。
自動車でのアクセス
自動車は、札幌からは高速道の旭川北I.Cで下り、東川町経由の道道1160号線(旭川旭岳温泉線)から約1時間10分。旭川からは東川町経由の道道1160号線で約1時間。
札幌から下道を通る場合は、三笠市から富良野市、北美瑛駅から道道213号線を利用する方法もあります(東川町は通過しません)。
駐車場
駐車場は2つあり、一つは無料の公共駐車場ですが、紅葉の見頃時期はすぐに満車になってしまいます。確実に利用したい場合は、混雑する前に少しでも早めに出かけるほうがよいでしょう。
2つめは旭岳ロープウェイ駐車場(500円)ですが、混雑していてもほとんどの場合に駐車できます。旭岳温泉の旅館などに宿泊している人は、旅館の駐車場を利用するほうがよいかもしれません。
公共交通機関のアクセス方法
新千歳空港から札幌までは快速エアポート乗車、札幌から旭川駅までは特急列車(スーパーカムイ・オホーツク・スーパー宗谷の3種類)、旭川駅から旭岳温泉行の「いで湯号」に乗車して約1時間30分です。
「いで湯号」は、旭川駅バスタッチのりば9番〈66番/旭岳線〉です。終点の旭岳で下車すると、旭岳ロープウェイ山麓駅前に到着します。
旭岳の紅葉観光の注意点
服装・携行品
旭岳の紅葉見学は、選択するコースによって登山装備も用意してください。ロープウェイに乗車して姿見駅周辺で戻ってくるなら、季節に合わせた服装で十分です。
姿見の池周辺散策コースは、スニーカーなどの底の厚い靴を履いてください。山の天候は急変しやすいので、雨具もあると安心です。裾合平方面に行く場合は、登山装備は必須です。山麓の自然探勝路も、コースによっては登山装備が必須なので注意しましょう。
ロープウェイの待ち時間
旭岳の紅葉時期は、山腹にある見所は多くの観光客で混雑します。登山者も含めてほとんどの人がロープウェイを利用するため、特にピーク時期はロープウェイの混雑ぶりも半端ではありません。
紅葉の時期には臨時便が増設されることもありますが、ロープウェイを利用する場合は、念のために早め早めの行動をおすすめします。
旭岳の初紅葉は姿見の池周辺散策から!
旭岳の紅葉スポットは6つですが、初めての人は"空中散歩"のロープウェイに約10分乗車し、1時間半ほどの「姿見の池周辺散策コース」がおすすめです。登山経験者は「裾合平・中岳温泉コース」を、さらに「当麻乗越コース」まで行けば沼の平の絶景も堪能できます。
旭岳の例年の紅葉時期は、山腹は9月中~下旬、山麓は10月上旬と1週間ほどの差があります。事前に旭岳ビジターセンターに確認してから出かけるとよいでしょう。
紅葉が気になる人はこちらもチェック!
北海道は、山だけではなく平地も日本で一番紅葉が早く観られる場所です。北海道内の各所に、観光中でも気軽に立ち寄れる紅葉スポットが多くあるので、ぜひチェックしてくださいね。
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出典:ライター撮影