登山の服装の基本知識
登山の服装とは
登山の服装は、①山の条件と季節と気温、そして天気に合わせます。初心者や登山は未経験という場合には、具体的にいつ登るかと登山の目的を先に決めておくと準備がしやすいです。次に、着用分の服装と、登山中の重ね着用と登山後用の予備の服装を選びます。
②動きを阻害しない機能的な服装を、予備も含めて必要分だけ用意します。必要以上の荷物は、歩行途中で疲れる原因になります。特に初心者は、いろいろなケースを想像し、服装の準備過多の傾向があるので軽量化を計りましょう。
重ね着(レイヤリング・レイヤード)
登山の服装は、インナーをベースレイヤー、インナーの上に着る服をミドル(ミッド)レイヤー、ザックに触れ自然の影響を最も受ける外側の服をアウターレイヤーとよび、3つを組み合わせて重ね着をすることをレイヤリングまたはレイヤードといいます。
登山の服装は春夏秋冬に関係なく重ね着をするのが基本です。暑いときは脱いで、寒ければ着る、こまめに体感温度を調節することが重要です。
登山の服装の役割と具体例
【ベースレイヤー】吸汗し体温調節の役割があります。アンダーウェア、シャツ、Tシャツ、ハイネックシャツなどです。
【ミドルレイヤー】保温し体温を一定に保つ役割があります。ダウンベスト、ウインドブレーカー、フリースジャケット、パーカーやソフトシェルジャケットです。
【アウターレイヤー】雨風や虫など外側から体への影響がないようにカバーする役割があります。ハードシェルやダウンジャケット、レインウエアです。
登山の服装の機能性と素材
登山の服装の機能性
これから登山を始める人や初心者にとって、登山の服装を理解するために、必要になりそうな機能性があります。
服装について調べると、いろいろな場面で、頻繁に使われているので、意味を覚えると服装の選び方がよくわかります。
服装の機能性は2機能以上を合わせて、1機能として説明されている場合があります。たとえば吸水速乾性(吸水性と速乾性)などです。吸水速乾性は、表現の違いだけですが、吸汗速乾性ともいわれます。
機能性一覧
吸水性 | 汗を吸い取る |
吸湿性 | 汗などの水が水蒸気になったとき吸い取る |
透湿性 | 衣服内の蒸れを外へ逃す |
速乾性 | 汗を拡散させて素早く蒸発させ乾かす |
保温性 | 外気に関係なく服の中の体温を一定に保つ |
防風性 | 風を衣服内に通さない |
防水性 | 外からの水を内側にしみこませない |
耐久性 | 外部からの影響に抵抗し維持し続ける強さ |
撥水性 | 雨などの水をはじき、通さない |
服の素材
登山服の多くは化学繊維の合成繊維です。天然繊維である絹や綿が100%の服は、速乾性や防風性にかけるため登山の服装に合う素材ではありません。ただし、ウールや綿などの天然繊維と合成繊維との複合素材は使用されています。
登山服は耐久性を高めるために、素材の織り方を工夫したり、複合素材を使用したりしています。他に、登山に適した吸湿速乾性や耐久撥水性を高めた独自のハイブリット素材もあります。
必ず用意したい登山の服装
トレッキングパンツ
トレッキングパンツの特徴は、立体裁断やストレッチ素材により、膝の曲げ伸ばしが楽で、耐久性が高く、速乾性があります。山登りにもっとも適したボトムスです。
ボトムスの種類は、ロングパンツ、コンバーチブルパンツ(膝上や膝下から生地を取り外すことが可能)、ハーフパンツと、山登り用のトレッキングスカートです。
使用時季と選び方
春や秋は、やや厚手のスリーシズン用のロングパンツ、夏は軽量なナイロン製のハーフパンツとタイツの組み合わせもあります。
登山中はボトムスの着脱はレインウエア以外はありません。はじめての山登り用にボトムスを用意する場合、怪我の対策にもなるので、春夏秋冬に合わせた肌の露出が少ないロングパンツが無難です。
季節を問わず使用レイウンウエア
レインウエアは防水性と撥水性はもちろん、透湿性も重要です。山の天気は急変しやすいので、天気が快晴でも必ず携行します。必要な時、すぐに着用できるセパレートタイプが定番。肘や膝が立体裁断されていると動きやすく、パンツ裾はジッパーなどで開閉できると山中でも着用しやすいです。
これから登山を始める人や初心者がはじめて用意する場合は、厚手の服装の上から着用しても窮屈でないサイズを確認し、山中で目立つ色を選ぶことをおすすめします。
登山ファッション入門①春の服装
春から登山入門
春の登山では、肌寒さと強い風に対応できるようにすぐに重ね着ができる服装を選びます。早春は朝晩の冷え込みが厳しく風が冷い反面、晩春はぽかぽかとした穏やかな陽気です。とっさに体温調節をしやすくする服装にします。
ベース | ミドル | アウター |
吸水速乾性 | 保温・透湿性 | 防風性 |
肌寒ければ着用 |
春登山おすすめの定番スタイル
春の暖かい陽気の服装は、ベースに吸水速乾性のTシャツ、ミドルは薄手のパーカー、アウターは軽量な防風性の長袖ジャケット、ボトムスは薄手のロングパンツ、折りたたみ可能な日除け帽子です。
肌寒い場合の服装は、ベースのTシャツはロングTシャツに、保温効果のあるニット手袋を追加し、ニット帽に変更します。
春に登山入門の注意点
森林や花が多い登山の場合は、特に蜂などの虫が寄ってきやすくなるため、全身黒色の服装は避けたほうがよいです。また、登山中に急に強い風が吹くこともあるため、帽子はひも付きで風に飛ばされない工夫があると便利です。
春の登山の服装
- 着脱しやすい軽量なアウター
登山ファッション入門②夏の服装
夏から登山入門
夏は、初心者もケーブルカーなどを利用すると標高の高い山で登山ができます。夏の登山は、汗対策を基本に日焼けと軽量で防風対策ができる服装の選び方をします。一度の登山で日差しが強い極暑から雲の中の寒風も体験することもあります。
ベース | ミドル | アウター |
吸水速乾性(日除け) | 日除け、保温・透湿性 | 防風性、防寒対策 |
肌寒ければ着用 |
夏登山おすすめ定番スタイル
夏の服装は、ベースに吸水速乾性のTシャツ(アームカバーがあればなおよい)、ミドルは長袖シャツ、ボトムスは吸水速乾で軽量なハーフパンツと吸水速乾性タイツ、日除け帽子です。
肌寒い標高の服装は、アウターに防風性があり防寒対策に長袖シャケットと、滑り止め付き防風性の手袋を準備します。
夏の登山入門の注意点
日焼けや虫などから肌を守るため、夏の登山では汗が気になっても肌の露出のしすぎには注意し、すぐ対策がとれる服装を心がけます。汗をかきやすいため速乾性や吸水性の高い化繊素材の服装を中心に選びます。
低地から森林限界まで登る場合、アウターを着ても体感温度が下がった場合はレインウエアを重ね着することをおすすめします。
夏の登山の服装
- 日除けを考えた服装
登山ファッション入門③秋の服装
秋から登山入門
秋の日陰や山頂は風が吹けば凍えるような寒さです。初秋は晩春とにた服装で晩秋とは服装の選び方も異なりますが、基本は秋の登山は、重ね着は寒さや風対策以外に、着ぶくれず軽量さを意識した服装の選び方をします。
ベース | ミドル | アウター |
吸水速乾性 | 透湿・保温性 | 撥水性、防寒対策 |
肌寒ければ防水含 | 肌寒ければ着用 |
秋登山おすすめ定番スタイル
秋の服装は、ベースに吸汗速乾性の長袖シャツかロングTシャツ、ミドルには中綿ダウンベスト、アウターには撥水性の長袖ジャケット、ボトムスはロングパンツ、防風性と保温性の滑り止め付き手袋と防寒対策の帽子です。
肌寒い場合は、ミドルに薄手で伸縮性のあるフリースかセーターに、アウターには防寒対策のできる軽量な撥水性中綿ダウンジャケットに変更します。
秋から登山入門の注意点
秋の重ね着は汗をかかないようこまめに体感温度を意識しておこないます。ミドルレイヤーを胸元までのジッパーや前面を開けるタイプなら、ザックを地面に置かずにすみ、体温調節がしやすいです。
また、防風性に優れた軽量のレインウエアを準備しておけば、上着だけ、ズボンだけといった使い方で細かな体温調節が可能です。
秋の登山の服装
- 細かな体温調節ができる服
登山ファッション入門④冬の服装
冬から登山入門
冬は、初心者向けの登山コースが他の季節より少なくなります。冬の寒さの程度によって服装の選び方がかわります。冬の登山は寒さ対策と汗冷えをしない重ね着をします。予備で持って行く服装も軽量で荷物を重くしないことを意識しましょう。
ベース | ミドル | アウター |
吸汗速乾性 | 保温・透湿性 | 撥水・透湿性 |
肌寒ければ重ね着 | 軽量で動きやすい |
冬登山おすすめ定番スタイル
雪無しの場合の冬の服装は、ベースに吸水速乾性の長袖Tシャツ、ミドルに保温性でストレッチ性の高いフリースジャケット、アウターには透湿性と撥水性のあるダウンジャケット、ボトムスは撥水性のあるロングパンツ、防風・撥水性の手袋、ネックウォーマーと防寒対策の帽子です。
雪山の場合は、完全防水・撥水で保温性の高い服装のアルパインウエアなど選び方が変わります。
冬の登山入門の注意点
汗冷えや動きにくさを防ぐため、吸湿発熱機能のあるベースか、長袖Tシャツの上にTシャツなどの薄着の重ね着をします。未経験者や初心者の場合、ザックを背負って窮屈でない服装か、手足が動かしにくくないかを確認しましょう。
初心者向けの冬の登山は、雪は日陰や山道の一部にあることが多いです。雪があったら、撥水・防水効果のある軽量のレインウエアを着用することをおすすめします。
冬の登山の服装
- ベースを重ね着した防寒の服装
手持ちの服から選ぶポイント
登山に活用できる普段着
登山の服装として機能をもっている普段着は、おもにベースレイヤーで、基本は吸汗速乾性で防臭・抗菌加工があることです。
通年では下着・Tシャツ、夏はカジュアルシャツ、冬には長袖Tシャツなどがあります。これらの素材はポリエステル100%の記載が多く、冬用はポリエステルとポリウレタンの複合やメリノウール複合です。
登山にあわない普段着
登山の服装として、ジーンズやGジャンは、素材は主にコットンのため、速乾性にかけ、水分の蒸発に伴い体温を奪うため、軽い自然散策にはよいですが山登りや競歩のような運動では体温調節がしにくいです。
また一般的な下着の場合、肌触りのよいナイロン100%は蒸れやすく、綿のシャツなどはジーンズと同様です。ただし、スポーツ用にコーティング加工がしてある場合と、他の素材との複合素材の場合は着用できます。
まとめ
アウトドアになじみのない人や初心者にとって、山登りの服装が想像しやすいように季節別のおすすめ例と、機能性の話を中心に、服装の選び方をまとめました。
トレッキングウエアを季節別に服装を1コーデ紹介しましたが、服装の選び方は『山の中の歩行を快適』にする服装です。種類も豊富なので、基本に沿っていれば服装は自由です。自然を満喫する姿を想像し、安全で快適な登山スタイルを見つけてほしいです。
登山ブランド
山登ウエアの取り扱いがあるブランドは、ザ・ノースフェイス、マムート、モンベル、ミレー、マーモット、コロンビア、ミズノ、パタゴニアなど、機能性の違いはもちろん、同じジャンル、同じサイズでもシルエット違いが多くあります。
山登り未経験者や初心者は、服の詳細が説明されているので調べてみることをおすすめします。
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トレッキングシューズとソックスは種類が豊富で、適しているか判断するために、専門店では山の斜面を想定した足場の模型もあります。
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