ヒメウツギの育て方〜はじめに
今回はヒメウツギの育て方や栽培のポイントをご紹介していきますが、その前に、まずは基本的な情報を見ていきましょう。そもそもヒメウツギとはいったいどんな植物で、どんな風に花をつけるのでしょうか。
ヒメウツギってどんな植物?
基本情報
ヒメウツギ(学名:Deutzia gracilis)は、日本原産のアジサイ科ウツギ属の落葉低木です。関東地方より西、四国や九州に広く分布し、日当たりの良い野原や河岸などに自生します。
とても丈夫でありながら、背丈は60cm〜最大で1mほどと高くならず、4〜6月の梅雨の時期には白く美しい花を咲かせることから、古くから庭木や花材として親しまれてきました。
ヒメウツギの花はこんな姿
庭木や花材にうってつけのヒメウツギの花、いったいどんな姿をしているのでしょうか?
先ほど紹介した通り、ヒメウツギは4〜6月の梅雨時期に花を咲かせます。やや下を向いて花径1cmほどの小さい穂のような白い花を数多くつけるのが特徴。5枚の花弁と10個の雄しべ、3~4個の雌しべを持ちます。
花付きが非常に良いため、ピークの時期には株が豊かな花でこんもりと覆われる姿を見られますよ。
ヒメウツギは紅葉する!
11月〜12月にヒメウツギは紅葉の時期を迎え、その後真冬にかけて落葉します。赤く鮮やかに色づいた葉は、花の上品な美しさとはまた一風変わった力強さがあります。
なお、葉は日光に当たることで色づくため、日当たりの良い場所で栽培する必要があるのでご注意ください。
花言葉、風水は?
ヒメウツギは万葉集の歌でも「空木」「卯の花」として20首以上詠まれたほど、古から日本の文化に根付いた植物です。花言葉は「秘密、夏の訪れ、古風」など。小さく上品な季節の花らしいイメージとぴったりですね。
また、その強い生命力から、風水の観点でも気を取り込む植物として人気です。玄関や門扉の近くに置けば、家に活気をもたらしてくれるかもしれません。
ヒメウツギの育て方〜植えてみよう
ヒメウツギがどんな植物なのかわかったところで、いよいよ育て方、栽培のポイントをご紹介していきます。
まずは日当たりや用土などの下準備に、苗植え、種まきそれぞれのポイントを。地植えと鉢植えでも方法が異なります。元気に育ってくれるよう、上手に植えてあげましょう。
ヒメウツギの日当たり、置き場所
日当たりは重要?
ヒメウツギはもともと陽の光をよく好みますが、とても丈夫な植物のため、少々日光が足りないくらいの環境なら耐えられます。1日に数時間日光が当たる半日陰くらいであれば、十分元気に育ってくれるでしょう。
また、紅葉を楽しみたい方は、できるだけ日当たりの良い場所で育てましょう。
室内での栽培については、日光が不足してしまう恐れがあるので、避けたほうが良いかもしれません。
置くべき場所
前述のとおり、ヒメウツギは日光を好みますが、同時に風通しが良く、適度に湿気があることも重要です。また、季節によって極端に暑かったり寒かったりする場所は避けた方が無難。
日光が程よく当たり、日陰に入る時間もある、そんな場所を選んで植えてあげれば条件はクリアできるでしょう。地植えであればそれほど意識しなくても良さそうですね。
もし風水がお好きなら、先ほどご紹介したように、玄関の近くに置くのも良いかもしれませんね。
ヒメウツギの用土
どんな土に植えたらいいの?
ヒメウツギは山や野原、河岸など、いたるところに自生する丈夫な植物ですから、育つ土もそれほど選びませんが、地植え、鉢植えそれぞれ意識したいポイントがあります。
地植えの場合には、必要に応じて腐葉土等の栄養を少し混ぜてあげるくらいで十分でしょう。
鉢植えの場合は、赤玉土、腐葉土、ピートモスを混ぜ合わせて栄養を与えてあげると元気に育ってくれますよ。市販の培養土でも問題なく育つので初心者の方もご安心を。
ヒメウツギの種まき、苗植えのポイント
ヒメウツギは種まきから育てることも、苗植えすることもできます。また、植えるのに最適な時期も存在します。それぞれポイントを見ていきましょう。
植える季節は冬から春にかけて
先ほどご紹介したとおり、ヒメウツギが花を咲かせるのは4月〜6月、初夏の梅雨時期です。冬から春先にかけて苗を植えてあげれば、数ヶ月から半年後にちょうど良いタイミングで開花するでしょう。
苗は季節によって、落葉状態や芽が出ている状態と手に入るものがそれぞれ異なるのでご注意ください。
種まきのポイント
種まきの場合、あらかじめ秋〜冬頃に熟した実を乾燥させて冷蔵庫で保存しておき、春先に取り出して利用するのがもっとも良い方法です。
時期がきたら、先ほどご紹介した用土を入れて湿らせておいた育苗ポットにいくつか種をまきます。水をやり過ぎずに様子を見つつ、芽を出したら、元気なものを選んでサイズの大きな鉢に植え替えていき、最終的に地植えするのも良いでしょう。
苗を地植えする際のポイント
地植えの場合、苗を植える前に下準備をしておく必要があります。
地植えする予定の場所にやや深めに穴を掘り、肥料を加えてなじませたら、2週間ほど寝かせます。さらにコップ1杯分(100ml〜150ml)くらいの石灰を加えて、1週間ほど寝かせたら準備は完了。
苗の根についた土をよく落としてから植えつけ、しっかり固定してあげましょう。
苗を鉢植えする際のポイント
鉢植えの場合は、まず苗の入ったポットより1号〜2号ほど大きい鉢を用意します。
ネットと鉢底石を敷きつめた上で、先ほど紹介した用土を入れ、そこに植えつけていきます。苗をしっかり固定するのをお忘れなく。ヒメウツギは水が好きですから、最後に底からしたたるくらい、たっぷりと水やりをするポイントです。
ヒメウツギの育て方〜大きく育てよう
ヒメウツギの植えつけが終わったら、大きくなるように育てていきましょう。水やりや剪定、植え替えなど、ここできちんとポイントを抑えておけば、初夏の季節にきれいな花を見られるはずです。
ヒメウツギの水やり
鉢植えの場合は水やりをしよう
ヒメウツギは水をとても好む植物です。特に鉢植えで育てる場合には、土が乾燥してしまわないよう、よく気を配りましょう。表面の土が乾燥してきたら水やりのタイミングです。
地植えなら水やりは必要なし
地植えの場合には、雨が降りますし、土に水分が含まれていますから、基本的には水やりをする必要はありません。とはいえ、夏場の乾燥や、雨の当たらない場所等、季節や環境に合わせて地植えでも水やりをしましょう。
ヒメウツギの追肥
追肥のポイント、季節
花を通常よりもっと豊かに咲かせたい場合には、追肥でヒメウツギに栄養を与えてあげましょう。とはいえ、ヒメウツギはもともとたくさんの栄養を必要とする植物ではないので、作用が緩やかな有機肥料などを与えてあげれば十分です。
季節としては、春(3月〜4月)と秋(10月〜11月)に行うのがおすすめです。
ヒメウツギの剪定、切り戻し
状況に合わせて剪定や切り戻しを
ヒメウツギは、本来は自然に枝が別れて形が整いますが、枝が混み合っていたり、枯れている場合には枝先を剪定してきれいに整えてあげるといいでしょう。病気の予防にもなります。
季節としては、花後の夏か冬の落葉期に行うのがおすすめですよ。
夏(6月〜7月)の剪定、切り戻し
ヒメウツギは初夏の6月頃までに花を咲かせた後、7月中旬から花芽が出てきます。花芽の出た枝を切り落としてしまうといけませんから、花後から7月上旬頃までに剪定をしてあげると良いでしょう。あまり切りすぎないのもポイントです。
冬(12月〜2月)の剪定、切り戻し
紅葉が終わった冬の落葉期も、剪定の時期としては最適です。伸びすぎた枝や混み合った部分を中心に、枯れた枝も一緒に切り落としていきましょう。次の年にきれいに花を付けてくれるよう、スッキリと形を整えます。
もし全体の姿が乱れてしまっている場合には、大きく刈り取ってもう一度作り直すのもおすすめですが、その場合、花は次の年まで待つことになります。
ヒメウツギの植え替え
植え替えは必要?
ヒメウツギは、鉢植えで育てる場合には、2〜3年に1回を目安に植え替えをしてあげるといいでしょう。これをしないと、土が劣化したり根が育ちづらくなってしまいます。冬の落葉期に、以前よりひと回り大きな鉢に新しい土で植え替えます。
土にたっぷり栄養がある地植えの場合には、植え替えは必要ありません。
ヒメウツギの夏と冬の越し方
ヒメウツギは耐寒性も耐暑性も高い
先ほどもご紹介したとおり、ヒメウツギは非常に丈夫な植物です。耐寒性、耐暑性ともに優れていますから、夏冬ともに特別に準備をする必要はありません。
ただ、夏場の強い乾燥や冬の寒さには少し注意が必要。季節に合わせて、しっかり水やりをする、秋に追肥で栄養を与えておくなどして、栄養を行き渡らせておきましょう。
落葉の対処は?
ヒメウツギは落葉低木ですから、紅葉を終えた12月頃から落葉します。この落葉の処理、少し面倒ですよね。竹ぼうきで掃き集めるのも良いですが、ブロワーなどを導入すると、いくらか負担が減るかも知れません。また、作業は必ず晴れた日に。雨で葉が重くなると大変です。
集めた落葉はゴミの日に出しても良いですが、腐葉土に利用する手もありますよ。今年の冬はチャレンジしてみても良いかも知れません。
ヒメウツギの育て方〜増やしてみよう
ヒメウツギを株分け、挿し木で増やそう
ヒメウツギは株分けや挿し木で増やすことができます。ポイントを押さえればそれほど難しくありません。株分けと挿し木、それぞれの増やし方をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
株分けの方法①時期
株分けとは、大きく育った根や茎を切り取り、株を新しく増やしたり更新することを言います。
ヒメウツギを株分けで増やす場合には、11月〜12月、冬の落葉の時期を見計って行うのが良いでしょう。
株分けの方法②注意すべきポイント
具体的な株分けの方法ですが、地面についている枝の中から根が出ているものを選んで、全体から切り離しましょう。土ごと堀りだして、手やシャベル、スコップ等で株分けしたら、別の鉢植えや土に植えつけます。
植え方に関しては、上述のポイントを参考にしてくださいね。
挿し木の方法
挿し木は根や茎を切り取って、土に挿して増やす方法。ヒメウツギについては、株分けとは異なり、3月下旬〜6月頃が挿し木の最適なタイミングです。
10cm〜15cmほど剪定した枝を用いて穂木とします。葉を全て取り除いたうえで発根剤を塗り、土に挿し、明るい日陰で根が張るのを待ちましょう。その際、土が乾かないよう水やりもしてください。
十分に発根したら、鉢や土に植え替えてあげましょう。
ヒメウツギの育て方〜病気や害虫にご注意を
ヒメウツギは基本的には丈夫な植物ですが、季節によっていくつか気をつけるべき病気、害虫があります。
大切に育てたヒメウツギが元気をなくしてしまわないように注意しましょう。
ヒメウツギの注意すべき病気
ヒメウツギがかかる可能性のある病気としては、主にうどんこ病、さび病が挙げられます。どちらも春〜夏の気温が高い時期に頻発するのが特徴です。
それぞれ予防、対処法を学んで大切なヒメウツギを守りましょう。
かかりやすい病気①うどんこ病
うどんこ病とは、名前のとおり、うどん粉のような細かいカビが葉や茎を覆う病気。葉や枝が密集して温度が上がるとかかりやすくなるので、適度に剪定を行って風通しをよくしておくことで予防できます。
うどんこ病にかかってしまった場合には、発生してしまった葉を取り除く、市販の薬剤や希釈した重曹、食酢を吹きかけるといった対処をしましょう。
かかりやすい病気②さび病
葉にさびたようなくすみや斑点が生じてしまうのがさび病です。カビによる伝染性の病気で、繁殖力が強いのが特徴。もしかかってしまった場合には、うどんこ病と同様に、その部分の葉を切り取って薬剤を散布し、それ以上広がらないようにしましょう。
ヒメウツギにつく害虫
新芽にはアブラムシがつきやすい
ヒメウツギは基本的には虫がつきづらいですが、春先の新芽には、まれにアブラムシが発生することがあります。放置してしまうと発育に影響するので、見つけた場合には、殺虫剤を散布して早めに駆除してあげましょう。
ヒメウツギの育て方〜栽培をもっと楽しもう
育てやすく、美しい花を咲かせるヒメウツギ。植え方や扱い方にもうひと工夫すれば、もっときれいに見えますよ。いくつか例をご紹介します。
ヒメウツギのアレンジを楽しもう
グランドカバーに最適!
ガーデニングのデザインに欠かせないのがグランドカバーです。日陰でも育てられ、水やりも楽。丈夫で高さもないヒメウツギは、そんな役割にぴったりです。
土や根元などの味気ない見た目をカバーして、庭全体の印象をまとめてくれるでしょう。花も上品で小さいので、他の花々を邪魔することもありません。
寄せ植えを楽しもう
ヒメウツギは、同様に湿気を好む植物と寄せ植えをしてあげえると、さらに美しく育てることもできます。春から梅雨入り前までの時期に合わせて、鉢や土から株を取り出し、根を崩さないように大きなプランターに植えつけましょう。
植物の組み合わせや配置によって奥深い楽しみ方ができるのが寄せ植えの魅力。この機会に、ヒメウツギを寄せ植えの仲間に加えてみませんか。
盆栽にもなるヒメウツギ
少し珍しい育て方かもしれませんが、ヒメウツギは盆栽にして育てることもできます。
小ぶりで上品な美しさを持ったヒメウツギは、花言葉も「古風」と、盆栽の繊細な感性とよくマッチします。これまでチャレンジしたことのない方も、ヒメウツギで盆栽を初めてみるのもいいかもしれません。
ヒメウツギの育て方〜おわりに
育てやすく美しいヒメウツギ
ここまでヒメウツギの基本情報から、育て方、栽培のポイントまでご紹介しました。
日陰が得意で耐寒性も高く丈夫でありながら、美しい花に紅葉まで楽しめるヒメウツギ。グランドカバーから盆栽とアレンジの幅も広く、剪定して形を整えたり、株分けして増やしたり、様々な楽しみ方ができます。
ぜひこの機会にお庭の花々の仲間に加えてみてはいかがでしょうか。
観葉植物が気になる方はこちらをチェック!
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