編笠山について
赤岳、横岳を主峰とする八ヶ岳連峰では最南端に位置し、南八ヶ岳の一郭となる「編笠山(あみがさやま)」は標高2,524mの山です。地図上では山梨県側の小淵沢町と長野県側の諏訪郡富士見町の境となっています。富士山の裾野の様に山頂からなだらかに裾野を広げた美しい山容から、まるで編笠(イグサやワラ、スゲなどで編んだ笠)の様だという円錐形の形から名付けられたものです。八ヶ岳中信高原国定公園に指定されていて、山梨県百名山に選ばれている象徴的で登山者に人気の山です。山頂からの眺望は素晴らしく、間近には甲斐駒ヶ岳や鳳凰三山、権現岳、赤岳、阿弥陀岳などの山々、遠くには富士山や南アルプス、北アルプスなども望見できます。
美しい編笠山
山頂付近は火山活動によって生じた岩石帯となっていますが、直下は緑豊かなハイマツなどの針葉樹林体に覆われています。西山麓には武田信玄が軍用道として設けた「棒道(ぼうみち)」が残されていて、権現岳への登山道上の小ピークには信玄の家臣であった高坂弾正が築いた“ノロシバ”と呼ぶ「狼煙台」があったと伝えられています。また、八ヶ岳連峰には高山植物の種類も多く見られ、シナノオトギリソウ、グンナイフウロ、ヤナギラン、ヤマハハコなど約1,000種の植生があると言われています。
編笠山登山のルール
編笠山登山ルートでは各登山口からのルートが複数あり、編笠山はその美しい山容と登山口までのアクセスも良く、標高が高い割には稜線から山頂までの行程が比較的短くコースタイムも短い、難易度も低レベルでも本格的な登山が楽しめる初心者向けの人気ルートもあります。但し、難易度が低いといっても登山には危険がつきものです。事前の計画や装備・服装など事前の準備を怠りなく行い、地図・コンパスは必携、自身の難易度レベルに合った登り方のコースを選ぶことも大切です。また、事前に最新情報を確認することも必要です。山域内は植物などの採取は厳禁、ペット同伴もNG、ゴミなどは必ず持ち帰る様にしましょう。
装備・服装
編笠山登山ルートには日帰りも可能な人気コースもありますが、初心者は無理をせずに前泊をするか山小屋での宿泊をおすすめします。登山には天候の急変などアクシデントの予測をして装備・服装を入念に準備しましょう。特に道迷いが遭難のきっかけとなりますので、地図・コンパスは必携です。服装はレインウェア、真夏でもフリースなどの防寒着を用意、稜線歩きやガレ場の歩行にはヘルメット、救急用品(薬も含む)も携帯しましょう。初心者はベテランに教示を受けると良いでしょう。
編笠山登山ルート①/観音平~編笠山
【初心者向け】人気コース・登り方
編笠山登山ルートでは一般的でコースタイムは6時間ほどで日帰りができる難易度も低レベルの初心者向け人気ルートです。登山口までのアクセスはJR小淵沢駅から車で15分ほどで駐車場もあります(但し、この県道は冬期間閉鎖されます)。登り方は、観音平登山口から眺望の良い「雲海展望台」、「青年小屋」を経て編笠山に登頂、帰路は直に押手川分岐を経て観音平に下山します。5月のGW頃では樹林帯内に凍結した雪が残っていますので軽アイゼンがあると安心して歩けます。
コース概要その①
装備・服装の再チェック、地図・コンパスの携帯を確認し、登山届をポストに投函して観音平登山口をスタート。緩やかな登山道を進むと少しずつ傾斜が増し、樹間から富士山も望める展望の良い雲海展望台に到着。休憩後、押手川分岐までは歩きやすく広い登山道を登り、分岐を左に進みます。岩場の多い、途中ハシゴ場もある急登を進んでハイマツ帯を抜けるとすぐに360度の眺望が開ける編笠山頂上に登頂完了です。
コース概要その②
山頂からは赤岳への稜線もきれいに見え、天候が良ければ富士山や北、南アルプスの山並みも望めます。編笠山頂からは狭い岩場の登山道を進み、“遠い赤ちょうちん”の看板提灯の掛かる「青年小屋」に着きます。帰路は時計周りで押手川分岐へ戻りそのまま観音平登山口へ下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | JR小淵沢駅より車利用約15分(駐車場有り) |
登山ピーク時期 | 7~9月 |
山行 | 日帰り、登り方難易度:☆☆☆☆★ |
アクセス情報 | 距離約7.5km、累積標高差:上り・下り991m 地図上標準総コースタイム:約6時間10分 |
コースタイム | 観音平登山口スタート⇒(60分)雲海展望台⇒(50分)押手川分岐⇒(80分)編笠山頂⇒(30分)青年 小屋⇒(60分)押手川分岐⇒(40分)雲海展望台⇒ (50分)観音平登山口ゴール |
編笠山登山ルート②/冨士見高原~西岳~編笠山
【初心者向け】人気コース・登り方
冬季はスキー客で賑わう冨士見高原から時計周りに林道編笠線中央コースを標高2,398mの西岳を経て青年小屋へ。一休みしたら編笠山に登頂。帰路はシャクナゲ公園、石小屋、盃流しを経て冨士見高原に下山します。コースタイムは全行程で約8時間掛かります。健脚者は日帰り可能ですが、初心者は万全の服装・装備をして無理をせず山小屋泊をおすすめします。
コース概要その①
登山道は途中難路もありますので地図・コンパスは必ず携行、装備・服装もチェックして駐車場近くの登山口からスタート。トイレ、水場のある不動清水から西岳方面に進みます。爽やかな樹林帯の林道を歩き標高が上がると樹間から編笠山が見えます。西岳まで0.6kmの標識を過ぎると視界が一気に開け岩稜地も急登となり標高2,398m西岳山頂です。
コース概要その②
西岳から少し下り“乙女の水”と呼ばれる水場からはすぐに「青年小屋」に到着。休憩後、編笠山に向かって岩場の登山道を赤い目印に沿って登り編笠山頂に登頂。素晴らしい眺望を楽しんだら岩場を注意して下り、石楠花(シャクナゲ)の群生地のシャクナゲ公園を経て樹林帯の急坂をひたすら下り、景勝地の盃流しを経て冨士見高原登山口に下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | JR小淵沢駅より車利用約15分 (車)中央道小淵沢ICより約10分(駐車場有り) |
登山ピーク時期 | 7月~9月 |
山行 | 日帰り、登り方難易度:☆☆☆★★ |
アクセス情報 | 距離約11.1km、累積標高差:上り・下り1,297m 地図上標準総コースタイム:約7時間40分 |
コースタイム | 冨士見高原スタート⇒(40分)不動清水⇒(80分) 林道編笠線中央コース看板⇒(90分)西岳⇒(50分)青年小屋⇒(30分)編笠山頂⇒(40分)シャクナゲ 公園⇒(80分)石小屋⇒(20分)盃流し⇒(30分) 冨士見高原ゴール |
編笠山登山ルート③/編笠山~権現岳~三ツ頭
【初・中級者向け】人気コース・登り方
登山口へのアクセスが良い観音平から編笠山へ登頂後、青年小屋を経て標高2,715mの権現岳まで足を延ばし、帰路は権現岳から標高2,580mの三ツ頭(みつがしら)を通る小泉口コースと呼ばれる尾根道を辿って観音平に下山するルートです。記事紹介は健脚者向け日帰りコースですが、ハシゴ場やクサリ場などの箇所もある難易度高レベルの登山道ですので、初心者は装備・服装の万全の準備はもちろん山行は山小屋泊での1泊2日がベストです。
コース概要その①
登山届を提出。地図・コンパス持参を確認して観音平登山口を早朝にスタート。笹薮の登山道を進みポイントのひとつ雲海に到着。樹間から富士山が望めます。樹林に覆われた押手川分岐を左手に進み徐々に樹林内の急坂となりハシゴ場も有ります。編笠山頂付近になって森林限界を超え一気に展望が開けて山頂に登頂です。南アルプスや赤岳など360度の眺望を楽しんだら青年小屋まで岩場に注意して下ります。ここまでは3時間半の通常コースタイムです。
コース概要その②
青年小屋から権現岳までは登り返します。しばらくは樹林帯の登山道を進み、樹林が切れると岩場となります。岩場の所々に高山植物を見ることができますよ。技術を要す難易度が高いコースとなり、岩峰がそそり立つ西ギボシを落石に注意して、次の東ギボシ直下を巻くクサリ場を進んで稜線に出ると山頂直下の権現小屋(2020年は休業)が見えます。
コース概要その③
赤岳への分岐を過ぎて権現岳山頂登頂。山頂からは見下ろす様に編笠山が望めます。阿弥陀岳や赤岳へのきれいな稜線は感動的ですよ。時期が合えばハクサンイチゲなどの高山植物にお目にかかれます。下山路は三ツ頭方面へ下ります。小さな石造りの祠がある檜峰神社付近にはクサリ場があるので注意。標高2,580mの三ツ頭を経て天女山コースへの天女山分岐を小泉口コースへ向かい、八ヶ岳横断歩道へ下って観音平登山口へ下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | JR小淵沢駅より車利用約15分(駐車場有り) |
登山ピーク時期 | 7月~9月 |
山行 | 日帰り、登り方難易度:☆☆★★★ |
アクセス情報 | 距離約11.9km、累積標高差:上り・下り1,449m 地図上標準総コースタイム:約8時間50分 |
コースタイム | 観音平スタート⇒(60分)雲海⇒(50分)押手川分岐⇒(80分)編笠山頂⇒(30分)青年小屋⇒(100分) 権現岳山頂⇒(40分)三つ頭⇒(50分)木戸口⇒(90分)八ヶ岳横断歩道⇒(30分)観音平ゴール |
編笠山登山ルート④/編笠山~赤岳縦走
【上級者向け】人気コース・登り方
本格的な八ヶ岳登山が満喫できる上級者向け難易度も高レベルの人気ルートです。八ヶ岳連峰の最高峰である標高2,899mの赤岳には各方面からの登山ルートがありますが、ポピュラーな八ヶ岳縦走コースとして観音平から編笠山、権現岳からキレットを経て赤岳山頂に登頂。下山路は中岳、阿弥陀岳を経て美濃戸口登山口に下山する1泊2日のルートです。難易度の高いコースですので、地図・コンパスなどの装備や服装には十分にチェックし、天候など最新情報を確認しましょう。
コース概要その①
観音平駐車場にある登山届ポストに登山者カードを入れ、装備・服装を再チェックしてスタート。樹林からの木漏れ日を浴びながら歩き雲海展望台で小休憩を取りましょう。押手川分岐から徐々に急坂となり、ハシゴ場を乗り越えて森林限界が切れると第一目的ポイントの編笠山頂です。山頂からの眺望を楽しんだら、ガレ場に注意しながら青年小屋まで下ります。
コース概要その②
青年小屋からは権現岳まで登り返し緩やかな登山道を進むとノロシバを通過。樹林帯を抜けるとガレ場となり西ギボシ、東ギボシとクサリ場などの岩場を進んで権現小屋から権現岳山頂に登頂します。頂部は狭いですが、阿弥陀岳や中岳、これから向かう赤岳の山容が望めます。権現岳からはクサリ場や61段のハシゴを慎重に下って旭岳へ登り返します。
コース概要その③
旭岳山頂直下の西側斜面をトラバース気味に通り、地形的にハシゴ場が断続する岩場を進み灌木帯を抜けて南峰と北峰の二つのピークがあるツルネを過ぎて岩場の斜面を下るとキレット小屋に到着して宿泊。狭い地形ですがテント場もあります。(※2020年小屋は休業。利用する場合は最新情報を確認。水場は有るが枯れやすいので水の確保も必要)北峰を過ぎた辺りは道に迷い易いので地図の確認をしましょう。
コース概要その④
キレット小屋からいよいよ赤岳へ。しばらく樹林帯を登り天狗尾根の頭付近はハシゴ、クサリ場が断続します。ルンゼ状(岩稜の溝部)の岩稜を登りますので浮石や落石に注意して進み、真教寺尾根分岐を過ぎると標高2,899mの赤岳山頂です。八ヶ岳連峰の主峰らしく360度の眺望は抜群、南・北・中央アルプス、富士山、近景では八ヶ岳の山々の大展開のパノラマビューです。
コース概要その⑤
赤岳からは中岳方向に向かい文三郎道を右に見て下り、中岳を過ぎて中岳のコルから岩場の急登を落石に注意して登り阿弥陀岳山頂に登頂。一旦中岳のコルまで戻り分岐を中岳道へ進み文三郎道と合流して行者小屋へ。行者小屋から南沢コースを辿り美濃戸口に下山します。
アクセスルートDATA
登山口までのアクセス | 【観音平:登山口】JR小淵沢駅より車利用約15分(駐車場有り) 【美濃戸口:下山口】JR茅野駅へバス利用約50分 (車)中央道諏訪南ICへ約15分(駐車場有り) |
登山ピーク時期 | 7月~9月 |
山行 | 1泊2日、登り方難易度:☆★★★★ |
アクセス情報 | 距離約17.1km、累積標高差:上り1,912m、下り1,944m、地図上標準総コースタイム14時間320分 |
コースタイム(1日目) | 【約6時間50分】 観音平スタート⇒(60分)雲海⇒(50分)押手川分岐 ⇒(80分)編笠山頂⇒(30分)青年小屋⇒(100分) 権現岳⇒(90分)キレット小屋(泊) |
コースタイム(2日目) | 【約7時間30分】 キレット小屋⇒(130分)赤岳山頂⇒(70分)中岳のコル⇒(30分)阿弥陀岳山頂⇒(20分)中岳のコル⇒ (50分)行者小屋⇒(100分)美濃戸山荘⇒(50分) 美濃戸口ゴール |
まとめ
八ヶ岳連峰への登山には複数の各方面からのアクセスの良い登山口があり、標高が高い割には日帰り登山が可能なルートも複数有り登山マニアには人気となっています。その八ヶ岳連峰のなかでも初心者向けで登り方も低レベルと言って良いルートを主にご紹介しました。但し、登山にはアクシデントが付きものですから、初心者に限らず装備・服装など万全に用意して臨みましょう。
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