立山の概要
立山は北アルプスの最北部に位置し、中部山岳国立公園の一郭に指定された代表的な山群での総称です。立山という独立峰はなく、雄山(おやま:標高3,003m)、大汝山(おおなんじやま:標高3,015m)、富士の折立(ふじのおりたて:標高2,999m)の三つの峰を立山連峰と称しています。一般には雄山を立山と呼ぶこともあります。劔、鹿島鑓、唐松岳と同様に日本に現存する氷河があることでも有名です。
立山に咲く高山植物
立山連峰は日本でも有数の夏の季節に咲く高山植物が生育地でもあり「花の百名山」にも選ばれています。豪雪地帯であることから、花期のシーズンは短期間ですが、立山の名を冠した希少な植物としてタテヤマリンドウ、タテヤマチングルマ、タテヤマアザミ、タテヤマウツボグサなどの他、ミヤマキンバイ、コバイケイソウ、クロユリ等々、季節時期に咲く幾種類もの美しい高山植物が夏季のシーズン中には登山者の目を楽しませます。また、秋の紅葉シーズンは見事な景色を見せます。
立山登山で留意したい点
立山登山では室堂付近まで獲得標高差約2,000mまで登りますので、気圧の変化に身体がついていかず高山病を発症することがあります。特に初心者は注意をする必要です。立山は自然の宝庫で弥陀ヶ原、大日原湿原などがラムサール条約に登録され貴重な自然の保護を目的として登録されています。時期に咲く植物などを採取することは厳禁。立ち入り禁止区域には入らない様にしましょう。立山登山は距離が長いアクセスルートがほとんどですが、室堂から雄山山頂往復ルート(アルペンルート)は唯一距離やコースタイムも短く、難易度も低レベルで日帰りが出来るおすすめルートです。
立山登山での装備・服装
標高2,000mを超える登山では歩く距離も長いことから、気候の急変や疲労による体力の衰えなどによって遭難の危険性を考慮しなければなりません。登山時期に合わせ、山行の計画(コース・距離・時間)に応じた装備・服装を用意します。初心者に有り勝ちですが、あれもこれもと無駄なものを余計に携行すると、過重な荷物となり疲労に繋がります。有用なものを予め良くチェックして備えたいものです。装備・服装のチェック表はネットで検索できます。初心者は経験者のアドバイスを受けると良いでしょう。必携品としてはヘルメット、トレッキングポール、地図・コンパスは必携の装備です。
立山登山ルート①/室堂~雷鳥平
おすすめコース/【初心者向け】
立山黒部アルペンルート中の室堂は標高2,450mにあり、雄大な山々の絶景を間近に見られる所として大人気です。室堂から雷鳥平までのルートは距離も短く短時間でゆっくり往復できる難易度も低レベルの初心者向けおすすめ日帰りコースです。登山とまではいかないまでも美しい景色や夏季シーズンは時期に咲く高山植物を鑑賞しながら山岳気分を味わえます。但し、地図と天候急変に対応する装備・服装を用意しましょう。
登山コース概要/その①
地図を必ず持参して室堂をスタート。すぐに見えてくるのが“みくりが池”です。夏でも残る白い残雪と空の青さを映した山の湖は神々しいほどの美しさです。みくりが池温泉に近くなると硫黄の臭いが鼻をつく“地獄谷”に着きます。仮設水場(飲用ではなく、有毒ガスの濃度が高まった際に、タオルなどを濡らして口や鼻にあてがうためのもの)には火山ガスに注意の看板が建てられています。(※地獄谷遊歩道は火山ガスの為立ち入り禁止)
登山コース概要/その②
地獄谷を過ぎると展望広場がありベンチも設置されている“エンマ台”に着きますので休憩ができます。エンマ台からはアップダウンのある尾根道を進み、血の池、りんどう池を眺めながら雷鳥荘を通過。石段の急坂を注意して歩き雷鳥沢ヒュッテを左手に見て色とりどりのテントが点在する雷鳥平に到着。周囲の雄大な絶景を楽しんだら往路を室堂へ戻ります。
アクセスルートDATA
室堂登山口までの |
立山駅よりケーブルカーで美女平下車。 |
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登山ピーク時期 |
6~9月 |
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山行 |
日帰り、難易度:☆☆☆☆★ |
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アクセス情報 |
距離約5.4km、累積標高差:登り・下り355m |
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コースタイム |
【約2時間30分】 |
立山登山ルート②/室堂~雄山
おすすめコース/【初心者向け】
立山駅から美女平を経て立山黒部アルペンルートをアクセスルートとして室堂までバス移動し、室堂をスタートしてして標高2,992mの雄山山頂広場から更に3,003mの雄山神社の祠が建てられている立山の主峰雄山の最高峰山頂に登頂。往路を辿り室堂に戻る日帰りコースです。初心者でも日帰り登山ができる一般的なコースですが、難易度としては中レベルですので室堂で前泊して余裕のある山行をおすすめします。
登山コース概要
地図・コンパスや装備・服装をチェック、登山届を提出して室堂ターミナルをスタート。広大な草原のなかに岩が点在する風景を歩くと室堂山荘が見えてきます。標高2,692mの一ノ越までは良く整備された登山道を進みます、シーズンによっては残雪が有りますので注意します。一ノ越から岩場の急登になり雄山山頂に到達です。山頂からの展望は槍ヶ岳など北アルプスの山並みが望めます。初心者は下りに危険が増しますので注意しましょう。また、夏季シーズンには多くの登山者で混雑しますの登山道の譲り合いをしましょう。
アクセスルートDATA
登山ピーク時期 | 6~9月 | |
山行 | 日帰り、難易度:☆☆☆☆★ | |
アクセス情報 | 距離約5.7km、累積標高差、登り・下り906m | |
コースタイム | 【約4時間30分】 室堂ターミナルスタート⇒(10分)立山室堂⇒ (80分)一ノ越⇒(60分)雄山山頂⇒(50分) 一ノ越⇒(60分)立山室堂⇒(10分)室堂ター ミナルゴール |
立山登山ルート③/室堂~黒部平
おすすめコース/【中級者向け】
立山アルペンルートの最高地点の室堂をスタートして立山雄山に登用後、一ノ越から秋シーズンには紅葉が美しい東一ノ越から高山植物も見られるタンポ平を歩いて日本では最大と言われる大峡谷に築かれた雄大な黒部ダムに至る日帰りルートで、夏季シーズンには高山植物が鑑賞でき、秋シーズンは紅葉が見事ですので、健脚者にはおすすめですが初心者には少々きつい難易度中レベルとなり、室堂に前泊してスタートする日帰りコースです。東一ノ越からタンポ平を経て黒部平駅間は難路も有り、道に迷いやすいので、しっかりと地図を携行して歩きましょう。
登山コース概要その①
前日に立山アルペンルートで立山ロープウェイ、立山トンネルを通って室堂で前夜泊して翌日早朝に装備をチェックし、地図・コンパスも携帯して室堂をスタート。一ノ越手前までは歩きやすい整備された登山道を歩き、急登を登ると一ノ越山荘に到着。分岐からガレ場の急登をすすんで立山雄山山頂に登頂。標高3,003mの雄山神社で360度の絶景を楽しんだら一ノ越まで戻ります。落石やスリップなどに注意して下ります。
登山コース概要その②
一ノ越分岐を東一ノ越までの緩やかな登山道を途中トラバースしながら下ります。時期が合えば高山植物の花々を見ながら進みます。東一ノ腰からは、これから辿るタンポ平やロープウェイの大観峰駅や黒部湖の一部が見えたりします。東一ノ越で休憩してからつづら折の急斜面をタンポ平まで下ります。
登山コース概要その③
晩秋の季節時期には見事な紅葉の景色となる樹林帯を進みます。途中の登りにはハシゴ場もあったり、藪漕ぎをする場所や枯れ沢に行き当ったりしますが、道に迷わない様に気をつけ、地図を確認しながら進みます。頭上に時折ロープウェイのゴンドラが行き来するのを見ながら黒部平駅に到着。黒部ケーブルで黒部湖駅へ。黒部ダムを歩いて黒部ダム駅から登山者用出入り口から外へ出てゴール。
アクセスルートDATA
登山ピーク時期 |
7~9月 |
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山行 |
前泊日帰り、難易度:☆☆★★★ |
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アクセス情報 |
距離約7.8km、累積標高差:上り905m・下り1,014m |
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コースタイム |
【約6時間50分】 |
立山登山ルート④/室堂~大日岳~称名滝
おすすめコース/【中・上級者向け】
室堂平から標高2,606m奥大日岳、標高2,501m大日岳と続く大日連峰を踏破し、称名滝へとゴールするルートです。このルートの魅力は稜線から眺める立山雄山、左に見下ろす弥陀ヶ原の湿原、右には剱岳の岩峰の絶景と雪解け直後の時期7月から8月にかけてのシーズンに群生して咲く高山植物の花畑を鑑賞できるのでおすすめルートです。難コースもあるので地図・コンパスは必携です。初心者には難易度が少々高い中・上級者コースです。
登山コース概要その①
稜線歩きの長距離コースですので、装備を入念にチェックし地図・コンパスを携帯し、登山届を提出して室堂平をスタート。すぐにみくりが池、硫黄の臭いが漂う地獄谷のエンマ台を過ぎて、色とりどりのテントが点在する景色の素晴らしい雷鳥平で休憩。雷鳥平から大走りルートへの分岐と剱岳登山ルートにある別山乗越への分岐を通り過ぎて新室堂乗越分岐を大日岳方面へと向かいます。室堂乗越分岐からの稜線にはフラワーロードと呼ばれるほど、夏季シーズンに可憐な花々を咲かせる高山植物を眺めながら歩きます。
登山コース概要その②
カガミ谷乗越から右手方向に剱岳が望めます。大日岳最高標高点(2,611m)には現在廃道になっていますので南側の巻道を登ります。標高2,606mの奥大日岳から称名川の谷を隔てて立山有料道路が見えます。奥大日岳から滑りやすい岩場を下り稜線に入り、二重山稜(二つの稜線が平行していて窪地になっている)の水溜まりなどに気をつけて通過すると崩壊地に出ますので、クサリ場やハシゴ場を十分に注意して終えるとなだらかな稜線となります。
登山コース概要その③
整った稜線ですがコブにはクサリ場があります。さらに広く歩きやすい稜線を進むと大小の岩などが林立する「七福園」に着きます。修験者が修行したと言われる「七福園岩屋」と呼ぶ岩窟があります。標高2,500mの中大日岳を過ぎてハイマツ帯を降りて鞍部にある大日小屋に宿泊。翌日標高2,501mに登頂後大日平方面に下り、途中牛の首周辺の滑りやすい痩せ尾根に注意して歩き称名滝にゴールします。
アクセルルートDATA
登山ピーク時期 |
7~8月 |
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山行 |
1泊2日、難易度:☆★★★★ |
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アクセス情報 |
距離約15.1km、累積標高差:上り1,003m・下り2,388m |
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1日目コースタイム |
【約6時間】 |
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2日目コースタイム |
【約4時間50分】 |
立山登山ルート⑤/室堂~雄山~雷鳥沢周回
おすすめコース/【中・上級者向け】
室堂から一ノ越を経て立山雄山に登頂。立山連峰の最高峰、標高3,015mの大汝山を通過して標高2,999mの富士の折立(ふじのおりたて)から大走り分岐を左に雷鳥沢方面に向かい、みくりが池を通って室堂へ周回ゴールする初心者には少し難易度の高い健脚者向けの日帰りコースです。距離が長いので不慮の事態に備えて装備・服装をチェック、地図とコンパスも必ず用意しましょう。
登山コース概要/その①
地図やコンパス、装備などをチェックして室堂をスタート。一ノ越までは石畳の良く整備された登山道を歩きます。ジグザグの道が徐々に急坂になりトラバースして進む残雪の箇所もありますので滑らない様に注意します。途中みくりが池や煙が立ち昇る地獄谷が見えます。一ノ越でトイレ休憩後、分岐を雄山に向かい急登の岩場の浮石に注意しながら雄山に登頂。
登山コース概要/その②
雄山から大汝山への縦走路を辿ります。雄山からは滑りやすい岩場に注意し地図を確認しながら歩きます。大汝山手前は小さなアップダウンを進んで標高3,015mの大汝山山頂到達。立山最高峰の山頂は狭いので注意。大汝休憩所は軽食も食べられ、有料ですがきれいなトイレも設営されています。大汝山から富士の折立に向かいます。
登山コース概要/その③
登山道は広い尾根道ですが黒部側は急峻な崖ですので注意します。富士の折立は巻き道を進み、ザレ場の道を下り右手に大きな雪渓がある“内蔵助カール”を眺めながら大走り分岐を左に進み、約2.5kmの大走りを途中ガレ場に注意しながら一気に雷鳥沢に下ります。雷鳥沢からエンマ台、みくりが池を経て室堂平にゴール。
アクセスルートDATA
登山ピーク時期 | 6~10月 |
山行 | 日帰り、難易度:☆☆★★★ |
アクセス情報 | 距離約8.8km、累積標高差:上り・下り1,285m |
コースタイム | 【約6時間40分】 室堂ターミナルスタート⇒(90分)一ノ越分岐⇒ (60分)雄山山頂⇒(20分)大汝山⇒(20分) 富士の折立⇒(20分)大走り分岐⇒(100分) 雷鳥平⇒(70分)みくりが池⇒(20分)室堂ター ミナルゴール |
まとめ
山岳信仰の象徴として崇められてきた立山連峰ですが、立山アルペンルートが開通したことによって人気が高まり多くの人たちが山岳気分を味わえるとあって気軽に訪れる様になりました。初心者でも歩けるトレッキングルートも複数あり、日帰りで雄山山頂まで往復できます。ご紹介したおすすめルートは主に室堂を起点としたものでポピュラーなもので難易度も低・中レベルです。夏季シーズンには宝庫と言われる高山植物群を眺めるだけでも一見の価値がありますよ。
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