メアジを求めてアジングに
内地でよく見かける魚が奄美以南になるとパタリと居なくなることがよくあります。例えばマアジ・サバ・マダイ・スズキ・ヒラメなどです。もちろんカサゴやイサキなども居ませんが、特にアジサバに関してはその味を心が欲します。時々身悶えするほど食べたくなるのですが、元漁師の子としてはスーパーなどで購入して食べるのはプライドが許しません。そうなると代用品を釣るしかないのですが、それが「メアジ」です。大きいものになると35㎝オーバーにもなるこのアジ、マアジより美味しい場合があるので侮れません。
今回のメアジ・キントキ釣行
新月の大潮、されど潮悪し!
今週(2020年11月中旬)の潮回りは干満差の大きい新月の大潮にあたっているため、釣りには絶好の潮回りなのですが、とにかく暴風をかいくぐっての釣行をしなければならない私のようなものはなかなか良い時間帯に釣りに行くことはかなわず、結局潮のあまり動かない下げ5分くらいになってやっと「少し風が落ち着いたかな」と出かけられました。深夜の釣行のため常夜灯のある場所以外は行けないのもハンデですね。
桟橋ナイトアジング
バシャバシャと魚食魚のライズ音でもすればやる気も起きますが、まったく食い気の無さそうな小魚が足元でふらふらしているだけの桟橋。不良がコンビニの駐車場でたむろっているようなネンブツダイの塊りの下に、マツカサやキントキなどの赤い魚が見え隠れ。常夜灯の光が作る足元の影にワームを入れるとこいつらが喰ってくるのは明白なので、3gの重めのジグヘッドで遠投アジング。
今回の獲物2種(メアジとキントキ)
メアジ(ガティン)1匹
クンクンっと小気味よくティップを叩いて水面から上がって来るのは赤いお魚ばかり。しかも食用になるほどの大きさも無し。あと1投してなにも釣れなければ帰ろうと思った矢先、明らかに今までとは違う引き。銀色の魚体をひるがえしひるがえし上がってきたのが画像上部のメアジ。目がくりくりっとした可愛いヤツ。可愛いけれど美味しく食べるために活け締めにして、エラの下にナイフを入れて血抜きまで一瞬で終わらせる。これで俄然やる気が出て来たので延長してワームを投げる。
キントキ(ナンクスハーメ)3匹
メアジなどアジ類はたいがい群れで回遊しているものなのですが、1匹釣れたあとパタリとアタリが無くなる。代わりに食い付いてきたのがホウセキキントキ。いつものゴマヒレキントキに比べてあのイヤな臭いが少ない。「ん?これ美味しく食えるんじゃね?」と、大きめのヤツだけ3匹キープしてみる。あの臭いゴマヒレキントキでさえきちんと処理したら美味しくいただけたのだから、こいつの方が期待は持てる。すぐに活け締めしてこちらも血抜きをほどこす。(画像はゴマヒレキントキ)
メアジのお刺身の作り方
ゼイゴを取って三枚おろし
これより小型のものであればゼイゴ曳きも必要ありませんが、これくらいの大きさになるとゼイゴは外してから三枚におろします。腹骨を漉(す)いたら血合い骨の処理をしますが、今回は削ぎ切りにせずに「平」で切り付けますので、血合い骨は抜いていきます。大型の毛抜きのような「骨抜き」を使いますが、無ければ普通の毛抜きでも代用はできます。血合い骨を指先で確認しながら、魚の頭の方へ向けて抜けば簡単に抜けますよ。
おすすめの作り方
お刺身を切り付ける前に、皮側に飾り包丁を入れることをおすすめします。効果としては切り付けた時にきれいに見えるというのはもちろんあるのですが、少し厚めに切った時にお醤油の乗りがよくなるので、ちょんとお醤油を付けてパクリといく食べやすさもあります。また、家庭で食べているのに料理屋さんでいただいている雰囲気も味わえますので、絶対におすすめです。
こんな感じです
あまりきれいに盛り付けられませんでしたが、大体こんな感じです。このメアジはお醤油にちょんと触れさせた瞬間にパッと細かい脂が広がりました。浜締めでパーシャルに一日入れておいただけなので身が締っていてコリコリサクサクとしていました。にも拘らず脂乗りが非常によく甘みも充分でした。血抜きがきちんとできていたので特有のアジ臭さも無く、大変美味しくいただけました。お刺身サイコー!
キントキのてんぷらの作り方
三枚におろしたら腹骨を厚く削ぐ
キントキ類は皮がぶ厚く、当家では必ず皮は曳いて食べます。その関係で細かくて剥ぎにくいウロコは付けたままで三枚におろすのですが、腹側と背側に包丁を入れる時には細心の注意が必要になります。細かくて密度の高いウロコはまるでメタルアーマーのようで、包丁の刃を滑らせることがあり、これがケガの元となることがあります。包丁は必ずアタリを付けてからゆっくりと引きましょう。また、どんなにきれいに見えても臭いがあるとイヤなので腹骨は厚めに落とします。
おすすめの作り方
「冷たいお水に太い箸、ダマがあっても気にしない」これが私流のてんぷら粉の混ぜ方・作り方なのですが、最近は凄いですね。粉と水をまぜまぜするだけで簡単にてんぷらダネができてしまいます。またこれのレベルが高い。家庭でてんぷらを揚げる分には何の問題もありません。また卵水から作ったてんぷらダネは、その日のうちに使い切らないと腐ってしまうので捨てますが、これなら取り置きしておいてフライのバッター液などにも(どんだけ揚げ物好きなんだ)再利用できます。
色々なものを揚げちゃおう!
今回揚げたのはキントキだけではありません。カボチャ(薄切りにしたもの)、ちくわ(磯辺揚げ)、イカゲソ(冷凍しておいたアオリイカ)などです。白ダシを薄め、大根おろしに生姜のすりおろしを乗せたものを天つゆとしていただきました。案外簡単で美味しいのに和食は敷居が高いと敬遠する方が多いと聞きます。旬の魚などは絶対に素材を活かす和食がおすすめです。今はお出汁もてんぷらダネもインスタントで美味しくできますよ。どんどんてんぷらっちゃいましょう。
比較的楽な「皮曳き」
キントキ系のお魚はすべてそうなのですが、皮曳きは比較的楽な部類のお魚です。逆にウロコが細かくてガッチリ付いているタイプですので、皮を炙ったり湯引きをしたりしないのであればウロコはそのままで皮を曳いてしまいましょう。
てんぷら最高!やってみるべき!
さて、ここからは味のレポートです。いや、参りました。とにかく美味いてんぷらでした。カリカリの衣をサクッと歯でかむと、優しい弾力の白身がほろっとほどけます。まず来るのが「旨味」。噛んだ瞬間に「あ、うまいやつだ」と実感します。次に来るのが「甘味」なのですが、これがまた上品な甘味で、甘さ度(こんな度ないけど)で言えばキスと海老の中間くらいの甘さ。二つ目は塩でいただきましたが、相性は塩の方が上でしたね。旨味と甘みがさらに強調され、ハイボールを持つ手が震えるほどでした。キントキはてんぷらに限ると言い切れるほどのうまさでした。
釣っ食べシリーズが気になった方はこちらもチェック!
漁師でもないのにほぼ毎日ロッドを握っては海に向かっております。釣れたものは何でも口に入れるキャッチ&イートが基本のアングラーですが、「暮らし~の」のサイトでその釣行記や料理の手順などを紹介させていただいております。釣って食べるシリーズ(最近は「釣っ食べ」と表記)として書かせていただいた記事を幾つか併載させていただきますので、興味を持たれた方はこちらもチェックをお願いいたします。
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