ブドウムシとは
ブドウスカシバの幼虫
山の釣具店でも見かけられる、丸々としたブドウムシ。蛾の幼虫は、以前からよく釣れる万能型の活き餌として知られました。大量に飼育できないために、近年は高級な種類の餌に含まれています。しかし時々の釣りならばイクラや川虫に代えて使ってみたい、魅力のある餌です。
ブドウムシに似た生き物?
このブドウムシ、実は本来のブドウムシとは違った種類の餌のほうが主流です。そちらは明確にブドウムシと異なる種類の生物ですが、大量生産されて一般に養殖ブドウムシとして流通しています。偽ブドウムシというわけですが、この正体はについても紹介していきます。
ブドウムシの種類
ブドウスカシバの幼虫
今シーズンは市販のブドウ虫を買って使用しました😅決して高くないのでオススメですがササムシの方が身体がスリムで食わせやすい印象でした🤔あとブドウ虫は一度噛まれると体が柔らかいのですぐ『ぶちゅっ』となりがちですが、ササ虫は噛まれても2、3度続けて使えます❗️来年こそはササ虫取りたいな〜😔 pic.twitter.com/MsGBJ0gnFp
— 釣りだの🇺🇦 (@tsuridano) November 30, 2020
一般にブドウムシと言えば、その種類はブドウスカシバという蛾の幼虫のこと。ブドウスカシバはその名の通りに、ブドウ園などのブドウ科の樹木に好んで生息する種類です。ブドウの人気の栽培品種の他に、山間部に自生しているヤマブドウにも寄生しています。
ハチノスツヅリガの幼虫(養殖ブドウムシ/ハニーワーム)
安価で買える養殖ブドウムシの種類の正体は、ハチノスツヅリガの幼虫です。メイガ科の種類の蛾で、ミツバチの巣に寄生して食い荒らす農業害虫なので、別名でハチミツガ、またはハニーワームとも呼ばれます。しかしそんな厄介な幼虫が、良好な釣り餌になります。本家のブドウムシと違って養殖が簡単なことも、釣り餌の養殖ブドウムシとして出回っている理由です。
ブドウムシの特徴
ブドウムシの見た目
とても小さなブドウムシは、大きさが2~4cmほどにしかならない小さな幼虫です。パッと見た感じでは、小さいクワガタの幼虫のようにも見える姿をしています。むくむくとした肉質感のある胴体はとても綺麗なクリーム色をしていて、頭部は黒っぽく、頭部の周囲は褐色。短い腹脚が付いていて、這うようにして前に進みます。
自然界でのブドウムシの生態
幼虫はブドウ科の枝で、毎年6月頃に誕生します。幼虫は枝の中に住み、幹、葉、新梢などを食べます。2回から3回脱皮をするのが通常で、暑い8月の頃になると幹へ移動して老齢幼虫になります。初年には成虫にはならず、秋から幹に細長いこぶを作って越冬する特徴があります。翌年の梅雨の頃、ブドウスカシバの成虫として羽化します。
ブドウムシの成虫(ブドウスカシバ)
見た感じでは完全にハチと間違えやすいのが、ブドウムシの成虫であるブドウスカシバ。大きさから模様まですべてがハチのような見た目になったのは、身を守るためのベイツ型擬態と言われています。捕まえるとハチが刺す動作までも真似するのは不思議ですが、毒針は持っていないのでほとんど危険性はありません。
ハチノスツヅリガの幼虫の特徴
ハチノスツヅリガの幼虫の見た目
ハチノスツヅリガだったかな?それの幼虫で、餌用ですね。
— とんがり@右脚サイボーグ (@tongaribooby) March 17, 2019
釣具店ではブドウ虫という名で売ってますが、同じ虫かどうか?
嗜好性が高いので、多分美味しいはず(笑) pic.twitter.com/vPgN3bmVHr
一方で養殖ブドウムシと呼ばれる、ハチノスツヅリガの幼虫も気になる存在です。自然界にいる幼虫はとてもちいさな生物ですが、養殖しているものは幼若ホルモン物質を使って大きさを一回りアップさせているので、2~2.5cmほどあり、サナギに変化するのを抑え込んでいます。見た目の形も色もほとんどブドウムシで見分けが付きませんが、赤や緑の色付きもあります。
自然界での幼虫の生態
幼虫はニホンミツバチなどの巣に入り込み、巣を根こそぎ食べるという特殊な性質があります。幼虫はミツバチの巣を拠点として羽化して成虫になるため、ミツバチの巣全体が駄目になることもしばしば。これがハニーワームと呼ばれる所以で、養蜂家からは巣虫と呼ばれて恐れられる存在です。しかし近年はプラスチックを食べることでも注目されている昆虫です。
ハチノスツヅリガの成虫
昨夜の巣箱。これはハチノスツヅリガ⁉️なのか??
— ハチまろ (@hachimaro34sato) June 23, 2019
だとしたら、幼虫は、巣の材料である蜜蝋がエサ。どんどん巣を食べられていくらしい。近年、プラスチックを分解することで注目されてるとか💦 pic.twitter.com/yUau37o3Cr
夏季に飛び回っているハチノスツヅリガの成虫は、見た目がブドウムシの成虫とはまるで違います。よく見る蛾のような形状で、大きさは1~1.6cmと非常に小型。全体が茶色や灰色が混じったような、褐色をしています。成虫は養蜂場のあたりやミツバチの巣の近くに多く見られ、細長い卵を大量に産み付けるなど繁殖力が高めです。
ブドウムシで釣れる川魚の代表格
イワナ
ブドウムシを使えばどんな川魚も釣れると言われますが、その一種が渓流の王様とも呼ばれるイワナです。日本のイワナは大きさが30cmを超えて、褐色や灰色の体には白い斑点があることで他の種類と見分けられます。水温が低い河川の上流部を好む傾向があり、ブドウムシを見ればすぐに食らいつくので、釣りで狙うならおすすめです。
アマゴ
漢字で雨子と書くアマゴは、サツキマスが河川に残留した個体です。渓流釣りでは人気があり、大きさは35~50cmほど。体の表面に黒い斑点が付いているので、イワナと見分けが付きます。アマゴもブドウムシをとても好む魚なので、初心者の渓流釣りでも最初に釣れる可能性がある種類です。
ブドウムシでの釣りの仕掛け
基本のタックルと仕掛け
初心者がブドウムシで渓流釣りに挑むなら、タックルには渓流竿を選びます。リールは使わずチチワで仕掛けを接続するのが通常です。仕掛けは道糸ナイロン1~0.6号、矢羽根や毛糸などの目印、その下にガン玉、ハリス止め14号、ハリス0.4~0.8号(30cmほど)、渓流針は7~8号を利用すると良いです。全体の仕掛けはロッドの全長より短くして使い勝手を上げます。
リールを使うタックルと仕掛け
小型のリールを付けたトラウトロッドで、渓流釣りに挑むこともできます。この場合ルアーを使うのが主流ですが、ブドウムシを餌に選ぶ、餌釣りでもいけます。仕掛けはウキを使用したものにして、針は渓流針を使います。渓流では道糸は短くして、皮底に引っかからないように釣り針を垂らすのが基本です。
ブドウムシの刺し方
全身に通す刺し方
一般的におすすめされるのが、渓流針にブドウムシの全身を通す刺し方です。この釣れると言われる刺し方ではブドウムシの頭から針を刺し始めたら、体の中央を通っておしりから針を出す感じにします。つまりブドウムシは、渓流針と同じ形になるわけです。この刺し方はおしりから刺し始めても構いません。餌がかじられても、取れにくい特徴があります。
端っこだけの刺し方
ブドウムシの動きを活かすならば、体の端っこに針を引っ掛ける刺し方もあります。ブドウムシのおしりのほうだけに針を刺すことで、全身が動くのでイワナやアマゴの興味を引くことができそう。大きさが小さめのブドウムシにはやりやすい刺し方ですが、餌を持っていかれやすい欠点もあります。
ブドウムシのお値段
本家ブドウムシの値段
釣れると評判なブドウムシは、希少性が高く養殖も難しいため、1匹あたり100円ほどが相場と言われています。つまり20匹パックならば2,000円前後はしてしまうので、高級志向が高い餌になるのは確実。なかなか手が出しにくいですが、興味があれば釣具店に立ち寄って、1パック買ってみてください。
養殖ブドウムシの値段
一方で養殖ブドウムシことハチノスツヅリガの幼虫は、大量生産されているので本家よりかなり安い値段です。1匹あたりは30円で、本家ブドウムシの30%程度の価格にしかならず、手が出しやすいのは明らか。20~30匹ほどが入っているパックがあり、ネット通販でも平均500円台で、各種が出回っています。
ブドウムシの保存
最長の保存期間は3週間
全ての種類の生き餌は、保存可能な期間が決まっています。サシは5日程度、ミミズなら2週間は保存が効きます。ブドウムシの場合、他よりずっと長い3週間も生き餌として保存ができます。これはブドウムシの生命力がとても強いことが理由ですが、保存する環境は考えておかねばいけません。
ブドウムシの保存方法
保存する際には購入したケースのままで構いませんが、直射日光は避ける必要があります。気温が低い秋・冬・春の時期は、室内の寒すぎず暑すぎない場所に保存をします。暑い夏場はブドウムシを室内や野外での長期保存することは難しいですが、冷蔵庫の野菜室で室温10~15度程度の環境なら意外と長持ちさせられます。
ブドウムシの飼育
ブドウムシの飼育環境
本物のブドウムシを飼育するなら、自宅にブドウ科の植物があることが条件です。例えば一般的なブドウ品種のほか、ノブドウ、エビヅル、ヤマブドウなど。これらの枝葉が、ブドウムシの住居となります。庭にブドウムシが定着したら、透明な虫かごに入れて飼育することもできます。生命力が強い虫ですが、夏場は暑くなりすぎないよう注意が必要です。
ブドウムシの飼育に必要な餌
主要な餌となるのも、ブドウ科の樹木です。ブドウムシはブドウの枝や葉っぱなどを餌としています。自宅にブドウの樹木があれば、必要な餌の量も確保しやすくなります。基本的に冬季は幹にこぶを作って越冬させれば餌やりの必要がありませんが、室内で暖かい環境で育てることも可能です。
ブドウムシの繁殖
ブドウ虫に上半分の枝を枯らされた紅環です。上半分を強剪定しました。
— 果樹栽培が大好き (@aralk67) August 23, 2017
ブドウは生命力が強いので、樹全体が枯れることはまずありません。2房だけ残りました。 pic.twitter.com/xWORO3cXxg
繁殖は難しいと言われるのがブドウムシで、一般にはチャレンジしている人はほぼ見当たりません。ケース中での繁殖には雌雄を揃える必要があります。産卵させるなら、やはり新鮮なブドウ科の植物が重要になることが、難しい理由です。ブドウの木に自然に増えるのを待って、春に幼虫を捕まえる方法も良さそうですが、ブドウを枯らされる危険があります。
ハチノスツヅリガの飼育
ハチノスツヅリガの飼育環境
一方で天然のブドウムシより飼育しやすいのが、ハチノスツヅリガの幼虫のほうです。飼育環境は、大きさに拘らずに小型の虫かごでも構いません。自然界では暑くて汚い場所でも平気で繁殖していますが、乾燥には弱い生物です。自然環境同様に直射日光を避けたり、適度な湿り気を与える配慮が必要になります。
ハチノスツヅリガに必要な餌
餌やりについても、自宅で蜜蝋を用意するだけなのでブドウムシよりハチノスツヅリガのほうがずっと簡単です。蜜蝋とはミツバチの巣を形作っている素材のことで、ハチノスツヅリガの幼虫は好んでかじりつきます。蜜蝋はネット通販を利用すれば、格安で簡単に入手できるでしょう。
ハチノスツヅリガの繁殖
ハチノスツヅリガになってきよった。再度繁殖挑戦!! pic.twitter.com/J7t1HqTGCp
— うぱ (@yyssaann) September 16, 2015
繁殖させるなら、虫かごやケースの中にハチノスツヅリガの雌雄を含む複数を入れます。春から秋の暖かい時期に産卵をするので、ケースの中に産卵しやすい構造を作ってあげてください。卵は寒い環境でも越冬できて、翌年の春に羽化します。屋外に置くなら雨が当たらない場所が適切です。卵が羽化する確率は、ブドウムシよりずっと高いと言われています。
釣りにブドウムシを使ってみよう
釣果の違いを確かめたい
高価なブドウムシは確かに、渓流で魚がわんさか釣れる特徴を備えた餌でした。高級で手がでなくても、養殖ブドウムシことハチノスツヅリガの幼虫を選んで見れば大丈夫。他の餌と比べてどのくらい釣果が違うのかも、試してみたいですね。
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