スマカツオってどんなカツオ?
魚の形で一番美味しそうなのがマグロやカツオなどに代表される「砲弾型」ですね。今回の食材の「ウブス」も砲弾型の美味いヤツなんです。本名を「スマカツオ」と言い、一部のルアーマンには憧れの魚になっています。なぜこれが憧れになるのかといえば、とにかく「美味しいから」というのが第一の理由になります。腹に黒星が出ることから「やいと(お灸)」などと呼ばれたり、kuma10の実家では「キツネ」と呼ばれることもあります。それはマグロのトロだと言って食べさせてもバレないからだとオヤジに教わりました。
今回のスマカツオ釣行
スマカツオの釣り方
突然小型遊漁船を持っている近所のオジサンに「おい、ウブス釣りに行くぞ」と朝5時に玄関のドアを叩かれて、そのまま拉致されて船に乗せられたものですから今回は写真が撮れませんでした。「カイジか!」と突っ込むのが精いっぱいでした。出港は早朝5時30分。魚場は海上に岩が突き出している立ち神周り。釣り方はトローリング。とにかくザワザワしっぱなしの1時間でした。
伝統漁法
釣り方は今風に言えば「トローリング」なのですが、どちらかといえば「カッタクリ」に近い釣り方です。奄美の漁師さんが「のうまき」と呼ぶ木枠の糸巻きから直接ルアーを海に流して釣る方法です。魚の湧いているところを見つけて仕掛けを流していきます。アワセは無し。船を微速で流していると勝手に針掛かりします。それを手繰り上げて魚を外したらまた流すの繰り返しです。あっというまに40匹ほどの釣果がありました。
スマカツオの美味しい食べ方(特徴)
脂乗り最高の幻のカツオ
日本の近海で水揚げされるカツオの仲間は何種類かいますが、そのほとんどが「ホンガツオ」と呼ばれるものです。他には血合いだらけの「マルソウダカツオ」がありますが、脂乗りが悪くソウダ節などにされます。身質の近いものとしては旬のヒラソウダカツオがありますが、旨味はスマ(ウブス)のほうが3段階くらい上でしょう。画像はマルソウダの「宗田節」です。
漁師がだまされる脂
スマカツオは実は大きければ大きいほど脂乗りがよく美味しい魚です。小さいうちは赤身と血合いの境界がはっきりと別れていて血合い部分を切ってしまうと可食部がガサッとへってしまいますが、3㎏オーバーくらいになると身質が変わります。血合い部分が赤身に溶け込み、皮下脂肪とのせめぎあいで全身がマグロの中トロのようになります。これを切って出されると漁師でさえも「旨いマグロだ」などと騙されます。キツネと呼ばれる由縁でもあります。
今回のスマカツオの美味しい食べ方
新しいうちにさばく
今回のウブスはとても小ぶりで、きっと血合いも多く時間を空けるとサバ科特有の臭いが出るでしょう。しかし小ぶりとはいえしっかりとウブス(スマカツオ)の証、黒星は見受けられます。これが春先のように1匹2㎏を越えていれば有無を言わさず刺身にするのですが、脂乗りが心配なのでさばいた感じでどんな料理にするか考えていきます。
おろすのは比較的簡単な魚です
個体が小さいこともあり、三枚におろすのは一瞬です。しかもスマカツオに限らずカツオ系のお魚はもともとおろすのに大した技術はいりません。以下に手順を解説していきますが、慣れてしまえば1匹おろすのに1~2分あれば充分です。今回はさばいた感触(つまみ食い含む)であまり脂ノリが良くないようなので「ヅケ」にしていきます。
ウロコ部分を落とす
カツオ系の魚体はツルツルの部分と硬いウロコ部分の2部構成になっています。アジのゼイゴ取りの要領で硬いウロコの先から首元に向かって包丁を入れていきます。きれいな三角形の形に脳天近くまで両側から包丁を入れると、普通の魚では残る頭の身まできれいに落とせますよ。
背びれ部分を落とす
ボディのウロコを削ぎつつ頭頂部まで包丁を入れたら、そこはそのままにして次は尻尾の付け根から背中の硬いヒレ元を削いでいきます。頭の付け根まで削いだらカットして外します。この作業で普通三枚におろす時に背側にガイドを2本入れますが、その作業がいらなくなります。
頭と内臓を外す
エラ蓋の下から肛門に向けて包丁を入れていきますが、この時腹ビレをよけるように三角形に左右両側から入れていきます。そこまで終わったら頭と胴体を持って二つに割れば、ほとんど身の残っていない頭部と内臓が同時に外れます。
優しく水洗い
内臓が外れたらお腹の中を流水でよく洗います。この時に腹膜の裏側にある血の塊などは指でこそげ取りましょう。ただしあまりゴシゴシとする必要はありません。柵を取る時に血合いと一緒に汚れや血の塊などは落としてしまいますから。それよりも身割れしないように優しく掃除することが重要です。
三枚におろす
最初に背びれ下の硬い部分を削ぎ取ってありますから、後は腹側に切れ込みを入れるだけで三枚におろすガイドはできてしまいます。ガイド通りに包丁を差し込んだら太い骨を感じながら一気に切り裂きます。これを二回やれば三枚おろしの完成です。ここまで一匹さばくのに2分もかかりません。あとは腹骨を漉(す)けば最初のバットの中の状態になります。
皮を曳いてお刺身に切って行く
皮は尾側から剥いでいきますが、漁師さんが船上でさばく時にはこの作業はありません。丸のままの状態の魚に、魚体を縁取るように浅く包丁を入れ、頭側から強引に皮を剥いてしまいます。そこから三枚におろしていきます。ま、あんまりきれいにはならないのでおすすめはしませんが。
漬けダレのレシピ
真ん中の大きな血合いを贅沢に落とし、ついでに血合い骨まで処理したら、ウブスの皮を曳き、お刺身に切っていきます。醤油大さじ3、料理酒大さじ2、みりん大さじ1、白だし大さじ1、お酢小さじ1を混ぜて漬けダレを作ったら厚めに切ったお刺身を入れ、よく混ぜます。
じっくり漬け込む
全体にタレが絡んだら上からラップをして軽く押し、空気を抜きます。この状態で1時間ほど漬けこんだら下味付けは完了です。
食す直前に最後の味付け
食べる直前にワサビ・生姜を混ぜ、ゴマをふったらできあがりです。ワサビ・生姜はチューブのものを使う時にはこの量ですと2~3㎝づつくらいが目安になります。またゴマの一部はかける時に親指と人差し指でつぶして(ひねりゴマ)たっぷりかけましょう。
スマカツオの美味しい食べ方
ヅケの良い所は味変が楽しめるところにあります。とりあえずオツマミのようにお酒やご飯のお供として楽しんだらもみ海苔をごはんにのせ、上からヅケタレをかけ、ヅケを乗せて「ヅケ丼」。最後にヅケをたっぷりと乗せたごはんにミョウガや大葉、小ネギなどをトッピングして熱々のお茶をかけて「ヅケ茶漬け」など、美味しい可能性をたくさん探せます。
漬け(ヅケ)は脂の少ない魚を助ける!
今回使ったスマカツオは小ぶりで(あくまでもスマカツオにしてはですが)脂乗りが良くありませんでした。この場合血合いまで旨いと言われているスマでも、どうしても血合いまでいただくと生臭さが出てしまいます。しかし血合いを外すと旨味が落ちる。こんな時はスマカツオに限らず「ヅケ」にすることをおすすめします。もともと江戸前の寿司などは必ずひと手間かけるのを佳しとしてきました。白身にしろ赤身にしろ、旨味アップのために「ヅケ」を覚えましょう!
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今回は【火曜連載】で連載させていただいている「釣って食べるシリーズ」の第14弾になります。「暮らし~の」のサイト内でかなり自由に書かせていただいております。釣って食べることに少しでも興味がございましたら、これまでの記事も合わせてぜひご覧ください。
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