戦場ヶ原とは!
日光中禅寺湖、紅葉の名所竜頭の滝を過ぎた、標高約1,400m、面積約400haにも及ぶ奥日光の湿原地帯です。その内約174.7haの地域がラムサール条約(国際的な湿地の保護保全に関する条約)に登録されています。湿地の成り立ちは、男体山の噴火によって湯本から流れ出ている湯川が堰き止められてできた湖に火山からの噴出土砂などが堆積(たいせき)し、さらにその上に水生植物群の枯れた残存物が積もって湿原が形成されたものです。
戦場ヶ原の伝説
戦場ヶ原の地名になった由来は伝説によるものです。下野(しもつけ)の国(現栃木県)の「二荒神(男体山)」と上野(こうずけ)の国(現群馬県)の赤城神(赤城山)が、大蛇(二荒神)と大ムカデ(赤城神)に姿を変え、中禅寺湖の領地をめぐって戦った場所と言い伝えられています。
戦場ヶ原で見られる花々
戦場ヶ原や小田代ヶ原の周辺では、6月中旬から9月中旬頃まで風情な色合いに満ちた季節それぞれの花々が目を楽しませてくれます。初夏には湯川の畔にアヤメが咲き、戦場ヶ原の代名詞のワタスゲ、レンゲツツジやズミ。7~8月には、ハクサンフウロ、カラマツソウ、ホザキシモツケやノアザミも色を添えます。可愛らしい青紫色の釣鐘形をした花を咲かせるツリガネニンジンも見られます。9月に入ると、アキノキリンソウ、ヤマリンドウ、シオガマギクなどの花がほとんどの花が終わった草紅葉のなかに見られます。
戦場ヶ原でのハイキングスタイル
ハイキングは本格的な登山をするのではなく、高原や湖の畔など、自然に触れあい、季節の花々や景観などを楽しみながら歩くことを目的としたものです。但し、散歩の様に歩くのではなく、自然の道を歩くことですので、アップダウンや滑りやすい遊歩道もあることと、コースによっては長時間の歩行もあったりします。また、樹林帯のなかは道に迷いやすいこともありますので、初心者、ベテラン問わずマップは必携、できればコンパスも用意した方が良いですね。
ハイキングでの持ち物と服装
服装や装備などハイキングを行う際には、それなりのものを用意しましょう。自然のなかでは、いつどんな時にアクシデントが待ち受けているかも知れません。救急用品や飲み水は忘れずに、衣類は下着を含め替え用が必要。素材として綿は汗をかいても乾きにくいので、化繊のものがベスト。靴はスニーカーではなく、足首もホールドできるトレッキングシューズが良いですね。標高の高い場所では天候が崩れやすいのでレインウェアやフリースの用意もおすすめです。
戦場ヶ原周辺のハイキングコース
戦場ヶ原には湿原のなかや周辺を囲む様に木道が設置された自然研究路が整備されていて、湯滝の周辺をのぞけば、割合平坦な歩きやすくなっています。マップ記載のルート通りに進めば、戦場ヶ原の季節それぞれに自然を満喫できます。また、周辺にもいくつかの変化に富んだ、距離もそこそこのハイキングコースがありますので行き方などをご紹介しましょう。
戦場ヶ原のおすすめハイキング/初心者向け①戦場ヶ原自然研究路コース
戦場ヶ原の湿原地帯をゆっくりトレッキングするルートです。整備された木道が続いていて、小さい子連れでや初心者、高齢者の方でも大丈夫。湿原の季節ごとに咲く花々を眺め、鳥のさえずりなどに耳を傾けながら大自然を満喫できるハイキングコースです。行き方は、赤沼茶屋からスタート。自然研究路を歩いて赤沼茶屋に戻るルートです。
アクセスルート
【アクセス情報:距離約4km】赤松茶屋(東部日光駅よりバス約60分、駐車場・トイレあり)スタート・ゴール
【行き方と所要時間:約3時間】赤松茶屋スタート→(35分)石楠花橋→(10分)赤沼分岐→(50分)泉門池(いずみやどいけ)→(10分)小田代橋→(30分)光徳入口バス停→(国道120号)(40分)赤松茶屋ゴール
戦場ヶ原のおすすめハイキング/初心者向け②小田代原~戦場ヶ原周遊コース
赤沼茶屋から、マップ通りにクマザサの茂る小田代歩道を歩き、更に樹林帯のなかを進んで行くと、いくつか設置されている「鹿避け柵ゲート」を通り抜けます。小田代原展望台へは木道になっていて滑りやすいので注意。一旦低公害バスが運行する道に出て歩いて行くと右手に小田代原が見えてきて到着です。秋口の季節は草紅葉(クサモミジ)の素晴らしい景観が見られます。正面奥には“小田代の貴婦人”と形容される白樺の木が優美な姿を見せています。帰路は北上して戦場ヶ原湿原を通り赤沼へ戻る初心者向けコースです。
アクセスルート
【アクセス情報:距離約7km】赤松茶屋(東部日光駅よりバス約60分、駐車場・トイレあり)スタート・ゴール
【行き方と所要時間:約3時間】赤沼茶屋スタート→(5分)赤沼分岐→(10分)歩道分岐→(20分)戦場ヶ原展望所→(10分)分岐→(10分)小田代原(※バス停トイレ有り)→(60分)戦場ヶ原歩道分岐→(10分)泉門池往復→(60分)赤松茶屋ゴール
戦場ヶ原のおすすめハイキング/中・上級者向けコース①戦場ヶ原滝巡りコース
紅葉の季節は観光客でいっぱいとなる「竜頭の滝」からスタートし、国道120号沿いを行き交う車に気をつけて歩き、滝上から湯川沿いに石楠花橋、赤沼分岐を経て戦場ヶ原の木道へと進み、清涼な川の流れと湿原の季節に咲く花々を楽しみながら歩き、泉門池で休憩をとってから小滝を過ぎて、白く波打つ水しぶきを上げて流れ落ちる姿が美しい湯滝に到着。湯滝から周囲の樹々を湖面に移す湯ノ湖の西岸を歩き、硫黄の臭いが漂う湯本にゴール。湯本に至るまで登りとなり、アップダウンなどがありますので初心者向けより健脚者向けコースとなります。
アクセスルート
【アクセス情報:距離約8.2km、標高差約150m】≪赤沼茶屋スタート≫東部日光駅より約60分、駐車場・トイレあり。≪湯本ゴール≫東部日光駅へ約85分、駐車場・トイレあり。
【行き方と所要時間:約3時間】竜頭の茶屋スタート→(25分)石楠花橋→(10分)赤沼分岐→(60分)泉門池→(10分)小田代橋→(40分)湯滝(トイレ有り)→(西コース)(40分)湯本ゴール
戦場ヶ原のおすすめハイキング/中・上級者向けコース②切込湖・刈込湖コース
光徳牧場で名物の美味しいソフトクリームを味わってスタート。見晴らしの良い山王峠まで登って小休止。涸沼まで下り(急な木段有り)、しばらくはアップダウンのある自然林の中を歩き前方右側に、大蛇征伐の伝説が残る切込湖が見えてきます。山沿いに進むと続いてエメラルドグリーンの湖面が輝く苅込湖に到着。山の中の静かな湖の畔で休憩後、再びアップダウンのある山林の登山道をあるき小峠を過ぎて湯本にゴール。距離が長いことと樹林の中を進むので、マップに忠実に歩くことが基本です。
アクセスルート
【アクセス情報:距離約7km、標高差約250m】≪光徳牧場スタート≫東部日光駅より約75分、駐車場・トイレあり。≪湯本ゴール≫東部日光駅へ約85分、駐車場・トイレあり
【行き方と所要時間:約3時間30分】光徳牧場スタート→(70分)山王見晴らし→(20分)涸沼→(55分)刈込湖→(30分)小峠)→(20分)湯元ゴール
戦場ヶ原のおすすめハイキング/中・上級者向けコース③高山~小田代原~戦場ヶ原コース
竜頭の茶屋をスタートして、まず標高1667.5mの高山に登ります。展望はあまり良くありませんが、自然いっぱいの山頂は清々しい心地を味わえます。初夏の季節ですとツツジ科のシロヤシオが見られます。高山からは幕張峠を経て小田代原へ。小田代原の貴婦人と言われる白樺を遠望しながら泉門池まで進んで小休止したら戦場ヶ原の季節の山草を鑑賞しながら赤沼分岐、石楠花橋のルートで竜頭の茶屋へゴール。登山気分も味わえる健脚者向けコースです。
アクセスルート
【アクセス情報:距離約11km、標高差約380m】≪竜頭の茶屋スタート・ゴール≫東武日光駅より約60分、駐車場・トイレあり。
【行き方と所要時間:約4時間30分】竜頭の茶屋スタート→(70分)高山山頂→(25分)熊窪分岐→(20分)幕張峠→(20分)小田代原(バス停トイレ有り)→(20分)分岐→(20分)歩道分岐→(5分)泉門池→(60分)赤沼分岐→(10分)石楠花橋→(30分)竜頭の茶屋ゴール
戦場ヶ原のおすすめハイキング/上級者向け・男体山~戦場ヶ原コース
ラストのご紹介は登山の醍醐味とハイキングの楽しさをミックスさせたコースです。中禅寺湖を眼下に見下ろす男体山への登山とゴールは奥日光戦場ヶ原の三本松茶屋へとなります。このコースは急登とアップダウンの登山道を長時間歩くルートですから、いざという時にも困らない様にマップ・コンパスも携帯し、しっかりした装備を整えてチャレンジしましょう。
コース紹介①男体山登頂
中善寺湖畔の二荒山神社からスタート。石段を上り、一合目から二合目までは滑りやすい樹林のなかの道を進みます。三合目から舗装された林道をすすんで、四合目から鳥居をくぐって登山道へ入り、急な登りとガレ場に注意しながら八合目へ。九合目からは森林限界を超え、見晴らしが良くなり中禅寺湖も見下ろせます。山頂付近は赤茶けた岩肌などのむき出しや、ザレ場など火山の名残を留めています。二荒山神社の奥宮が建てられている頂上に到着。
コース紹介②男体山頂~戦場ヶ原三本松
男体山頂からの360度の展望を満喫したら、志津避難小屋方面へ向かいます。分岐点が数箇所ありますのでマップを良く確認して、迷い込まない様に注意します。長い下りを歩き、志津乗越からは男体山のなだらかな裾野を下ります。良く整備され、カラマツやダケカンバの自然樹林のなかの歩きやすい林道を歩いて戦場ヶ原三本松へゴールです。
アクセスルート
【アクセス情報;距離約16.48km、標高差1160m】≪二荒山神社スタート≫東武日光駅より約50分(※二荒山神社中宮祠駐車場利用の場合は神社に確認要)、≪戦場ヶ原三本松ゴール≫東部日光駅へ約65分、駐車場・トイレあり
【行き方と所要時間:約7時間50分】二荒山神社前→(50分)三合目→(20分)四合目→(80分)八合目→(50分)男体山頂上(奥宮)→(90分)志津避難小屋→(20分)志津峠(分岐)→(30分)湯殿橋(分岐)→(55分)梵字飯場跡(水場)→(30分)裏男体山林道起点→(15分)三本松ゴール。
戦場ヶ原ハイキングで守りたいこと
戦場ヶ原は、奥日光の貴重な湿原としてラムサール条約の登録湿地とされています。年間多くの観光客やハイカーが訪れていますが、ゴミなどの廃棄物に悩まされています。ゴミは必ず持ち帰る様にしましょう。また、国立公園の特別保護区域では動物は放つことが規制されていますので、ペットの同伴は厳禁です。当然のことながら、湿原への立ち入りや、植物の採取も禁止されています。マップを確認しながら歩くことも基本です。
まとめ
戦場ヶ原のおすすめハイキングコースをご紹介してみました。有名観光地もあり、アクセスも良く、コースマップも充実していますから春から秋にかけてはハイキングや登山、冬はスキーなどに多くの観光客が訪れています。ハイキングは数時間の距離を歩かなければなりませんが、戦場ヶ原は標高が約1400mの高さに位置しますので、天候が急変することがあります。悪化の予報がある場合は無理をせずに早めに引き返す勇気を持ちましょう。
奥日光戦場ヶ原についてなどもっと情報を知りたい方はこちらもどうぞ!
奥日光戦場ヶ原の詳しいことや、周辺の登山・ハイキング情報を知りたい方は「暮らし~の」のWEBマガジンでも取り上げている記事がありますのでご覧になってみてはいかがでしょうか。