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タイリクバラタナゴはどんな魚?生態やオスメスの見分け方、飼育方法もご紹介!

観賞魚にもしやすい小型の魚、タイリクバラタナゴを知っていますか?今では日本中で確認されるようになったこの魚、独特な生態や体の構造を持っていることで知られます。オスメスの見分け方飼育方法など、タイリクバラタナゴの秘密に迫ります。
2020年10月23日
はぐれ猫
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タイリクバラタナゴをご存知?

バラタナゴは外来種のコイの仲間

何処にでも生息するので、意外と存在感のあるタイリクバラタナゴ。この淡水魚はコイ科に含まれ、タナゴ亜科、バラタナゴ属に分類されている魚です。その優雅な泳ぎや面白い生態から好む人もいますが、外来種という理由があって、毛嫌いされやすい一面を持っています。

色んな楽しみ方があるタイリクバラタナゴ

気軽に自宅で育てやすい意味で、外来種ながらタイリクバラタナゴを水槽で飼育する人は大勢います。さらに小型なので釣りやすいという意味で、釣り人もよく狙っている魚です。飼育と釣りの両方が楽しめる上、食べることもできるなど、このタナゴの楽しみ方は様々にあります。

タイリクバラタナゴの名前

タイリクバラタナゴの名前の由来

長い名前を見えばピンと来る人も多いですが、大陸に由来することからタイリクバラタナゴの名が付いています。バラタナゴは漢字で書けば薔薇鱮、薔薇鰱など、ちょっと書けない字が使われているのも特徴的。バラタナゴの種類は、繁殖期にオスの体が紅色のバラのように鮮やかに色づくことが由来でした。

タイリクバラタナゴの別名

長ったらしい名前が気に入らないのか、人々は短く略してタイバラと呼んでいます。これがいつしか、タイリクバラタナゴの和名のように定着しました。関東平野ではオカメ、濃尾平野ではセンパラ、琵琶湖のあたりではボテ、ボテジャコなどなど。外来種とは思えないような、色々な和風の別名を持っている魚です。

タイリクバラタナゴの生息地

東アジアに生息する

大陸の名を持っているタイリクバラタナゴの起源は、東シナ海の先の中国の南部であると言われます。海を隔てた台湾や、朝鮮半島にも分布しています。日本国内では、ある理由から近代に入って分布するようになり、北は北海道から南は沖縄まであっという間に生息範囲を拡大しました。

日本の生息地

よくタイリクバラタナゴを見つけられるのは、流れがゆるやかな川の中流や下流域です。大きな河川ならば流れが滞る場所を好み、細い用水路や小川では密集して泳いでいるのが確認されます。そんな川に接続する平野部の溜池や湖沼も、タイリクバラタナゴが好んでいる場所です。

日本に生息する理由とは

まだ第二次大戦中の真っ只中だった1940年代半ば、政府がタイリクバラタナゴを大陸から導入したのが日本に分布する理由でした。当時ソウギョなどを食用魚として持ち込んだ時、紛れ込んだと言われます。その後二枚貝やアユを各地に移動させる際にも一緒に移動、飼育された個体の遺棄も進み、今のような分布に至りました。

タイリクバラタナゴは生態系被害防止外来種

生態系被害防止外来種とは

外来種とは言っても、有益となる生物も存在するものです。しかしタイリクバラタナゴは、環境省によって要注意外来生物に指定されてしまった淡水魚です。日本生態学会では、侵略的外来種ワースト100にも選んでいます。いまタイリクバラタナゴが各地で邪魔者扱いされてしまうには、明確な理由があるようです。

ニッポンバラタナゴを脅かすため駆除対象に

なぜ可愛いタイリクバラタナゴが、要注意外来生物になってしまったか。それは近縁のニッポンバラタナゴと交雑し、彼らが絶滅の危機に直面したことが理由でした。今では日本固有種を守る目的で、タイリクバラタナゴは駆除対象です。しかし人間が大陸から運んだのが始まりだから、彼らにとっては納得いかない話かもしれません。

現在は減少傾向に

そんな人間による危険指定が影響してか、タイリクバラタナゴは減少傾向にあります。数を減らしたのは水辺の開発が進み、環境が変化したのが大きな要因。オオクチバスやアメリカザリガニなど天敵となる外来種が増加したことや、釣り人による乱獲も影響しています。減っているのはニッポンバラタナゴと同じ状況のようです。


タイリクバラタナゴの体

体長と体の特徴

とても小型なことは、タイリクバラタナゴの目立った特徴です。全長は大人になっても5~10cmほどしかありません。体長の割には体高があるからずんぐりした体に見えますが、真正面から見ると平べったい形。背びれや腹びれは体のサイズに比べても大きく、完全に透明です。

体の模様

体色はオス・メスともに銀色が基調で、背中側には青みがかった部分もあり、全体に光沢を持った特徴があります。稚魚など小さい頃には背びれに黒斑がありますが、成魚になると消えてしまっています。ペットショップで購入できる種類は突然変異種が多く、黄色や白や透明なものもあって、自然界の個体とはまるで別物に見えます。

婚姻色

春から夏の繁殖期になれば、タイリクバラタナゴのオスの個体は、婚姻色と呼ばれる特殊な色に変化する特徴もあります。婚姻色は全身に紅系の色が鮮やかに付いて、普段とはまったく違った様子。薔薇という名の由来にもなった鮮やかな見た目に変化することで、水中のメスを惹きつける生態があります。

個体の寿命

卵から孵化したばかりのタイリクバラタナゴの稚魚は、成熟までに1年ほどを要します。個体によって寿命は異なりますが、平均しておよそ2年と言われます。ただ成長が他の個体より良かったり飼育環境が良好ならば、2年以を大幅に超える寿命を獲得することがあります。

タイリクバラタナゴの見分け方①雌雄

体の形状や体色での見分け方

秋から冬にかけての時期は、婚姻色がないためにオスとメスの見分けが難しいこともあります。しかしタイリクバラタナゴのオスのほうが大きくなりやすいことや、綺麗に輝く特徴で見分ける方法があります。腹びれに白い筋が入る特徴もありますが、個体によっては薄かったり無いこともあるので、判断基準としては弱いようです。

繁殖期は見分けやすい


一方で春から夏にかけての繁殖期は、タイリクバラタナゴの見分け方が容易になります。オスは体色が派手に変わるのと同様に、メスの方も体に大きな変化が出ます。それは下腹部の産卵管を見れば一目瞭然。産卵管が、体長よりずっと長く伸びるという、珍しい特徴が現れるのです。

タイリクバラタナゴの見分け方②別種

ニッポンバラタナゴとの見分け方

大阪方面ではキンタイ、九州ではシビンタとも呼ばれ、ニチバラと略されるニッポンバラタナゴ。絶滅に瀕している希少な日本固有種ですが、外来種のタイリクバラタナゴとは見た目や生態が瓜二つという特徴もあります。そのため釣りをすれば、見分け方が困難なことも。保護の観点からも、両者の見分ける方法が知りたいところです。

オスを見分ける方法

オスの個体を見分ける場合は、まず婚姻色を見る方法が良いと言われています。ニッポンバラタナゴの婚姻色は朱色で、タイリクバラタナゴのほうは紅色と言った違いがあります。また、ニチバラのオスは腹びれが黒く縁取られる特徴も。しかし個体によってはなかなか区別がつきにくく、素人には難しい判断です。

メスを見分ける方法

次にメスの見分け方ですが、こちらも素人にはわかりにくい違いがあります。ニッポンバラタナゴのほうは全体に丸みを帯びた形状で、タイリクバラタナゴのほうはひし形と言われます。ニチバラのメスは顔が丸みを帯びていたり、繁殖期の産卵管の付け根が赤くなるという特徴も持っています。

ニッポンバラタナゴとの交雑種との見分け方

さらに見分け方を苦悩させるのが、交雑種の存在。ニッポンバラタナゴとタイリクバラタナゴは、日本列島で交雑化し、分布域が拡大しています。基本的に日本種と外来種、両者の特徴を有するため、本物との見分けが困難です。現在では集団の単位でmtDNAによる分析を交え、総合的に種類を判別する方法が主流になっています。

タイリクバラタナゴの繁殖

二枚貝に寄生する不思議な繁殖方法


極めて奇妙と言える繁殖の生態を持つのが、タイリクバラタナゴです。3月からの繁殖期になると、メスの個体はドブガイなどの二枚貝の周囲になわばりを作り、貝の出水管からエラの中へ産卵してしまいます。この時にメスの長い産卵管が役立つというわけです。卵や稚魚が貝に守られるメリットを重視して、進化した結果です。

力強い繁殖力

繁殖力の強さについても、特筆すべきところです。ニッポンバラタナゴよりも産卵周期は2倍早く、産卵回数は4倍、卵の数は1.5倍にものぼる集団も国内で確認されているほど。タイリクバラタナゴは水質が悪い環境でも繁殖できるというから、環境の変化に弱い日本固有種に取って変わったのも当然でした。

タイリクバラタナゴのエサ

植物をエサとする

普段から川でタイリクバラタナゴが何を食べているのか、そのへんの生態も気がかりです。主食としているのは付着藻類といった、川底の石に付着する藻の種類です。また水中では他の植物繊維質も口にしています。ただこのタナゴは雑食性なため、エサは植物だけには限りません。

動物もエサにする

水中生活ではプランクトンもエサとして好んでいる、タイリクバラタナゴ。特に稚魚のときにはワムシといった輪形動物をよく食べ、成体になってもミジンコなどの小型の甲殻類も口にしています。口がとても小さいタイリクバラタナゴなので、小型の動物をエサとして選ぶ傾向にあります。

タイリクバラタナゴの釣り

釣りのタックル

気軽に川釣りをするなら、タイリクバラタナゴを狙うのがおすすめです。1~1.5mのタナゴ竿で釣る方法が主流になっています。タックルは和竿でも良く、道糸がナイロンの0.3~0.4号、親ウキは斜め通しとし、イトウキ5~7個、板オモリ、ハリス付きタナゴ針を使う仕掛けなどが主流です。

釣りのエサ

一般的にタイリクバラタナゴの釣りでは、昆虫系のエサや練り系のエサが用いられています。昆虫はユスリカの幼虫である、アカムシが一般的。練りエサは市販のグルテンエサでokです。タナゴ針はとても小さいので細かい作業ですが、練りエサは小さくまとめて取り付けるのが大切。魚影が見える場所を選んで釣り始めます。

タイリクバラタナゴの飼育①環境とエサ

水槽の環境

とてもサイズが小さなタイリクバラタナゴなので、用意する水槽は30cm以内の小さいものでもokです。水槽環境にはフィルターやエアレーションは不可欠で、他にバラタナゴが好む水草、底砂、石の隠れ家などを用意してあげます。他のおとなしい魚と一緒に育てるのもおすすめの方法です。

水槽の温度

各地の河川に潜む彼らが人工飼育でも生きられる水温は、10度~30度までの範囲です。しかしタイリクバラタナゴがもっとも元気に泳ぐ最適な水温は、25度前後。水温が高すぎたり低すぎたりすれば死んでしまうので、飼育ではヒーターやクーラーも必要とします。

飼育中のエサ

飼育を始めたらいつも適切にエサをあげることで、タイリクバラタナゴの体力を保ちます。よく食べてくれてハズレがないのは、川魚用の人工飼料です。時々イトミミズやアカムシなどのエサもあげることで、健康状態に配慮ができます。

タイリクバラタナゴの飼育②繁殖

飼育中の繁殖

自宅の水槽でタイリクバラタナゴを上手に繁殖させるには、二枚貝を一緒に飼育するのが先決です。ドブガイなどを採取、あるいは購入してきたら、複数のオスとメスがいる水槽に入れて共生させます。ストレスのない環境と豊富なエサを継続すれば、きっと繁殖行動が見られます。

稚魚の世話


卵から孵化したての稚魚は、まだ5mm以下というとても小さなサイズ。成魚とは別の水槽で育てるのが基本です。タイリクバラタナゴの稚魚の口は針の穴ほど小さいため、あげるエサは手間をかける必要があります。プランクトンの採取は難しいので、稚魚専用のブラインシュリンプを細かくしてあげるのもおすすめです。

放流の厳禁

もし飼育で繁殖が上手く行ったとしても、タイリクバラタナゴを自然界に放流することは厳禁です。これは生態系被害防止外来種に指定されているためで、ニッポンバラタナゴのいる生態系を変化させてしまうことが理由。滋賀県で遺棄した場合、1年以下の懲役や罰金刑まで設けているなど、自治体の罰則化も進んでいます。

タイリクバラタナゴは食べられる?

料理によっては苦い味

多くのタナゴの種類は、どれも味が苦いことで知られています。近縁種のニッポンバラタナゴは香川では別名でニガブナとも呼ばれるほどで、タイリクバラタナゴも同様に苦味の強い魚。食べる時には一工夫しなければ、美味しくいただくことはできません。

生食の注意

いくら毒がなくて食べても良い淡水魚だとは言え、タイリクバラタナゴを刺身などで生食してはいけません。これは肝吸虫などの寄生虫が存在する可能性があるため。肝吸虫は人の肝臓に寄生し、肝臓障害や胆管がんなどを起こしてしまいます。いくらお腹が空いていても、タイリクバラタナゴの生食は厳禁なのです。

タイリクバラタナゴの食べ方

佃煮や甘露煮

そんな特有なビターな味を活かして、タイリクバラタナゴは昔から佃煮にされてきました。佃煮の食べ方ならば、白いご飯との相性もばっちり。さらに甘く煮付ける甘露煮も、この魚の食べ方では好まれています。他のフナ系の小魚と混ぜ込んで佃煮にされることも一般的です。

唐揚げ

他の魚と同様に、タイリクバラタナゴを唐揚げにして食べてみる方法もあります。この場合は苦味を抜くため、切り目を入れて湯通しや塩ゆでしてから調理するのは試してみたいところ。苦味を消すならば風味の強いタルタルソースや、トマトソースと絡めることで食べやすくなります。

タイリクバラタナゴで楽しもう

釣りでも飼育でも料理でも

何か外来種と聞けば不要と言い切る意見もありますが、タイリクバラタナゴは色んな魅力を秘めた魚でした。近くの川に出かけて釣りしても良し。見分け方を磨くため、生態観察をしながら飼育しても良し。苦味を感じつつ、食べてみても良し。休日はタイリクバラタナゴで楽しんでみたいですね。

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