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釣り餌になるゴカイとは?生息地や見分け方から繁殖方法まで徹底解説!

豪快な釣りを実現したい時は、釣り餌にゴカイを使ってみたいもの。お値段もお手頃なゴカイですが、釣り人もあまり知らない、不思議な生態を持っている生物です。誤解が多いゴカイの生態、近縁種との見分け方、繁殖方法まで、様々な関連情報に迫ります。
更新: 2023年11月26日
はぐれ猫
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意外と知らないゴカイのこと

釣り餌に使われるゴカイは普通種

今や釣り人の間では、隅々にまで定着したゴカイ。これは環形動物門の多毛綱に分類される生物で、一般的にはゴカイ類とも呼ばれています。ゴカイ類は海底の砂にいるものから水中に泳ぐものまで、8,000種も存在する生物。釣り餌としてお馴染みなのは、ヒモのように細長い、普通種とも呼ばれるゴカイです。

普通種は3種類に分かれることが判明

数年前まで普通種のゴカイは、1種類だけという話が定説でした。しかし近年の遺伝子学的な研究で、普通種のゴカイは3種が混在するという新事実が明らかになっています。その3種とは、ヤマトカワゴカイ、ヒメヤマトカワゴカイ、アリアケカワゴカイの3つ。だから生物学的には、単なるゴカイはすでに存在していないのだとか。

ゴカイ活用法は釣り餌だけではない

この誤解だらけな普通種のゴカイ、海で採取して自宅で繁殖させることも可能です。もし採取と繁殖が上手く行けば、釣り人にとってはメリットばかり。さらにゴカイの繁殖は魚と違った魅力があるので、釣り餌としてだけではない飼育もおすすめできます。

ゴカイという名前

ゴカイという名の由来

不思議なゴカイという名前ですが、漢字で書けば沙蚕となることも不思議です。沙は沙羅双樹のように梵語の聖なる存在に用いられる漢字で、水中で洗って悪いものを選り分ける意味があります。蚕とは絹糸を吐き出す虫のこと。ゴカイは砂に棲管という住居を作るので、まゆを作る蚕の仲間と考えられたようです。

普通種のゴカイの別名

各地方では色んなゴカイの別名も伝わってきました。静岡県ではオバムシと呼んだり、他の地域ではミズゴカイ、ムザムシ、クダムシ、クダなど。地域によってはゴカイ類を総称する別名もあり、日本海側にはケブという奇妙な別名もあります。

英語ではラグワーム

外国にもゴカイ類は様々に生息しているので、各国によって名前も違っています。英語圏ではラグワーム(Ragworm)が一般的な呼び名です。ラグとはボロきれを意味する言葉で、ワームは細長い虫のこと。ゴカイのギザギザした見た目やごちゃごちゃとまとまる様子が、名の由来になっているようです。

ゴカイ類の生息地

世界の海に生息するゴカイ類

基本的に気候や海の水深に関係なく、世界のあらゆる海と砂浜などに生息しています。普通種と呼ばれる釣り餌になるゴカイの場合、世界じゅうの浅い海域を好んでひそむのが通常です。日本国内では、南の沖縄から北の北海道までまんべんなく、ゴカイの生息範囲となっています。

普通種は砂浜に近い海や汽水域にいる

普通種のゴカイの場合、基本的には海の砂浜でよく見かけられます。浅い海の細かい砂や泥の環境を好んで、砂の中に身を潜めます。また河口で淡水と海水が交わる汽水域も、ゴカイには暮らしやすい環境。汽水に近い淡水域まで、生息地に含むことがあります。

砂泥の中に巣穴をつくる

この種のゴカイは、砂泥質の中でシールドマシンのように自在に穴を掘ります。掘った後は酸性の粘液で砂泥を固め、棲管と呼ばれる巣穴を伸ばしていきます。砂浜の海水が浸る場所に小さな穴があれば、それが巣穴。しかし時に地上の岩場を這い回ることもあるし、海を泳ぎ回る様子も確認できます。


ゴカイの外見と運動

ゴカイの普通種の大きさ

よく見かけるゴカイが成長すると、全長は8~12cmほど。体の幅はムカデよりもずっと細く、全体がヒモのように細長い印象です。成体の長い体には体節が100から130もあって、その体節ごとに無数の疣足(いぼあし)と剛毛が付いています。全長12cmのゴカイなら、足が200本以上付いているのが普通です。

ゴカイの普通種の体色

ごちゃっと一ヶ所にまとまった普通種のゴカイの様子を見ると、大雑把に言って2色のカラーが見えます。一般的にはオスは淡紅色、ピンク色、黄紅色といった色合いであり、メスのほうが緑に近い色と言われます。雌雄はいずれも、前部が若干褐色を帯びている特徴もあります。

ゴカイの動き

水の中を移動する場合、無数の疣足を順番に動かし体をくねらせて泳ぎ回ります。地上では疣足だけで歩くのではなく、長い体の途中で折り曲げて前に移動させたり、全身を豪快に使って進むのも特徴的です。ただ体が長くなるほどに、地上では移動が困難でよく目立ち、捕食される危険性が出てしまいます。

ゴカイの食事

大顎で捕食する

まじまじとゴカイの顔を見つめれば、つぶらな目と2つの鎌状の大アゴを確認できます。巨大なオニイソメと同じように、アゴで餌を挟み込んで、巣穴へとエサを引きずり込む仕組みです。通常ゴカイは砂浜の海底の巣穴から顔だけを出して目の前の餌を捕食する、極めて慎重なスタイルを取っています。

ゴカイがよく食べる餌とは

大アゴと言っても直径は5mmに満たない口なので、ゴカイが餌とするものはとても小さな生物です。主食となるのは砂浜の海や汽水域や淡水に無数に漂っている、小さな藻類や有機物。そしてプランクトンと呼ばれる、微細な生物です。

ゴカイの知られざる能力

切断されても無限に再生できる

他の動物にはなかなか無い完全な再生能力は、ゴカイ類が持つ能力の1つです。仮に捕食者によって体の半分が食いちぎられてしまっても、時間をかけて失われた部分の内蔵や外殻まですべてを再生してしまいます。この驚異的なゴカイの生態は、人間の再生医療でも注目されているほどです。

共生関係

不思議な普通種のゴカイは、他の生き物との共生関係も確認されています。例えば小笠原諸島で発見された、ペタンココユビピンノという変な名前の小さなカニが代表格。ゴカイの巣穴の中を、すんなり通れるサイズに進化したカニです。ゴカイにとっては、このカニは巣穴の維持などに役立っていると考えられます。

ゴカイの種類と見分け方

見分けが難しい普通種のゴカイ

最初に取り上げた通り、釣り餌になる普通種のゴカイは、3種類がいて混在しながら生息します。ヤマトカワゴカイ、ヒメヤマトカワゴカイ、アリアケカワゴカイの3種ですが、このゴカイ類はDNAや疣足などの外見に違いがあるとは言え、一般には見分けが難しいと言われています。

普通種の見分け方とは

メスが生む卵の大きさを見て、普通種の3種を見分ける方法があります。大きな卵を産み、日本全国に分布するのがヒメヤマトカワゴカイ。一方でヤマトカワゴカイは、体のサイズが小さく、小型の卵を産むことで見分けが付けられます。アリアケカワゴカイの卵は両者の中間サイズで、現在は有明海にしか生息が確認されていない種類です。


青イソメ(朝鮮ゴカイ)との見分け方

よく似たものに、アオイソメと呼ばれるゴカイ類がいます。これは別名で朝鮮ゴカイや青虫とも呼ばれるもので、釣り餌になるのは韓国や中国から輸入されるものがほとんどです。普通種のゴカイより大きくて体長15cmほどになり、青っぽい見た目、噛み付くことなどで見分けられます。

赤イソメとの見分け方

別名でマムシやイワムシとも呼ばれるのが、赤イソメです。こちらも中国や韓国産がほとんどで、日本で販売しているのは輸入品です。見た目がオレンジや朱色に近いことが名の由来で、普通種のゴカイとの見分け方も明確。シロギスやカレイ釣りには評判な餌ですが、お値段が青イソメやゴカイよりずっと高めです。

ジャリメ(イシゴカイ)との見分け方

見た目の見分けが困難なのは、釣り餌のゴカイの代用にもなるジャリメです。ジャリメは関東の呼び名であり、各地にはイシゴカイ、砂虫、砂イソメの別名もあります。全長は10cmほどで体色は普通種のゴカイともよく似ていますが、体つきが一回り細いのが特徴です。

ゴカイの飼育

ゴカイの採取

お店で購入した元気なゴカイを飼育するのも構いませんが、愛着が湧くのは自然の中で採取したゴカイです。採取の場所は淡水の川や磯などもありますが、簡単なのは砂浜。砂浜でゴカイの巣穴を見つけたら、スコップを20cm以上も砂に刺して根こそぎ持ち上げれば、意外とゴカイはすんなりと採取できます。

飼育の水槽

小型の水槽でも環境さえ良ければ、ゴカイの飼育は簡単です。淡水飼育も可能ですが、元気に長生きさせるなら、海水や汽水の成分が良いです。海の水で育てるのも良いですが、海水の元で水を作ることもできます。酸素ポンプはもちろん、温度調節機も大切。隠れるための底砂や、石などのアイテムは必須です。

飼育の要点

熱帯の海にも淡水にも適応するゴカイですが、できれば水温の上昇は避けるほうが良く、25度前後が最適となります。ゴカイが棲管を作りやすいよう、細かな砂を使うのも重要。1匹死ぬとすぐ水質が悪化しやすく、他のゴカイまで連鎖的に死ぬことも珍しくありません。死にそうな個体がいたら、すぐ対処する必要があります。

必要なエサ

初心者が悩むのが与えるエサですが、ゴカイには市販の小型熱帯魚用のプランクトンを使えても良いです。また、エビが好む藻類の飼料を使うことも可能です。生きたウィローモスなどの海藻を入れておけば、それもゴカイの美味しいエサとなります。

ゴカイの繁殖

繁殖に必要な条件とは

毎年11月から2月の寒い頃、普通種のゴカイは生殖群泳を始めます。これは複数の雌雄がいる水槽でも見られる、ゴカイの生命の営みです。やがてメスは、まるでスライムのような透明な卵塊を水槽に出現させることになります。普通種のゴカイは3種混ざっていますが、何故か交雑種は発生しないというから不思議です。

卵から幼生まで

やがて卵から孵化するゴカイの子どもは、成体とはまるで違った形状です。幼生(トロコフォア)と呼ばれる昆虫のような形で、プランクトンの一種として水中を泳ぎ回ります。藻類などのエサが豊富なら、順調であれば後方に体節が徐々に追加されていき、日々ゴカイらしい姿に変化していきます。

ゴカイを飼育することの意味

値段が割安な釣り餌として


よく通販で見かけられる釣り餌のゴカイは、100gで500~600円台のお値段です。海に接する釣りショップや街の釣堀では、この半額程度の値段なこともあります。いずれにしても、釣り餌としてはお金がかかってしまうのがゴカイ。バス釣りが趣味なら、普段から自宅で繁殖しておけば、釣り餌の値段は格段に安く抑えられます。

観賞用や研究用にも

その不思議なゴカイの見た目や生態は、虫や魚が好きな人々を惹きつける魅力があります。自宅の水槽では、魚の代用としてゴカイを育ててみるのも楽しそうです。不思議な生態は、研究をしてみる価値もあります。ゴカイの見分け方などを、研究テーマにしてみても良さそうです。

ゴカイ運びに最適な入れ物

プラパックを入れ物にする

堤防釣りでゴカイを携帯する時も、使い捨てできるプラスチックのパックを入れ物に選ぶのがおすすめです。この種の入れ物は、ホームセンターなどで100枚300円台と、ぶっちぎりに安いお値段で販売しています。濡らした砂をゴカイに与えるのは勿論、夏場ならばクーラーボックスで冷やして運ぶのが良いです。

タッパーを入れ物にする

何度も繰り返し使える入れ物を求めるなら、タッパーの出番です。タッパーは街の100均ショップで、格安なお値段で入手できるアイテム。左右開きのタイプなどもあり、ゴカイを密閉できるし、踏んでも壊れにくい頑丈なメリットもあります。釣りに使う入れ物の代用としても色んな意味で好都合です。

代用にできるアイテム

もしパックもタッパーも身近にないなら、ゴカイを入れる別の代用アイテムがあります。例えばジャムの空き瓶を、入れ物の代用にすることができます。フタ付きの瓶は、どんな種類でも代用としてふさわしくなります。代用品を探すなら、頑丈、安定感、フタ付き、透明といった観点で選んでみてください。

ゴカイで楽しもう

釣りでも採取でも飼育でも楽しい

いつも釣り餌と認識していたゴカイは、こんなにも興味深い生態を持っていました。色んなゴカイについてのエピソードを知れば、ゴカイに対する見方も変化してしまいます。釣りだけでなく、採取や飼育などでもゴカイを楽しんでみたいですね。

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