タイノエを知ってる?
世にも奇妙なタイの寄生虫
世の中には数多くの寄生虫がいますが、中でもタイノエはとても奇妙な種類に含まれています。それは高級魚としても知られる、鯛の口の中にすっぽりとお邪魔している様子があるから。タイノエを初めて見る人ならその姿に驚いたり気味悪がったり、あるいは面白く感じてしまうに違いありません。
タイノエはウオノエの一種
この気になるタイノエは甲殻動物の一種で、等脚目のウオノエ科に含まれています。等脚目とは地上のワラジムシやダンゴムシ、さらに海中のダイオウグソクムシとも近縁な生物というから意外ですね。多くのウオノエがいる中でも、タイノエはマダイを始めとして、クロダイ、イシダイ、キンメダイなどのタイを好んでいる寄生虫です。
タイノエの名前
タイノエって?
>名前のタイノエは漢字で書くと「鯛の餌」で、釣ったタイの口の中で見つかるためにそのような名を付けられたようだが、実際に餌になっているのは寄生され血を吸われているタイ側である。
— 𒁀𒀊𒅋𒌋Ⅲ 💉💉💉💉 (@palomino3rd) April 11, 2015
→秀逸だな、これwww
不思議な響きのあるタイノエは、漢字を使って書けば鯛の餌となります。タイの口の中に入っていることから、どうやら昔の人が「タイが餌を食べている途中だった」と勘違いしてしまったのが由来のようです。タイの餌とは言いながら実際はタイのほうが餌食になっているわけで、まるっきり正反対な意味の面白いネーミングになっています。
別名は鯛之福玉
その生態や見た目から現在では気味悪がられがちなタイノエですが、実は江戸時代の頃には縁起物として好まれる存在でした。そのため別名には鯛之福玉という、極めて良い名前があったほど。結婚式で振る舞われる鯛にタイノエのオスとメスの2匹が入っていれば、「目出度いタイ+死ぬまで離れない2人」という意味で、喜ばれる存在だったと言います。
タイノエの見た目
気になる外見
パッと見た感じ、タイノエは他の等脚目の昆虫によく似た姿をしています。体の全体を段々のある軟甲殻が覆っていて、無数の足がついている様子も、まるっきりダンゴムシやフナムシのよう。ただ後ろの方に尻尾のような構造を持っているところや、全体が真っ白な色合いであることが、地上の等脚目とは違ったところです。
気になる大きさ
タイの口の中にスッポリと入る大きさをしているのが、タイノエという寄生虫です。成体はメスで4~5cm、オスで2cmほど。メスの大きさのほうが、かなり目立っています。5cmというのは小さいようで親指ほどもあるので、タイからすれば十分に迷惑に感じるほどの大きさがあります。
タイノエの生態①寄生行動
エラから侵入し口腔内へ
まだ幼生の頃のタイノエは、海中や養殖場に漂ってから、タイの体に寄生する生態があります。とても広くて暗い海中で、どうやってタイノエがタイの体内へと入り込むのか、なぜかと考えてみれば非常に不思議。群れで泳ぐタイが、エラ呼吸の際にわずか数ミリの大きさしかないタイノエの幼生を吸い込むことで、定着すると考えられます。
舌に取り付く
カイワリから子持ちタイノエなんだけど、グロいなんて岩魚いでほしい。「鯛の九つ道具」の鯛之福玉はタイノエからだとか。縁起物だよ。かわゆい♡ pic.twitter.com/jLPuTahD2g
— 森田🍥釣竿 (@tsurizaomorita) May 9, 2015
エラからまんまとタイの体内に侵入したタイノエの幼生は、一路口の中を目指します。すぐに舌に取り付くと、やがて舌はタイノエが食べたり壊死することで喪失する運命です。人間が家に住むように、タイノエは舌のあった位置にしれっと住み続けることになります。こうなったら、もうタイには為す術もありません。
タイが死んだ後
多くのタイノエが寄生虫としての終わりを迎えるのは、宿主のタイが何らかの理由で死亡した時です。それは死亡したタイの中は、もはやタイノエにとっては理想的な環境ではなくなるため。成体のタイノエは海中に出ると新たな魚に寄生することもできず、他の生物の餌食になってしまう可能性が高いと考えられます。
なぜタイの口に住んでいるか
元々タイノエを含むウオノエ科の虫の先祖は、海底の岩場や珊瑚に潜んでいたと考えられています。しかし海底は常に天敵がいる、恐ろしい場所。彼らが魚に寄生するに至ったのは、ある時に魚に寄生すれば、海底より安全に栄養、繁殖、住み家を入手できると気がついたからでした。その中でもウオノエ科は、最も安全である魚の口を安住の地に選んだというわけです。
タイノエの生態②食事
タイが捕らえる餌を食べない
タイの口の中に寄生しているタイノエは、一体何を食べているのかと気がかりです。口の中に居座って、タイが捕まえるエビや小魚などの餌を頂戴しているのかと考えてしまいます。しかしタイノエは、そんな魚やエビなどの餌には見向きもしません。彼らが好んでいるのは、タイの体そのものです。
タイの血を吸い細胞を食べる
一体タイノエが何を食べて生きているのかと言えば、それはタイの血液。そう、タイノエは吸血動物と言える種類の寄生虫なのです。タイは人間が食べるのにも適した魚なので、その血液自体も美味しいのかもしれません。また、タイノエはタイの舌を傷つけて、増生した細胞組織を食べるとも報告されています。タイをいつも無料で食べているなんていう、グルメな虫だったようです。
タイノエの生態③繁殖
雌雄同体からメスに変化する
不思議なことに、まだこじんまりとした大きさの頃のタイノエは、精巣と卵巣の両方を持っている雌雄同体の姿です。しかし口の中に2匹がいると、一体のほうが精巣機能を失ってメスに変化するとか。これがタイの口の中に、必ずオスとメスが一対存在している理由でした。
産卵後の幼生の生態
以前撮ったタイノエ?のペア
— モドキ (@akahatiebi) September 6, 2017
米粒より小さな幼生付き
運良くタイなどの宿主にたどり着けた幼生が寄生するんだよね…?
最小どのサイズから寄生するのか気になる…! pic.twitter.com/hBE09qfly4
梅雨の頃に繁殖期を迎えるというタイノエは、産卵後にメスのお腹に卵囊が見られるようになります。卵から孵化する場所もタイの口の中で、無数の幼生がメスのお腹にくっついて成長します。幼生はやがて親元を離れて、別の寄生先を求めて海中を漂うことになります。うまく寄生する魚に出会えず、事故や魚の餌食となって死ぬ幼生も多いのかもしれません。
タイノエの生態④毒性
毒性は確認されていない
これまでにタイノエから、何らかの毒性が検出されたことはありません。タイノエは毒性を利用せず、タイの体をうまいこと利用している生物なのです。毒性がない意味ではタイにも釣る人間にも安心ですが、宿主のタイにとっては別の意味で厄介な影響が与えられていました。
タイに健康の悪影響をもたらす
まずタイノエはタイの舌を無きものとするため、タイ本人にとっては大きな災難です。まだタイノエが小さい頃は、タイの捕食行動にはそれほど悪影響は出てきません。しかしタイノエの大きさがどんどん膨らむほど、タイは捕まえた食べ物を飲み込むことが困難に。やがては栄養失調で、タイ本来の行動ができなくなってしまいます。
人間に毒性は無くても食欲が失せる場合も
ちだい煮付けにしたらタイノエおった😨😨😨
— かみ ✘ はやし (@lump_rad) June 26, 2019
食欲無くなったわ。 pic.twitter.com/DIzffOwk71
いかに毒性が無いとは言え、遭遇する人によっては悪影響を回避できないことがあります。美味しいタイを料理して食べ始めた時に発見すれば、タイノエの存在が人間の精神にマイナスに作用しがちで、食欲を無くしてしまうかもしれません。人の心には猛毒というわけです。
タイノエは食べても良い寄生虫
食べても人間に対する悪影響なし
そんな見る人によっては嫌悪するタイノエですが、人間が問題なく食べられるという一面も持っています。タイを買ったり釣り上げた後にタイノエを発見すれば、人によっては喜ばれる存在です。口の中にいるタイノエを初めて食べるなら勇気も必要ですが、度胸試しや珍味を目的として味わってみたいものです。
気になる味は?
アクアパッツァにした黄鯛からタイノエ出て来た!!!
— タガネ (@TAGN) May 13, 2020
ので素揚げにして食べてみたら、ほんのりホタルイカみたいな風味のするエビって感じの味だった pic.twitter.com/60Nf4cDvsM
実際に食べた人からは、タイノエの味についての様々な感想が出ています。味がまったくしなかったという意見もありますが、最も多いのはエビに近い味で美味しいといういう感想。ホタルイカに近いエビ、シャコっぽいなどの話も、SNSでは見ることができました。とは言え、食べ方次第でタイノエの味や食感は違ったものとなりそうです。
タイノエに出会う方法
タイを買いに行く
手っ取り早くタイノエに出会うなら、お店にタイを買いに行くことです。タイは近所のスーパーの鮮魚売り場では定番の魚。さらに魚市場で新鮮なタイを買うのもおすすめです。マダイ、クロダイなどの口の中にいるので、よく見てタイノエを探してみてください。お店の人に電話して、タイノエ入りタイを予め見つけおいてもらう方法も考えられます。
料理店に行く
鮮魚を扱っている料理店ならば、タイノエまでも味わえる可能性があります。例えば行きつけの寿司屋や海鮮料理店があれば、店主にタイノエについてお話をしてみてください。すると大きさも粒ぞろいで理想的なタイノエを提供してくれたり、色んな食べ方を試させてくれるかも。直接的に出かけても無い場合があるので、予めタイノエを予約しておくと良いです。
タイ釣り
海へタイを釣りに出かければ、生きた新鮮なタイノエをゲットする確率が高くなります。タイは磯釣りや船釣りで、気軽に釣ることもできます。ただ釣り上げる全てのタイの口にタイノエがいるわけでもないので、出会うならば運や根気も影響します。
タイノエの食べ方①揚げ物
素揚げで食べる
#お料理ヘタクソ選手権
— ペコ (@peco1117jp) April 13, 2019
釣ってきたノドグロに寄生してたタイノエの素揚げ pic.twitter.com/llGKJvyT29
もっともシンプルなタイノエの食べ方と言ったら、素揚げに他なりません。例えば天ぷら料理をする時、タイノエがついでにあればすぐ始められます。タイノエ本来の美味しい味覚を損なわないという意味でも、素揚げは試してみる価値が高い料理方法です。
素揚げの方法
素揚げにする時は、油の温度が大切です。カリッとした食感に仕上げるならば、タイノエに切り目を入れて180度の高温で揚げるのがおすすめ。表面が程よい色合いになった段階で油から上げます。食べ方では味付けも重要ですが、ひとまずそのまま、あるいは塩味で食べてみると、タイノエ本来の味が良くわかります。
タイノエの食べ方②焼き物
塩焼きで食べる
子供たちとタイノエを愛でながらキダイを捌きーの、サザエを酒蒸しーの。いつも焼きばっかりだけど、たまには蒸しもよろしい。今、日本酒飲みすぎてるから、正しくツイートできてるかはわからない。 pic.twitter.com/D7kcQJgm6e
— sandijazz (@sandijazz) July 29, 2018
素揚げと同じくとても簡単で美味しい食べ方には、タイノエの塩焼きがあります。これはタイを焼く時にタイノエも一緒に焼いてしまえば良いので、時間の無駄がありません。焼くことによって表面に焦げ色が出てとても美味しく見えるし、シンプルな味付けなので調理も全く難しくありません。
塩焼きの方法
最高のタイノエの塩焼きを楽しむなら、網を使う炭火焼きもおすすめ。炭火により、タイノエの旨味が引き出されるためです。串を刺して串焼きにするのも良く、串焼きならばひっくり返して調理しやすいし、せっかくのタイノエを下に落っことしてしまう心配も無くなります。グリルを使って焼く時も、串を使ってみてください。
タイノエの食べ方③煮物
煮付けて食べる
確実に美味しいタイの煮付けは、タイノエを味わうときには欠かせない食べ方です。作り方は煮付ける時にタイノエを添えるだけだから、とっても簡単。煮付けができたらタイの口の中に飾り付けるなんていう、遊び心を発揮してみても面白そうです。
煮付けの方法
シンプルなタイの煮付けでは、全ての調味料を合わせた出汁を用意します。調味料としては醤油、砂糖、みりん、お酒、生姜があればok。タイをそのまま鍋に寝かせると同時に、口の中から収穫したタイノエをそっと寝かせ、蓋をして煮ることおよそ数分。美味しいタイとタイノエの煮付けが完成しています。
タイノエを観察したり食べてみたい
タイを手にしたらとにかく確認
奇妙な見た目や生態を持っているタイノエの秘密が、ようやく明らかとなってきました。口の中に潜んでいる虫は毒性がなく、食べてみれば意外と美味しいという事実も判明。今度新鮮なタイを手に入れたら口の中を確認し、タイノエを観察したり美味しくいただいてみたいですね。
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タイを住み家とするタイノエだけでなく、当サイトではタイについての情報をまとめています。次に釣る魚は鯛と決めた方は、チェックしてみてください。
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