弥山という山の魅力
弥山のある宮島は約6000年前に瀬戸内海の形成と同時に対岸と分離し島となったといわれています。狭い島なので高く感じますが標高は535mです。弥山は平安時代の806年に空海によって真言密教修験場として開山されています。
平清盛によって今の形に整備された厳島神社への信仰もあり、島全体が当時の面影を残しています。世界でも珍しい生態系を維持する弥山は悠久の歴史に触れることのできる数少ない山でもあるのです。
一万年変わらぬ自然を満喫できる
島全体が信仰の対象であったため、人の手によって失われることなく続いてきた自然林がそのままの状態で存在しています。標高によって変化する植物の分布は専門家でなくとも十分に楽しめる景観です。
野生の鹿に遭遇することも珍しくなく、市街地から約1時間の場所だとは信じられないほどの静けさを体験できます。先人たちが守り抜いてきたこの自然を次世代につなげなくてはいけないという義務感さえ感じてしまうほどです。
島全体がパワースポット
以前は7つの登山ルートが存在していましたが、より安全に弥山登山を楽しんでもらうために今では3つのルートだけになりました。その3つのルートはどれも個性的で、甲乙つけがたい魅力があります。
いずれにせよ厳島という島全体がパワースポットですので、ゆっくりと歩を進めるたびに心身が浄化されていくような気持になるのです。
弥山原生林は必見
厳島神社の背後に位置する弥山では古くから林業も農業も禁止されています。これは神の島であるという考え方から生まれたもので、これによって原始林が守られてきたのです。
日本古来の生態系の縮図といわれるこの山では、暖温帯性針葉樹のモミと南方系高山植物ミミズバイが同居している珍しい景色を見ることができます。ロープウェイを使った山登りでは味わえない感動を体感すれば山頂からの眺めも格別に感じることでしょう。
弥山登山口までのアクセスとおすすめの服装
弥山は少しハードなハイキングとして初心者にもおすすめできます。しかし、自然がそのまま残っていることや思いのほか急峻で迷い込むと危険な山ともいわれています。記念写真を撮ることに夢中になりうっかり登山ルートを外れ遭難したという話もありますので注意は必要です。季節によっては人間にとっての害獣の害虫もいますが、それらにとっては人間の方が侵入者です。不要な接触は避け、服装もしっかりしたものを選びましょう。
弥山登山の服装
宮島観光のついでに登れるような山ではありません。弥山を登るならそれなりの服装で臨みましょう。シューズは当然ですがトレッキング用のものをおすすめします。整備されているとはいえ舗装道ではありませんから十分な準備が必要です。
標高は低いとはいえ海に囲まれていますのである程度登ると気温が下がり、急激に風の冷たさを感じてきます。真夏であったとしてもサット羽織れるヤッケのようなものを持っていきましょう。
弥山登山での必携品
自然林の中を登りますので途中に売店などありません。脱水症予防のための水分は必携です。山頂には展望台がありますが飲料水の販売等はありません。冬場であれば厚手のジャンバーと手袋は必要です。夏場なら比較的軽装でも望めますが、着替えの準備は必要です。
緊急時の連絡用としての携帯電話、万が一の場合に備えた非常食の準備もあれば安心です。もちろん自分で出したごみは必ず持ち帰らなくてはいけません。
弥山登山口までのアクセス
宮島までのアクセスはJR山陽本線宮島口からフェリーを利用します。フェリーはJRフェリーと松大汽船の2種類があります。大鳥居の近くで海上から写真を撮るならJRフェリーがおすすめです。
弥山登山の出発地は全て厳島神社の近くです。それぞれのルートの入り口を示す看板も設置されていますので、厳島神社まで行けば迷うことは無いでしょう。厳島神社へは宮島桟橋からゆっくり歩いても20分です。
初心者も楽しめる弥山登山コース3選
1:四季を通して美しい紅葉谷コース
紅葉谷コースは初心者にもおすすめのコースです。急勾配なところもありますが紅葉のシーズンなど景色を楽しみながら進むことができます。アクセスは厳島神社から奥まった場所にあるもみじ谷入り口ですのでわかりやすいでしょう。
このもみじ谷には代々の皇族方や歴代の首相、著名な文学者などが定宿としていた老舗旅館があります。徐々に色づく紅葉を愛でながらゆっくり登っても90分くらいで山頂まで到達できます。
まずは紅葉谷分岐点を目指す
紅葉谷コースの前半は緩やかで十分に景色を楽しむことができます。ロープウェイ乗り場から登山口に進み紅葉谷川に沿ってゆっくりと登っていくと、左手に原始林石碑が見えてきます。
古代の趣を残した原始林を見ながら更に進むと徐々に勾配が増していき少し疲労を感じてくるので、適度な休息をとりましょう。ここまでの時間の目安は60分から90分といったところです。紅葉谷コースは難易度の低いコースです。
山頂までラストスパート
紅葉谷三叉路からの道は更に急勾配になっていきます。山頂から吹いてくる風が心地よく疲れた足も少し軽くなるのではないでしょうか。山頂に到着した瞬間に眼前に飛び込んでくるが瀬戸内海の景色です。天候によってはまるで湖のように静かな海が労をねぎらってくれます。
ゆっくりと景色を楽しんだら弥山本堂と霊火堂を目指しましょう。難易度は低いとはいえ足は相当疲れているはずです。無理せずゆっくり休憩してください。
山頂から他コースの見どころにも行ける
山頂から少し下れば、他コースの最終見どころである大聖院奥の院にも行けます。もちろん来た道を下るのも良いですが、他のコースを進んでみるのも面白いです。シーズンによって変化する美しい自然を満喫するなら大元コースへ。歴史を感じたいなら大聖院コースへの変更がおすすめです。
登山は登りよりも下りが危険だといわれます。コースの難易度にかかわらず絶対に無理をしないことが最大のポイントです。
2:史跡をめぐる大聖院コース
その昔、豊臣秀吉が九州へ向かう途中に立ち寄り連歌の会を開いた大聖院は、806年に弘法大師が弥山で求聞持の百日修法を修め開創されたそうです。大きな仁王門をくぐり長い石段を登りご本殿へと向かいます。
摩尼殿は時眉鬼神と追帳鬼神、魔羅鬼神の三鬼神をお祀りしている全国唯一の場所です。そんな史跡に触れながら続く石段はかなりハードな行程で難易度的には中程度でしょうか。初心者は史跡巡り気分でゆっくり進みましょう。
仁王門横が登山道入り口
宮島桟橋から寄り道せず歩けば大聖院まで約20分です。大聖院への参拝を済ませたら仁王門まで下ります。登山道入り口の看板がありますので進んでいきましょう。懺悔地蔵堂の前を通り瀧不動、御幸石と行けば瀧宮神社があります。
そこを左手に曲がると白糸の滝です。ここまでの時間は約20分で更に進むとあずまや展望台と呼ばれる里見茶屋跡に到着します。このあたりはかなり整備されていますが趣のある道で見ごたえ満載です。
丁石を数えながら中間地点を目指す
大聖院コースには丁石という距離を示す石が置かれています。まずは十丁地点の賽の河原を目指しましょう。一丁は106mですので十丁地点が中間地点です。歩きやすいので難易度低めに感じますがここからも石畳や石段が続きます。
ここまでの時間は40分程度ですが、パワースポットなどの見どころがたくさんあるのでもう少し時間がかかるかもしれません。木々の下を歩くコースなので天候によっては温かめの服装がおすすめです。
更に続く石段は体力勝負
大聖院コースは時間にして約120分ですが石段の連続ですので少し時間の余裕をみておきましょう。賽の河原でひと休みしたら後は山頂まで一気に進みます。幕岩から遊女石畳道を経て三叉路に出ます。左が山頂、右が大元コースで、中央は奥の院への道です。
体力に自信があれば奥の院にも行きましょう。奥の院にお参りしたら三叉路まで戻り山頂を目指します。木々の下の石段を進むこのコースのベストシーズンは春です。
3:原生林を満喫できる大元コース
宮島の弥山原始林の中を辿る壮大な自然を満喫できるのがが大元コースです。出発点は大元神社で、史跡をめぐる大聖院コースとは駒ヶ林山の尾根を挟さむルートになります。インスタグラムや写真集などでも有名な風吹岩や石仏群があるのがこの大元コースです。
登山時間は一番長く概ね2時間半から3時間を目安に休憩しながら登ることをおすすめします。ハードコースですから水分補給用の水は必ず携行するようにしてください。
出発地点の大元公園までのアクセス
出発地点である大元公園は厳島神社を過ぎ、宮島水族館を右手にした道を進むと見えてきます。弥山登山ルートの中でも一番奥まった場所からの出発となりますが、古い町屋の風景を楽しみながら歩きましょう。大元公園へのアクセスは案内が多数ありますので迷うことはありません。
大元ルートのおすすめシーズンは夏です。春夏秋冬それぞれの趣きがありますが、今なお瑞々しく生い茂る古代樹の林の下は夏の日差しが良く似合います。
難易度高めの長時間コース
まずは、大師堂を目指しましょう。途中には石仏群や蛇岩があり飽きることがありません。原始林石碑を過ぎて、富士岩と鯉の親子岩、イルカ岩と見どころが続きます。約1時間半で到着する大師堂と共に絶好のフォトスポットである風吹岩で休息してください。
次の目標地は駒が林分岐です。そこまでの道程には弁財天石碑や岩屋大師などのパワースポットもありますが、ルートから少し外れた脇道ですので、見逃さないようにしてください。
大聖院コースと合流し奥の院へ
風吹岩から約30分の駒が林分岐で大聖院コースと合流します。ここから奥の院へ進み、お参りしてから弥山本堂を目指すのがおすすめです。駒が林分岐から弥山本堂までは約15分歩きます。
弥山本堂にお参りしたら仁王門まで戻ります。来た道を下るも良し、大聖院コースにするも良しです。シーズンによっては紅葉谷コースで下山するのも楽しいものです。登りと下りでは景色が変わるので、どのルートもおすすめです。
弥山ならではの楽しみ方
ロープウェイを利用するのもおすすめ
登りと下りでは景色が全く違って見えるのも登山の面白さのひとつでしょう。同じルートを帰るのも良いですし別ルートを選ぶのも楽しいものです。しかし弥山にはもうひとつのルートもあります。それが宮島の空中散歩ロープウェイです。
自力で下山したいと思うのは当然ですが、その時の自分の疲労度を客観的に測ることも大切です。下山は次回のお楽しみと割り切ってロープウェイでしか味わえない時間を堪能するのもおすすめです。
登りだけロープウェイを使う時短方法
登山の楽しみ方は人それぞれですから、体調や体力によっても選択肢は変わります。弥山本堂にお参りするのが目的であれば、登りはロープウェイを使うという手もおすすめです。シーズンによってはうぐいす歩道から紅葉谷へのコースも素敵な景色を楽しめます。
本堂と奥の院へお参りし、春なら大聖院コースを、夏なら大元コース、秋は紅葉谷コースを下ってくるのはいかがでしょうか。下山だけとはいえ登山に適した服装にしましょう。
弥山七不思議と宮島七不思議をめぐる
弥山七不思議はお大師様にまつわっている
宮島には七不思議といわれる言い伝えが2つあります。そのひとつは弥山に関するもので、一番有名なのは「消えずの火」でしょう。そして「錫杖の梅」「曼荼羅岩」「干満岩」、そして宮島七不思議と被る「しぐれ梅」の5つと「弥山の松明」「弥山の拍子木」の7つです。
初めの4つは現存していますがしぐれ梅はもうありません。干満岩は本当に不思議で山頂の岩に塩味の水が湧き、潮の干満によって水量が変わります。
宮島七不思議
宮島七不思議は「養父崎の神鴉」「龍灯」「神馬」「弥山の松明」「弥山の拍子木」「みさき」「雪の跡」の7つです。このうち養父崎の神鴉と神馬、雪の跡は厳島神社にまつわるもので、龍灯とみさき、弥山の松明と拍子木は自然現象的な伝承です。
中でも「養父崎の神鴉」の話は神事として今でも行われており「やぶざきのおおがらすさん」と呼ばれ親しまれています。この行事は毎年5月に厳かに執り行われるのです。
弥山登山のまとめ
世界遺産として大切にされている厳島の弥山は、登山愛好家も初心者もそれぞれに楽しむことができファミリー登山にもおすすめです。ぜひ一度神の島の山に登ってみてはいかがでしょうか。
厳島神社派パワースポットとしても有名ですが、弥山の山頂までのルートにも多数のパワースポットが存在します。山頂の弥山本堂や消えずの火がある霊火堂もハイパワースポットといわれています。自力で登ればご利益も大きいかもしれませんね。
初心者登山が気になる方はこちらをチェック!
登山というと少しハードルが高いような気がしてしまうという方もおられると思いますが、日本には初心者にもおすすめな登りやすい山がたくさんあります。カップルでデート気分というのも良いですし、ファミリーで思い出作りというのも素敵です。
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