長持ちする切り花がほしい
ランってコチョウランだけじゃない
日曜連載、今回はラン類の切り花についてです。暑い季節、長持ちする切り花を探しているならラン類がおすすめ。日本ではランといったらコチョウランのイメージが強いですが、実はたくさん種類があります。ランは世界中に愛好家の多いお花ですが、一度ハマったら抜け出せない魅力があるんです。
ハマったら抜け出せない魅力
不思議なフォルム、複雑な色彩、どこかミステリアスで凛としているランは、世界に15000種以上の種類があります。生態も魅力的で、ラン特有の特徴がたくさんあり、知れば知るほど生命の神秘すら感じる面白い世界。栽培が難しいのもそそられるポイントです。また育種の歴史も長く、美しい色やかたちを求めて世界中で育種されています。
本当によく長持ち
そんな探究心をそそられるラン、切り花にすると暑い時期でも2〜3週間は長持ちするから本当におすすめ。日本で切り花として流通しているランは10種類程度あり、トロピカルなムードのものもあれば、シックでかっこよいランもあるんです。どれも基本的に周年出回っているので、花屋さんで出会う機会は多いかも。
お花屋さんで買えるランを解説
今回は日本のお花屋さんで買えるランをまとめてみました。また、ランの切り花を長持ちさせる方法もご紹介しています。暑い時期に切り花を選ぶなら、長持ちするランを手に取ってみて。そしてまずは切り花からその魅力を感じてみてください。もしかしたら栽培にもハマるかも!
花屋で買えるランの切り花の種類①
アランセラ/レナンセラ
細い花弁と濃い赤色がかっこいいアランセラ。枝分かれして、お花もたくさんついていて華やかに見えるお花です。また、茎がしっかりしていて真っ直ぐ上に伸びているので、細かく切ってアレンジメントにしやすいお花。花瓶にも生けやすいランです。
アランセラとレナンセラの違い
とてもよく似た花で、レナンセラと表記されているものもあります。レナンセラはラン科レナンセラ属のランで、アランセラは「サソリラン」とも呼ばれるアラクニス属とレナンセラ属の交配種。似ていますが、アランセラのほうが花弁が細くサソリ感があります。
深い赤色が魅力
レナンセラは鉢植えでも流通しており、アランセラは切り花がメインです。切り花でも、アランセラを「レナンセラ」と表記しているものがあり、ちょっとややこしいところ。切り花では深い赤色の品種が主流で、傷みが見えにくく長持ちして楽しめるお花です。
花屋で買えるランの切り花の種類②
アランダ/モカラ
出回るランの切り花の中でも、色の種類が豊富でかわいいアランダとモカラ。定番の黄色やオレンジ、ピンクはトロピカルなムードを作ってくれ、何色かをガサッと花瓶に生けておくだけでもサマーリゾート感を演出してくれます。濃い紫やサーモンピンクなど、かわいい色合いも豊富です。
アランダとモカラの違い
実はこの2つもとてもよく似ていて混同されがちですが、別の品種です。アランダはアランダ属でアラクニス属×バンダ属の交配種、モカラはモカラ属でアラクニス属×アスコセントラム属×バンダ属の交配種。どちらも人工的に交配された品種です。
長持ちする切り花
切り花ではアランダはきれいな紫色の「チャクワンブルー」、モカラでは「カリプソ」シリーズなどが定番です。ぱっと見ではあまり違いの分かりにくいアランダとモカラですが、どちらも長持ちする切り花。値段はどちらも150円前後が相場です。
花屋で買えるランの切り花の種類③
エピデンドラム
エピデンドラムは中南米原産のランです。ランの切り花の中では珍しく、スラッと長い茎の先にボール状に集合したお花がついています。足元には肉厚な葉がついている状態のものが多く、自然の風合いが感じられるフォルムが魅力です。
色も豊富でかっこいい
色は赤やピンク、黄色、オレンジ、繊細な複色など花色豊富です。切り花のほかに、鉢植えとしても人気があります。葉のついた長い状態のまま、シリンダーなどに生けてもかっこいい。値段は1本400円くらいが相場です。
花屋で買えるランの切り花の種類④
オンシジューム
小さな蝶が枝にたくさん止まっているようなかわいさのあるオンシジュームも、切り花では定番のランです。ボリュームがよく長持ちするので、スタンド花などにもよく使われます。中南米原産で、切り花では10〜14日間ほどきれいな状態で楽しめます。
香りのするオンシジュームも
黄色に赤いリップが特徴の「イエローエンジェル」はオンシジューム切り花の定番品種です。このほかにも、リップの赤が濃いものや、赤くないものなどもあります。また、チョコレート色の「シャリーベイビー」は甘い香りがするのも特徴です。相場は1本500円ほどです。
花屋で買えるランの切り花の種類⑤
カトレア
ブライダルフラワーとしても人気の高いカトレアは、上品で美しいランの仲間です。南米原産で、洋ランの女王とも呼ばれる風格があります。ふりふりの花弁が愛らしく、一輪が大きいのも魅力です。豪華なお花ながら長持ちするので、暑い季節のインテリアにおすすめです。
種類豊富な色・かたち
カトレアは切り花では基本的に1本に1輪で売られています。たまに枝分かれして、数輪ついたものも出回ります。いつも花屋にあるような定番ではなく、遭遇率はちょっと低めかも。しかし周年出回るので、お花屋さんに注文しておけば手に入ります。相場は1本600〜1000円ほどで、少し高価。色やかたちも豊富で、収集癖をそそられるランです。
花屋で買えるランの切り花の種類⑥
コチョウラン
ランといえば、コチョウラン。ランの代表格とも言えるお花です。コチョウランといえばお祝いなどで見られる真っ白なタイプがよく知られていますが、実は花色も大きさもかたちも豊富で、生産者さんたちのこだわりが詰まった切り花です。花びらの色とリップの色の組み合わせが豊富なのも魅力。
高価だけど華やかで長持ち
小輪のミディコチョウランの値段は、1本1000〜1500円ほど。大輪は1本2000円前後が相場です。日持ちは2〜3週間ほど。コチョウランの切り花もお花屋さんでは定番ではありませんが、注文すると比較的すぐに手に入ります。花が重くて花瓶が倒れる場合には、花瓶の底に石などをいれておくと効果的です。
花屋で買えるランの切り花の種類⑦
シンビジューム
肉厚な花びら、しっかりとした茎、切り花で出回るランの中ではもっとも重厚感があるのがシンビジュームです。周年出周りますが冬が旬で、お正月のアレンジメントなどにもよく使われています。夏の時期には白や緑、ピンク色が主流で、秋から冬はボルドーなどの濃い種類が多く出回ります。
ボリュームがあって華やか
華奢な印象の小輪タイプもあり、花束や小さめのアレンジメントに向いています。シンビジュームは基本的にお花が密集してついているものが多く、ボリューミーで華やかな印象です。値段は1000〜2000円と、大きさや花付きによっても変動します。生けるときは花瓶が倒れないように気をつけましょう。
花屋で買えるランの切り花の種類⑧
デンファレ
デンファレは、南国料理に添えられていたりレイとして使われたり、私たちの生活の中ではよく見るランのひとつです。紫と白の複色品種が代表的で、ほかにも白や緑、ピンクなどの色があります。値段は150〜200円で、お花屋さんではほぼ定番の切り花です。
花屋では定番のラン
1本についているお花が多く、長持ちするデンファレ。茎の下の方から萎れていき、取り除きながら2〜3週間は楽しめます。また、料理に添えられるデンファレはエディブルフラワー(食用花)であることも多く、ビタミン豊富なんだとか。花束やアレンジに入れたり、花瓶にガサッと生けるのもかわいい!
花屋で買えるランの切り花の種類⑨
パフィオペディラム
しゃくれた顎のようなかたちがなんとも愛らしい印象のパフィオペディラム。リップがスリッパのように見えるため、英語では「レディ・スリッパ」とも言われます。きれいな筋状の模様が美しく、個性的なランです。白や緑、ボルドーや複雑な配色の品種もあります。
存在感のあるかわいさ
切り花ではまっすぐ伸びた茎に1輪お花がついているのが基本です。値段は1本1000〜1500円ほどが相場。花瓶に1輪挿しておくだけで、存在感のあるお花です。花束に入れて顔を覗かせるのもかわいい。周年出回るものの、切り花としては少し希少なランです。
花屋で買えるランの切り花の種類⑩
バンダ
肉厚の花びらが5枚ついた、丸いフォルムがかわいいバンダ。東南アジアが原産で、濃いピンクや紫色のバリエーションが豊富なランの仲間です。ラベンダーから赤紫、青紫っぽい品種などもあります。トロピカルな雰囲気があり、網目模様や斑点模様も特徴的。
紫のバリエーションが素敵
1本に数輪のお花がついており、長持ちする切り花です。値段は700円前後が相場です。お花の大きさもあり、量感もあるので花束やアレンジメントに使うと存在感があります。デンファレ、モカラなどと同じく比較的お花屋さんに並んでいることが多いお花です。
ランの切り花を長持ちさせる方法
切り花のランの水揚げ
ランの水揚げは、水の中で切り戻しをする水切りが有効です。このとき、茎を斜めに切ります。花瓶の水には、切り花の延命材を入れておくと効果的です。また、ランはエチレンガスの影響を受けやすいという特徴もあり、果物やお線香の近くには置かないようにしましょう。
花粉を取らないのが長持ちの秘訣
ランにはお花の中央部分に鼻のような部位があり、そこに黄色っぽい花粉の塊がふたつついています。これは指で触るとポロッと取れてしまうのですが、これを取ってしまうとそこから茶色くなってしまいます。長持ちさせるには、花粉を取らないのがポイントです。
花びらの傷に注意
肉厚で瑞々しいランの花びらは、丈夫ではありますが、傷がつくと傷みやすくなります。傷から茶色く変色していくため、白色の品種は傷みがよく目立ちます。逆に、濃い色の品種は傷がついても目立ちにくいというメリットがあります。特にコチョウランは花びらの面積が大きく、傷が目立ちやすいので要注意です。
複数輪ついたランはさらに長持ち
アランセラやモカラ、デンファレやバンダなど、1本にたくさんのお花がついているランは、下のお花から枯れてきます。枯れたお花は手でポロリと取れるので、枯れたら取り除き、切り戻しをして生け直すのを繰り返すと、1ヶ月近くは長持ちします。
貴重だけどドライやプリザにも
肉厚でドライフラワーやプリザーブドフラワーには向いていないラン類ですが、シリカゲル法ならドライフラワーにできます。この場合、色が濃い品種のほうが色残りもよく向いています。珍しいですが、プリザーブドフラワーの花材も出回っています。
さいごに
ランはかっこよくてかわいい
ランの切り花では、モカラやデンファレ・オンシジュームなどは定番で、アランセラやバンダ、シンビジュームはまあまあよく見る、そのほかは出会えればラッキー!という遭遇率です。また近年パフィオの切り花は人気があり、置いているところも多い印象です。この夏、ぜひランの魅力を見つけてみてください。
過去の連載はこちらから
この日曜連載では、お花屋さんで買える切り花たちにスポットを当て、暮らしの中に取り入れやすいお花たちをご紹介しています。次回は、ランと同じく暑くても長持ちする南国テイストの切り花たちをご紹介する予定です。過去の連載でも長持ちする切り花をご紹介していますので、気になる方はこちらもチェックしてみてくださいね。
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