うなぎの蒲焼を考える
蒲焼ってなんだか変な名称ですよね。奄美地方の方言は、実は日本語の「古語」に一番近いと言われています。奄美で「かばしゃ」と言えば「いい匂い」のことを言います。蒲焼の「かば」がいい匂い(芳しい)から来ているのでは、という説があります。しかし「元々うなぎはぶつ切りにしたものにタレを付けて焼いた物、その姿が蒲の穂(がまのほ)に似ているから蒲焼になった」とする説が大勢を占めています。つまりある程度の長さのあるものをタレ焼きしたものを蒲焼と呼ぶようです。決してカバを焼いたりしてはいけません。
マツカサの蒲焼はアリ?
うなぎの蒲焼風はいろいろ試されている
うなぎの稚魚が不漁になって数年が経ちます。かつて江戸時代までは労働者の食べる下賤な魚の扱いだったうなぎも今では立派な高級魚になってしまいました。日本うなぎ(アンギラ・ジャポニカ)がレッドデータブックに載ってしまいその値段はどこまでも上がって行くような印象さえ受けます。そんな中で代用蒲焼、いわゆるうなぎの蒲焼風のものが近年出回っています。例えば「なまず」を使ったり、「豆腐」や「ナス」をうなぎの代用にすることもあります。うなぎの蒲焼風かまぼこ風などという全体的にふわっと「風」でまとめられた何だか分からない商品もあります。
秘密兵器を使う(タレ)
さーて、取りい出しましたる一本の茶色の小瓶(グレンミラー・オーケストラより)。これがとんでもない優れもので、たいがいの食材を蒲焼風にしてしまいます。もちろんマツカサだろうがエソだろうが特に白身の魚にはとても合うタレです。今回は「醤油3」だの「みりん3」だのこまごましたことは省いてこいつの力を借りて焼き煮にしていきます。
今回の釣行
小潮ながら180㎝からの下げ
小潮で小雨で深夜。釣りなんか行きたくないな、と思った2020年6月27日午前1時。外の空気を吸いたいなと表へ出ると雨が止んでいる。しかも無風。う~ん悩ましい。潮は下げに入ったところ。ここのところイカを食べていないのでイカ狙いで出かけることにする。場所はいつもの常夜灯と屋根のある桟橋。握っているのはエギングロッド1本とタックルボックス。
今回の獲物
ひたすらシャクること20分。常夜灯の光の切れ目あたりでライズが始まった。一旦イカ狙いはやめてジグを投げてみることにする。使用ジグは赤金の21g。エギングロッドで投げられる限界の重さ。着水から2秒待って1秒間に2回のリーリング。いきなりのドラグ鳴き。エギング用にドラグゆるゆるが良かった。巻いては出されのやりとりをして約5分で決着。揚がってきたのは45㎝2㎏のギンガメアジ。即納竿。え?マツカサ?ええ、マツカサは前日に釣って冷蔵庫で寝ていましたよ。
マツカサの蒲焼の作り方①「五枚おろし」
マツカサをおろす
前回の記事でマツカサのウロコは手で剥げると書きましたが、今回は釣った瞬間にその場でナイフで下処理をしてきました。手で剥ぐと仕事は早いものの手がズタズタになっちゃいますからね。お腹を裂いてエラの付け根をハサミでチョンと切ってエラを持って下に引っ張ると卵を残して内臓がきれいに外れます。あとはジャブジャブと洗って下処理は終了。
部位を分ける
マツカサは三枚におろしたら血合い骨を漉きとります。これで実質五枚おろしになりますね。これをうなぎの「頭部よりの部位」「尻尾よりの部位」「その他」の3部位に分けておきます。下ごしらえとして、ここで海苔を1枚用意し、半分に切ります。その半分2枚を重ねて「うなぎ型」に切っておきましょう。これは必要ないかも知れませんが、何となくうなぎを感じたいじゃないですか。遊び心も満たされますよ。
マツカサの蒲焼の作り方②「成型」
結着剤を作る
3つの部位の内、「その他」に登録された部位をすり鉢で擂って行きます。まな板で軽くトントンと叩いたら擂鉢に投入。これはうなぎ型に切った海苔とマツカサの身の結着剤になりますので、粘りが出るまで擂りましょう。味付けと粘り出しのために塩を小さじ1振りかけてさらに擂ります。
すり身を海苔に塗りつける
フライパンに油を敷いてフライパンを温めながら、うなぎ型の海苔に薄くすり身を塗りつけていきます。ここからは手早く行きましょう。なぜならここでもたついてしまうと海苔がすり身の水分を吸ってしまって丸まってしまうからです。
マツカサの蒲焼の作り方③「焼き」
マツカサの身を並べる
うなぎ型に切った海苔に結着剤を塗ったらマツカサの身を並べていきます。この時皮側を上にしましょう。皮側には僅かですが脂が乗っていて、結着が弱まる恐れがあります。また、並べた身は上からギュッと押し付けて下さい。ほらほら、うなぎですよ!(ちょっと悲しい)
フライパンで焼いて行く
熱したフライパンに薄く油を敷いて、身側から焼いていきます。フタは締めません。焼き色がしっかりついて芯まで火が入ったら海苔ともしっかり結着します。海苔と身が剥がれないのを確認したらひっくり返して海苔側からも焼いていきます。
タレで焼き煮
もう一度ひっくり返して身を下にしたら、タレをかけて焼いていきます。タレの量は約50cc。ボトル半分使いました。詰まり過ぎかなと思ったらお酒を足して調節しましょう。ちなみに今回は大さじ1のお酒で延ばしました。できあがったらご飯にタレをツーっと回しかけ、うなぎの蒲焼みたいなヤツ(笑)をご飯にのせて、余ったタレをかけてできあがりです。
おまけのお刺身と煮付け
お、おまけだと!
マツカサの蒲焼だけでは食卓が寂しいので、おまけにギンガメアジのお刺身も付けてみました。GT(ジャイアント・トレバリー)系のアジの中ではダントツのうまさを誇るカスミアジにはさすがにかないませんが、しっとりとした上質な脂の乗った腹身だけをいただきました。いやあ、うまいのなんの。コリコリ、しっとり、のあとわずかなねっとり感とともに旨味が口に広がりました。背身は塩胡椒をしてパーシャルへ。後日アジフライになることでしょう。
マツカサの卵は煮付け
今回のマツカサも前回同様卵が入っていたので、それもおいしくいただきました。まずは卵に張り付いている筋や血筋をていねいに外し、軽く水洗い。蒲焼のタレを大さじ1、お酒を大さじ1、チューブの生姜をBB弾1個分を小鍋に入れて沸かします。沸騰したら卵を投入。弱火で2~3分煮たら出来あがり。これは料理中にハイボールのお供として消え去りました。甘くてうまいんだよなあ。
笑っちゃうくらいうまい!
さて実食です。前日から白だしに漬けておいたポリポリキュウリ、ギンガメアジのお刺身とともに食卓へ。海苔が喰い千切れずにせっかく成型したものがボロボロになりはしないかと心配しながら一口。心配をよそにサクッときれいに食い千切れました。いやあ、実にうまい。これは当たりでした。もともときちんと処理すれば臭みの無いマツカサです。火を通して少ししまった身と甘辛いタレがベストマッチです。本当ならゼラチン質の皮は使いたいのですが、実は浅場のサンゴ礁を棲家にしているマツカサは皮が臭い。フードプロセッサーをお持ちの方は、身をすべてミンチにして作っても美味しいかと思います。
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釣って食べるシリーズも、当初の「釣れた魚で連載を書く」を含め早8回目となりました。なかなか自分の思い通りの魚をゲットできず、またさまざまな諸事情で釣行自体ができなかったりと紆余曲折はありますが、「暮らし~の」の運営様からは「ライブ感」を求められているだろうと勝手に解釈してがんばっております。今回使用したマツカサは万能の白身魚として重宝している食材ですが、他にも幾つか記事として上げております。興味を持たれましたら、ぜひそちらも御併読下さい。
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