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チングルマ(珍車)はどんな花?その特徴や花言葉、育て方まで一挙ご紹介!

東日本の名だたる山々にハイキングすると出会えるチングルマは、高山植物の花の代表格。まるで違う花を2度咲かせるような特徴が、すれ違う登山者を楽しませます。まだ知らない人もいる名の由来や花言葉、そして育て方まで、チングルマの気になる所にぐっと迫ります。
2020年8月28日
はぐれ猫
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チングルマとは?

チングルマは高山植物

いつも登山者が目指す山々には、雲よりもずっと高い環境も珍しくないですが、チングルマはそんな高い所に生えている小低木の高山植物です。高いところでは標高3,000mの有名な山岳でも見ることができます。高山植物の中でも存在感があって登山者を癒やしてくれる植物、それがチングルマです。

バラ科ダイコンソウ属

見た目からはまるで想像も付きませんが、チングルマはバラ科に含まれている高山植物です。しかもダイコンソウ属と呼ばれる種類に含まれていて、バラの仲間とは思えない見た目をしています。あるいはチングルマ属という意見もあって、このあたりは未だ確定はしていません。

チングルマの分布

世界の分布

実は日本だけの固有植物ではない、チングルマ。北はロシアのカムチャッカ半島やアメリカのアリューシャン列島など、寒冷な環境にも生息しています。日本では中央アルプスの標高2,000m以上の山岳に見られ、東北、北海道の標高が高い山々でも確認されます。中部地方以西には生息しない植物です。

高原の草原や湿った場所を好む

人里離れた高所に潜んでいるチングルマですが、高原ならどこでも生息できるわけではありません。草が生い茂るような、栄養ある土の環境を好んでいます。また山岳のところどころに見つかる水が豊富な湿原や、雪解け水が十分に確保できる雪渓なども、チングルマが好んでいる環境です。

チングルマの特徴①群落

群落を作るチングルマ

山岳でチングルマがひと固まりになって密生する様子は、群落と呼ばれる見応えある光景です。チングルマの種は適度な湿り気のある居心地のよい場所で発芽します。周囲に枝を伸ばし、条件が整えば群落を形成し始めるのです。群落は色んな虫や小動物たちが引き寄せられる、山の天国のようなところです。

大群落もある

時にはあまりにチングルマにとって良過ぎる環境があり、そこでは大群落とまで表現される姿も確認されます。日本の山岳地帯の中には、長さ数百メートルにも渡ってチングルマが密集する大群落までも見つかります。特大規模になると、チングルマを目当てに登山する人々が目立つ名所になっています。

チングルマの特徴②全体の様子

大きさ

群落では盛大に咲き誇って見せているチングルマですが、山岳で見られるチングルマの1株あたりのサイズは、とても小さなものです。絶景を見渡せる大自然の中では高さ10cmほどにしか成長せず、家で栄養たっぷりにして栽培をしても15cm以下と、かなりちんまりとした感じは同じです

葉っぱ

葉っぱも1枚あたりはとっても小さいサイズで、羽状複葉という形をしています。チングルマはダイコンソウ属と言われるように、根っこから直接葉っぱが生えている特徴を持っている樹木です。こうした葉っぱの様子を見ても、ますますバラとは縁遠い植物と感じてしまいます。

チングルマの特徴③花

花の形状

いつも可愛らしく開花しているチングルマは、山岳の夏を象徴する風物詩でもあります。直径は3cmほどの小さな花ですが、遠目からでも存在は目立ちます。5枚の楕円形をした白い花びらの中央に、黄色くなった部分を持っているのが特徴。黄色い雄しべや雌しべは、花に比較しても大ぶりな印象です。

花の時期

雲の上でチングルマが開花して見せる時期は、梅雨の6月のあたりから始まっています。時期は7月までの場所もあれば、8月まで見られる北国の名所も珍しくはありません。しかし平野部で栽培した場合の開花時期は山岳とは大きく異なり、5月中旬から7月まで白い花を見ることが出来ます。


チングルマの特徴④花柱

花の後の花柱

他の植物の場合、開花の後には花が散って果実を残すのですが、チングルマにはちょっと違う魅力があります。開花の後に登場する、綿毛とも呼ばれる花柱を開く特徴があるからです。まるで2回目の開花か、花の進化のようにも見えてしまう魅力的な花柱は、チングルマの名前の由来にも関係していました。

花柱の形状の変化と時期

最初は蝋燭の炎みたいな形で出現する、開花後の時期に見られる花柱。やがて上空に向かって開花するかのように、花柱を放射状に開き始めます。そして山岳の夏の終りが近づく8~9月の時期、もじゃもじゃとした綿毛を風になびかせ、あたり一面がチングルマの不思議な風景に彩られていきます。

もじゃもじゃは種

実はこのもじゃもじゃとしている花柱こそが、チングルマの果実で、種となります。細長い綿状の花柱の中に、細かい種が入っているとのことです。軽量な痩果の種類であり、綿状なものに包まれて軽量なのは、風に飛ばされて種が周囲に拡散しやすいように進化した結果でした。

チングルマの特徴⑤紅葉

赤紫色に紅葉するチングルマ

山岳で晩夏から秋にかけての楽しみになるのは、チングルマの紅葉に他なりません。チングルマの紅葉を見れば、小さな葉っぱ全体が赤紫色に染まっています。1株あたりは小低木ではあるとは言え、群落でに紅葉すれば山の斜面を赤紫色に塗り替え、山岳の絶景とも呼ばれる風物詩を生み出します。

紅葉の時期

例年のように山岳でチングルマの紅葉が始まるのは、9月中旬の頃から。見頃は9月の末から10月上旬で、この頃が最もインスタ映えする時期と言うこともできます。チングルマの紅葉は、北方であるほど紅葉は遅れる傾向にあります。紅葉の時期に合わせての絶景ハイキングも楽しそうです。

霜が付いたチングルマの紅葉

そして寒い時期が到来したなら、チングルマの紅葉は別の特徴を楽しむこともできます。それは寒さによって、紅葉に真っ白な霜が付着する稀有な姿。普段のチングルマの紅葉とは違い、見る者の心を打つような印象的な姿。寒さの中を登山をした者だけが見られる、ご褒美のようなものです。

チングルマという奇妙な名前

稚児車が由来

ところでここまでチングルマを何度も連呼しましたが、このヘンテコリンな名前の由来は何かご存知でしたか?チングルマは元々「稚児車(風車)」だったとされます。これは開花後の花柱が子供の稚児車のような形に見えることが、名の由来になっています。いつしかチングルマと訛ってしまったようです。

もう1つの名前は珍車

もう1つの名前である、珍車のほうもよく使われています。これはチングルマに漢字を当てたのが由来だとすれば、稚児車→チングルマ→珍車と名称が変遷したことになります。あるいは珍しい風車型の花柱が見られることが、珍車の由来だと考えることもできます。

チングルマの花言葉

可憐という花言葉

いまチングルマに確認される花言葉は、複数あるかと思いきやそうではありませんでした。チングルマの花言葉は、世界中にたった1つだけです。それは「可憐」という花言葉。世界中に可憐と表現される花は数え切れないほどある中で、何故珍車に可憐の花言葉が付いたのか、その由来も知りたいところです。

可憐の由来

過酷極まる山岳の環境の中で、チングルマは綺麗に開花して見せたり、不思議な花柱を風にたなびかせています。そんな姿は他のどんな植物よりも可憐であること。それが花言葉の由来になっています。この花言葉は、間違いなくチングルマの第一印象と被っているように思われます。

チングルマの育て方①環境


高原ではない環境でも栽培できる

そんな高山のチングルマを目の当たりにしたなら、自宅で可憐な姿を栽培してみたくなるものです。しかしチングルマの栽培には、高所のような過酷な環境は必要ありません。高山植物でありながら、平野部の自宅でもすんなりと植え付けができることも、チングルマの魅力になっています。

必要な環境

平野部での育て方を実践するにあたり、チングルマが必要とする環境を揃える必要があります。それは植え付け後に日当たりが良好な場所、根を伸ばせる用土、そして雨を避けられる屋根も重要です。冬は雨を避けて日陰に置いたり、水苔などをかぶせて保護をするなどして越冬させることもできます。

容器と用土を選ぶ

普通の市販される小型のプランターや鉢を用いて、チングルマを栽培できます。植え付ける用土は、通気性や保水性を考慮るするのがおすすめです。鹿沼土7、山砂3の割合の用土を作るのが最適とされています。あるいは山野草の培養土を、植え付けの用土として用いることもできます。

チングルマの育て方②水やりと肥料

水やりをしよう

植え付けをしたチングルマにとって一番重要なのは、日光と共に水です。栽培用土が乾燥してしまっては、チングルマの育て方が上手くいきません。水やりは1日1回、鉢の用土がたっぷり水を吸うほど行います。春は朝方、夏は夕方、秋は朝方にあげて、冬は植え付けた用土が湿る程度で構いません。

肥料も大切

良い状態に導く育て方には、液体肥料と置き肥が欠かせません。液体肥料のほうは、植え付けたチングルマの用土に春と秋、2週に1度だけおこない、夏や冬の栽培時期にはまったく必要としません。置き肥のほうは芽が出る時期と秋、2度行うことがとても効果的です。

チングルマの育て方③増やし方

種まきからの栽培

もじゃっとした種を取って、チングルマを種から栽培することができます。培養の用土を作り、種を植え付ける時期は春から夏の頃です。越冬して春に植え付けることもできます。種を採取した直後のものは1ヶ月、越冬した種なら1~3ヶ月で芽を出し始めます。水と日光を切らさないことが重要です。

挿し木での栽培もできる

さらに可愛らしいチングルマは、平野部でも挿し木からの育て方もできてしまう植物です。涼しさの残る春に枝を根元からカットしたら、2cmほどを土に植え付けるだけでok。用土に植え付けたものは早ければ1~2ヶ月ほどで根っこを伸ばし始め、新たなチングルマの株の出来上がりです。

チングルマの育て方④病気と害虫

主な病気と対策

栽培中に芽が出た後、チングルマの葉っぱに黒や灰色の斑点が見えてきたら、炭疽(たんそ)病と呼ばれる病気です。これは殺菌効果のあるマンネブを主体とする薬剤などを使います。梅雨に葉が白くなれば、うどんこ病です。対策としては炭酸水素ナトリウム系の薬剤が、よく用いられています。

主な害虫と対策

主要な害虫の1番手には、葉っぱによく付くアブラムシが挙げられます。アブラムシに対しては、天然の竹酢液を試してみる価値があります。ナメクジやヨトウムシも付きやすいので、毎日のようにチングルマに目を届かせ、手作業で取り除くという育て方も欠かせません。

チングルマの名所

大雪山の旭岳

数あるチングルマの名所の中でも、最上位に挙げられるのは北海道の大雪山です。ロープウェイで旭岳の頂上にたどり着くと、標高1,600mの姿見の池の付近にチングルマの大群落が見られます。その規模は数百メートルにも渡っていて、現在は世界を代表するチングルマの聖地です。

基本情報

【所在地】北海道上川郡東川町 大雪山旭岳ロープウェイ姿見駅前
【見れる場所】姿見の池の周辺
【標高】1,600m付近


立山連峰

貴重な氷河の絶景も見られてしまう北アルプスの立山は、標高3,015mに達するチングルマの名所の1つ。花の百名山でもあり、標高2,450mの室堂よりも上部に、タテヤマリンドウやチングルマなど様々な高山植物が開花する様子が見られます。ライチョウや山の絶景と共に楽しめるのが見どころです。

基本情報

【所在地】富山県中新川郡立山町芦峅寺
【見れる場所】室堂より上部
【標高】2,450m以上

黒部五郎岳

飛騨山脈で標高2,839mを誇る黒部五郎岳も、チングルマの名所として有名なところ。花の百名山なだけに高山植物の宝庫で、標高2,000mを超える登山道ではコバイケイソウやチングルマなど数多くの花々が咲き乱れます。登山は宿泊を要する困難さがあるとは言え、登ってみる価値は十分です。

基本情報

【所在地】富山県富山市、岐阜県高山市、飛騨市
【見れる場所】飛騨新道、西銀座ダイヤモンドコースなどの登山ルート
【標高】2,000m以上

チングルマのお菓子

富山銘菓ちんぐるま(朝日堂)

可憐という花言葉を持つチングルマを題材としたお菓子が、富山県に存在しました。その名も富山銘菓ちんぐるま。以前は富山のお土産センターにあったのですが、今ではなかなかお目にかかれない希少なお菓子となりました。朝日堂という、富山市の中央通りにある菓子店で製造している名物です。

ちんぐるまはどんな味?

この富山銘菓になったちんぐるまは、まん丸な形をしているあんこの最中。パッケージはチングルマをあしらい、現物は茶色い見た目にチングルマの花、花柱のデザインがあしらわれています。種類はゴマ、抹茶、小豆と3種類があります。富山を訪れたら、お土産に欲しい一品となりそうです。

朝日堂の基本情報

【所在地】富山県富山市中央通り2-5-7
【電話】076-421-4814
【営業時間】10:00~19:00(水曜定休)

チングルマを見てみたい

自宅で育てるのはおすすめ

とんでもない過酷な高山地帯の環境で、チングルマは暖かな時期に特徴的な姿で開花して登山者を出迎えていました。ヘンテコな名前の由来や花言葉の由来も分かって、用土に植え付けたり、種からの育て方まで分かればもう安心。自宅で可愛いチングルマの栽培にチャレンジしてみたいですね。

山岳が気になる方はこちらもチェック!

当サイトではチングルマが咲き誇る、日本各地の山岳の情報についてもまとめています。標高の高い夏山にチャレンジしたい方もチェックしてみてください。