NORDISK Asgard 12.6
フローリング ウレタンワックス
加水分解とは
いろいろな不具合がでる症状
加水分解とは化学物質と水による反応のために不具合が生じることです。テントの場合はポリウレタンの劣化が主な原因です。テント以外にも、消しゴム、スニーカーのソールなどいろいろなもので加水分解が発生します。
靴下のゴムが反応すると、簡単にちぎれやすくなり、スニーカーはソールが割れやすくなります。テントだとポリウレタンが使われている部分すべての場所に発生して臭いやベタつき、白っぽくなるなどの症状が出ます。
加水分解は「劣化」
読んで字のごとく水が加わり分解されることです。つまりポリウレタンの劣化ということです。何十年も使わないテントはもちろん劣化しますが、たった数年でもテントの扱いが悪いと劣化します。スニーカーのソールが割れる、黄ばむ、消しゴムがベタつく、黄ばむという症状も劣化の一種です。
ポリウレタンとは
ポリウレタンとはPUコーティングのことです。PUコーティングはスタンダードな加工ですので、化学繊維製のほぼ全てのテントに使われています。
つまりほぼ全てのテントで加水分解が発生するといえます。PUコーティングが悪いのではなく経年劣化のと捉えて付き合っていくようにしましょう。しっかりテントをメンテナンスするとPUコーティングでも何年も使えますよ。
テントの加水分解・4つの症状
①ベタつき
フライシートの内側に施されているポリウレタンが加水分解を起こすと、一番生じやすい症状がベタつきです。通常テントの生地はサラサラすべすべしていて、手に違和感があるような質感ではありません。初期の加水分解でも違和感が出る程度にベタつきますよ。
少しベタつくだけならまだ劣化が始まったばかりですが、対策を何もしないと、どんどんベタついて使い物にならなくなります。
症状が進むと
ベタついている状態のため、収納中に生地同士がくっついてしまいます。無理に広げようとすると生地が剥がれてしまい、設営できなくなるでしょう。
今回はテントの加水分解として紹介していますが、タープもポリウレタンでコーティングされているので同じようなことが起きます。コーティングが剥げると雨が簡単に内側に染み込んできてしまいます。
②シームテープの剥離
ポリウレタンのコーティングだけが劣化していくわけではありません。縫い目に張られている防水テープ「シームテープ」も同じように劣化していき、簡単に剥がれ落ちるようになってきます。
一気に綺麗に剥がれると張り替えやすいのですが、加水分解による劣化はどこで起きるか分からないため、張り替えようとしても、劣化が進んでいない場所はきちんと張り付いていて剥がしにくいです。シームテープがないと縫い目から水が染みますよ。
症状が進むと
何年も使っていないテントを設営してみると、シームテープがすでに剥がれて垂れ下がっているということもあります。粘着力を失い自然とたれさがってくるほど劣化しているということは、フライシートもベタつきを起こしている可能性が高いです。
広げるときにペリペリと音がするような場合は、加水分解が起きている状態と言えますよ。
③シミや臭い
アルミクッカーを米の研ぎ汁でシーズニングしたかのように、白いシミのようなものがはっきりできるようになります。シーズニングはメリットがありますが、残念ながら加水分解はただの劣化のためデメリットしかありません。
仮にベタつきの症状がなかったとしても白い汚れは非常に目立ちます。また初期の軽いベタつきよりも分解が進行していると、臭いが発生します。化学物質が劣化した臭いとなるのであまりいいものではないでしょう。
症状が進むと
ベタつき、テープの剥げ、臭いや白い汚れが目立つ状態まで症状が進んでいると、どうすることもできません。ベタつきを取り除く対処方法はありますが、完全に元に戻す方法はありません。特に思い入れがない、他のテントでもいいという方は買い替え時となるでしょう。
何年も放置していたり、メンテナンスをしていなかったりする場合は短いスパンで買い替えとなり、MSRやスノーピークのような人気ブランドでもコスパが悪くなります。
④耐水圧が0に
ポリウレタンやシームテープの劣化は、最終的には耐水圧が0mmになるということ。雨に対して何の対処もできない状態になります。ポリエステルはテントでよく使われていますが、それ自体が水に強いというわけではありません。
表面にある撥水加工や、内側のポリウレタンで、水が染み込まない加工をしているだけです。劣化して防水加工がなくなるといとも簡単に内部に水が染み込みますよ。
シームテープだけしか張り替えられない
剥がれたシームテープは張替えできますが、剥がれたポリウレタンを修理するのは不可能です。シームテープだけでは水を防げません。素材に関係なくポリウレタンが完全に剥がれたら買い替え時となります。
テントの加水分解の原因
ポリウレタンを悪くする水分とは
水が加水分解の原因ですが、具体的にどんな水が劣化を起こすのか紹介していきますね。キャンプでは水分を100%防ぐというのはできません。地面からの湿気、人間の呼吸、空気中、雨など、至るところに水分があります。
またキャンプ中だけではなく家に帰ってテントを保管しているときも、空気中の水分や湿度は影響してきます。どんなに頑張っても何年かすると水分による影響が出始めるものです。
濡れなくても起きる
結露や雨で直接裏側が濡れなくても、高温多湿な日本では空気中の水分でも分解が始まると言われています。雨キャンプも人気ですが、同じテントを何年も使いたいという方は湿度が高い日にキャンプしないほうがいいでしょう。
テントの加水分解の対処・修理方法とは
修理は不可能
結論から言うとコーティングの状態が悪くなると、修理は不可能です。後から修理できるならさほど驚異ではないのですが完全な修理はできず、メーカーの保証からも対象外になっていることが多いです。
有償の修理でも断られるケースが多いでしょう。ノースフェイスやDODなどテントを発売している会社が修理できないような現象のため、うまく付き合っていくしかないです。
対処方法はある
修理はできませんが、ベタつきを取り除くという対処方法はあります。対処方法とはいえ、防水機能が完全にもとに戻るわけではありません。対処すると何年も使えるというわけでもないため買い換えるべきかよく考えてから対処してみてくださいね。
注意点は対処方法と共に紹介しますが、自分で行う場合は、コーティングをすべて落とすこともありますので最終手段となります。
テントの加水分解の対処方法2選
①専用のサービスを利用する
コーティングが悪くなったことで発生するべたつきを取り除く専用のサービスがあります。自分で処理してもいいですが、専用のサービスでも取り除けない場合やひどすぎて断られた場合など最終手段として自分で対処しましょう。
べたつきを取り除くサービスとは、一般的なテントクリーニングのサービスとは異なり加水分解によるベタつきや臭いの軽減をしてくれますよ。素材にもよりますが、ベタつきに対して効果は高く人気です。
おすすめサービス
クリーニングの中にはオプションとして臭いやベタつき軽減加工というものをしている会社もあります。これにより多少良くなることが知られています。いろいろなクリーニング店があるなかで、ベタつき専用のサービスを展開しているのがきたじょう工房です。
ブログなどでも名前が挙がる有名なサービスとなります。MOSSなどの古いテントを愛用しているという方からリピーターが多い実績のある会社ですよ。
②自分で行う方法
自分で行う方法を紹介します。修理はできないとされていますが、一度コーティングを落として再度自分でコーティングをするという方法があります。完璧な修理にはなりませんが、コーティングを落とすのでベタつきなども綺麗に落とせます。
注意してほしいのはコーティングをすべて落とすため、ロゴのプリントが消えたり耐水性が全て失われることです。
重曹で落とす
重曹を水に溶かしてそこにフライシートを漬け込みます。数時間~数日漬け込むと裏面を手でこすってみてください。消しカスのようにポロポロとしたゴミが出てきますよ。これがコーティングです。しっかり落としたら水でしっかり洗い流して乾燥させましょう。
自分で処理するのはあまり推奨されないやり方となるため自己責任でお試しください。
再度コーティングする
コーティングがないと雨が一瞬で染み込むので、自分で加工しましょう。PUコーティングはできないためシリコン系の撥水剤を使います。人気なのは信越化学工業のポロンTです。小さいテントだと設営した状態で塗るといいでしょう。刷毛でまんべんなく塗ります。
完全に修理できるものはありませんが、コーティングをすることで少しでも雨が染み込まないようにします。ポロンTは揮発性が高いので屋外でしましょう。
シームテープを張替え
重曹で洗うとシームテープも剥がれたり、劣化したりするので張り替えます。シームテープは市販されているので交換していきましょう。テープ状のものだけではなく塗り込むタイプもあります。
床用ウレタンワックスについて
フローリング ウレタンワックス
床用ウレタンワックスを使うという方法も人気が出てきました。素材にウレタンが入っているため、フライシートのコーティングと似ています。同じようにサラサラになりますよ。洗濯してきれいにしたあと塗っていくだけです。
テントの加水分解の予防方法
修理できないので予防が大事
化学物質を使った素材だと必ず加水分解が起きます。この現象を確実に防ぐ事はできません。何年かすると発生します。自分で再加工しても数ヶ月から数年経つと再び加工が必要になりますよ。
そこで大切なのは予防してできるだけ加水分解を遅らせるようにするということです。素材にもよりますがきちんと管理すると、加水分解が発生する速度を遅くできますよ。
加水分解が発生しないテントを選ぶ
そもそも加水分解が発生する理由は、化学物質をコーティングに使っているからです。コットンテントのように天然繊維でできていものなら、発生することはありません。ポリコットンも同様に天然繊維が使われているので多少発生しにくくなるでしょう。
またテントを選ぶときは材質に注目して、PUコーティングとなっているものはいずれ加水分解を起こす素材なので避けると大丈夫です。前述したようにPUとはポリウレタンのことです。
しっかり乾かす
水と反応するとコーティングの劣化が起きてくるので使用したあとのテントはしっかり乾かして保管しましょう。朝起きて撤収までに結露や朝露、雨をしっかり拭き取り、可能な限り乾かして収納するようにします。濡れたまま収納しないことで予防ができます。
撤収時の基本的なことですが加水分解の予防方法となるため大切ですよ。汚れがついている状態も加水分解ではありませんが、コーティングが悪くなる原因です。
直射日光で乾かさない
風で乾かすようにしましょう。直射日光で乾かさないように注意してください。素材によっては生地が縮かみ、きれいに張れなくなる可能性もありますよ。また日光によって色あせる可能性もあります。
保管場所
保管する時は湿度が低く、直射日光が当たらない場所がおすすめです。土砂降りのあとなどはクリーニングサービスを頼むといいでしょう。乾燥サービスもありますよ。
生地を乾かし綺麗にすることで劣化しにくくなります。コーティングは塩素に弱いと言われているので水道水で洗うのはできるだけ避けましょう。
加水分解を起こさないテントがある!?
コットン素材のテント
前述したように天然繊維の綿(コットン)が使われているテントはコーティングが施されていないものが多く、加水分解とは無縁です。ただしメンテナンスは通常のテントより必要になり、濡れているとカビが生えるかもしれません。
特に黒いカビは対処のしようが無いと言われていて、予防や対処ができる加水分解のほうがまだいいという声もあるぐらいです。素材によってテントの扱い方が変わるので注意してくださいね。
おすすめコットンテント
NORDISK Asgard 12.6
ノルディックのアスガルドはコットンです。北欧ブランドは過酷な環境に耐えられるように丈夫なコットンを使用したものが多いですよ。アスガルドは同社の人気テントでグランピングでおなじみです。
シェルターのようにインナーはついていませんが、インナーをつけることもできグランドシート(フロア)をめくりツールームテントのようにして使ったりとアレンジしやすいです。
ヒルバーグのテント
ヒルバーグのテントは加水分解が起きないテントです。多少高価ですが、予防しなくても加水分解を起こさず何年も使えることを考えるとコスパが非常に高いと言えます。なぜ起きないかというとそもそも加水分解の原因は水とPUコーティング(ポリウレタン)が反応することです。
ヒルバーグのテントはボトムだけがPUコーティングとなり、フライシートにはPUコーティングが使われていません。そのため劣化しにくいです。
ボトムはPUコーティング
ボトムには3層のPUコーティングが施されているので、予防せず何年か使うと起きるかもしれませんが、ボトムならコーティングがしやすいです。
またボトムが加水分解したという声がないため非常に長く使えるでしょう。防水加工の素材によって加水分解が起きるかわかるので気になる方はPUコーティングを避けましょう。
テントの加水分解のまとめ
テントがベタつき臭うなどの不具合が出て防水能力が下がる加水分解は、コーティングの素材と水が反応してしまうことが原因です。空中の湿気でもゆっくり劣化してくるものなので、急速に劣化させないように予防を心がけてくださいね。
素材が原因となるのでテントを選ぶ時は、PUコーティングが使わていないものを選ぶと加水分解に悩まされなくて済みますが、高価なものが多いです。
キャンプ用品のメンテナンスが気になる方はこちらもチェック!
暮らし~のにはキャンプ用品のメンテナンスに関する生地があります。よかったらチェックしてくださいね。
【コールマン】ランタンの正しい修理・メンテナンス方法ガイド!
大自然のキャンプサイトをいつも明るく照らしてくれるのがコールマンのランタンです。コールマンランタンの魅力は、シンプルな構造ゆえの堅牢さと修理...
【ダッチオーブンのシーズニング】使用前のメンテナンスをご紹介!
キャンプをする際には欠かせないダッチオーブン。そのシーズニング(使用前メンテナンス)のやり方を詳しくご紹介! 他にもダッチオーブンの素材や...