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ウツギとはどんな植物?特徴や「空木」という名前の由来など気になる情報まとめ!

卯の花(うのはな)という名前でもよく知られるウツギ。白いお花をたくさん咲かせる姿は、日本の初夏の風物詩でもあります。今回はそんなウツギについて特徴や名前の由来など詳しくまとめました。さまざまな用途にも用いられてきたウツギの魅力を、たっぷり解説します。
2020年8月28日
しまうま花屋
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ウツギとは

ウツギってどんな植物?

初夏に咲く白いお花が魅力のウツギ。「卯の花」という名前のほうが馴染み深い方もいるかもしれません。日本の各地で見られるウツギは、古くから日本人の生活に根付いてきた植物です。鑑賞として楽しむだけでなく、実用品としても取り入れられていたウツギ。日本の原風景の一部として、愛されてきました。

ウツギと日本人

また、ウツギが日本人の生活に身近な植物であったためか、ウツギの仲間とされる植物がたくさんあります。しかしその中には、現在の植物学では分類上ウツギとは違う植物とされるものも。ウツギに分類されるものの特徴や種類をはじめ、その用途や歴史など、ウツギについて詳しくご紹介します。

ウツギの分類と分布

分類

ウツギはアジサイ科ウツギ属の植物で、落葉性の低木です。かつてはアジサイ全体がユキノシタ科に分類されていましたが研究が進みアジサイ科として独立し、今はアジサイ科とされています。樹高は2〜3mほどの大きさになり、耐暑性にも耐寒性にも強い植物です。春に白色の花が咲き、秋には紅葉します。

原産地・生育場所

原産地は日本や中国で、北海道から四国、九州や奄美大島までの山野で自生します。日当たりの良い崖地などの場所に見られます。主にヒマラヤや東アジアに分布し、日本では5〜6種類が自生しています。条件の悪い場所でも育つ丈夫な性質な上に成長も早く、剪定せずに放っておくと大株に成長します。

ウツギの特徴

空洞の茎

ウツギの特徴のひとつに、枝の中が空洞になっていることが挙げられます。中が空洞になっている植物は珍しいわけではありませんが、後述するように、名前の由来となっている特徴です。空洞になっているのは、枝や茎を作るエネルギーを節約するなどの目的があると言われています。

星状毛(せいじょうもう)

ウツギは葉や枝を触るとざらざらしているのが特徴ですが、これは星状毛と呼ばれる毛がついているからです。星状毛とは放射線状に分かれた毛のことで、拡大して見ると星のような形をしています。ウツギは葉の表・裏、茎、花弁の外側にもこの星状毛が見られ、葉の表と裏では星状毛の形状が違うのも特徴です。

ウツギの名前と由来

ウツギの由来

ウツギの漢字表記は「空木」。茎の中が空洞になっている特徴に由来して「空ろ(うつろ)な木」と名付けられたといいます。実は茎が空洞になっている植物はたくさんあり、ウツギとは分類的に別の種類でも「ウツギ」と呼ばれているものもあります。

ウツギとウノハナの由来

また、ウツギは「卯木」とも表記されることがあります。これは、卯月(旧暦の4月)にお花を咲かせるという特徴から由来しています。「卯木の花」は「卯の花」と表現され、万葉集の頃から歌にされています。おからの別名「卯の花」は、この花姿に似ているから付けられたといいます。

学名と由来

学名は「Deutzia crenata」で、「Deutzia(ドイツィア」はオランダの植物学者Johan Detuz(ヨハン・ドイツ)から取られています。種小名の 「crenata(クレナータ)」は「円鋸歯状の」という意味で、葉っぱの特徴が由来しています。

ウツギの別名

さまざまな別名

ウツギはほかにも、「雪見草(ユキミグサ、ユキミソウ)」「水晶花(スイショウカ)」などといった別名があります。これらの別名は、白色の小さなお花が枝にたくさんつく様子から由来しています。また、初夏に咲くことから「夏雪草」という別名もあります。


美しい別名たち

ウツギは初夏の季語としてさまざまに表現され、ほかにも「潮見草」「初見草」など美しい別名があります。その中でも「垣見草(カキミグサ)」とは、ウツギが生垣や農地の境目に植える境木としてよく植えられていたことに由来する別名です。

ウツギの開花時期

ウツギの花

ウツギの花は、「雪見草」などの別名があるように、白色の小さなお花をたくさんつけるのが特徴のお花です。お花は直径1cmほどの大きさで、枝の先端に円錐状に咲きます。細長い5枚の白い花弁に、おしべの黄色のコントラストが美しいお花です。

開花時期

開花時期は5月頃から7月頃まで。旧暦の卯月とは現在の5月頃なので、春の花というよりは初夏のお花です。唱歌「夏は来ぬ」の中では「卯の花匂う」という表現がありますが、ウツギの花に香りはほとんどありません。お花が咲き誇る様子を表現したものだと言われています。

ウツギの花言葉と歌

花言葉

ウツギの花言葉は、「古風」「風情」「秘密」。どれも昔から愛されてきたウツギらしい、美しい花言葉たちです。「秘密」という花言葉は、茎の中に空洞があるという特徴が由来しているといいます。「古風」という花言葉も、ウツギの楚々とした花姿にぴったりの花言葉です。

ウツギを詠んだ歌

万葉集には、ウツギの花を詠った歌が24首あります。万葉集の中では、ウツギは5番目に多く登場するお花だといいます。どれもが「卯の花」と表現していて、そのほとんどにホトトギスが登場しています。また、新古今和歌集の中や、江戸時代には松尾芭蕉の「おくのほそ道」の中でも詠まれています。

唱歌「夏は来ぬ」

唱歌「夏は来ぬ」の歌詞は、明治中期に歌人であり国文学者の佐佐木信綱が作ったもの。「卯の花の匂う垣根にほととぎす早やも来鳴きて忍音もらす夏は来ぬ」というフレーズに馴染みのある方も多いのでは。佐佐木氏は万葉集研究の第一人者でもあり、ウツギが日本の風景に欠かせない植物であったことが窺えます。

ウツギの種類と色

ウツギ

ウツギは花弁が5枚で、葉は3〜5cmのやや長い卵型をした葉が対生につきます。縁に鋸歯と呼ばれる鋸の歯のような小さなギザギザがわずかにあるのが特徴です。お花もたくさんつき、とても丈夫なので庭植えや鉢植えでも育ちます。しかし生育が旺盛ですぐに樹形が乱れるという特徴もあります。

ヒメウツギ

ウツギよりも小さいのが特徴のヒメウツギは、樹形がコンパクトで育てやすいので庭木や鉢植えなど家庭での園芸にも人気の種類です。1m前後と背が高くならない性質で、庭木の足元に植えるのにも適しています。お花の形はウツギとよく似ていますが、おしべの形は微妙に違いがあります。

シロバナヤエウツギ

名前の通り、白い八重咲きのお花が特徴のウツギです。ウツギの変種で、日本に自生するウツギの種類の1つです。八重咲きのお花はとても華やかで、お花もよくつきます。花の色はウツギと同じく真っ白で、葉の形やつき方もウツギとほとんど同じです。

マルバウツギ

ウツギの葉はやや長い卵型をしていますが、マルバウツギはウツギより葉っぱが丸いのが特徴のウツギです。ウツギよりもややお花が小さく、開花時期は4月から5月頃とやや早いのも特徴です。筑紫空木(チクシウツギ)という別名もあります。

サラサウツギ

サラサウツギは八重咲きで、花弁の外側がピンク色をしているのが特徴のウツギです。ツカサウツギ、ヤエウツギなどという別名でも呼ばれます。華やかなお花が一気に咲くので、満開の時期は見応えがある品種です。紅白の色が混じった色合いの花を、更紗染めに例えて「サラサ」とつけることが多々あります。


ウツギの仲間と種類:アジサイ科

ウツギとつく植物はたくさん

日本にはウツギという名前がついている植物がたくさんあります。それらはたいてい茎の中が空洞になっている植物ですが、実は植物の分類でいうと、ウツギとは別の植物に分類されるものもあります。ここでは、ウツギとつく植物たちを紹介します。

バイカウツギ

梅のようなお花を咲かせるのが特徴のバイカウツギは、ウツギと同じアジサイ科ではありますが、バイカウツギ科に分類されます。ウツギとは近縁の種類と言えますが、花の構造などに違いが見られます。本州から九州まで分布し、お花はウツギよりも少し大きいのが特徴です。

ノリウツギ

ノリウツギも「ウツギ」という名前がついていますが、アジサイ科アジサイ属のお花です。見た目もウツギというよりアジサイで、ピラミッドアジサイとして人気の種類もあります。「ノリ」という名前は、ノリウツギの樹液を和紙に使う糊として利用していたことが由来しています。

ウツギの仲間と種類:アジサイ科以外

タニウツギ

タニウツギは、スイカズラ科タニウツギ属の植物です。「ウツギ」という名前がつく植物はアジサイ科とスイカズラ科に多く、どれも茎が空洞になっています。タニウツギも日本に自生する植物で、日本海側によく見られます。美しいピンク色の花が特徴で、庭木としても人気があります。

ハナゾノツクバネウツギ

ハナゾノツクバネウツギとは、スイカズラ科ツクバネウツギ属の植物で、アベリアという名前で知られるお花。樹形を整えやすく、街路樹や生垣としてよく利用される植物です。中国原産のシナツクバネウツギから品種改良された園芸種で、日本には大正に入ってきました。白色のお花を長い間たくさん咲かせるのが特徴です。

フジウツギ

フジウツギは、ブッドレアという別名でよく知られる園芸種としても人気の植物です。フジウツギ科フジウツギ属に分類されます。日本にも自生する植物で、お花の色が藤色であることが名前の由来です。園芸種としては樹形がまとまりやすいフサフジウツギが人気で、バラフライブッシュなどとも呼ばれます。

ウツギの用途:植栽

用途①:庭木

ウツギは非常に丈夫で育てやすいことから、庭木として人気の植物です。しかし成長がとても早く樹形が乱れやすいので、剪定が必要です。しかし強剪定にも強いので、樹形を自在に整えやすく扱いやすい庭木です。シンボルツリーはもちろん、鉢植えや高木の根締めなど広い用途で使えます。

用途②:境木として

ウツギは古くから、畑などの境目に植える境木としての用途もありました。樹形を整えやすく丈夫で、植える場所を選ばないという特徴からよく利用されたと考えられています。また、ウツギは枯れても腐りにくいという特徴があり、その点も境木としての用途に合っていたのかもしれません。

用途③:垣根・生け垣

平安時代には、ウツギが垣根としてよく使われていたことが分かる歌がいくつもあります。しかしこの頃の垣根は、今の樹形をしっかり整える垣根と違い、自然のままの樹形であったと考えられています。樹形を整えやすいので現在でも生け垣には向きますが、冬には落葉してしまうのが難点です。

ウツギの用途:その他

用途④:木釘の材料

ウツギは腐りにくいため、木釘の材料という用途でも重宝されました。ウツギという名も「打つ木」からきたという一説もあるといいます。ウツギの木釘は桐と相性が良く、桐の箱やタンスなどの木釘に使われていました。ウツギの木釘は非常に固く、強度も耐久性も優れているといいます。

用途⑤:楊枝


ウツギは固く粘り気があるので、楊枝の材料にも使われています。現在爪楊枝は白樺などの種類が主流ですが、かつては大阪などを中心にウツギの爪楊枝も主流でした。香りがないためクロモジなどに比べるとややランクは下がったようですが、強度があるため人気がありました。現在でも国産の楊枝として販売されています。

用途⑥:薬として

ウツギの果実や葉には利尿作用があり、生薬などにも使われています。開花期に採取した葉を乾燥させ煎じるか、秋に採取した果実を乾燥させたものを煎じて飲みます。生薬名は溲疏(そうじょ)といい、むくみ解消の効果もあります。

ウツギの育て方

栽培場所

ウツギは本来、山野や崖地などの日当たりの良い場所に自生しています。庭木としては、日当たりの良い場所もしくは明るい日陰の場所などに適しています。また本来はやや湿気のある場所を好みますが、多少乾燥する場所や痩せた土壌でも育ちます。樹形が乱れやすいので、場所に合わせた剪定が必要です。

植え付け時期

植え付けの時期は12月から3月頃が適しています。鉢植えの場合は、成長が早いので2〜3年に1回植え替えをするとよいでしょう。地植えであればほとんど水やりの必要はありません。肥料は地植え・鉢植えともに冬の時期に、株の周囲に深めに穴を掘って与えます。お花が終わった頃にもお礼肥をあげます。

ウツギの管理方法

病害虫

基本的には病害虫にも強い種類ですが、梅雨の時期などはうどんこ病が発生することがあります。風通しの良い場所に植えるか、剪定して込み合った枝を間引くなどして予防します。また、アブラムシなどがつくこともあるので、殺虫剤などで予防しておきます。

剪定時期

ウツギは花が終わった7〜8月以降に花芽ができるので、剪定は花後〜7月頃の時期が適しています。8月以降に強い剪定をすると翌年お花が減ってしまいます。この時期に樹形を整え、大きくなりすぎているようなら切り詰めます。込み合った枝を切り、風通しをよくするように剪定します。

さいごに

初心者にもおすすめ

古くから日本人に愛され、さまざまな用途に用いられたウツギ。非常に丈夫で栽培の場所も選ばずあまり手間もかからないので、初心者にもおすすめの庭木です。万葉集に詠まれたウツギの花のことを思いながら、ぜひおうちでもウツギをたのしんでみてくださいね

ウツギについて気になる方はこちらもチェック

ウツギという名前がついていても別の植物だったりと、さまざまな種類があるウツギ。ウツギの仲間や種類の中でも特に人気のあるバイカウツギやノリウツギについては、ほかにも詳しい記事があります。気になる方はこちらもチェックしてみてくださいね。