曽爾高原について知っておきたいこと
曽爾高原は奈良県東部の宇陀郡曽爾村(うだぐんそにむら)にある高原で、三重県に隣接しています。日本三百名山に数えられる倶留尊山(くろそやま)の斜面になだらかに広がるススキ野原は秋の風物詩として評判が高く、多くの観光客が訪れます。
曽爾高原の中腹には「お亀伝説」という言い伝えが残る「お亀池」があって湿原でしか見られない珍しい植物が観察できます。なだらかな高低差の地形で、遊歩道がきれいに整備されているので気軽にハイキングができるスポットです。(※記載の情報は2020年4月時点のものです)
曽爾高原とススキ
曽爾高原のススキは、昔から地元の家屋の屋根の建材に使われていましたが、時代の流れとともに瓦やトタン屋根にその出番を奪われ、使用量が減少していきました。ススキの代わりに杉などを植林する流れになりましたがせっかくのススキ野原の美しい景観が損なわれるのを残念に思い、この地域のススキを保護していくことになりました。
それからはススキ以外の植物の育成を抑えるために冬から春にかけて山焼きをしたり、遊歩道を整備したりと、地元の人の努力ですばらしい景観が守られています。
お亀池の伝説
昔、地元に住む若者が家の前で行き倒れている美女を助け、そのあと嫁にもらいましたが、嫁はことあるごとにお亀池を訪れていました。やがて夫婦に子供が生まれると嫁は「責任は果たしました」と、一人で実家へ帰ってしまいました。残された夫は子供を育てますが夜泣きが止まず困ります。ふと思い立ちお亀池に行ってみると突然嫁が現れて一度だけ子供に乳をあげました。「二度と来ないで」と言われたものの、また夜泣きが止まらないのでもう一度行ってみると嫁が怒って大蛇になり、夫に襲いかかりました。なんとか逃げ切ったのですが夫はその後すぐに亡くなってしまい、子供は無事に成長しました。
曽爾高原へのアクセス
電車、バスの場合
最寄り駅は近鉄大阪線名張駅。そこから三重交通バス「山粕西行」に乗車して「太良路」で下車。徒歩約45分で曽爾高原に着きます。バスは2〜3時間に一本なので時刻表を事前に調べてから行くことをおすすめします。ススキが見頃の10月〜11月は曽爾高原まで行けるバスがあります。
車の場合
大阪から約1時間50分です。名阪国道針ICから国道369号線を南下、県道81号線に入ってそのまま進むと曽爾村に入ります。名古屋からは約2時間40分かかります。名阪国道上野ICから国道368号線を南下、県道81号線を進みます。
駐車場は曽爾高原入り口に約150台分あって料金は普通車1日600円です。秋のシーズン中は観光客が多く駐車場が満車になることがあるので、なるべく早い時間に到着するか、公共交通機関を利用することも検討してみるといいでしょう。
曽爾高原ハイキングのすすめ
曽爾高原のハイキングコースは初心者、子供連れのファミリーにぜひおすすめしたいコースです。その理由をいくつか紹介します。
都市部からの距離
大阪や名古屋から遠すぎず近すぎず適度な距離にあって日帰りができます。子供にとってはちょっとした旅行に感じるのではないでしょうか。
コースの難易度
曽爾高原は高低差がゆるやかで遊歩道も整備されているので歩きやすく、最低限の簡単な装備で登れます。また、子供は一つのことに飽きやすいもの。登山用の服装や道具をそろえても今後続くかどうかわからないので、まずは曽爾高原のように簡単な準備で挑戦できるルートに行ってみましょう。
非日常の絶景写真が簡単に撮れる!
大自然の絶景ポイントに出会うには苦労して人里離れた秘境に歩いて進む、そういうスポットが多いですが、曽爾高原は車で行けば駐車場から歩いですぐに写真映えのする非日常の大自然が広がります。
夏の緑の草原が秋には金色銀色に姿を変えるような、春夏秋冬それぞれの魅力をカメラに納めることができます。大切な家族や子供との思い出の記録をどんどん増やしていきましょう。
曽爾高原ハイキングコースの紹介
初心者向けのハイキングコース
初心者、ファミリー向けの簡単に歩けるルートを紹介します。所要時間は約2時間35分です。バス停からスタートして歩くこと45分で青年自然の家に到着、そこから5分で曽爾高原に入ることができます。雄大な自然を眺めつつお亀池を右手にさらに登り亀山峠を目指しましょう。亀山峠は曽爾高原やお亀池が一望できる展望スポットです。ゆっくりと景色を楽しみましょう。そこからはお亀池方面へ戻ります。湿地特有の植物を観察するのもいいでしょう。
道中にはベンチが設置されている芝生のスペースがあるので休憩をしたりお弁当を食べることもできます。曽爾高原にはトイレはないので事前に済ませておきましょう。
亀山峠からは日本三百名山の一つである倶留尊山の山頂へ続く登山道があります。亀山峠から山頂までの所要時間は片道およそ1時間。曽爾高原の初心者向けの簡単なルートだけでは物足りない方は挑戦してみてはいかがですか。ただし山頂までは簡単ではありません。また、途中に料金所があり入山料が大人一人500円、子供200円かかりますのでご注意ください。
中級者、上級者向けのハイキングコース
曽爾村スタートで歩けるハイキングコースは他にもあります。所要時間約4時間35分で中級者向けの、1000メートル級の山を二つ縦走する「絶景展望登山コース」や、所要時間約3時間35分で上級者向けの、アップダウンがきつい「ぬるべの山巡りコース」などがあり、どのルートも遠くに近くに大自然を感じることができておすすめです。
曽爾高原ハイキングの際の服装
曽爾高原のハイキングコースは初心者向けではありますが、完全な普段着で登るのは控えた方が無難です。ここでは特に、登山経験の浅い子供を対象とした服装の注意点をいくつかあげていきます。
子供は飽き性なので登山への興味を持たないかもしれません。性能は良いが高価な服装をそろえても今後使わなければ無駄になります。まずは普段使いできる簡単な服装を用意しましょう。しかし、安全に関わるため雨具と登山靴は登山専門店で購入してもいいですね。
基本の服装
基本の服装はジャージ上下で大丈夫でしょう。肌着は綿100パーセントのものは避けて、ポリエステルなどの化学繊維が使われているものにしましょう。綿は着心地はいいのですが汗をかいたり雨に濡れても乾燥しにくく、体を冷やしてしまいます。
虫刺されや木の枝で怪我をしないよう、また紫外線から肌を守るためにも、できれば夏も長袖長ズボンを着用することをおすすめします。体を動かし始めると暑くなってきたり、休憩中や風が強くなると汗が冷えて寒く感じたりするので重ね着で調整できるようにします。
その他の注意点
雨具はぜひ持っていきましょう。出発時の天気がよくても山の天気は変わりやすいですし、風が強くなると防風にも使えます。普通の雨がっぱでは内側が蒸れてしまうので、きちんとした登山用の防水透湿性の素材のものを用意するのがおすすめです。
あとは帽子、サングラスの着用もお忘れなく。意外なようですが、子供の頃の方が大人になってからよりも紫外線の影響を受けやすいといわれています。スキーや他のシーンでも使えるため子供用のサングラスの購入を検討してみてはいかがでしょうか。
曽爾高原ハイキングの際の注意点
高原は市街地よりも気温が低いため、上着を一枚多く着る、念のため防寒着を持っていくなど、服装に気をつけましょう。特に冬から初春の時期の冷え込みには注意が必要です。中級者、上級者向けのルートに挑戦する人はもちろんですが初心者向けのルートも足場の良くないところがあるので歩きやすい履き慣れた靴で楽しんでください。
また、自然保護のためルートから外れたり、草木を傷つけたり持って帰ったりすることは控えましょう。見映えのする写真を撮るために立ち入り禁止のススキ野原に入る人が近年増加しています。自分だけは大丈夫と思わずマナーを守って気持ちよく楽しみましょう。
曽爾高原の四季折々のみどころ
曽爾高原は秋のススキで有名ですが秋だけではなく他の季節にもみどころがあります。春夏秋冬それぞれの魅力を紹介します。
春の山焼き
曽爾高原では毎年3月頃に枯れ草に火をつける山焼きを行います。ススキは地中深くに根を残すので、地表を焼くことで他の植物の育成を抑えてススキだけの環境を作ることができるのです。きれいな草原の景色が保たれるのは春の山焼きのおかげといえます。
山焼き当日は安全なところから見学ができます。天候などの条件により毎年行われる日程が違い、また雨天延期の場合もありますので事前に調べていくのがいいでしょう。
夏の草原
夏になると山焼きで整えられたススキの雄大な草原が目の前一面に広がります。アルプスの少女ハイジを思い起こさせるような緑の絨毯に癒されましょう。初夏はハイキングに絶好の季節ですが、木々が少なく日陰になる場所があまりないので、帽子を着用するなど熱中症対策をしましょう。
秋のススキ野原
秋といえばススキ、ススキといえば曽爾高原と言っても過言ではないほどの独特の景色を楽しめる季節です。一年で最も見応えのある、美しい風景が広がります。特に夕方、ススキの穂が夕陽に照らされ黄金色に染まる景色は圧巻です。
また日没後、200個の灯籠で遊歩道を照らす「曽爾高原山灯り」が実施される期間があり、さらなる幻想的な魅力を楽しめます。
冬の雪原
冬、特に雪の降っている時期はハイキングには不向きですが、視界をさえぎるもののない一面の白い世界は一度見てみる価値があるのではないでしょうか。秋に輝いたススキの穂が枯れ、冬の侘び寂びを感じることができるかもしれませんね。積雪のある場合は足場が悪く、転倒の危険も増えるので無茶をしないように注意しましょう。
曽爾高原ハイキングのあとのお楽しみは
曽爾高原ファームガーデン
地元でとれた食材を使うレストランや名産品を扱うお店がある施設で、特に自家製のビールやトマトを使ったピザがおすすめです。休憩やお土産の購入にどうぞ。
基本情報
【名称】曽爾高原ファームガーデン
【住所】宇陀郡曽爾村大字太良路839
【アクセス】近鉄大阪線名張駅より山粕西行バス「太良路」下車 徒歩20分
お亀の湯
曽爾高原ファームガーデンに併設した入浴施設です。お肌がしっとりする美人の湯で泉質が良く、露天風呂から見る景色も最高です。ハイキングの後の入浴で心も体も癒されてみませんか。
基本情報
【名称】曽爾高原温泉お亀の湯
【住所】奈良県宇陀郡曽爾村大字太良路830
【アクセス】近鉄大阪線名張駅より山粕西行バス「太良路」下車 徒歩20分
ハイキングだけじゃない、曽爾村周辺の観光スポット
宇陀郡曽爾村は「日本で最も美しい村」連合に加盟していて、曽爾高原の他にも自然を満喫できる見所がたくさんあります。その一部を紹介しますので曽爾高原を訪れた際にあわせて寄ってみてください。
蛍公園
蛍公園は曽爾高原の近くにある公園でホタルの生息地として知られています。6月にはゲンジボタル、7月にはヘイケボタルも見られます。シーズン中にはほたるまつりが実施され、多くの人が訪れます。
屏風岩公苑
巨大な柱状節理(マグマが冷え固まった時にできる規則正しい割れ目のある地形)の奇岩が見られるスポットで、春は山桜、秋は紅葉の名所でもあります。
曽爾高原でハイキングを楽しもう
たくさんの魅力がある曽爾高原の情報をお届けしましたがいかがでしたか。初心者、子供連れでも気軽に楽しめるハイキングスポットで、近畿圏や名古屋からでも日帰りで簡単に行きやすい場所なので、春夏秋冬それぞれの景色を見にぜひ訪れてみてください。
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近畿圏から日帰りで楽しめる自然豊かな場所は他にもあります。子供連れでも遊びやすい奈良県のスポットを紹介していますので、あわせてご覧ください。
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