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冬虫夏草とは?虫にキノコが生える?その正体と仕組みを解説!食べられる?

あなたは冬虫夏草とはどんなものかご存知ですか。「夏草」の文字から植物の一種と思われるかもしれませんが、実は「冬虫」という文字にも意味があり、冬虫夏草とは生きた昆虫に寄生する植物の事を言います。なんだかぞっとしますね、その正体や仕組みについてお話していきます。
2020年8月27日
kureko
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冬虫夏草について

冬虫夏草の意味

はじめに冬虫夏草の不思議な名前の意味をお話します。冬は虫だったのに夏には草になっていたという何とも信じがたい状態から付いたのが、冬虫夏草の名前の意味です。少しだけ謎を解き明かしますと、冬虫夏草という菌が、生きている昆虫やクモなどの幼虫に寄生し、その体を養分にしてキノコを生やしていくというものです。

日本でも森の中でこのような光景を見る事がありますが、厳密に言いますと「冬虫夏草」は特殊な蛾の幼虫のみに寄生し、他の昆虫に寄生する事は決してありません。学術的な観点からの本物の冬虫夏草の正体や仕組み、また他の虫に寄生する冬虫夏草の仲間などについて次の章から詳しくお話していきます。

冬虫夏草の基本情報

【科・属名】核菌綱ボタンタケ目バッカクキン科ノムシタケ属

【学名】Ophiocordyceps sinensis (オフィオコルディセプス・シネンシス)

【別名】中華虫草

【和名】トウチュウカソウ・シネンシストウチュウカソウ・フユムシナツクサ

冬虫夏草とコウモリガ

先の章でも少し触れましたが、冬虫夏草とは、特殊な蛾の幼虫に寄生するただ一種類の菌の名称です。また特殊な蛾とは高山に生息するコウモリガのことです。そのコウモリガの幼虫に寄生する菌が冬虫夏草菌で、代表格がシネンシストウチュウカソウ(Ophiocordyceps sinensis)と言われています。

コウモリガの幼虫の生い立ち

Photo byFree-Photos

特殊な蛾と言われるコウモリガは、学術的にはコウモリガ科の蛾であるオオコウモリガ(Hepialus armoricanus Oberthur)で、海抜3000m~4000mのヒマラヤ山系や四川省やチベットなどの寒冷高山地帯で生息しています。夏に卵を産み、卵は1ヶ月ほどで孵化し幼虫になります。幼虫は土にもぐりこみ土の中で4年かけて成虫になるはずですが、この時期を狙って冬虫夏草菌が幼虫に寄生します。

幼虫に寄生する冬虫夏草

冬虫夏草はオオコウモリガの幼虫に寄生するバッカク菌科の菌なのですが、正しくはオオコウモリガの幼虫の虫の部分との「複合体」の事を冬虫夏草と言います。「複合体」の意味するところは次の仕組みを見れば理解できます。

幼虫に寄生する仕組み

冬虫夏草は活物寄生菌といって、菌が生きている幼虫に寄生し、じわじわと養分などを吸収して幼虫の体の隅ずみまで菌糸で埋め尽くします。そして子実体(シジツタイ)を形成し、4年目の春にキノコになって幼虫の虫の部分から殻を破って生えてきますが、そのキノコと寄生された幼虫が一体となった複合体の事を称して冬虫夏草と言います。

冬虫夏草の由来

冬虫夏草の由来は中国が始まりと言われています。コウモリガは学名が Hepialus armoricanus Oberthur。中国名は「蝙蝠蛾」です。中国では冬虫夏草菌がコウモリガの幼虫に寄生して作られた子実体と、宿主である幼虫の虫の部分との複合体のみを冬虫夏草とし、その他の冬虫夏草の仲間を「虫草」と呼ぶことで厳密に区別しています。そして薬学分野ではOphiocordyceps sinensisのみを冬虫夏草と呼び、菌学分野ではそれを「シネンシストウチュウカソウ」と呼んでいます。


冬虫夏草は中国の統一王朝時代から不老長寿や輪廻転生の象徴としての漢方薬として大切に受け継がれてきました。また良い事が起こる前兆の印としても大事にされ、漢方の効能としては滋養強壮や精力増強があるとされました。泰代の始皇帝や楊貴妃も不老長寿や美容の漢方秘薬として使用したといわれています。

日本の冬虫夏草

日本での冬虫夏草は範囲が広い

冬虫夏草の核菌綱ボタンタケ目に対して日本では、子嚢菌門も含めた核菌綱ボタンタケ目としているので、シネンシストウチュウカソウ以外にも、400を超える種類があると言われています。またオオコウモリガは日本には生息していませんので、中国では厳密にオオコウモリガの幼虫にシネンシストウチュウカソウが寄生して作られた複合体の事のみを冬虫夏草と称しているのに対して日本では「昆虫やクモ類その他から生えるキノコ」全般を冬虫夏草と呼んでいます。

日本の冬虫夏草の正体は

前述のように、中国の厳密な冬虫夏草と違い、日本の冬虫夏草は、昆虫から生えるキノコの総称として使われていて、日本での寄生先の昆虫は蛾や蛾の幼虫やさなぎ、蝉や蝉の幼虫、蜂、とんぼ、蜘蛛などが主な寄生先になります。虫以外にもキノコや野生の動物の骨などに寄生する菌も見つかっています。。

ノムシタケ属やトルビエラ属の菌類全般にこの特徴がみられますが、中には虫ではなくタンポタケのように菌類から生えるものもあります。また日本の冬虫夏草の特徴である子囊菌類は酵母菌のような単細胞のもの,アオカビのような糸状菌のもの、チャワンタケなどのように,キノコの形をしたものなど約1万 5000種類ほどあります。

冬虫夏草は一番大きいもので手のひらサイズくらいと言われていますが、蝉や蛾など特定の昆虫にだけ寄生する種もあり、それぞれの有効成分や免疫作用も違う事などがわかってきています。また冬虫夏草が寄生した昆虫が、枝の上で発見されることがありますが、菌類にとっては胞子を散布する上で高所の方が都合がよいので、冬虫夏草が死ぬ間際の昆虫をあやつって、登らせているという説もあります。

日本の冬虫夏草の主な種類①

クモタケの寄生の仕組み

Photo by chidorian

クモタケは不完全菌類モニリア目の1種です。不完全菌類とは菌類を分類する上で、構造的にどの体系にも組み込むことが難しい菌類を称し、青カビやコウジカビもその仲間です。クモタケはトタテグモ(戸立て蜘蛛)に寄生して棍棒形の子実体を形成し蜘蛛の巣穴から生えてきます。ちなみにトタテグモは石垣や地下に穴を掘り、入口に扉を作ることから付けられた名前です。

オサムシダケの寄生の仕組み

オサムシダケは硬化病菌類の一種です。硬化病菌類とは多くの昆虫に感染し体の水分を奪い硬化させる菌のことで、オサムシの幼虫や,成虫に寄生し、宿主の各部分から不完全型の子実体を不揃いに伸ばし、その先端に1mmほどの白い虫ピンのような胞子をつけます。胞子はよく目立ちますが柄束の部分は黒色の針がね状であまり目立ちません。

ノムシダケの寄生の仕組み

ノムシタケは、子嚢菌門フンタカビ鋼ボタンタケ目ノムシタケ科に属し、幼虫やさなぎを含む昆虫やクモに寄生してその体内で生息し昆虫の内臓を養分にして子実体を形成し、虫の部分のあらゆる開口口から粉状の胞子をつけた細長い子実体を伸ばして胞子を飛ばします。寄生対象が種ごとに決まっていて宿主の虫は一種であっても成虫と幼虫では寄生する種が異なります。


意味不明な行動をとる宿主

寄生された虫は通常とは違った意味不明な行動をとるようになりますがこれはノムシダケが、寄生した虫の部分の菌繊維にも侵入し虫を操っていると考えられています。体から子実体を伸ばした蝉やアリなどが高い木の枝で息絶えている姿がしばしば観察されるのはノムシダケが胞子を飛ばしやすくするための仕組みだとも考えられています。

日本の冬虫夏草の主な種類②

ハナサナギダケの寄生の仕組み

ハナサナギタケは子嚢菌類バッカクキン目セミタケ科のキノコ。子嚢菌類の意味は酵母菌のような単細胞なものから糸状細胞のカビといわれる物や,アミガサタケなどのようにわりと大きめでキノコ状のもの迄を含む菌類の総称です。土の中で生息している鱗翅類(チョウや蛾など)の幼虫に寄生し,細い円柱状の子実体となって地上に伸び出てくる。白色で繭形の胞子が表面に密生している。雑木林や、山地の落葉樹林内や苔の生える岩面などに分布する。

サナギダケの寄生の仕組み

サナギタケは子嚢(しのう)菌類、バッカクキン目バッカクキン科のキノコで、ハナサナギダケ同様鱗翅目の幼虫に寄生し、棍棒状の子実体となって生えてくる。色は濃いオレンジ色で,長さ約5cm幅4mmほどになる。このサナギタケはブナアオシャチホコ蛾が大発生した時にほぼ9割以上の蛾に寄生し増えすぎた時の調整として大きな役割をすると考えられている。またサナギタケには薬としての効能成分があり人工栽培もされています。

漢方としての冬虫夏草

漢方としての有効成分

漢方としての有効成分について、中国の青海省産の分析結果では炭水化物、脂肪、たんぱく質、ビタミンB12、多糖類、抗菌の有効成分として、コルジセピン、エルゴステロール、コレステロール。特徴的な成分として、虫草酸(cordicepic acid)の別名を持つD-マンニトールなどが有効成分として報告されています。また薬学の研究機関ではアミノ酸、ミネラル、核酸、コルジセプス酸、ビタミンCなどの有効成分も確認されています。

有効成分の効能

冬虫夏草の有効成分としての役割は鎮静剤や鎮咳薬、また移植手術後に免疫能の増強として用いられたり、病後の衰弱や肺結核の改善。他にも抗老化作用や性機能の調節回復、疲労回復、細胞性免疫の向上や、B型肝炎の患者の肝機能の向上など、その他にも専門分野で漢方薬の効能が確認されています。

抗がん作用は?

現時点では冬虫夏草からは抗がん成分はまだ見つかっておりません。ですが、冬虫夏草の種類は多く、全てに抗がん作用が無いという事ではないようです。最近の研究ではただ一つサナギタケの冬虫夏草から抗がん成分が見つかっていますので今後の研究に希望が持てそうです。

冬虫夏草の食べ方と味

中華料理としての食べ方


中国では宿主としての虫の部分をつけたままの冬虫夏草を採集し乾燥させ、漢方薬や、薬膳食材として大事に扱われてきました。例えば四川料理での食べ方は、アヒルの腹にネギやショウガと一緒に湯で戻した乾燥冬虫夏草を詰め、紹興酒などでゆっくり時間をかけて煮込んだスープ虫草鴨子(チョンツァオヤーズ)が有名です。またスッポンや雄牛の生殖器などと一緒に煮込んだ食べ方もよく知られています。

冬虫夏草の味は

他にも冬虫夏草の食べ方は色々あり、韓国では、亀や冬虫夏草などを食材にした食べ方で八卦湯(パルガタン)というスープがあります。しかし、冬虫夏草はじっくりと煮込んでも、それほど柔らかくはならず、又味も、冬虫夏草としては味らしい味は特に感じにくいということです。とはいっても四川省やチベットの深山で採れた本家本元の冬虫夏草の食べ方は人気が高く現在でも薬膳料理として多用されています。

サプリメントやお酒

冬虫夏草は優れた効能はあるものの食材としての味がほとんどないという事で食べ方で味わうというより、健康のためのサプリメントとしての需要の方が一般的になっているようです。薬酒としても市販されていますが、本物の冬虫夏草はグラム単位で値がつけられるほど高値で取引されることからしばしば偽物も出回ってしまうという問題も起きているようです。

まとめ

冬虫夏草菌類はいまだに多くの謎に包まれたきのこで、冬虫夏草の、虫の部分である宿主は感染した時はどのような意識なのかとか、寄生の仕組みや、菌が虫にとどめを刺す技やタイミングなど殆ど解き明かされていません。セミタケに感染したセミが今にも動き出しそうな姿で死んでいたりする様子からしても、菌類が虫の部分に繁殖する時と昆虫の死、キノコの発生のそれぞれの時間が、どちらが先で、どちらが後なのかまったく分かっていません。

感染した昆虫たちの意味不明な死に方しても謎のベールに包まれたキノコですが、ブナアオシャチホコという種の蛾がしばしば大発生し、ブナの木が枯れる心配にさらされると、サナギタケが蛾の幼虫に感染し、その危機を救う役割をしていることが報告されています。これは特定の昆虫だけが増えすぎると、菌類が生態系のバランスをコントロールする役目を担っていると考えられています。このような事からも自然界の神秘さを改めて感じさせられます。

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下記の植物も特殊な虫との関りが深く、生活の中でも役に立つ植物です。興味のある方はぜひどうぞ!