バラについて
薔薇(バラ)は、学名「Rosa(ローザ)」、バラ科バラ属、北半球の亜熱帯から熱帯地域が原産です。別名「長春花(ちょうしゅんか)」、「月季花(げっきか)」といいます。世界中で最も愛される花といっても良い花で、栽培育種されている種類は交配種を含め多種に渡っています。大きく別けると原種といわれるもの、株立ちのもの、半ツル性とツル性など4種類です。地植えにしても鉢植えでも美しい花と香りも楽しめるバラは花の女王とも形容されています。
バラの種類
バラの花の用途は広く、花材として一般的なものは株立ち性のもので、大輪系のハイブリッドティー、中輪咲き系で房咲きのフロリバンダ、中間種系とされるグランディフローラ、ツルバラ系、小輪咲きのミニチュアローズ系などの種類があります。バラの花型や種類も多彩で、一重咲き、半八重咲き、八重咲きとあります。
バラの栽培
バラが栽培されていたという起源は、紀元前12世紀の頃古代ペルシャで栽培が始まっていたとされています。爾来、紀元前6世紀に至ってギリシャ、古代ローマにおいて、鑑賞用だけでなく、薬用や香料の原料として盛んにバラ栽培がされていたという記録が残されています。バラについては、クレオパトラやローマ皇帝ネロ、ナポレオン妃ジョセフィーヌがこよなくバラを愛したという逸話は有名です。
バラ栽培の変遷
バラの栽培は古来から面々と続けられていましたが、18世紀に入ると栽培育種が盛んになり、フランスの「ジャン=バティスト・ギヨ・フィス」という育種家が、中国原種のバラ「ロサ・キネンシス(和名:コウシンバラ)」を基にして作られた香りの高い「ラ・フランス」が発表されましたが、それを機にラ・フランス以前の育種バラを”オールドローズ”、以降のバラを”モダンローズ”と区別されています。現在まで改良や交配などによってバラの種類は約2万種以上とされています。
日本でのバラ栽培
日本では万葉集の記述に”道のへの茨(宇万良:うまら)の末(うれ)に延(は)ほ豆のからまる君をはかれか行かむ”がありますが、「宇万良」は野茨の古名で「和名抄」に「薔薇(しょうび)、和名、無波良乃美、薔薇子(しょうびし)也」と記されていて、ノイバラを指しています。江戸時代まで野バラなどが園芸品種として栽培されていましたが、江戸時代後期に西洋バラが渡来し、以降現在まで日本でも多種のバラが育種栽培がされています。鉢植えでも広く流通されています。
バラ苗の植え方
バラの育て方の基本として水捌けの良い土壌を好みますので、植え込む用土は市販のバラ用園芸培養土に元肥を混ぜ合わせて使用するのが一番手っ取り早いやり方です。
バラ苗の選び方
バラ苗には秋に接木をした新苗と株苗(大苗)が有ります。一般にはある程度育てられた株苗が良く、花も早く見ることができます。バラ苗の種類も木立系、ミニ咲き系、ツル系など数種ありますので、バラを育てたい場所に合ったものを選びましょう。バラ苗には病害の兆候(ちょうこう)がないか、葉や茎に異変がなく艶があってきれいか、茎は太くしっかりしているかなどを良く確認したものを選ぶ様にしましょう。園芸店のスタッフに質問をする事も大切です。
バラの育て方
バラは育てる場所によって種類も植え方も育て方が色々です。ベランダやテラスなどでは木立性やミニ咲きを鉢植えにして育てます。地植えでの育て方では、木立性のバラは日光が良く当り、また風通しの良い場所が良く、ツル性バラの育て方は、トレリスやフェンスに絡ませてみたり、アーチ型支柱に這わせてみるのもバラの楽しみ方のひとつです。
バラの鉢植えでは
バラの鉢植えでの育て方では少し大ぶりの懸崖(けんがい)鉢か菊鉢を用意します。新苗は安価ですが花芽を持つまで2年ほど要しますので、花を直ぐに見たければ少々値が高いのですが、育て安い株苗(大苗)を植えつけると良いでしょう。植え付けの際は、根回りの土はなるべく落さない様にして元肥を施した用土に植え込み、日当たりが良く風通しも良い箇所での育て方がベストです。
バラの管理
バラの育て方には、地植えでも鉢植えにしても、きれいな花を咲かせるには管理の手間も惜しまなければなりません。バラの管理で重要なことは、水の与え方と元肥、追肥、お礼肥えなど配合肥料の与え方、そして剪定です。
バラの水やり
バラは湿気を嫌いますので、水をいつも多めに与え過ぎると根腐れを起こしますが、乾燥に強いといっても根にまったく水分が無くなり乾いた状態にしてしまうと枯死します。水捌けの良い用土で、土の表面が乾いていたらたっぷりと与える様にします。日中よりは朝か夕方に行う与え方が良いでしょう。
バラの剪定
バラの剪定は良い花芽をたくさん付かせることと、病害虫を防ぐために混み合った枝や枯れ枝などの整理をするために必要な作業です。剪定する時期としては年2回行います。12~2月の冬の剪定と、8月下旬~9月中旬に行う夏剪定があります。冬剪定は、不要な枝の整理をします。夏の剪定は、四季咲きバラが秋にもたくさんの花芽を付かせるためと樹形を整えるために行います。株の3分の1を切り取りますが、冬剪定の様な強目の剪定はしません。鉢植えも同様です。
ツルバラの剪定
ツルバラは一季咲きと四季咲きがあります。一季咲きは花後に古い枝などの整理のみを行い、冬剪定では花芽の付かない細い枝などの整理を行い、四季咲きは木立性と同じ時期と手順で、混み合った枝や細く弱々しい枝を切り取ります。
バラの植え替え
地植えでは、何年も同じ場所での育て方をしていると土壌に肥料分が残留して肥料過多になってしまいます。年に一度程度株を傷めない様に周囲の土を掘り取り、新しい用土に入れ替えると良いでしょう。鉢植えの育て方では、年に1回休眠に入る前に元肥を施した新しい用土に植え替えます。株の大きさに応じて一回り大き目の鉢に変えます。
バラの病害虫
バラは湿気が多かったり、風通しが悪かったりすると病害虫が発生します。植え込む際には株の周りを空けることと、混み合った枝などを剪定時期に整理しておきましょう。梅雨時では、雨が地面の土などを跳ね上げて葉に付くと黒点病など病気の発生に繋がりますから、株元にワラやマルチング用材などを敷きつめて予防することが必要です。
害虫予防
5~7月頃にはアブラムシやカイガラムシなどが発生しやすくなりますから注意が必要です。害虫の予防には、株元に浸透性殺虫剤をばら撒きしておくと良いでしょう。病害虫とも発見したらなるべく早く薬剤の散布や病害の葉茎などを切り取り被害の広がりを防ぐ対応が大切です。
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肥料と堆肥の違い
堆肥とは、植物を植栽して元気にに生育させるための土作りをする大切な役割をするもので肥料(元肥)とは違います。堆肥は肥料の要素となる微量成分を含んでいるのですが、法令として定められている肥料成分の含有量は満たされていません。どんなに完熟した堆肥を肥料として使用しても植物は生育に必要な有効な肥料としては取り込めません。ですが、堆肥を土中に混ぜ込むことにより有機物質が微生物などによって分解醸成されて質の良い土壌を作り出し、植物は与えられた肥料の栄養分を吸収しやすくなって生育を促すのです。
肥料とは!
それでは、堆肥に相反して肥料とは、植物を丈夫に生育させる為に直接的に働かせる栄養素のことをいいます。植物が生長していく為には、活発な光合成が行われることが重要ですが、しっかりした生育を促す為には17種類の栄養成分が必要となりますが、その内で最も重要な栄養素となるものが、「チッソ:N」、「リン酸:P」、「カリウム:K」という肥料の三要素と呼ばれるものです。これに、石灰(Ca)、苦土(Ma)、マンガン(Mn)、ケイ酸(Si)、ホウ素(B)が配合されたもので一定の含有量が満たされているものが農林水産省の肥料取締法によって規定されています。
肥料の役割
その配合された肥料の役割としては、チッソは葉や茎を生長させる働きをし「葉肥え」と呼ばれ、リン酸は花や実の付き方を良くするもので「実肥え」、カリウムは根の発育を促す役目をする「根肥え」と呼ばれます。
有機質肥料と化成肥料の違い
肥料といわれるものには大別して二つの種類が挙げられます。自然界に存在する植物性や、鶏糞や骨粉、貝の殻などの動物性のものを原料とする「有機質肥料」と、科学物質を原料として科学的に合成配合されて作られた「化成肥料(無機質肥料)」とが有ります。
有機質肥料及び科学肥料の特徴
有機質肥料で良く知られているのが、菜種を原料とする「油粕」です。有機質肥料は、土壌中にある微生物の繁殖を促すことにより土壌の改善にも効果があり、植物へはゆっくりと長い時間肥料効果を持続させる「緩効性肥料」と呼ばれます。科学性配合肥料の場合は、有機物がないことから土壌の緩衝効果はありませんが、配合された成分比率の量が明確に分かりますから植物によって与える量の調節ができ、施肥後にすぐ効果が期待できることから「速効性肥料」といいます。
肥料と活力剤の違い
肥料と活力剤とはまったくの別物で、活力剤は植物の生長に必要とされる規定された肥料の成分は含まれておりませんが、肥料の三要素であるチッソ、リン酸、カリウムなどを一定のレベルより以下に落とし、ビタミン、アミノ酸などの栄養素を配合しているものです。鉢植えには特に有効です。
活力剤の役割
人間に例えれば、健康補助食品のサプリメント的要素のものと考えて下さい。肥料を与えているのに弱って元気がない様に見える時に補助的な与え方をするものです。肥料の吸収を助けたり、光合成を活発化させたりする役割をします。活力剤には様々なものが市販されていますので、植物の種類などによって選ぶことも大切です。
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バラは肥料食い!
バラを丈夫に育て、よりきれいな花をいっぱい咲かせるために他の植物に比べて比較的多い施肥が必要ですので「肥料食い」と呼ばれています。植え付けや植え替えを行う際には十分な施肥(元肥)や追肥が必要です。冬季と気温の高い夏場を除いて月に1度を目安として有機質の緩効性配合肥料を株の大きさに応じた与え方をします。鉢植えは液体肥料も有効で、目安は月に3回程度希釈した液肥を水やり時に与えると良いでしょう。肥料を与えているのに少々元気がないと感じたら活力剤を用法によって与えると効果があります。適切な施肥はバラにとって病気にも強く丈夫にさせます。
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バラの肥料・与える時期
バラに限りませんが、植物には適切な量と、施肥する適切な時期があります。量や時期を誤ると却ってマイナス面となり、却って弱らせてしまう原因ともなります。バラは特に敏感な植物ですので注意をしましょう。冬季は休眠状態にありますが、年間を通して土中の栄養分を失わせない為に、2月頃には土中の温度が上がり始める頃には根も活動をし始めますので、元肥(寒肥)を与えることによって、土中の微生物を活発化させたり、また、株回りの土壌を掘り返すことによって、根に必要な空気を取り込みやすくさせ、病気などに対して抵抗力を付けさせます。
バラの肥料の与え方
基本的なバラへの肥料の与え方としては、元肥、寒肥、追肥と大きく別けて三つの与え方があります。鉢植えの場合は花芽が付き、蕾が膨らみ始めたら肥料はストップします。四季咲き系は5月と10月頃が花時ですから、この時期と冬季を除いて固形の緩効性肥料を1ヶ月に1度鉢の縁に適量を置きます。液肥の与え方は上記の時期を除いて10日に1度毎に与えます。
元肥のやり方!
元肥はバラを植え付ける際に与えておきます。元肥を植え付けの前の用土に混ぜ込んでおく事によって、土中の微生物を活発化させて土壌の改良に役立つのです。元肥は基本として有機質の緩効性肥料を使用します。
寒肥のやり方!
冬の間は休眠していますが、次の年にも活発な生育を促すための栄養素が必要です。その為に12月下旬頃から2月上旬の間に寒肥(元肥)を施します。地植えの場合は、株の大きさに応じて基部から20~30cmほど離した箇所に固形の有機質肥料を適量施しマルチングをしておくと良いでしょう。
追肥のやり方!
バラは夏の剪定(8月下旬~9月上旬)をする約7~10日前に施肥します。一期咲きのバラには与える必要はありませんが、四季咲きのバラが秋にもしっかり花を咲かせるために施すやり方です。この場合のやり方は、即効性の化成肥料(含有量比率10:10:10)を適量施肥します。多く与え過ぎると冬季時期に休眠状態に入れないことがありますので分量に注意しましょう。
お礼肥のやり方!
春に咲いた1番花の後(6月頃)の与え方がお礼肥えです。バラが花を咲かせた後の疲れた株に養分を補給するためのやり方です。追肥と同様一期咲きには必要ありません。バラが次の花をきれいに咲かせる為に即効性の化成配合肥料を与えます。鉢植えの場合は液体肥料を通常より薄く希釈したものを水やりの時に与えます。シュート(若い枝)の発生も促すやり方ですが、バラの樹姿が見苦しい場合は根元から切り取ると良いでしょう。
バラの肥料・注意点!
バラの肥料のやり方には注意が必要です。肥料過多は肥料焼けという症状を起こし、却って病気の発生に繋がります。配合肥料はチッソ、リン酸、カリの三要素が基となっていると前述しましたが、チッソ(葉肥)の割合が多すぎると葉が繁り過ぎ、茎も間延びしてしまいます。リン酸(実肥)が過多になると株そのものの生育が減退し、葉が落ちやすくなります。カリウム(根肥)の割合が多すぎると、やはり株の生育に悪影響を及ぼし、花の咲き方も奇形が現れたりします。肥料の成分表を良く確認して等量に配合されているものが無難です。
まとめ
バラを育てるのは手間が掛かり、病害虫にも敏感ではないかという概念がありますが、バラは意外と丈夫で生育旺盛な植物です。地植えでも鉢植えでも楽しめます。「肥料食い」とも称されますが、野菜や花物などを育てるのと同様に、バラの生育には欠かせない肥料の与え方など、適切な量や時期などの用法と配合比率などを的確に判断した与え方をすれば良いのです。
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バラについては、いろいろな参考文献がありますが、手っ取り早くバラの情報を知りたい方は、「暮らし~の」のWebマガジンでもバラの詳しい内容が調べられますので、ぜひご覧になってみて下さい。
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