スズキ純正 Vストローム1000XT ABS / Vストローム1000 ABS対応ローシート イエロー 45100-31J70-BGR
Vストローム650と1000を比較:はじめに
スズキのVストロームシリーズは250、650、1000のラインアップがあり、いずれもツーリングでの扱いやすさに定評があります。その中でも、650と1000は比較されやすく、どちらをツーリングの相棒として選ぶべきか悩むバイク乗りは多いはず。ここではVストロームの650と1000のスペックを比較し、数少ない欠点も見出していきますね。
Vストロームシリーズはアドベンチャーツアラー?
Vストロームシリーズはアドベンチャーツアラーと呼ばれることが多いものの、新発売当初(650は2003年、1000は2005年)はアルプスローダーと呼ばれていました。当時でいえば、ホンダのバラデロ、ヤマハのTDM、カワサキのヴェルシスなどと同じカテゴリーであり、ヨーロッパでの需要を満たすために誕生したバイクです。しかし、2019年の現行モデルはアスファルトメインのバイクであるにもかかわらず、オフロードイメージが独り歩きしている印象を受けます。
Vストロームシリーズはアスファルトメイン
Vストロームシリーズは未舗装路の走行を想定したバイクではありません。アスファルトメインでツーリングし、予期せぬ未舗装路や路面が荒れた道路でも快適に走行できるバイクだといっていいですね。その証拠に、Vストロームシリーズのステップは、ダートで泥が付着したブーツでは滑りやすいゴム張りタイプ。スズキが考えるアドベンチャーとは「もう少し足を延ばしてみよう」という冒険心を指しています。
Vストローム650と1000を比較:車体サイズ
【車体サイズでVストロームの650と1000を比較】
Vストローム | |||
650 | 1000 | 250ABS | |
全長 mm |
2,275 | 2,280 | 2,150 |
全幅 mm |
835 (910) |
930 | 880 |
全高 mm |
1,405 | 1,470 | 1,295 |
※()内はXTの数値
※2019年10月2日現在のスペック
では本題!Vストロームの650と1000を比較します。Vストロームの650と1000の車体サイズを比較すると、どちらも大柄なのがわかりますが、注目すべきは全幅です。650ではSTD(キャストホイールの通常モデル)とXTとでも全幅が大きく違います。これはナックルガードの装着の有無で生じた差。一般的なロードスポーツと比較すると、どちらもハンドル幅はかなり広めです。オフロードバイクに近いハンドル幅は左右のバランスが取りやすいといえます。
大柄な車体サイズは欠点か?
Vストロームシリーズはツーリングで快適な大きさであるものの、広いハンドル幅は好みがわかれます。体格によっては腕を動かせる範囲が少なくなり、積極的なボディアクションでのマシンコントロールが比較的にしにくくなるからです。しかも、ハンドルを短いものに交換すると、車検を通せなくなる可能性があります。ハンドルを交換するなら±20mm以内にとどめなければなりません。それ以上の変更なら、構造変更の申請が必要です。
Vストローム650と1000を比較:足つき性
【車体サイズでVストローム650と1000を比較】
Vストローム | |||
650 | 1000 | 250ABS | |
シート高 mm |
835 | 850 | 800 |
車両重量 kg |
212 (215) |
232 (233) |
189 |
※()内はXTの数値
※2019年10月2日現在のスペック
Vストロームの650と1000の足つき性を比較すると、650がやや有利だといえます。シート高が15mm、車両重量で18~20kgの差があるからです。Vストロームの650と1000の車体サイズはシート前方が細いので、足つき性は数値ほど悪くありませんが、小柄なライダーなら厳しさを感じるといえます。大柄なライダーなら窮屈感がありませんし、足つき性も自然です。
足つき性の悪さは欠点!
スズキ純正 Vストローム1000XT ABS / Vストローム1000 ABS対応ローシート イエロー 45100-31J70-BGR
小柄なライダーに限定すると、シート高が835~850mmという足つき性は欠点になります。平地での足つき性は212~233kgという車両重量をなんとかできても、道路の左端は雨水を側道へ流すために下がっているので、公道を走ると足つき性がさらに悪化することが多いですね。しかし、純正オプションのローシートに換装すれば、650と1000いずれも815mmまでシート高を落とし、足つき性を改善できます。ローシートに換装するときは、ハンドル位置の変更も検討しましょう。
Vストローム650と1000を比較:エンジン
【Vストローム650と1000のエンジンを比較】
Vストローム | |||
650 | 1000 | 250 | |
最高出力時 km/h(6速) |
186.9 〈8,800〉 |
213.5 〈8,000〉 |
107.9 〈8,000〉 |
最大トルク時 km/h(6速) |
138.1 〈6,500〉 |
106.7 〈4,000〉 |
87.6 〈6,500〉 |
時速100キロ rpm(6速) |
4,707 (72%) |
3,748 (94%) |
7,417 (114%) |
時速60キロ rpm(6速) |
2,824 (43%) |
2,249 (56%) |
4,450 (68%) |
※スペックシートから算出した理論値
※〈〉内はエンジン回転数
※()内は最大トルク発生回転数に対する割合
※2019年10月2日現在のスペック
Vストロームの650と1000のエンジンスペックを比較すると、キャラクターに大きな違いがあるといえます。最高出力を発生させるエンジン回転数での速度(6速)は、どちらも排気量相応な速さです。しかし、時速100キロでのエンジン回転数や、最大トルクを発生させるエンジン回転数に対する割合を比較すると、650は操る楽しさを感じられるオーソドックスなエンジン、1000は時速100キロで最大トルクに達する超トルキーなエンジンだといえます。
エンジン特性に欠点はあるか?
Vストロームの650と1000のエンジンで欠点を挙げるとするならば、Vツインらしさに期待できないというところだといえます。ショートストロークの90度Vツインは鼓動感がなく、どちらも理論上の振動はなし!スムーズに回転を上昇させるタイプのエンジンです。振動が少ないエンジンはツーリングで快適なものの、メンテナンス性では270度クランクのパラレルツインエンジンのほうが比較的に有利ですね。
Vストローム650と1000を比較:サスペンション
【Vストローム650と1000のサスペンション調整可能項目】
調整項目 | Vストローム | |||
650 | 1000 | 250 | ||
フロント | プリロード | × | 〇 | × |
伸び側減衰力 | × | 〇 | × | |
圧側減衰力 | × | 〇 | × | |
リヤ | プリロード | 〇 | 〇 | 〇 |
伸び側減衰力 | 〇 | 〇 | × | |
圧側減衰力 | × | × | × |
※2019年10月2日現在のスペック
Vストロームの650と1000の足回りを比較すると、サスペンションの調整項目に違いがあります。650と1000の価格差の半分はここにあるといっても過言ではありません。650のフロントサスペンションは調整項目がありませんが、1000はフルアジャスタブルと豪華!しかし、ダイヤルを回して調整するリヤの油圧式プリロードアジャスターは650と1000のどちらにも装備されています。積載番長の名に相応しい装備ですね。
足回りに欠点はあるか?
Vストロームの650と1000のサスペンションはホイールトラベル量が他のロードスポーツバイクと比較して長く、ツーリングでは申し分ない性能を発揮します。しかし、欲を言えば650も含めて前後フルアジャスタブルサスペンションであってほしかったですね。特に、リヤの圧側減衰力を調節できないことは残念。650と1000の足回りを共通化し、後述するトラクションコントロールシステムで差別化したほうが選択時の比較がしやすかったといえます。
Vストローム650と1000を比較:TC
Vストロームの650と1000にはトラクションコントロールシステムが導入されています。トラクションコントロールシステムとは、アクセル開度と路面のグリップにミスマッチが生じた時、ホイールスピンやスリップを防ぐためにエンジン回転数を制御するシステムのこと。Vストロームの650と1000では、ドライ&スポーツで有効な感度レベルが低いモード1、ウェットや凍結で有効な感度が高いモード2を選択できるだけでなく、トラクションコントロールシステムをオフすることもできます。
トラクションコントロールシステムに欠点はあるか?
トラクションコントロールシステムは安全性を高めるための装備として有効なものの、電子制御システムの介入を嫌うバイク乗りにとっては欠点です。Vストロームの650と1000のトラクションコントロールシステムは停止できるものの、価格が上乗せされているのは事実。低速走行時のエンジン回転数を補うローRPMアシスト、ワンプッシュでエンジンをスタートできるイージースタートシステムなどはユーザーの評価が高いものの、トラクションコントロールシステムの効果を実感したユーザーは少ないですね。
Vストローム650と1000を比較:フルパニア
Vストロームの650と1000は純正オプションでフルパニア化できます。Vストロームのデザインに合わせたサイズですので、全体のまとまりがいいですね。特に、側面の張り出し寸法が絶妙で、見た目と積載性のバランスがいいと好評!社外品のパニアケースでフルパニア化し、容量を増やすことも可能です。アルミ製のボックスタイプはアドベンチャーツアラーらしさを演出できるので人気があります。また、樹脂製のサイド&トップケースの愛用者も多いですね。
フルパニアの欠点はある?
フルパニアを追加するとアドベンチャーツアラーっぽさが増しますが、フルパニアは使い方を限定されるのが欠点だといえます。特に、バイク乗り入れ禁止のキャンプ場では使いづらいですね。フルパニアを外してテントサイトに荷物を持ち込むのか?パニアケースの中身だけを持ち込むのか?そこが悩みどころ。行き当たりばったりのアドベンチャー感が高いキャンプツーリングをしていると、バイク乗り入れ禁止のキャンプ場を利用せざるをえないことは多いですよ。
フルパニアの存在が大きすぎるのも欠点
Vストロームの650と1000はフルパニアへの荷物の積載が前提になっているのが欠点です。標準装備のキャリアを外し、シートバッグを積載しやすいリヤキャリアに換装したいと思うユーザーもチラホラ。しかし、標準装備以外のリヤキャリアは純正・社外とも存在しません。しかも、標準装備のキャリアを外すとグラブバーを失うので、車検を通せなくなる可能性もがります。シートバッグ愛用者は工夫を強いられますが、そこはツーリングライダーとしての腕の見せ所ですね。
Vストローム650と1000を比較:中古車
【Vストローム650と1000の中古車価格帯】
Vストローム | |||
650 | 1000 | 250 | |
2017~2019 (約~万円) |
54~115 | 83~122 | 40~58 |
旧型 (約~万円) |
37~61 | 62~113 | ー |
初期型 (約~万円) |
37~78 | 37~77 | ー |
※2019年10月2日現在の中古車価格
Vストロームの650と1000の中古車価格を比較すると、新車価格に引っ張られて650のほうが1000よりも安いといえます。どちらも、2017から2019年の現行モデルは走行距離相応ですが、旧モデルはお買い得感が高いですね。また、フルパニアなどの追加パーツがてんこ盛り状態の中古車は価格が比較的に高いものの、お買い得感があります。なお、Vストロームシリーズ一番人気の250の中古車価格も走行距離走行です。
中古車はお買い得?
Vストロームの650と1000の中古車価格で比較的にお買い得感が高いのは旧モデルの650だといえます。旧モデルの650のフロントフォークにはプリロード調整機構が標準装備されているからです。旧モデルの650と1000にはトラクションコントロールシステムが搭載されていないものの、650はキャラクターと合致したデザイン、1000は2019年現行モデルに近いデザインになっています。
Vストローム650と1000を比較:考察
Vストロームの650と1000はエンジン特性、足回り、価格、この3点を重視して比較するのがおすすめです。ツーリングでの快適さは甲乙つけがたい性能ですが、650には操る楽しさが残されており、1000は圧倒的なトルク感が魅力的。足回りは1000が断然おすすめですが、650のフロントフォークをフルアジャスタブル化するカスタムパーツも流通しています。また、46~50万円の価格差で650をフルパニア化するのもありですね。
Vストロームシリーズの欠点
Vストロームの650と1000の欠点らしいものを挙げるとするならば、フルパニアにこだわった積載性だといえます。実際、荷物の積載量はフルパニアよりもシートバッグのほうが多く、パッキングしやすいのもシートバッグ。サイドケース+シートバッグでキャンプツーリングを楽しむVストロームユーザーは思いのほか多いですね。タンデムでのキャンプツーリングも快適な足回りであるだけに、積載性に柔軟さが少ないのはVストロームシリーズの欠点だといえます。
Vストローム650と1000を比較:まとめ
Vストロームの650と1000を徹底比較しました。スズキのバイクは使用目的にマッチすると最強バイクになるのが特徴です。Vストロームの650と1000はツーリングを快適にし、疲労を軽減するスペックでてんこ盛り、つまり、ツーリングでは最強バイクだといっていいですね。しかし、日本人男性の平均体型でも大柄に感じる車体サイズや足つき性は欠点。ローシートに換装し、ツーリング先ので路地裏散策でも快適な仕様にカスタムしたいところです。
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