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ウロコフネタマガイは金属の鎧を被った貝?米軍の装備にも生かされる防御力を解説!

「世界で唯一」の物って見てみたいですよね。今回レポートするのは世界で唯一「金属の体を持った貝」ウロコフネタマガイです。まだ発見されて間もない貝ですので細かい情報はこれからさらに出てくるでしょうが、今回はウロコフネタマガイの生態など分かる範囲で紹介していきます。
2020年8月27日
kuma10
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2001年に発見されたウロコフネタマガイ

出典: https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/love-journey/cabinet/shinkai1/sukerifutto1.jpg

「ウロコフネタマガイという錆びる貝がいる」と聞いてもなかなかピンと来られる方は少ないかと思います。それもそのはずでこの貝が発見されたのは2001年のこと。インド洋の深海、熱噴出孔のある「かいれいフィールド」という場所でアメリカの海洋研究チームによって発見されました。その後日本のチームや中国のチームなどが調査及び採取を行い、日本チームは2006年には184個体の採取・飼育に成功しています。ただしどの個体も長生きはしていません。

ウロコフネタマガイの生息域

インド洋の深海

インド洋の底に南極プレートとアメリカプレート、オーストラリアプレートの3つのプレートが重なる「ロドリゲスセグメント(三重点)」と呼ばれる場所があります。そこから北に22㎞行った場所に日本の海洋研究開発機構のチームが2000年に深海探査艇「かいこう」で熱噴出孔(チムニー)を見つけました。一般に日本の調査船「かいれい」の名を取って「かいれいフィールド」と呼ばれていますが、そこで2001年にアメリカチームがウロコフネタマガイを最初に発見しました。

硫化鉄の噴出孔

熱噴出孔(チムニー)からは真っ黒な煙が常に海中に放出され、その中には硫化鉄・硫黄・重金属などの猛毒が含まれています。ウロコフネタマガイはその環境に慣れ過ぎているためか、いまだに「熱噴出孔以外の場所では」個体が確認されていません。さまざまな貝やエビ、カニ類が熱噴出孔の周りに集まる中で、その一番下層で錆びることなく生活しています。

ウロコフネタマガイの特徴

生息場所が特殊

ウロコフネタマガイの第一の特徴はやはりその生息地域にあります。前項で「かいれいフィールド」を発見場所として紹介しましたが、その他ではかいれいフィールドの少し北にあるソリティアフィールド(日本チームが発見)と、ロドリゲスセグメントから南西に行ったドラゴンフィールド(中国チームが発見)の3地点でしかウロコフネタマガイは確認されていません。熱噴出孔が新たに発見されればまたそこでの個体が発見されるかも知れませんね。

鎧のような足(フット)が特徴的

ウロコフネタマガイの一番の特徴は何と言っても巻貝からはみだしている足の造りです。巻貝には必ずある貝蓋が無く、敵からの攻撃を受けた時にウロコフネタマガイは防御ができません。そこで外にはみ出した足を金属のウロコ状に変化させ、ぎゅっと閉じて外敵からの攻撃に耐えます。その姿はまるで精密な鎧(ヨロイ)の殻ようです。金属製に見えるそのウロコの鎧は実際に金属化しており、磁石を付けるとくっ付きます。

ウロコフネタマガイの別名

鱗足「スケーリーフット」


ウロコフネタマガイは別名を「スケーリーフット」と言います。スケーリー、鱗(ウロコ)ですね。鱗の足を持つ生き物の意味ですね。しかしそのウロコの一枚一枚が金属でできていて、まるで兜(カブト)か鎧(よろい)の一部のようになっています。

グロいほど美しい

スケーリーフットと呼ばれるウロコフネタマガイの「スケーリー」のなんと美しいことか。深海のチムニーから噴出される重金属や硫化鉄などから体を守るうちにそれを自身が纏ってしまったスケーリーフット。真っ黒な貝殻とともにその姿は異様な鎧状の形に変化しました。大きさは最大のもので殻の直径が45mm程度。大型のタニシほどと思って良いでしょう。

ウロコフネタマガイの種類

スケーリーフットは1種類

スケーリーフットは貝殻の色違いや、スケーリーの色違いなど何種類かの種が存在しているようにみえます。事実最初に発見された、貝殻もスケーリーも真っ黒な個体とは似ても似つかない白色の貝殻をもつウロコフネタマガイが発見されました。しかしDNAレベルで調査してみると、貝殻の色が違うものも、すべて同じものであると判明しました。住環境が貝殻や足の色や造りに影響を及ぼしていたんですね。

発見場所違いで3種類

発見されたスケーリーフットはすべて同じ種であると説明させていただきましたが、実は採取場所や発見場所、貝殻の色などで呼び名は変わります。現在呼び方は3種類。最初に発見されたスケーリーフットを「黒スケーリーフット(クロスケ)」、次に発見されたスケーリーフットを「白スケーリーフット(シロスケ)」、最後に発見されたものを「ドラゴンスケーリーフット(ドラスケ)」と呼びます。ドラゴンは中国チームが見つけたチムニーをドラゴンフィールドと呼ぶところから名づけられました。

米軍も注目のウロコフネタマガイ

米軍の装備に採用?

海中に噴出される硫化鉄から自身の体に硫化鉄を取り込み、それを防御用のウロコとして育てるスケーリーフット。薄い金属の被膜のでき方を米軍では軍事用に転嫁できないものかと研究しているそうです。まだ研究結果などは出てきてはいませんが、防弾チョッキなどのアーマー(鎧)に使われるとすれば、現在のものよりも軽く、また軟性が強いため、動き易いものができあがると予測されています。

「甲殻何とか」想像しちゃいますよね

米軍が研究中というと画像のようなものまで想像してしまいます。これはマンガの中からフィギュア化されたものですが、米軍ではドローンなどをはじめ「無人兵器」の開発が進んでいます。自然界の中のものをヒントに何かを軍事利用することは今までもありました。体組織の一部または全部が金属でできている鎧生物など今までこの世に存在しなかったわけですからスケーリーフットの発見は当然研究対象になるでしょうが、マンガの中の世界だけに留めておいてほしいものですね。

ウロコフネタマガイの飼育

飼育の記録は?


JAMSTEC(日本海洋研究開発機構)が調査支援母船「よこすか」船上で飼育したのが一番長く、90%の個体が3週間生きたという記録があります。この時は日本の誇る深海探査船「しんかい6500」で、まるで掃除機でゴミを吸うような方式で184個の個体を確保し、飼育に挑みました。しかし生き残った個体も徐々に弱って行きました。海水中の酸素残存量が多すぎたのではと言われています。

錆びるスケーリー

「よこすか」の船上で飼育され生き残ったスケーリーフットをJAMSTECと新江の島水族館が共同で飼育したことがありました。しかし数日で全個体が死んでしまいました。この時飼育中にスケーリーフットが「錆びる」ことに気付きました。硫化鉄でできた体ですから錆びることは想像にかたくないのですが、まさか生きたまま錆びるなどあり得ないことでした。過酷なチムニーの環境でも錆びることなどないのですから、不思議ですね。

ウロコフネタマガイの二次使用

販売しているの?

個人的にスケーリーフットのシルエットにはとても惹かれるものがあります。ぜひ販売して欲しいのですが、きっと無理でしょう。同じような考えを持つ方がおられるようで、最近ウロコフネタマガイのフィギュアが販売されています。ある意味時代の最先端を行く「ガチャガチャ(カプセル玩具)」の景品などでも販売されているようです。とても精巧に再現されていてカッコイイのですが、よくよく眺めてみると「置物」や「飾り」としてどうなのかと苦笑してしまいますね。

ロールケーキとして販売

東京の高円寺にある「みじんこ洞」さんでは「スケーリーフットロールケーキ」が販売されています。限定スイーツですのでいつでもお目にかかれるわけではありませんが、大人気だそうです。時々行われる「深層海展」なるイベントで登場・販売されるのですが、このほかにも思わずクスリと笑ってしまう深海生物を模した飲み物や食べ物がたくさん販売されるそうですので、情報を仕入れたら絶対にゲットしたいですね。

みじんこ洞情報

【場所】東京都杉並区高円寺南4-42-6
【連絡・問合せ】03-3318-9338

ウロコフネタマガイ以外の奇妙な生き物

ダイオウグソクムシ

ご存じ鳥羽水族館のアイドル的存在の「ダイオウグソクムシ」も深海の奇妙な生き物の仲間です。深海に沈んだ魚類や哺乳類の肉を食べてくれる事から、深海の掃除屋などと呼ばれています。しかし鳥羽水族館で飼育されていた個体は50gのアジを食べたのち何も食べずに5年間も生き続けました。まだまだ解明途中の生き物ですね。スターウォーズに登場するストーム・トルーパーに似ていることからぬいぐるみなども大人気です。米軍もこちらを研究対象にすれば手っ取り早い気がしますね。

ブロブフィッシュ


こちらもキャラクターの立った深海生物です。日本では「ニュウドウカジカ」と呼ばれ、市場には出回らない「未利用魚」ですが、食べることはできます。淡白な白身なのですが、コラーゲンのブルブルが強すぎて食べにくい魚です。見方によっては「カワイイ」部分もあるので、ぬいぐるみなどで人気があります。北海道では時々網にかかるそうで、各地の水族館などで展示されますが、まだきちんとした飼育方法が見つかっておらず常設展示は無理なようです。情報があれば一度は見ておきたい深海生物ですね。

ウロコフネタマガイ最新情報!

2019年7月発表!

今年(2019年)7月にスケーリーフットが絶滅危惧種に指定されました。世界的な動物保護団体であるIUCNでは、7月23日付けのレッドデータブックでスケーリーフットを「EN」ランクの絶滅危惧種に指定しました。まだまだ解明の余地のある(研究途中の)生物をENランクに位置づけることは大変珍しいことなのですが(本来はDDランク)、日本の研究者などの詳細なデータをもとに決定されました。これで「海底から噴出する熱水などの利用」までもが制限され、自然が守られると科学者は考えています。

2019年9月発表!

今年(2019年)遂にスケーリーフットの硫化鉄を体内に取り込むメカニズムが解明されました。発表したのはJAMSTECと東京大学の合同チームです。これによると何か他の生物が鉱化(金属化)の手助けをしているのではなく、自身が取り込んだ硫化鉄を鉱化させていることが分かります。メカニズムが分かると先に出た米軍の兵器利用なども現実味を帯びてきますね。錆びるリスクさえなければいろいろな物に活用していけるかもしれませんね。

ウロコフネタマガイを見に行こう!

現在ウロコフネタマガイを生きたまま展示している施設はありません。生体展示はすでに10年前に終了してしまいました。ただし神奈川県の新江の島水族館にはJAMSTECとの共同飼育の時の個体が「標本展示」されています。その美しくもおどろおどろしい姿を見学するのであれば新江の島水族館に足を向けて下さい。そしてぜひ深海の神秘の一部に触れてみて下さい。

深海生物がもっと気になる方はこちらもチェック!

ウロコフネタマガイだけでなく、深海にはまだまだ面白い生き物がたくさんいます。中にはとても美味しいものもいます。姿形だけでなくその生き方や特徴などを詳しく解説している記事が「暮らし~の」の中にはたくさんあります。その一部を併載しておきますので、興味が湧いた方はぜひ覗いてみて下さい。面白いですよ。