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シャクトリムシとは?意外に知らないその生態や名前の由来まで解説!

どこの庭や緑地でも、シャクトリムシがチマチマと独特な歩みを進めているのを見かけます。しかしこの虫については、生態や名前の由来などを詳しく知っている人も少ない様子。シャクトリムシがいったいどんな虫なのか、その全容に迫ります。
2020年8月27日
はぐれ猫
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シャクトリムシの種類

世界各地に2万種もいる

地上の温暖な地域に、かなり広範囲に生息しているのがシャクトリムシ(シャクガ)です。国内はもちろんのこと、海外でも日本同様、平地から高原までシャクトリムシの歩みを見ることが出来ます。その種類は日本国内だけで800種、世界には実に2万種も存在しているというから驚きです。

種類により体色が異なる

2万種もいるシャクトリムシは、その全ての見た目が微妙に異なります。種類が多い分だけ、その色合いも千差万別。鮮やかな青や黄色、斑点付き、あまり目立たない黒い種類まで、シャクトリムシはとてもカラフルです。そんな色の違いは、周辺環境に合わせてシャクトリムシが進化をした結果なのです。

シャクトリムシの生態

活動時期

卵からの孵化を始めるのは、シャクトリムシにとって心地よい気温となる初春の頃からです。初夏の時期にかけて、シャクトリムシは多くが孵化をしています。幼虫の時期は1ヶ月未満で、あっという間にサナギを経て成虫となります。気温が高いほど、その成長スピードは加速度的となる生態があります。

体の構造

全てのシャクトリムシは、枝のようにとても細長い体をしている点については共通しています。全長は大きな種類では9cmにまで達し、小さなものではわずか1~2cm程度にしかならない種類も。脚は体の前方と後方だけに寄り集まって進化した特徴がありますが、これはあの独特な歩き方が関係しています。

枝に擬態する種類も

多くのシャクトリムシの中には、枝の姿に瓜二つなものがいます。特に体色が灰色や黒いもので、表面の模様まで樹木の皮に擬態した種類まで存在します。そんな種類の場合には、森の中で灰色や黒いシャクトリムシを探索してみても、見つけ出すことは困難を極めることになります。

糸を出す

古今東西の幼虫というのは、体内から糸を出す生態を持った種類が多めです。シャクトリムシも同様に、体内で糸を生み出し、口から出すことができます。その用途はサナギ~成虫になるための繭(まゆ)を作るのが目的ですが、しかし後に述べるように、彼らの出す糸は身を守るためにも使われます。

シャクトリムシの歩き方

独特な進み方

その特有な歩み方は、見る人によっては可愛らしいとも形容するユーモラスな動きです。シャクトリムシの歩行は、真っすぐ伸びてはU字型に曲がり、それを繰り返すことによって前進や右左折をします。場合によっては想像以上に素早く移動をする様子も見られます。

吸盤を用いて安定する


この歩行時の支点となっているのが、しっかりとした二対の後ろ脚の裏側に付いている吸盤です。シャクトリムシは1歩を進むごとに、必ず吸盤で足元に吸い付くようになっています。前方の三対の足には目立った吸盤はなく、カギ爪のような脚で着地するような仕組みです。

腹部の足の退化

多くの昆虫の幼虫には、膨大な数の脚が付いています。それは幼虫の胸部から末端まで、まんべんなく均等な感じです。しかしシャクトリムシの脚は、中央の腹部の部分が欠損しています。これは他の昆虫の幼虫との見分けを付けられる大きな違い。独特な歩き方に進化する過程で、脚が退化しています。

シャクトリムシの天敵と対処

天敵の代表は鳥や肉食昆虫

地上の食物連鎖を見れば、最上位に位置するのが肉食の生き物たち。人間を除けば、シャクトリムシの天敵となっているのが鳥やカマキリなどの肉食昆虫です。小さなスズメですら、彼らにとっては猛獣です。しかしシャクトリムシは、日々食べられるだけの運命に甘んじているわけではありません。

生き残りをかけた対処

見た目からして枝や葉っぱにとけ込む擬態は、天敵から身を守る対処法のひとつです。特に枝にそっくりなシャクトリムシの場合、敵が近づくと動きをピタリと止めて枝になりきったりします。襲われそうになったら、糸を出して身を投げ出し、空中にぶら下がる生態も、身を守る得意技のひとつです。

シャクトリムシの毒は?

毒を持っていない虫

黄と黒い色の合わさった見た目など、なんとも毒々しい外観のシャクトリムシは、手で掴むことを躊躇してしまう存在。しかしそんなグロテスクな幼虫を含め、シャクトリムシのほとんどは体内に毒も無いし、毒針も有していません。それは幼虫に限った話でなく、成虫となった姿でも同じです。

手に乗せて遊ぶのも安全

そんな無毒さが特徴な幼虫なので、子供でも手に掴んだり乗せてみることは安全です。動きがかわいいこともあって、昔から子供が好んでこの虫で遊ぶ傾向にありました。手の上を歩き回るシャクトリムシを観察してみたり、ルートを作って歩かせてみたりすることもできます。

シャクトリムシのサナギと成虫

サナギの見た目

成長するとやがてサナギになるシャクトリムシ。そのサナギは枝や葉っぱの上に作られることが多めです。幼虫の細長い姿とはまるで違い、直径は短くアーモンド型となり黒い色を含む茶色の姿になるのが一般的。サナギの時期が2週間続くと、やがて成虫となって空中に飛び出します。

サナギの中

実際にサナギを目にする機会はあっても、中身がどうなってるか確認した人は少ないかもしれません。もしシャクトリムシのサナギを解剖してみれば、その中身に驚きます。幼虫の面影はなく、中はドロドロの肉塊になっているためです。昆虫はサナギで一旦体をドロドロにして、成虫へと再構築する生物です。

シャクガの見た目

サナギを経て成虫となれば、名前はシャクトリムシからシャクガと呼ばれるようになります。色とりどりな幼虫の頃と同じく、種類によって成虫の色は緑や黒い見た目など様々です。見かけるシャクガは蝶にも見えますが、樹木などに止まっている時は羽を広げた状態なことで見分けが付きます。


シャクガの産卵

無事に成長を遂げたシャクガは、産卵をして子孫を残すことが最終的な目的です。その卵ひと粒はとても小さく、枝や葉っぱの裏側に密集して植え付けられるのが一般的です。卵の多くは冬の時期を越し、翌年の春に新たなシャクトリムシを誕生させます。

シャクトリムシの食事と食害

野菜や果物を食い荒らす害虫

人里離れた森に潜んでいるシャクトリムシなら自然の一部であるだけですが、何らかの原因で人里で大発生すれば害虫として見られる一面もあります。特に害虫として扱われる種類は、多食性のヨモギエダシャク(蓬枝尺)。人間が栽培する野菜から果物まで、あらゆる葉っぱにかじりついて被害をもたらしてしまいます。

特に好んでいる食べ物

特に食害が報告されやすいものに、果物の樹木が挙げられます。ナシやリンゴといった木の葉は、ヨモギエダシャクの大好物です。また野菜では大豆が代表格で、放置しておくと葉っぱを根こそぎ食べ尽くすことが知られます。したがってシャクトリムシを害虫と呼ぶのは、農家や家庭菜園の主が中心です。

シャクトリムシの駆除

農薬散布

もはや害虫でしかない無数のシャクトリムシは、駆除をする以外にありません。もっとも確実な方法は、各種の乳剤などの農薬を散布する駆除の方法です。シャクトリムシに効き目がある農薬の種類としては、付着して脱皮を阻害するものや、筋肉の動きを悪くするものなど様々です。

無農薬での駆除

一方でシャクトリムシの駆除は、無農薬を目指すという農家もあります。その方法も様々ですが、一般的には竹酢液や木酢液を使う方法があります。竹酢液は竹を燻蒸して生み出される天然のエキスで、野菜な果樹にスプレーすることでシャクトリムシなどの害虫が寄り付かなくなる効果が高めです。

シャクトリムシの飼育

飼育するならまずは捕獲

そうした害虫として見られてしまう一方で、飼育の対象とできやすいのもシャクトリムシです。飼育をするなら、まずは幼虫を身近なところで発見することから始めます。春から夏の時期なら草木の枝葉にいますが、黒い種類や擬態が巧妙なタイプなどの捕獲は、根気強く見つけ出すことが大切です。

虫かごで自然を再現して飼育

虫かご選びでは隙間から逃げないことを重視、飼育は透明なプラケースを採用するのも良いです。ケースの中には樹木の枝葉を設置して、幼虫が動きやすい自然環境を再現します。クーラーの効いた部屋でも育ちますが、あまり寒いと成長が阻害されるため、気温は暖かな場所を選んで置くと良いです。

エサの準備

順調な感じで飼育を進める上で、大切なのはエサの準備です。シャクトリムシは種類によって好むエサが異なるため、捕獲した場所の葉っぱを間違わずに集めることが重要です。ただし多食性のシャクトリムシならば、家庭にある野菜の葉っぱ、果樹の葉など何でも食べるのでエサにはあまり困りません。


成虫になるまでを見届ける

自宅にて飼育を行う上での醍醐味は、幼虫から成虫までの時期をずっと観察することです。よちよちな幼虫の時期を経て、ごはんを与えて大きくなり、サナギからシャクガの成虫となって大空に飛び立つまで。シャクトリムシの巣立ちを見届ける観察は、子供の夏休みの自由研究にも良さそうです。

シャクトリムシの名前の由来と別名

名前の由来

何気ない感じで口にするシャクトリムシですが、響きはなかなか不思議。シャクトリとは一瞬何か戸惑いますが、意味をご存知ですか?実はこれ「尺取り虫」で、言い換えれば「距離測り虫」。シャクトリムシが等間隔で進む姿が、手の指で距離を測る(尺を取る)風に見えるのが名前の由来となりました。

別名

当初から今のようにシャクトリムシと呼ばれていたかは不明ですが、昔から別名も存在していました。それは尺蠖(しゃっかく)、蚇蠖(おぎむし)。「蠖」の漢字は、ちぢめる、しりぞくといった意味があって、その独特な動きを表しています。古名も尺を含むので、由来はシャクトリムシ同様です。

英語の名前と由来

では海の外では何と呼ばれているのかも、気になるところです。シャクトリムシは英名ではインチワームと呼ばれています。インチワームは距離単位(インチ)の虫であり、シャクトリムシの名の由来に似ています。成虫のジオメーターモスは直訳すると幾何学蛾で、どこか知的な名前が付いています。

シャクトリムシを発見しよう

庭や公園や森の中で

これまで何となく知っていたシャクトリムシの生態や特徴の詳しい全体像が、掴めて来ませんでしたか?場合によっては害虫になってしまうシャクトリムシも、子供や虫好きにとっては身近なペットになりうる存在。まずは近場で幼虫を探して観察してみたら、自然の面白さに近づけますよ。

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