消波ブロックの名称
日本での別名
波が押し寄せる海辺に並んだ物体の数々は、一般名として消波ブロックの名が広く普及しています。また波消しブロックとも言い、カタカナでは、テトラポッド、テトラと呼ばれることも頻繁です。業界用語としては消波根固(しょうはねがため)ブロックの名が使われるなど、違いが見られます。
英名のテトラポッド(Tetrapod)の意味
何気なく口にする、テトラポッド(Tetrapod)の意味を知っていますか?Tetraはギリシャ語で4つを意味し、Podはえんどう豆のさやで細長い形状の意味。そのためテトラポッドは、英語圏では4つ足動物を指す言葉です。しかし消波ブロックの形は、4つ足だけに限らず多種多様な印象です。
テトラポッドが公式的に使えない問題
遠く海外でも名の通ったテトラポッドですが、日本ではお役所やメディアなどでは公式的に利用がしづらい名称です。何故なら日本のテトラポッドは、株式会社不動テトラの登録商標だから。そのため他の事業者は消波ブロックと呼ぶのが基本です。
波消しブロックの歴史
世界初の消波ブロック
この物体が最初に使われたのは、日本ではありませんでした。舞台となったのは、第二次大戦の直後の1949年のフランスです。海辺に新しく火力発電所を建設する時、護岸工事で消波ブロックが採用されたのが、世界で最初の事例となりました。
日本で導入された高度成長期
その後消波ブロックが日本に最初に導入されたのは、「スーダラ節」が街に流れていた1961年。この年にフランスの企業から製造特許を獲得したのが、日本テトラポッド、今の不動テトラです。その後間もなく日本消波根固ブロック協会も誕生し、今では消波ブロックを製造する会社は16社存在しています。
消波ブロックの特徴①素材
コンクリート
基本的に消波ブロックの素材には、コンクリートが使われています。コンクリートの耐久性は良く知られる通りとても高く、寿命はおおむね50年とされています。しかし近年はコンクリートの強度も高まっているので、構造物としては数百、数千年経過しても海辺に在り続けると考えられます。
鉄製もある
珍しい種類には鉄を主原料にしているという、違いを見せる消波ブロックもあります。これは例えば日本最南端の島、沖ノ鳥島の護岸に採用されていたりします。鉄製の場合には海水で腐食し茶色くなる特徴がありますが、長く海水に浸っていても耐久性は高いようです。
消波ブロックの特徴②製造
設置する現場での製造
1個あたりがものすごい重さの消波ブロックは、完成品の輸送のコストだけでもかなり高めです。だから輸送で高騰する値段を低下させつつ効率性を高める目的で、設置する現場で製造するのが基本です。海岸の工事現場に行けば、ブロックをせっせと製造する過程を眺めることもできます。
銅製の型枠にコンクリートを流し込む
製造には必ず銅製の型枠が用いられます。消波ブロックは建設現場によって種類や大きさに違いがあるため、型枠のタイプも様々です。巨大な型枠を組み立てると、そこにコンクリートを流し込みます。その作業を延々と繰り返し、数百個、数千個もの真新しい消波ブロックが生み出されています。
消波ブロックの特徴③設置
300トン級クローラクレーンでの設置
現場で消波ブロックが完成すれば、設置する作業の始まりです。この時に建設現場を見に行くと、200~300トン級というなかなかお目にかかれぬ、すごいサイズのクローラクレーンが稼働しています。海上が現場の場合には、平板な船にクローラクレーンを積み込んでの作業が行われています。
サルベージ船
さらに消波ブロックが巨大な場合には、もっとすごい大きさのクレーンが登場します。それはサルベージと呼ばれている、海上を行く特大のクレーン船。橋桁を楽々持ち上げる、1,000~3,000トンの吊り上げ能力を持っている種類があります。サルベージ船が登場する、消波ブロックの建設作業は大迫力です。
消波ブロックの特徴④種類と形
国内だけで100種類以上
造波装置で研究を重ねられ、年々メーカーから新たなタイプが登場している消波ブロック。よく知られる4つ足から始まって、その種類も年々と増え続けました。立体型、平型、階段型、直積型などに分類され、いまや日本国内だけで、実に100種類以上もの消波ブロックが出回っています。
組み合わさる形になっている
あらゆる種類の消波ブロックは、一つ一つが組み合わさる形状を基本としています。これは大量の消波ブロックを並べた時、隙間を少なくすることによって、波に対する頑強さを増加するためです。中には完全にパズルのピースのように、がっちり組み合わさる種類もあります。
カラフルな塗装も
近年の建設工事は環境に配慮する傾向が強まっていますが、消波ブロックの場合には塗装して綺麗に見せるケースも現れています。例えば沖縄のとある観光地では、遊歩道に沿う消波ブロック帯が、青、水色に塗装されています。色を付けると、ブロックの無機質な威圧感が打ち消される効果があります。
消波ブロックの特徴⑤サイズ
数トンの小型から
外観からわかる違いと言えば、消波ブロックの大きさです。小さなものは90cmで200kg程度と、素人が扱うのに無理がないものがあります。しかし海で見られる多くの消波ブロックは、アフリカゾウを超える10トン以上。中には80トン超、1個あたりが2階建て住宅に相当するサイズもあります。
最大級は100トン超え
そして1990年台に入ると、消波ブロックの種類が増え続けると共に、サイズもますます特大へと進化していました。最大級では高さは7mと3階建てビルに相当し、重さはアフリカゾウ20頭分に相当する110トンに達します。この世界一大きなサイズは、日本で製造されたものでした。
消波ブロックが置かれる意味①水際の護岸
波による陸地の侵食を防止
具体的に巨大な消波ブロックを並べることで得られる最大の効果は、水際の護岸です。海や川では日々波が押し寄せ、陸地を削っています。近年は河川の過剰な護岸工事により、河川の砂泥が海に供給されないため、陸地は削れるばかりです。だから消波ブロックを置いて、陸地の侵食を防いでいるのです。
津波や高波の影響を緩和する
もう一つ設置される大きな意味が、津波や高波の防止です。消波ブロックは積み重ねることで5~10m、時に形や物量によってはそれ以上のボリュームに達しています。そのため地震による津波や台風の高波を受け止め、波を緩和させて陸に上げない効果を発揮します。
消波ブロックが置かれる意味②土砂防止
砂防ダムに
特に水辺に好まれる傾向が高い消波ブロックですが、災害の違いがある内陸部の方でも活用されています。例えば河川や砂防ダムでの利用では、河床に埋め込んだり並べられている様子を見かけます。この場合、海とは違い砂防ブロックなどと呼ばれ、消波ブロックとは呼ばれていません。
山での土砂崩れ予防に
さらに消波ブロックと同じように製造されて、山岳の護岸に用いられる場合もあります。この場合には一見して表面が擁壁のように見えますが、土留めを効率的にできる特殊構造になっていて、山崩れを防止する意味があります。山岳に登山を良くする人なら、登山途中で見かける機会があるかもしれません。
火山の溶岩と火砕流対策
さらに活火山のほうでも、この波消しブロックと似たものが並べられる場合があります。火山の場合には水域とは違い、溶岩や火砕流をせき止めたり、その流れを制御するのが最大の目的です。建設事業としては、火山の砂防ダム事業と一体化している場合が多く見られます。
消波ブロックの値段
型枠レンタル料とコンクリ量で決まる
製造に必須な型枠は、基本的にメーカーからレンタルされている種類から選び出します。最小タイプの消波ブロックだと、型枠1個あたり1ヶ月で1,000円台など、かなり低い値段設定です。しかし50トンを超える巨大サイズになると、型枠1個レンタルは1ヶ月3~5万円と値段が跳ね上がります。
1個あたりお値段は
したがって小さなタイプなら、レンタル料込みで1基あたり5,000円ほどで完成します。12トンタイプの場合、1基あたり10万円程度です。80トン級を1基製造する場合には、レンタル料とコンクリ料金を合わせて60万円程度のお値段です。しかし意外と個人でも購入できてしまう値段設定のようです。
護岸工事全体での値段
各地では堤防や護岸整備事業が計画され、建設作業が進められます。その際には消波ブロックが数百から1,000基単位で作られ、多ければ1万基も並ぶ防波堤も珍しくありません。整備事業は億単位のお値段になり、大規模な事業になれば100億円を超えるほどのお金が動きます。
消波ブロックの計算
【型枠】レンタル(1ヶ月あたり:1,000~50,000円台)
【コンクリート】1立方mあたり:6,000~17,000円台(地域により違いあり)
【消波ブロックの値段の計算】型枠レンタル料金+コンクリート料金+工事費(生コン製造・必要資材・必要機械・クレーンレンタル・輸送費・電気代など)+人件費
消波ブロックの問題点
需要と供給の問題
今や普遍的となった消波ブロックですが、そのことで業界は問題に遭遇しました。整備が行き届いたので、需要が無く供給が増えない問題です。消波ブロックは50年以上の寿命があり、1度整備すればずっと整備不要なことが根底にあります。今メーカーは、需要が大きい海外に販路を求め始めています。
景観破壊の問題
実は各地に設置されることにより、批判が巻き起こっているのも消波ブロックの現状です。陸地の侵食や津波の予防の観点からは必要でも、あまりに過剰に設置されることで、本来の自然のままの景勝的な風景が一変してしまうのが最大の理由です。
消波ブロックと違う設備に切り替えも
批判的な見方が強い地域では消波ブロックを採用せず、自然石を並べる取り組みが一般的です。また、海底に人工リーフを構築することで津波を緩和する仕組みとし、海辺の景観を守る動きもあります。しかしどんな工法にしようと、自然地形を破壊していることに違いなく、治水の難しさも露呈しています。
すごい規模の消波ブロックを見てみよう
海岸のお出かけついでに
こんな風に消波ブロックは問題を抱えながらも、海辺の災害防止に役立っている存在です。見たこともない種類の形や、すごいと感じさせる巨大ブロックもあり、建設現場ではものすごいクレーンを目の当たりにします。防波堤に釣りや散策に出かけたら、ついでにブロックをじっくり観察してみたいですね。
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