山小屋バイトとは
山小屋に住み込みで働く
ほとんどの山小屋でのバイトは、人里から離れた僻地で働くのが通常です。山小屋の役割はハイキングに訪れた登山者が、宿泊や休憩する場所として位置づけられています。日本の北アルプスなどドコの山に行っても必ず山小屋があり、夏休みや冬など1年じゅう住み込みのバイトを募集しています。
山小屋と言ってもピンキリ
覚えておかねばならないのは、山小屋と言ってもその種類は固定されないことです。例えばホテルのような綺麗でお金をかけた施設もあれば、昔ながらの質素な旅館のような施設もあります。仕事内容も給料の金額も含め、山小屋によってピンからキリまで違いがあり、バイト先を充分検討する必要があります。
山小屋住み込みバイトの1日の流れ
午前の流れ
峰々に光が射す夜明けと共に行動し始めるのは、山小屋のバイトの基本です。起きてすぐに登山者の朝食準備から始まります。従業員のまかない飯も済ませたら、午前中のバイトでは後片付けや掃除など家事全般、それに山小屋と周辺の整備を中心として進めます。
午後の流れ
日によっては夕方まで長く休み時間を取れることもあるのが、お昼の時間帯です。夕方を過ぎると山小屋バイトでは夕食準備に取り掛かり始めます。夕食の片付けとまかない飯が終われば、あとはほぼ自由時間となり、お風呂に入ったり談笑したりと、気ままに過ごす日常があります。
1日の流れ例
【朝】起床(5:00頃)→登山者の朝食準備→従業員の朝食→掃除→登山道・山小屋整備→登山者の昼食準備
【昼】昼食・休憩・昼寝・登山
【夕】夕食準備→片付け→お風呂→自由時間→就寝
(お風呂は無い山小屋もあり)
山小屋バイトの仕事内容①食事準備
登山者の食事
高原の料理を朝から晩まで宿泊者に提供することは、山小屋が一番に求められている基本です。近頃の各地の山小屋は、かなりおすすめメニューを取り揃えているところも増えてきました。山小屋バイトで働く場合、材料の用意と切りそろえ、配膳、食器洗いなどが、料理の時間の主要な作業内容です。
従業員の食事
そして客用の食事だけでなく、山小屋では従業員用のまかない飯の準備も必要になります。まかないは山小屋の従業員特権的なおすすめ要素で、時にお客には出せない特別なメニューが食べられたりもします。まかない飯は、バイトであっても料理経験者・未経験者問わずに任せられることがしばしばです。
食事準備の体験談
小屋ガール通信、最新話が公開されました!
— 山小屋ガールの癒されない日々 (@yamagoyagirl) July 4, 2019
今回は山小屋のまかないの話。料理のレパートリーがほとんどない状態で小屋ガールになった私ですが、美味しいと言われるたびに少しずつ腕が上がった気がします。#山小屋ガール本 未収録の話も是非~:exclamation:
https://t.co/WfzwaI6niI
完全に素人同然だった料理の腕前も、山小屋バイトで一気に向上したとの体験談はよく聞かれます。夏休みだけの1ヶ月の短期でも山小屋料理は全て体で覚えられるし、長期間に渡り働くなら、料理の腕前もプロ顔負けになっているかもしれません。料理が苦手な女性に、山小屋バイトをおすすめする要素です。
山小屋バイトの仕事内容②掃除と家事
施設の掃除
時に100人以上が詰めかけるほど夏休みに人気の山小屋もありますが、人出が多いほど大変なのが掃除。山小屋では掃除機よりはホウキや雑巾を使う傾向が高く、短期バイトでも毎日必須な体力仕事になります。食堂、談話室、宿泊の大部屋、お風呂、トイレなど施設の全てが担当する掃除場所です。
布団干し
カラリと晴れた日を迎えれば、夏も冬も掃除の時に欠かせないのが布団干し。多くの山小屋では大屋根を利用して、布団を並べて乾かす光景が見られます。慣れない頃は2階の屋根に上がるのは怖い思いをする瞬間であり、重たい布団の上げ下げに四苦八苦するバイトの姿があります。
掃除の体験談
山小屋の屋根を使って、好天時恒例の布団干しが始まりました。泊まっている県警の方もお手伝いされています。(富士山支局) #静岡新聞 #富士山 pic.twitter.com/3CPQjpWeUM
— 静岡新聞 富士山臨時支局 (@shizushin_fuji) August 6, 2014
掃除に含まれている布団干しは、バイトなどのスタッフだけが参加するだけではないようです。山小屋に宿泊している人々も、布団を屋根に上げる作業に協力していたりする体験談もあります。庶民的で長く愛されてきた山小屋であるほど、山小屋の仕事を宿泊者が手伝う光景も日常的です。
山小屋バイトの仕事内容③登山者の対応
受付や売店の対応
体力をすり減らす仕事が多い一方、椅子に座って働く時間もあります。バイトが受付を任せられると、施設を訪れた宿泊者に対する対応、料金の支払い、売店の対応の手伝いをこなします。夏休みの期間など繁忙期は大変ですが、利用客が少ない時期は山小屋のオーナーとお茶する時間みたいなものです。
登山者の案内や対応
特に人がごった返す夏休みといった多忙な日は、登山者の案内や受け答えする頻度も高くなりがちです。お風呂の使い方や登山ルートなど日常的な質問や、同時に山小屋にまつわる苦情対応も迫られます。バイトの場合は責任者ではないので、話を聞いて管理人に伝える役目は果たす必要があります。
登山者対応の体験談
富士登山:外国人向け、県がマナー啓発グッズ 「トイレにごみ」など山小屋から苦情 シートや手ぬぐい、ガイドを増刷 /静岡 - 毎日新聞 https://t.co/NHEuHMH4Eg
— Yuriko Tanabe (@YurikoTanabe) March 1, 2018
山ブームは海外でも同様らしく、日本の名峰を目指す外国人が増え始めました。そんな中で山小屋では外国人トラブルも頻発しています。山小屋のバイトは常に苦情をぶつけられる存在ですが、異文化や言葉に関係するトラブルでは、かなり苦労する体験談も見つけられます。
山小屋バイトの仕事内容④環境整備
登山道の整備
周囲に巡る登山道の状態は小屋に無関係ではなく、営業に直結しています。登山道や崖が崩れて通行不能になっていては営業もできないためで、バイトの仕事ではその整備も不可欠です。山小屋から離れた場所までチェックをして、問題があれば登山道の補修をするなどの作業を行うことがあります。
山小屋の整備
古くなった山小屋は特にガタが来ていて、お風呂や屋根などどこかしら不具合が出ていたりします。設備が壊れているのを放置しては山小屋の営業や評判に差し障るので、バイトでは常に修理作業も隣り合わせです。設備の補強をしたり塗装をしたり、冬季には屋根の雪かきも大切な仕事です。
山小屋バイトの仕事内容⑤歩荷(ぼっか)
歩荷の内容
思わずホニと読んでしまう歩荷は、山小屋バイトの重労働の1つです。近年はヘリの荷揚げが増えているとは言え、ヘリに荷揚げを頼まない山小屋もあります。悪天候が続いてヘリが来れない場合も歩荷が必要です。山小屋バイトでは女性ではなく男性に特有な任務で、積雪のある冬季は特に重労働です。
歩荷がある山小屋の注意点
歩荷では数十キロの荷物を背負い、往復で半日を要する場合もあり、かなりの急斜面や悪路が長距離も続きます。体力に自信があって山歩きに慣れた人でなければ務まらず、寒い冬~春の時期は尚更です。バイトの募集に麓からの歩荷も含まれるかどうか、問い合わせてみることも必要です。
歩荷の体験談
歩荷から帰ってきたら足にヒル付いててわろたね pic.twitter.com/2aclPuiKfV
— すぎもり (@rrryu1215) July 3, 2019
思わぬ珍客が来訪するのは、歩荷の仕事ではありがちです。例えば山小屋までの道のりでは蚊やヒルなどの虫にたかられる体験談は良く聞かれ、重たい荷物を背負っているのでウザいことこの上ありません。小さな虫はともかく、バイト中に熊やスズメバチなど危険な動物に遭遇するのは避けたいところです。
山小屋バイトの仕事が固定される場合
1種類のしごとの専門となる
施設により異なると言えば、山小屋で働くスタイルが挙げられます。1日に料理、掃除、整備など複数の仕事をこなす何でも屋的な役割のバイトもあれば、一方でわずか1種類に特化した山小屋バイトもあるのです。これは募集要項に記載されている他、現地で気づくことも少なくありません。
1種類だけ覚えれば良いので楽
もし山小屋で1種類だけをこなす内容ならば、かなりプラスに考えられます。掃除だけのバイトなら、お風呂や大部屋の掃除に集中して、他の料理や受付のことは考えなくて良いからです。逆に長期間続くと飽きてしまうという欠点もありますが、短期ならば集中しやすいおすすめな環境です。
仕事の例
【食事】朝昼晩の食事、弁当の準備と後片付けの専門職
【掃除・整備】屋内と屋外の全体の掃除と整備の専門職
【受付】山小屋の受付や販売の対応の専門職
山小屋バイトの期間
夏休みや冬季を含む長期採用
あちこちの山小屋の中には、冬も含めた長期のバイトを募集しているところも珍しくありません。長期のバイト募集は、夏休みを含む4ヶ月~6ヶ月間程度。自宅を長い間留守にすることにもなりますが、何も予定がなく、日常の人との繋がりにこだわりもなく、山が大好きなら選んでみても良さそうです。
夏休みだけなど短期採用
もっとも好まれる傾向にあるのは、山小屋で短期間だけ働く募集です。多くの場合は夏休みだけの1ヶ月間ですが、中には1週間という超短期も存在し、初心者や女性にも無理がありません。それに歩荷だけというバイトも稀にあります。学生が始めるなら、短期が何よりおすすめです。
山小屋バイトの給料
給料もピンキリ
誰しも気がかりな要素は、山小屋で働くことでどの程度稼げるかです。バイトでは時給1,200円以上に達し、1日に1万円以上を稼げる山小屋も存在します。一方日給7,000円程度のそこそこな山小屋もあります。給料はピンキリですが、山小屋で働く上では給料額は重要ではないと考える人も多いようです。
給料は使わないので貯まる
街から隔絶した山小屋に入り浸って働いてみれば、給料を得ても多額を使わない時期が長く続きます。食事はまかないだし、宿泊はタダだからです。短期どころか長期間も山小屋に詰めていれば尚更なこと。バイトが終わってから銀行通帳をチェックすれば、多額の給料が貯まってニンマリしてしまいます。
給料について
【給料額】日給換算7,000~1万円程度、交通費込み(山小屋により異なる)
【給料の受け取り】ほとんど銀行振込、現金支給もあり
山小屋バイトの私生活
部屋は共同な場合が多い
ほとんどの山小屋は自分用の個室がなくて、狭い従業員部屋で雑魚寝をして過ごすような形です。ただし小屋によっては客用個室を就寝時だけ使えることもあるので、脚用個室がある山小屋バイトは狙い目。自分の時間を大切にするなら、従業員用の個室ありのバイトを探し出すことです。
他の従業員との関係
現地を訪ねてみると、バイトには必ずセンパイがいます。山小屋での他の従業員との関係は、喧嘩はあるとしても、おおむね良好となる傾向があります。山岳という不便極まる日常で、24時間助け合って暮らし働くことが影響しています。本当の仲間を作るという意味でも、おすすめなのが山小屋バイトです。
山小屋バイトの暇つぶし
時期によっては客が来なくて暇
必ずと言って良いほど山小屋で遭遇するのが、暇すぎる日々です。夏休み前後の時期によってはまるで登山者がやってこないこともあります。そんな時には自由時間も多くなるのですが、手持ち無沙汰でやるべきことも見つからず、バイト中もボーッとしがち。だから暇つぶし方法の検討が必要です。
暇つぶしの体験談
山小屋でバイトしてたとき、お客がぜんっぜん来ないので、小屋の前の大きな岩に毎日まいにち、かじりついていた。ボルダリング。最初のハングの最初のスタンスにさえ立ち込めない。あーでもないこーでもないと体を捻ったり、足を掛けたり、手で微妙なオポジションやったり。でも二週間後にはできた。
— ごんてん (@gonten) May 17, 2019
とにかく周囲は絶景の山だらけだったりする山小屋なので、アウトドアの過ごし方は暇つぶしにおすすめです。例えば冬でも夏でも山歩きをするだけで気分は晴れ、食べられる野草やキノコ狩りに熱中もできます。岩登りなどで鍛錬を積む体験談もあり、バイト中の暇つぶしの方法はアイデア次第です。
山小屋バイトは女性もできる?
女性向きな山小屋
むさ苦しい男所帯な山小屋も目立つ中で、女性スタッフを募集しているところもあります。女性が働く上でおすすめな環境と言えば、給料の多さより、狭いながらも女性従業員用の個室を完備した施設です。設備が綺麗、お風呂がある、従業員に既に女性が多い山小屋も、バイトの働きやすさを感じられます。
女性に向かない山小屋
その一方で女性がバイトするには、おすすめしづらいな山小屋もあります。今まで女性を採用してこなかった山小屋は、女性従業員に対して配慮が行き届かなかったりします。女性スタッフ用の個室がないことも、おすすめしない要素です。お風呂がない、設備や布団が古くて汚いなども気になります。
山小屋バイトのメリット
大自然の中で過ごせて健康的
極めて健康な心身を手に入れる意味でも、山小屋はとても有益でおすすめです。山歩きすることで体力を養えるし、きれいな酸素を体に取り込み、健康的な食事、規則正しい生活を続けたら、病気や生活習慣病も治り、心の病も解消するかもしれません。バイトが夏休みや冬だけの短期でも、健康の効果は感じられます。
都会の仕事や生活にはない体験
そして良く語られる山小屋の良さとは、日常では決してありえないバイトだけの奥深い体験にあります。例えば標高2,000m以上の北アルプスで、冠雪した山々を日々眺めながら登山者を相手に働く経験は、都会では絶対ありえません。山にしかない仕事ができること、それが短期でもおすすめな要素です。
山小屋バイトのデメリット
不便過ぎる山小屋もある
反面で山小屋バイトのデメリット部分も、語らぬわけには行きません。ネットも繋がらずスマホが使えない山小屋も存在します。お風呂がない山小屋は、お風呂がないと生きられない人には耐えられそうにありません。春~冬にかけいつも不便な山小屋生活は、精神鍛錬をする修行場に等しいかもしれません。
女性との出会いが無い
出会いのなさという点は、山小屋のバイトを志した男性の体験談でよく目にするデメリットです。普段の山は中高年世代やゴツい青年が目立ち、仲間もほとんど男の学生やオジサンだったりする山小屋も珍しくありません。もし女の子と仲良くなれても、バイトの性格上で恋愛関係になりづらいようです。
高山病に注意
それぞれの体質により高山病に陥りやすい人もいますが、山小屋でのバイト中も同様です。特に標高が1,500mを超えるような酸素濃度の低い高所に夏休みに訪れてみれば、初日からダウンしてしまうこともあります。山小屋バイトでは、高山病薬を持参するなどの準備が大切です。
山小屋バイト始めてみる?
自分向きな山小屋の募集を探して
是まで知らなかった山小屋バイトの興味深い一端を、垣間見ることが出来ました。寒い冬が長く、夏は短い山での短期バイトは、料理や掃除を基本としてやるべきことが様々です。出会いや風呂は期待できない施設もあるけれど、自分向きな募集を探して、有意義な体験してみたいですね。
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