白魚の踊り食いとは?
意外と知らない?白魚の踊り食いのすべて
踊り食いとは、水産物などを活きたまま食する食べ方です。中でも白魚の踊り食いは最も高い知名度を誇るといっても過言ではありません。白魚の踊り食いはその食べ方に独自の様式を持っていて、ただの「食べ方」で終わることはありません。今回は季節の風物詩「白魚の踊り食い」を紐解いていきます。
「踊り食い」の食べ方を解説
白魚の踊り食いは、容器で活かした白魚を酢醤油と共に啜り込むのがよく知られる食べ方です。白魚は噛まずに飲み込みますが、これは喉越しを楽しむため。人によっては、噛んだほうが甘さと脂を感じて美味とする意見もあります。また生での食べ方には、白魚の刺身や寿司が有名です。
白魚の疑問「シラウオ」?「シロウオ」?
白魚はシラウオともシロウオとも読める魚です。実際は同じ種の魚ではなく、きちんとした違いがあります。旬の時期や獲れる季節、産地、食べ方など共通部分は多くあるものの、根本から違う魚です。しかし地方によっては、シロウオをシラウオと呼んで違いが分からないことも。次項からは、改めて白魚とは何を指すかを解説していきます。
シラウオ(白魚)の基本情報を解説
シラウオ(白魚)の解説
シラウオ(白魚)はサケ目シラウオ科の魚の総称です。別名はシラスやシラオ、シロオ、トノサマウオ、シロウオなど。国内では3属4種分布しており、内2種は絶滅危惧種に指定されています。体型は細長いものの、胴に向かって膨らんで再び細くなる体型です。また、生きているうちは半透明で内臓や背骨などが透けています。それに加えて目が小さい、脂ビレあるといった点が外見上の特徴です。
シラウオ(白魚)の生態・産卵の時期
シラウオが分布する地点は主に汽水域です。日本国内だけの種ではなく、東アジアの汽水に広く分布。産卵の時期は春で、河口域や汽水域に集まったシラウオが川の底に卵を産みます。孵化した稚魚は汽水域で成長し、季節が一巡すると再び産卵すると考えられています。
シラウオ(白魚)の種類を解説
シラウオ(白魚)2種を解説
国内に分布するシラウオは4種おり、それぞれシラウオ、イシカワシラウオ、アリアケシラウオ、アリアケヒメシラウオが存在します。シラウオとイシカワシラウオは両種とも体長が8cmほどで、北海道から九州北部まで分布。イシカワシラウオは日本にのみ見られる魚ですが、特にシラウオと区別されずに混獲・消費されます。
貴重なシラウオ(白魚)2種も解説
アリアケシラウオとアリアケヒメシラウオは有明海とその付近で見られる種です。アリアケシラウオは有明海に生息し、体長は15cmに成長します。日本国内では食用だったものの、個体数が激減しているのが現状です。また、アリアケヒメシラウオは体長5cmほどの小型シラウオです。有明海に繋がるごく一部の河川に生息しているだけで、絶滅を危惧されています。
シロウオ(素魚)の基本情報を解説
シロウオ(素魚)の解説
シロウオ(素魚)はスズキ目ハゼ科の魚です。国内では北海道南部から九州南部の広い地域に分布。成魚になっても全長が約5cmの小さく細長い体型が特徴です。外見はシラウオと同じく透明ですが、色素細胞が各所にあるので黒さが目立ちます。産地ではヒウオやイサザ、ギャフといった別名を持ち、関西や広島では「シラウオ」と混称されているようです。
シロウオ(素魚)の生態
主に沿岸部や湾内の浅い海に棲むシロウオは、プランクトンを食べながら生活しています。産卵の時期になると河口部に群れ、上げ潮に乗って遡上。汽水から淡水域まで遡上すると、転石が多い地点で繁殖と産卵を行います。産卵後はオスが2週間の間卵の孵化を見守り、その後は両親とも死んでしまいます。
白魚と素魚の違いを比較
シラウオ(白魚)とシロウオ(素魚)との違いまとめ
シラウオ | シロウオ | |
分類 | シラウオ科 | ハゼ科 |
特徴 | 脂ビレ | 吸盤 |
色味 | 白っぽい | 黒っぽい |
シラウオとシロウオの違いをまとめると、上記のイメージになります。脂ヒレや吸盤の有無は、元が別種の魚であることを踏まえれば理解が難しいものではありません。逆に共通点を見ていくと、生息地や体色、旬の季節、産卵の時期、食べ方(踊り食いなど)がほぼ同じです。
シラスはシラウオ?
地方名でシロウオはシラスと呼ばれることもあります。ですが、シラスはカタクチイワシやマイワシ、シラスウナギ(うなぎの幼生)などの色素が無い稚魚の総称。食べ方には踊り食いや丼物など共通点があるものの、魚としては無関係です。ちなみに、このシラスを釜茹でして天日で干した物をちりめんじゃこと呼びます。
浜名湖ではウナギがシラウオ?
静岡県浜名湖では、シラスウナギのことをシラウオと呼びます。上記の解説通り、このシラウオはシラスともシロウオとも無関係な魚です。11月にシラスウナギの漁が開始され、漁獲したウナギは踊り食いなどは行われず大切に飼育されて出荷を待ちます。
白魚と素魚の漁期を解説
共に春の季節の風物詩
シラウオ・シロウオ共に早春の時期の味覚、その漁は季節の風物詩です。両種は産卵の時期を旬として漁獲されます。漁は主に河川の河口部付近で行われ、篝火を焚きながら行う漁の光景は見物対象として印象深いものでした。かつては隅田川や佃島でも漁があり、佃島のシラウオ漁は築地魚河岸のルーツになったとされています。
桜の時期に産地が北上
産卵の時期は水温によって変化するため、日本国内でも漁期や旬が一定ではありません。目安としては桜前線で、桜の開花と共に漁地・産地が北上していきます。シロウオ漁の場合は有名な産地を基準とすると3~5月が漁期。より早くは福岡県や大分県で2月中旬です。さらに早い地域の愛媛県宇和島では、1月中旬から漁が行われます。また、シラウオ漁の場合も時期的には同じです。
白魚の踊り食いの味付けは様々?
味付けの基本は酢醤油
踊り食いでは基本的に酢醤油が使われ、全国的に大きな変化は無いようです。シロウオの産地である博多では、二倍酢に卵黄を落とした「黄味酢醤油」といった食べ方が知られています。また個人の好みはあるものの、オリーブオイルと合わせても美味です。
踊り食いは栄養価も豊富!
捨てる部分が無く、丸ごと食べる踊り食いは栄養素を丸ごと摂取できる特徴があります。日本人に不足しがちなカルシウムやマグネシウム、リンといったミネラル分の他、ビタミンAも摂取できるでしょう。踊り食いは酢も一緒に摂取することになる食べ方ですが、酸味が苦手な方は酢を加熱すればまろやかになります。
白魚の踊り食いができる産地をご紹介
シラウオの一大産地のご紹介
シラウオの産地で有名な北海道や青森県、秋田県、茨城県、島根県などです。特に有名な産地は東日本が多い傾向にあります。規模の大きい漁をする産地は、霞ヶ浦が有名です。また、青森県小川原湖や島根県宍道湖も規模の大きいシラウオの産地になります。特に、小川原湖は日本一のシラウオ漁獲量を誇る大産地です。
全国のシラウオ産地をご紹介
大きなシラウオの産地に次ぐ地域としては、北海道のクッチャロ湖や天塩川、石狩川、余市川、大野川、別寒辺牛川、サロマ湖など。茨城県としてはは牛久沼、那珂川、久慈川や常陸利根川など、上記以外にも産地が多数あります。小規模な産地は全国の河川に存在するため、踊り食いできる産地が身近にあるかもしれません。
全国のシロウオ産地ご紹介
シロウオの産地を北から見ていくと青森県で蟹田川や野内川、野辺地川、三重県では磯部川などです。広島県は三津大川、山口県は松本川、香川県では湊川。福岡県は室見川や長野川、加茂川、瑞梅寿川、福吉川など西日本に産地が多い特徴があります。また、シロウオの漁法としては四手網やヤナかけ漁が有名です。いずれも伝統的なものですが、福岡県糸島地区(長野川、加茂川、瑞梅寿川、福吉川)ではヤナかけ漁が現在も行われています。
白魚の踊り食いで感染する寄生虫とは?
寄生虫「横川吸虫」と寄生虫症の解説
横川吸虫とは、アユやシラウオ、シロウオといった魚を中間宿主にする寄生虫です。踊り食いや刺身など、生でシラウオ・シロウオを食べることで人間に寄生します。寄生虫症としては比較的軽く、腹痛や下痢といった症状に止まります。ですが、体力の無い幼児やお年寄りには体調の変化に注意すべきでしょう。
加熱すれば安全!
寄生虫症を回避するには、シラウオ・シロウオ共に加熱して食べることが重要です。幸いにも両種は天ぷらや佃煮、椀物、卵とじのような加熱する調理法があります。そのため、踊り食いに拘らなければ旬の味を楽しめることでしょう。実は日本では感染者報告の多い寄生虫症で、シロウオが活かしたまま流通するために感染者数が増えています。
白魚の踊り食いまとめ
踊り食いもお金持ちの味?
【全国「白魚の踊り食い」徹底調査!シロ魚?シラ魚?産地で異なる食べ方も解説!】は以上です。白魚の区別から旬の季節や食べ方、産地をご紹介しました。現在では両種の数も減り、シラウオ・シロウオも漁の全盛期ほどの漁獲量は維持できていません。このため、シロウオの場合はキロ単位2万円もするほどの高級魚と化しています。白魚の踊り食いができる機会があれば、一度経験してみてはいかがでしょうか?
シラウオとシロウオのより細かい情報が気になる方はこちらもチェック!
以下の記事ではシラウオとシロウオのより詳しい情報を扱ったものです。両種の違いやレシピ、釣り餌としての用途、文化面での扱いなど、ためになる知識が詰まっています。
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