基本的な育て方でおいしいぶどうを栽培しよう
家庭で栽培するにはスペースが必要となるだけではなく、栽培するのはむずかしいと思われているぶどう。しっかりと苗木を選び、基本的な植え方や日頃の管理をしっかりと続けていけば、決して栽培できないということはありません。今回は水やりや肥料、剪定、芽かき、収穫の時期といった栽培時期を押さえながら、基本的な育て方でおいしいぶどうを栽培する方法についてご紹介します。
ぶどうの苗木とは
ぶどうはつる性の落葉低木で、日本では古くから栽培されてきました。栽培用の苗木では、ひとつの花におしべとめしべがあるため、ほかにぶどうの木がなくても実をつけることができます。初心者でも育てるのがむずかしくはない品種はデラウエアやスチューベンといった小さな実のなる品種ですが、巨峰やマスカットなども人気です。苗木を購入する際は品種をしっかりと確認し、なるべく育てやすい苗木からはじめるようにしましょう。
ぶどうは種から育てられないのか
ぶどうを育てる際、苗木から育てるのが一般的ですが、これは種から育てることができないからではありません。ぶどうは、ちがう品種の花粉からでも受紛するため、ほかの品種の遺伝子が混ざり合い、実がなっても同じような味にならないこともあります。たまたま種を植えてみたら芽が出てきたということでしたら、どんな味になるかわからなくても育ててみようという気持ちで育てていくと、生育環境が整っていればおいしいぶどうが生まれる可能性はあります。
ぶどう栽培の時期
ぶどうといえば秋の味覚。つまり収穫は秋で、だいたい8月から10月ごろです。植え替えや植え付けの時期は収穫が終わった後の11月ごろから3月ごろに行います。冬の休眠期に剪定を行い、4月から芽が出てきて、芽かきをはじめます。新梢が伸び出し、花が咲くと、つるを誘引したり、剪定をしたりします。花が終わったら実をつけていくので、実が大きくなってきたら、場合によっては実を袋入れして、収穫を待ちます。このように、ぶどう栽培の収穫の時期をしっかりと押さえて、失敗のない育て方をしていきましょう。
ぶどうは育て方によってさまざまな利用方法がある
ぶどうを育てようと考える動機として、実を楽しみたいという方は多いはず。たしかに、おいしい実を栽培していくというのは喜びのひとつですが、つる性で落葉が遅くないぶどうは、グリーンカーテンにして夏の日差しをよけるのもステキです。しかも、最近では、自宅の緑を使ってグリーンカーテンを作っていくことは、温暖化対策としても奨励されています。ぶどうを育てる際は、育てる場所も考えておくことをおすすめします。
ぶどうの育て方①鉢植えの植え方
ぶどうの育て方は、植え方からはじまります。一般にぶどうは苗木で購入しますが、家庭のベランダや庭の片隅でぶどうを育てていく場合、鉢植えに植え替えて育てます。鉢植えの植え方で重要なことは土づくりです。ぶどうは水はけがいい状態を好みますので、乾燥した土を用意します。赤玉や砂などに、腐葉土を少し加える程度の土を準備し、鉢の底には石を敷いて水はけをよくしましょう。また植え方のポイントとして、大きい芽の植木鉢やプランターを準備することも重要。深さのある鉢を用意して植えていきましょう。
植え付けや植え替えの時期に注意
苗木の植え方で重要なのはその時期です。温暖な地域以外では、なるべく春まで待った方がベター。3月~4月ごろに植え付けるようにしましょう。苗木の傷んだ根を整理してから、根を広げて鉢やプランターに植え付けていきます。乾燥気味の土を入れて根を固定させ、支柱を立てましょう。ぶどうの支柱は行灯支柱(リング支柱)が一般的です。根から2芽ほどのあたりで切り落とし、十分に水を与えましょう。
ぶどうの育て方②庭植えの植え方
庭植えでぶどうを植え付ける際、植え方のポイントを押さえて行うようにしましょう。ぶどうは水はけのよい土と日当たりのよい場所を好むため、適した場所を選ぶことが植え方の重要ポイントです。植え付ける際は、50cmほど掘って根を広げるように意識して。土に腐葉土などを混ぜてよい土を使いましょう。苗木が倒れないように土をかぶせていきます。苗木は5~6芽ほど残すようにします。苗木の高さはだいたい50~60cmです。支柱を立てて苗木が倒れないようにし、しっかりと土で押さえた後、たっぷりと水を与えます。
いろいろな支柱でぶどうの苗木を作り上げていく
庭植えの植え方では、行灯支柱(リング支柱)のほかにも、さまざまな支柱を立てて苗木を作っていく方法があります。たとえば、2本の支柱を二等辺三角形を描くように斜めに挿し、横方向に支柱をわたして、つるを横方向に誘引していく方法もあります。また、1本の支柱に2本の支柱を斜めに交差させ、3本仕立てにする方法があるほか、つるを誘引してぶどう棚を作る方法などもあります。
ぶどうの育て方③植え替え
植え替えの時期は、植え方に限らず、基本的には10月~3月の間の休眠期です。ほかの時期でももちろん可能ですが、苗木が休眠中の方が負担が重くなく、その後の生育もよいとされています。庭植えでぶどうを育てている場合、植え替えの必要はありませんが、鉢植えの場合、何年も同じ鉢で育てていると、根の生育が悪くなり、苗木が全体的に元気をなくしてしまいます。2~3年に一度のペースで植え替えを行うようにしましょう。
ぶどうの植え替え方法は育て方の重要ポイントのひとつ
ぶどうの鉢植えを植え替える場合、まず支柱などを取り外し、鉢から苗木を取り出します。根を傷めないようにほぐし、古い根を切り、新しい鉢の大きさに根の長さを合わせます。新しい鉢から根がはみださない程度に切り落とすことが大事です。根を整理したら、苗木をしばらく水に入れておきます。鉢を準備し、鉢の底に石を入れてから、水はけのよい土を入れていきます。根を広げながら苗を鉢に埋めていき、しっかりと固定させましょう。最後に支柱を立てて、水をしっかりと与えればできあがりです。
ぶどうの育て方④水やり
ぶどうの原産地は、ヨーロッパや北米など、乾燥した土地であることからもわかるように、湿気が苦手な性質があります。このため、庭植えでぶどうを育てる場合は、とくに水やりの必要はありません。水やりをしすぎると、根づかずに枯れてしまうこともあります。一方、鉢植えでぶどうを育てる場合の水やりは、鉢の表面が乾いたらたっぷりと水を与えるようにします。ぶどうの育て方で重要なのは、水やりをしすぎてしまわないように注意することです。
ときに水やりは必要
庭植えで育てるぶどうは、基本的に水やりの必要はありません。放置していても育っていきますが、梅雨明けの後、高温の日が続くときなどは水やりが必要となります。植え付けたらたっぷりと水やりをして、苗木の元気がないときなども水やりを行いましょう。
ぶどうの育て方⑤肥料
ぶどうを育てるにあたって、肥料を施す時期はだいたい決まっています。植え付けるときに施します。それから、鉢植えの場合、ぶどうの実がなるころ、一般的には6月に肥料を施し、庭植えの場合、ぶどうの収穫の後に肥料を与えます。ただし、肥料の与え過ぎには要注意。ぶどうに肥料を与えすぎると、枝がどんどん伸びても花がつかなくなることもあります。
ぶどうに与える肥料とは
ぶどうに施す肥料は、基本的に化成肥料を使います。ただ、実を食することを考えると、化成肥料だけではなく、有機肥料も施していくことが大切です。植え付けや植え替えの際には有機肥料を使い、6月や9月の追肥では、化成肥料を使うなど、うまく使い分けていく方法もあります。
ぶどうの育て方⑥芽かき
ぶどうを植え付け、新芽が出てくる春になったら、ぶどうの芽かきを行います。これは、ぶどうを育てていく上でとても重要な作業となります。というのも、この目から伸びる枝に花が咲き、そこから実がなっていくからです。芽かきの方法はさほど難しくはありません。元気すぎる芽、一か所からいくつもの芽が出てきている芽を選び、状態のいい芽を残してかき取ってしまいます。この作業を芽かきといい、芽かきによって元気な実がなっていきます。
芽かきをしないとどうなるの?
芽かきをせずにそのまま育てていくと、新芽がどんどん伸びていき、葉がついてたくさんの花房がつくようになります。こうなると、日光が差し込まなくなってしまい、花が終わった後、実がついても元気がなかったり、おいしくないぶどうができるようになってしまうこともあります。おいしくて元気のいい実を作るためにも、芽が出てきたら芽かきを行いましょう。
ぶどうの育て方⑦開花時期
ぶどうの花が咲く時期は、だいたい5月の終わりごろから6月にかけてです。この時期になると、花穂にいくつもの花がつき、結実すればそのまま房になっていきますが、たくさん実がなると、栄養が足りずにちゃんとした実になっていかないのです。そこで、時期のぶどうの育て方のポイントでは、花穂を整形していくことに尽きるわけです。ぶどうの実を楽しみたい方はぜひ行いましょう。
花穂の整形のやり方とは
花房の整形は、開花の少し前に行います。品種によって方法は異なりますが、デラウェアなどの小粒の実がなる品種では、わき芽を切り取り、先端は伸ばす方法で整形していきます。ほかの品種では、わき芽を3~5段ほど切り取り、そこから8~10cm程度を残して、それより先端は切り落としていく方法です。
ぶどうの育て方⑧剪定
ぶどうを育てていくうえで、剪定作業はとても大事。ぶどうは、春に伸びた新梢から出てきた枝に実がなるため、剪定の時期になったらぜひ作業を行いましょう。剪定の時期は、6月と12~2月の休眠期です。6月の剪定では、新枝が伸びて葉が増える時期で、実がなっていないわき枝を剪定していきます。12~2月の剪定は実を付けるための剪定です。すべての枝を1~2節ほどに剪定する方法がおすすめです。
ぶどうの剪定で注意するべきこと
ぶどうの剪定では、芽を少し残すことがポイントとなります。ぶどうは、剪定した際の切り口が治りにくい性質があることから、残した芽が生育していくように、芽の上で切るようにします。こうすると、残った芽が元気よく育っていきます。家庭でぶどうを栽培している場合もさっそく剪定してみましょう。
ぶどうの育て方⑨収穫
ぶどうの収穫は、品種によって異なりますが、一般に8月ごろから10月ごろとなります。ぶどうの房が全体的に色づいて、こんもりとしてきて、いい香りがしたら、ぶどうの実を試食してみましょう。甘くておいしい実となっていたら、収穫の時期です。さっそく房の上を切って収穫をはじめましょう。
待ちに待ったぶどうの実を収穫したら
待ちに待ったぶどうの収穫。食べきれないほどのぶどうを収穫したらどうしたらいいのでしょうか。実は、ぶどうの品種によって、どの程度日持ちするのかが異なります。日持ちできるぶどうは、冷蔵庫などで保存しましょう。なるべく早めにいただいたほうがベターです。さらに長期間、保存したいときは干しぶどうにするという方法もあります。
干しぶどうの作り方とは?
収穫したぶどうでほしぶどうを作る方法はかんたんです。ぶどうを房から取って洗い、水気を取ります。ぶどうの実を半分に切り、種を取り除きます。種を取り除く際は、竹串などを使いましょう。切ったぶどうをザルやアミなどに並べて、乾燥するまで天日ぼししましょう。乾燥したら、容器に入れて冷蔵庫などで保管します。収穫したままの実よりも日持ちします。
ぶどうの育て方⑩ぶどうの増やし方
ぶどうは、挿し木で増やすことができます。挿し木は3月ごろに行います。使う枝は休眠期の剪定の際に切った枝を利用しましょう。枝の上下を確認し、土に植え付ける方の枝先を斜めに切り、深さ5cm程度の水につけておきます。挿し木用の土を準備します。土は、植え付けのときと同じように、通気性のよい土を選びましょう。あとは、深さのある鉢を用意し、挿し木をしてたっぷりと水をあげます。
挿し木がうまくいったかどうかは生長を見ながら
挿し木をしてから芽が出てくるまではしっかりと様子を見ていきましょう。芽から最初の葉が出てきても、その後、生長が見られないこともあります。土が乾燥しないように水の管理に気をつけて。葉がさらに出てきたら、根も伸びてきている証拠です。支柱を立ててつるを誘引し、樹形を整えていきましょう。
ぶどうの病害虫について
ぶどうに限らず、植物を育てていく上で避けられない病害虫。ぶどうでは、べと病、うどんこ病などが代表的な病気です。ぺと病とは、ぶどうの葉に白い斑点ができる病気で、症状がひどくなると落葉してしまいます。べと病は、梅雨時期に雨滴から伝染することがあるため、発病した葉は処分し、必要に応じて農薬などを使っていくようにします。また、うどんこ病は、葉の表面に白い粉のようなカビが生える病気で、こちらも発病した葉を切り取り、治療薬などを使うようにします。
ぶどうにつきやすい害虫
ぶどうにつきやすい害虫には、ブドウトラカミキリ、ブドウスカシバなどがあります。ブドウトラカミキリは、収穫した後の枝に被害を与える害虫で、秋ごろに産卵し、ふ化した幼虫が茎内で冬を越え、春に被害が現れます。休眠期にしっかりと防除しましょう。また、ブドウスカシバは、幼虫が枝の中で冬を越えて枝を枯らせます。こちらもぶどうの休眠期に防除する必要があります。
ぶどう棚を使ったぶどうの育て方
ぶどう棚を作るとなると、大それた作業のように感じますが、自宅にあるガレージの脇、屋根などを上手に利用して、ぶどう棚を作ることは可能です。ぶどう棚となる場所の土に植えるほか、鉢を使ってぶどうの苗木を植えます。植え付けた年は、ぶどう棚につるを誘引し、まっすぐに伸ばしていきましょう。この伸びていく枝が、ぶどう棚全体の主梢となっていきます。休眠期には主梢を残して剪定し、2年目から主梢と反対方向にもう一本の主梢を伸ばしていき、枝をぶどう棚に対して平行に伸ばしていきます。
ぶどう棚はあまり高くしないと家族で楽しめる
ぶどう棚を仕立てていく際、ぶどう棚の高さをあまり高くしないようにすると、家族で楽しむことができます。収穫の際、だれもが手を伸ばせば実が収穫できる程度の高さに作っていくと、ぶどうを楽しく育てていくことができます。あまり背の高いぶどう棚を作ってしまうと、収穫や剪定などの作業が大変になってきます。実が収穫できるようになるには3年ほどの年月がかかりますが、楽しく育てていきましょう。
失敗しない育て方でおいしいぶどうを栽培しよう
ぶどうの育て方には、時期によってやるべき作業がいろいろあります。世話が大変そうに感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、育ててみると生長を見る楽しみがあるほか、実を味わう楽しみもあって、とても充実したガーデニングを満喫することができます。店頭で気に入った苗木を見つけたら、さっそく栽培してみましょう。樹形を整えたり、芽かきをしたり、充実した時間となります。
ぶどうの品種が気になる方はこちらをチェック!
さっそくぶどうを育ててみようと思われた方、どの品種にしたらいいのか迷ってしまいます。そんなとき、こちらの記事を確認してみてください。ぶどうの品種についていろいろわかるはずです。気に入った品種が見つかったら、さっそくぶどうの栽培を始めてみましょう。時間がかかるかもしれませんが、毎年、楽しく収穫できるようになるかもしれません。
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